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北信濃2003年「大糸線を訪ねて」

大糸線。初めての旅のとき、糸魚川から松本まで乗った路線。
以前より訪れたかったこの路線をやっと訪れることになった。
しかし、出発以前からいろいろとハプニングがあったのだった。
まず、ひとりで泊まることができる宿をやっとのことで見つけた
のだが、忘年会で食べた生牡蠣にあたり、前日はやっとの
思いで仕事に行くありさま。当然、出発は無理だと思い、宿は
キャンセルした。「また大糸線には行くことができないか・・・」と
がっかりしていた。軽自動車で出かけることになっていたので、
雪に備え、スタッドレスタイヤにも付け替えていたのに。鉄道
の写真を車で撮りに出かける際は、小さい車の方がいい。
大きな車だと駐車スペースに困ることがままある。従って、
今回はさまざまなところを訪れる予定だったので、あえて、
セカンドカーである、軽自動車を交通手段に選んだ。
当初の予定では、早朝5時前には出発しようと考えていた。
しかし、体調不良により、7時ごろ起床。すでに休暇をとって
しまっていた。起きてみると、本調子ではないものの、昨日まで
の吐き気はおさまっている。「さて、どうするか・・・」
結局、8時30頃、出発した。中央道を軽自動車で走る。さすが
にスピードはあまり出せないが、体調が完全ではない体には
かえってやさしかったかもしれない。順調に走り続け、いつも
こちら方面に来ると、必ず休憩する、諏訪湖SAにて給油と
休憩。天気はまずまずだった。このころになるとなぜか体調も
だいぶ回復していた。写真は諏訪湖SAから見た、諏訪湖。
一休みすると、岡谷ジャンクションから長野自動車道へ。松本
を通りすぎ、豊科インターにて高速を降りる。道路標識に従い
信濃大町方面へ車を走らせる。途中、コンビニで食料などを
調達。すぐさま、小谷村方面へ行こうかと考えたが、ちょっと
気が変わり、安曇野へ立ち寄ってみる。
安曇沓掛駅の近くによい撮影ポイントがあるためだった。
道祖神と大糸線。雑誌で見てから一度訪れたいと思っていた
ポイントだ。大体のところはわかっていたのだが、車で田圃の
あぜ道をかなり走りまわってやっと見つけた。まさにこの
道祖神。いかにも「安曇野」の雰囲気が漂っている。実際に
列車を待っているとかなり風が冷たい。さすがに信州。
信濃大町を過ぎ、仁科三湖の木崎湖が見えてくる。さすがに
雪が降り出した。安曇野から北の方には雪雲がかかっていた
ので、雪が降っていることは想像できたが、かなりの降りに
なっていた。国道の路肩に車をとめ、列車を待つ。

仁科三湖とは「木崎湖」「中綱湖」「青木湖」の3つである。冬の
湖は寒々しい。さらに北上し、白馬に到着。ここで、キャンセル
したホテルに立ち寄ってみる。スキー場の中にある宿だった。
ここで、キャンセルしてしまったのだが、泊まることはできない
かどうか尋ねてみた。すると、この日は、幸い空室があり、泊ま
ることができるということ。その場で再予約をし、また、雑誌に
出ていたポイントへ向かう。この宿からはそう離れていない
ところであった。晴れていれば、八方尾根をバックに撮影できる
ようだが、この日は、うっすらとすらみることができなかった。
雪もますます激しくなっていく。

さらに北上。南小谷駅に到着。JR東日本とJR西日本の境の
駅であり、大糸線もここから非電化区間になる。それまで
スキー場などが点在していた沿線も、山深い渓谷の間をぬう
路線に変わる。
雪の粒はどんどん大きくなっていく。国道は大きなトンネルを
抜けて進む。しかし、それでは大糸線を見ることはできない
ので、トンネルを抜けたところの小道へ入ってみる。姫川が
あるが、大糸線は見えない。「さて、大糸線はどこへ行って
しまったか・・・。」近くにたまたま何かの作業をしている人が
いたので尋ねてみると、ちょうど大糸線は目の前の山を
トンネルで通っているとのこと。右へ進めば、線路が見える
ということ。早速進んでみる。しばらく行くと、いきなり見覚え
のある景色。ここも雑誌に出ていたポイントだ。しかし、川原
に降りようと、雪道を歩きだしたとたんにひざ上まで足が
沈む。結構積もっているのだ。持参した登山靴に履き替え、
さらにスパッツをつけて、雪の中を川原へ向けて歩きだす。
何もこんな思いをして撮らなくてもいいのに、と思うのははた
から見ていた人だろう。が、だれも来ることはなかった。
進んでみるとこれが意外と疲れる。昨年の北海道の塩狩
峠でもっと深い雪を歩いたが、さほど疲れなかった。
理由はすぐにわかった。北海道の雪は気温が低いために
軽い。が、ここの雪は水分が多く、重い。結局汗だくになり
ながら、川原に到着。雪は容赦なく降り続ける。誰も来ないし
だれもいない。ただ聞こえるのは雪が衣服に当たるときの
「サラサラ」という音だけ。そのうち、列車のディーゼルのうな
る音が聞こえてくる。通りすぎる瞬間だけ、沈黙が破られる。
そして、列車が行ってしまったあとは元通りの沈黙。
こんなところにいると人恋しくなってくるものだ。
日も暮れ始め、あたりは薄く暗くなってくる。雪の積もった
世界は青い世界に変わっていく。白馬方面へ引き返す。
このあとは特に予定も立てていなかったのだが、宿泊は
食事もつけていないし、とりあえず、夕飯の時間まではやる
こともない。白馬付近に戻るとすっかり真っ暗になっており、
沿線のスキー場のナイターの光だけが妙に明るく輝く。
その光を見ていると、なんだが列車とともに写真に撮りたく
なってきた。「よし、これでいこう」ということで、スキー場と
列車をいっしょに写せるポイントを探した。雪道でポイントを
あまりじっくり探していると非常に危険だ。慎重に運転し、なお
かつ、あたりも見回すというとんでもない作業が続く。
が、なかなかよい場所が見当たらない。線路が入ると思うと
スキー場は山の陰に入ってしまっていたり、逆にスキー場
がよく見えると、線路がなかったり。途中、神城という駅に立ち
寄った。スキー場も見えるが、どうやってもうまく構図がとれ
ない。しばらく、迷ったあげく、さらに松本方面に戻る。
途中、小さな峠越えに入る。ここを抜けるともう仁科三湖まで
来てしまう。峠では特に慎重に運転し、青木湖が見えてきた。
青木湖の向こうにスキー場の明かりが見える。手前には
線路もある。俯瞰できるポイントだ・・・が、残念なことに今度
は車を留めるスペースがまったくない。こんな雪の積もった
暗い国道上に駐車したことにはそれがきっかけで他の車の
事故を引き起こしては大変だ。簗場駅まで行ってみる。この
駅からもスキー場はよく見えるが、ここからでは、列車が
近すぎる。半分あきらめかけて、小道を少し戻ると踏切の
向こうに坂が見えた。そちらへ行くと、なんとか俯瞰気味に
列車とスキー場の両方が入ることに気づく。
またしても三脚を用意し、坂の途中にて陣取る。こんな雪の
降る夜に、こんなところで、何をしているんだろう・・・。きっと
通りすぎる誰もが思ったに違いない。(汗)
これを最後に宿へ向かう。途中ファミリーレストランで食事を
したが、とても薄味で健康的であった。(汗)

宿はいわゆるペンションという感じなのだが、若き日にスキー
に行ったさいによく泊まった宿の「におい」がした。なつかしい
においだった。一晩中雪は降ったようで、留めてあった車に
は30センチ以上の雪が積もっていた。まずは、雪下ろしを
始める。さらに駐車場にも新雪が積もり、どうにか車を出す。
8時前には出発した。スキー場がまもなく営業を始めるようで
スノーボードを抱えた若者が集まっていた。

国道へ出て、さあ出発。まずは腹ごしらえをと思ったが、なか
なかコンビニが見つからない。今日は再び、南小谷方面へ
向け走りだした。南小谷を過ぎたところでやっとコンビニを見つ
け、サンドイッチとコーヒーで少し遅い朝食とする。
腹ごしらえが済むと、「中土駅」の標識にしたがい小道に入る。
現国道は大きなトンネルで越えているが、旧道らしきその道
はあちらこちらがスノーシェッドで覆われている。その姿を
見るとここが豪雪地帯だということを感じる。




しばらく行くと集落があり、そこに中土駅はあった。もちろん
無人の寂しい駅だ。ちょうど雪かきをしていらした駅の前の
タクシー会社の人に断り、車を駅の前に置く。駅のホームへ
出てしばらく雪の中にたたずむ。20分ほどして上りの列車
がやってきた。上りの列車を見送ると、いったん車に戻り、
カメラのバッテリーなどを入れ替えてから、100メートルほど
先のガーダー橋へ向かった。列車が南小谷から引き返してく
るにはまだ少し時間があったために構図などを確認しようと
思っていたのだ。ガーダー橋の前でカメラを構え、構図を決め
ると、車に戻ろうと道を引き返した。と、その瞬間、足が滑った。
もちろん、もう片方の足で踏ん張ろうとしたが、無駄だった。
あっというまに地面が迫り、お尻から頭にかけて地面からの
衝撃が走った。とっさにカメラをかばったせいだろう。一応
投げ出してしまったものの、カメラに異常はなかった。が、
手袋をした左手が妙に痛い。車まで戻り、手袋を取ってみた
瞬間。血が滴り落ちた。「まずい・・・」まもなく列車がやってく
る。なんとかとりあえず、血を止めておけないか・・・。冷静に
なって考えてみると、いつか家族で買い物に行ったおりに
福引かなんかで当たった救急ばんそうこうセットがあったは
ず!と思い出し、探してみる。「あった!!」地獄に仏とはこの
ことか。すぐにばんそうこうで止血(といってもその上からにじん
でくるのだが)し、先ほどのガーダー橋へ向かう。今度は一歩
一歩確かめて。どうにかこうにかやってくる列車を撮影するこ
とができた。


気をとりなおし、白馬方面へ戻る。が、左手は相変わらず痛い。
しばらく運転し、白馬のコンビニで暖かい飲み物でもと立ち寄
る。車から降りると今度はなんだか足が重い。先ほどしりもちを
ついたせいか・・・。なんだかだんだんと不安になってきた。
その場でストレッチなどをやりなんとか体勢を整える。
雪はさらに激しく降ってくる。今日も八方尾根は見えない。
少しでも帰り道に近い方がよいと思い、国道を松本方面に
向け走りだす。途中小休止をしながら、そのたびにストレッチ
をやる。途中、とてもよい感じのポイントを見つけたが、列車
が来るまでにはまだ2時間もあることに気づき、さすがに
この状態ではこんな何もないところでいる自信がなかったので
さらに戻る。いつかこの場所でもう一度挑戦したい。
道の駅でしばらく休憩するとだいぶ回復してきた感じがした。
なんとか大丈夫そうか。地図や地形図を取り出し、どこで撮るか
検討した。その結果、木崎湖の近くの踏切あたりがよさそうか
という結論に達し、昼食用のおにぎりを購入し、さらに国道を
走る。
踏切に到着。雪は相変わらず激しい。どんどん視界も悪くなって
いくように感じる。背景になる近くの山もうっすらと見えるに
すぎない。当然、北アルプスなどははるかかなたで影すら
見ることはできない。「去年の北海道と同じだなぁ」と思いなが
らも、列車が来るたびに撮影をする。結局このポイントには2
時間以上いただろうか。写真は雪煙に隠れたスーパーあずさ。

「スーパーあずさ8号」を最後に、松本方面に戻る。雪が降って
いたのは信濃大町までで信濃大町を過ぎると、道路に雪は
積もっているものの、すでにやんでいた。「ちょっとまだ早い
かな」とも思い、急遽昨日の安曇野の道祖神のポイントへ
向かう。一晩たってみると同じ場所が別世界に変わっていた。
一面の銀世界。時折雪がちらついている。ここで何本か撮影
したあと、豊科インターへ向かい、車を進めた。
インターが近づいてくると道路の雪は積もった形跡すらなかっ
た。そんなに距離が離れているわけではないのに、ここまで
雪の量が違うとは。日本という国は不思議な国だ。
豊科インターから長野自動車道に乗り、そんなことを考えて
いた。

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