このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


  【虎の威を借る狐考】
【虎の威を借る狐考】#1 「虎の衣を借る狐って、なんか面白くありません?」 こんな事を言ってくるのは妹尾さんだ。もちろん本当は「虎の威」であって、決して衣では ない。 「どっちも意味が通じるし。ふふふ、だとしてもいつ脱ぐんでしょうね、虎の衣」 たしかに、どちらにしても意味の通じる気もするな。 研究棟を繋ぐ渡り廊下に、晴れ間の気持ちいい風が吹き抜ける。 妹尾さんと一緒に梅雨を前にした青空を眺めつつ、私の空想創造癖はとどまるところを知らぬ。 虎の衣を借る狐かぁ...。 1. 長老に聞こう  キツネ君今日も今日とてする事もなし、日がな一日空を見つめています。  この村にやってきた当初こそ、人々は彼を恐れてくれたのですが、最近では  すっかり御無沙汰です。  ちょっと驚かせてやろうと、そっと忍び寄っても、箒の柄で「しっしっしっ」  払われておしまいです。  「ちっくしょ〜・・・なにか良いアイデアがないかなぁ。あいつらアッと言わ   せるような・・・!」  そうだ! 昔から言うじゃないか「虎の威を借る狐」って、あれだ!!  キツネ君、早速通販へ連絡です。  「もしも〜し、虎の威が欲しいんですが・・・」  「トラノイ、ですか? お手元カタログでの商品番号はいくつになってますか?」  「す、すみません。間違えました」  ガチャ・・・虎の威に商品番号などないのです。  こうなったら山へ虎刈りです。  「たとえ腕力でかなわなくても、こちとら知恵があら〜な」  ・・・何時まで経てど、虎は現れる気配さえ見せません。  「おっかしいなぁ」  そこでキツネ界でも物知りで有名な長老キツネに聞いてみます。  「どうして虎が現れないんでしょう?」  「虎?・・・虎は日本にゃおらんぞなもし」  「・・・え?・・・」                               [
続く
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