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【時代劇考 -第1部-】
【時代劇考 -第1部-】#3 これで君は知る由もなくなったのだ。 役宅に忍び込んだその男に手によって、君の主は無残討たれてしまい、家族が路頭に迷って しまう事を。 仮にも武士が何者とも知れぬ賊に押し入られ、全員が切り倒されたのだ。武士として無能と すら言われかねない状況なのだ。お家お取り潰しの沙汰も、満更有り得ぬ話ではない。 おさち(お嫁さんか)さんと、家督を譲ったばかりの君のご両親の行く末や如何に。 明くる朝。雀のさえずりのなか、 「桃さん。今日もお早いねぇ。何だったらウチのも起こしておくんないよ。まったくぅ」 長屋共同井戸端の朝。目覚めた桃太郎侍を、かみさん連中がにこやかに迎えるのだった。 ・・・ なんて哀しい物語だろう。 リストラや経営責任。上司命令と労働災害。わずか1時間に満たない間に、幸せと不幸とが 一転してしまうのだ。「この世の中の幸せの量は一定なのよ」誰が言ったか、そんな法則すら 脳裏を横切る。ああ、無常。 無慈悲なまでの現実をありありと映し出す「時代劇」という虚構。どうだろう。下手なドキュ メンタリーなど吹き飛んでしまうではないか。私はいまだかつて、これほどまでに巧みに世情 を描き出すドラマを知らない。時代劇を除いては。 [ 続く ]
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