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【時代劇考 -第1部-】
【時代劇考 -第1部-】#1 安易な気持ちで「考」など出してはいけない世界。 冷静に己を振り返ってみれば、意図的に避けていたようにすら思える。 強き者と弱き者、民衆と権力、仁義と人情、哀切と安らぎ。 万世普遍の大衆演劇だけに、メスを入れるのは大変な勇気と慎重さを必要とする。 そう、時代劇という世界を侮ってはいけない。 「出会え出会え。皆の者、曲者じゃ。出会え〜!!」 なんて悲しい科白だろう。この呼び声に私は涙を禁じ得ない。 今夜の君は不寝番。いわゆる屋敷の夜間警備当番の日だ。妻の持たせてくれた握り飯片手に ずっと待機だ。と、そこへ奥の間から飛び込んでくる緊急を知らせる声。 呼んでいるのは君の上司ではないか。代官だ。全力で廊下を突っ切り、奥の間へ君は向かう。 角を曲がり、縁側のような廊下を駆け抜けた君は見るだろう。 どこから庭に侵入したものか、鬼面の頭上には羽織を掲げた刺繍たっぷりの白い着物の曲者 が立っているではないか。腰には大小の2本差しから、おそらく武士であろうと想像する。 巷で噂の桃太郎侍の登場だ。ポポンポンポン。ひとつ醜い浮世の鬼よ。 おやどうした? 少し鼓動が早いようだが...そうか。それも無理あるまい。不寝番が 曲者の侵入を許してしまったのだ。これは処罰されても致し方のない事実だ。 聞くところによれば、先月嫁を貰ったばかりか昇進して不寝番の長を務めているそうじゃ ないか。職務怠慢を言い渡されても反論の余地はないな。 ああ、また鼓の音がどこからか・・・。 [ 続く ]
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