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「ローカル線の車窓」小湊鉄道2004年


連休中の一日。珍しく出かけてみようかという気になった。ただし、もちろん渋滞するのはわかっている中、
車で出かけるのはいやだし、久しぶりに乗り鉄でも。しかし、そうは思ってもすぐに行き先は見つからない。
あれやこれや考えているうち、日帰りで乗り鉄ができるところ。しかもそれなりにローカルな雰囲気をもって
いるところ・・・として思いついたのが、以前何回か撮りに行ったことがある「小湊鉄道」であった。考えてみ
れば初乗車である。いろいろと調べてみると「一日フリー乗車券」なるものが1700円で発売されていること
も判明。終点まで行って往復するだけで元は取れてしまう切符だ。時刻表を見てみる。案外本数が少なく、
かなり早起きしていかないと途中下車してあちらこちら見て周るにはきついことも判明。というわけでいつも
通り早起きをして出かけよう、と思って起きてみるといきなり30分の寝坊。「まずい!」焦って準備をしてい
ると今度はいきなりの腰痛。「まずい!!」 予約もなにもしていないと気が抜けてしまうのか、出発前から
アクシデントに見舞われた。マッサージとストレッチでなんとかごまかすととりあえず出発。
京王線に乗る。早朝のため各駅停車のみの運行。新宿で中央線に乗り換える。こちらも各駅停車のみの
運行。御茶ノ水まで来たとき、予定していた列車にはすでに乗れないことが判明。予定では東京発、
6:45の「さざなみ1号」で五井まで行こうかと考えていた。すると五井発、7:52に余裕で乗れる。
これに乗ると一気に終点の上総中野まで行き、一日を有効的に使えるかと・・・。
御茶ノ水には6:40に到着。仕方なく、予定変更で、御茶ノ水でとなりにとまっている、総武線各駅停車
にて千葉を目指す。どこかで快速に乗り換えれば間に合うかも・・・。急に決まった「乗り鉄」なので、時刻
表すら持ってきていない。しかし、そんな淡い期待は見事に裏切られ、結局終点の千葉まですべての駅
に止まりながらやっと到着。内房線に乗り換えて、結局五井に着いたのが7:58であった。
次の列車は8:32となるが、これは終点の上総中野までは行かず、途中の上総牛久までの運転となる。
小湊鉄道はほぼ1本おきに上総中野行きと上総牛久行きが発車する。小湊鉄道ホームにてゆっくりと
「フリー乗車券」を購入し、ぶらぶらとホームの先端に移動する。まだ発車までは30分近くあるわけで。
風の強い日だが、幸い雨は降っていない。雨が降っても大丈夫なように「乗り鉄」メインの計画にしたの
だったが、降らなければそれに越したことはない。






8:32.定刻どおり出発。席は一番前をキープしていたので、景観が十分に楽しめた。連休だというのに、
とりあえずは空席が目立つ。天気があまりよくないので出かけるのを控えているのだろうか。五井駅を
出発すると右に内房線を見ながら左にカーブしていく。市街地が広がるが、密集してなくどことなく「地方」
を感じさせる。しばらくすると田畑が広がる「ローカル線らしい」風景が広がるようになる。そんな中あわて
ずゆっくりと確実に二両編成のキハ200は走っていく。ワンマン運転でないところがまた魅力的だ。
この列車の終着、上総牛久に到着。途中駅としては最大規模の駅のようだが、駅前は決してにぎやかで
はない、「地方の風景」が広がる。「そういえば、車で来たことがあるなぁ」ということを思い出す。
この駅の前から羽田空港行きの高速バスが出ていることには少々驚いた。やけに人が集まってきたの
で、その人たちは列車に乗るものとばかり思っていたら、ほとんどの人がバスに乗って行ってしまった。
この駅で待つこと50分。最初から次の列車で来てもよかったのだが、五井でぶらぶらするよりはここで
ぶらぶらしていようかという決断であった。今回は乗り鉄とともに次回来た際の撮影ポイントのロケハン
も兼ねている。ここ上総牛久までの間にも車内から見た際、いくつか良さそうなポイントを発見した。
上総中野行きの列車がやってきた。上り列車と交換する。列車に乗り込み次の目的地を目指す。
「里見」。駅以外で本日唯一の撮り鉄。ここのみ前もって調べておいたポイントだ。もしも雨が降っていた
らやめようかと思っていたが、幸い雨は降っていない。里見駅にて下車。降りたのは自分ひとり。無人駅
なので、車掌さんに切符を見せる。この列車の車掌さんは女性であった。女性車掌もあちらこちらで見か
るようになってきた。一昔前の鉄道とは確実に変わってきているのだ。
里見駅で降りてからはのんびりと歩きだす。「里見八犬伝」の「里見」だろうが、まったくのどかな田舎の
小駅ある。五井方向へぶらぶらと歩いて行く。やたらと風の強い日だ。しばらく歩いて行くと、「うん?こ
のにおい。」 それぞれの土地にはそれぞれの「におい」があるように思う。房総方面へは幼いころから
来ているのでその「におい」はとても懐かしいものに感じられた。いったい何のにおいなのだろうか。
おそらく、土とそこにある農作物のにおいが混ざっているのだろう。
さて、ポイントに着き三脚を立てるがものすごい風で、三脚が倒れてしまうのではという不安がよぎる。
結局三脚の前にずっといることになる。里見駅から数百メートル行ったお寺の前にあるこの踏切から
は里見駅を発着する列車を撮ることになる。そのため望遠レンズを使わざるを得ない。「この風では・・・」
とも思ったが、「ロケハン」という気持ちで挑戦してみた。が、狙う列車は先ほど自分が乗ってきたのが
折り返してくるもの。やはり数十分待つことになる。のんびりと待ちたいところだが、何しろ強風が吹き
荒れており、常に三脚の後ろに立っている状態。これはこれで結構つらいものだ。近くの民家の子ども
だろうか。三姉妹と思われる子ども達がテニスをやったりして遊んでいる。






やっと列車がやってきた。ゆっくりとポイントを通過しながら里見駅に進入する。その瞬間シャッターを
押したがやはり強風に望遠レンズ。ぶれてしまった。列車を撮り終わってすぐにこのお寺のご住職が通り
かかる。ご住職によると秋にこの沿線には彼岸花が咲き、とてもよい雰囲気になるという。しばらくそんな
話をして挨拶するとゆっくりとまた里見駅に歩きだした。
さらに南を目指す。次の列車は終点の上総中野までは行かず、養老渓谷止まりとなる。時間的に養老
渓谷の駅前あたりで昼食かという感じであった。しばらく待つと列車はやってきた。
車掌さんに切符を見せ乗車しようとした・・・その瞬間、「この車掌さんどこかで見たような・・・」。しばらく
考えてわかった。某「○の連続乗車券」のお客さまが作ってくださった「バナー」に描かれている車掌さん
だ!「こんな車掌さんが現実にいるんだ・・・」 妙な感動と戸惑いを感じながら、列車は養老渓谷を目指し
走って行く。まるでバナーから抜け出してきたようだ・・・。
養老渓谷駅に到着するとこの車掌さんに写真を撮らせていただけるようにお願いする。「写真嫌い」とお
っしゃりながら、快く撮らせていただける。が、それを見ていたほかの客が「私も!私も!」とどんどん
集まり写真を撮り始めた。大変申し訳ないことをした、と思う。
この列車は折り返し、五井を目指す。5分ほどして笑顔を残し、車掌さんはまた乗務に就いた。
駅を出ると、駅前の食堂でそばを食す。さらに40分ほど待たないと、次の上総中野行きの列車はやって
来ない。駅のベンチで何となく過ごしていると案外時間というものは早く過ぎるものだ。
13:24発、上総中野行きはやってきた。







上総中野は次の駅。7分ほどで到着する。上総中野は終着駅で、なおかついすみ鉄道への接続駅で
ありながら無人駅である。今度の車掌さんは男性の方であったが、車内にいる乗客すべての乗車券を
この7分の間にチェックする。そして、乗り換えがある場合には新たな乗車券を発行する。なかなか忙しい
時間だ。そうこうしているうちに上総中野に到着。私のようにただ、終着駅の写真を撮るために乗車して
いた人が他にも数人いた。いすみ鉄道と小湊鉄道の列車のツーショット。ここでしか撮れない写真だ。
いすみ鉄道の車両を前に記念写真を撮る親子連れ。連休中に孫が遊びに来たのだろう。見送りに来て
いたおばあさんのやさしい笑顔。なんかほっとする光景がそこにはあった。
4分ほどの折り返しまでの時間ではあったが、実にゆったりとした時間が流れていた。
帰りの列車では一番後ろの座席をキープ。車掌さんが次の養老渓谷までの間に、再び乗客全員の乗車
券をチェックしていく。さらに、上総牛久まではすべての駅が無人駅で、乗ってくる乗客すべてこの車掌さ
んが乗車券を発行することになる。ほとんどの駅でなぜか家族連れが乗ってくる。
そして、ホームを見ると老夫婦が見送りに来ている。みんな連休を利用して孫を連れてやってきているの
だなぁと実感する。
一番後ろの座席のため、後ろの展望がきく。先ほど降り立った「里見駅」を発車したところを写真に撮って
みた。
1時間とちょっとの間、列車に揺られていたわけであるが、実に短く感じた。
東京からそんなに離れていないこの地に、こんな路線があることはまさに奇跡に近いことなのかもしれ
ない。身近に体験することができるローカル線の旅。小湊鉄道はそんな路線である。

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