このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


  【ツキノワグマ考】
【ツキノワグマ考】 #2 資料室のドアを開けると、博士が百科事典を覗き込んだまま唸っています。 「ほれ、これだ。これを見てみろ」 開かれた頁には一頭の熊。喉のところにお馴染みの白いラインがあるので、それとすぐ分か ります。一般に最も知られた熊の一種だと言っても良いでしょう。 「さっきもニュースでやってましたよね。ツキノワグマですね、これ」 博士の目に一瞬怪しい光が浮かんだのを、僕は見逃しませんでした。こんな目をする時は、 決まって何かとんでもない事を言い出すんです。 「フッ、私もずっとそう思っていたよ。  では、これが何故ツキノワグマ(月の輪熊)と呼ばれているのか。それはこの首にある白  いこのマークがツキノワグマの名の由来だと、そう言い聞かされてな」 世界に数多いるクマのなかで、日本人が最も見分けられるのがこのツキノワグマでしょう。 たとえばヒグマとグリズリーの違いを説明して下さいと問われても、おいそれとは答えられ ません。ですがツキノワグマの特徴は?と聞かれれば、多くの方が説明できるはずです。 首の白いマークが目印だと。 「しかしな、これがツキノワグマであるはずがないんだ」 博士の指差している写真。どこからどう見ても、 「博士〜、ツキノワグマですよ」 「いやいや、この熊にはどこにも無いんだよ。月の "輪" が」 輪? 言われてみれば、首のところにある白いマークは決して輪=リングではありません。仮にも輪 を名乗るのですから、円もしくはそれに近い状態でなくてはならないでしょう。しかし写真の なかの熊に、そんなものはありません。まさか、これは... ふと顔を上げると、目を輝かせた博 士の顔。 「そう、ミカヅキグマだ! ツキノワグマなんかじゃないんだよ、一文字君」 「そんな〜」                               [
続く
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