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1997(平成9)年3月21日(金)〜21日(木)
まごころツアー4
3年 衞藤 隆史 目の前に、古びた小さな建物が見えてきた。あまりきれいとはいえない建物だが、何かどっしりとした風格が感じられる。その真ん中に、建物の大きさとは似ても似つかない大きさの入口がある。そんな申し訳程度の入口のドアを開け、建物の中に入る。ドアの向こうは、これもまた申し訳程度の出札口と待合室である。そしてその向こうには、今日まで望んできたものがあるはずである・・・。
平成9年3月25日の12時すぎ、私は青森県の七戸町にいた。友達は今頃、学校で補習を受けているだろう。少し胸に罪悪感という痛みを感じながら、私は風に吹かれていた。
12時40分、改札が始まる。狭い改札口を通り、構内へ入る。私の目の前には、改札口の狭さとは似ても似つかない大きさの構内が広がっている。そして、その大きな構内のなかにポツンと、朱色と肌色の物体があるのが目に入った。まるで、模型の車両のように・・・。 ——そう、私が長年会いたがっていた車両が、今私の目の前にいるのである。やっと会えた…。長い時間を経て、長い道程を経て・・・。
キハ10型——。昭和30年代に生まれた、日本で最初のレールバス。そして平成9年5月5日にその活躍が神話になる車両である。終局を約1カ月後に控えた彼女は、まるでそのことを知らないかのように、いつもの顔で、いつものように、2本の鉄の棒の上にたたずんでいた。他に何も聞こえない。他に何も見えない。ただ風だけが途切れることなく吹いている・・・。
13時ちょうど、沈黙を破って彼女が突然声を上げはじめた。周囲は彼女の声で一杯になった。屋根から黒煙が上がる。そして、その体は小刻みに震えている。しかしその声は決して弱々しいものではなく、とても力強く聞こえるものであった。その声をあたりまえのものとして聞けるのも、あと約1ヶ月である。本当にあと1ヶ月たてば、彼女の存在も、彼女が走った2本の鉄も神話になってしまうのである。連令とは残酷なもので、何人も逃れることのできないことであることを彼女を前にして、改めて思う。
13時15分、彼女は動きはじめた。ゆっくりと、そして確実な足取りで・・・。20キロ先の終点に向けて・・・。約1ヶ月後に迫った終局へ向かって・・・。神話になる日に向かって・・・。何も知らないまま・・・。
6泊7日に及ぶこの「まごころツアー」、計画を立てたのはもちろん3年の衞藤で、なんと話をした翌日には行程表を仕上げてきた。さらに衞藤は退屈な道中、参加者の知識拡充をはかってペーパークイズを作ってきた。これが相当粒よりの問題揃いで、私もほとんど正解できなかった。その一部を以下に紹介しよう。
問.次の問題に答えよ。ただし、列車名が書かれている場合はその列車の運行区間を、運行区間がかかれている場合は、その区間を運行する列車名を答えよ。(編集者注:ワクにマウスポインタを合わせると解答が表示されます。ただし、当時の時刻表を参照していますので、現行のダイヤでは一部内容が異なる場合があります。) ア.L特急 きりしま イ.L特急 しおかぜ ウ.L特急 北近畿 エ.L特急 さざなみ オ.L特急 白山 カ.L特急 いなほ キ.L特急 こまくさ ク.L特急 はつかり ケ.L特急 すずらん コ.L特急 ス-パ-ホワイトアロ- サ.快速 アクティー シ.快速 ラビット ス.快速 なのはな セ.快速 ムーンライト九州 ソ.快速 ムーンライト高知 タ.快速 ミッドナイト チ.快速 ざおう ツ.快速 マリンドリーム テ.快速 アーバン ト.快速 海峡 ナ.名古屋〜紀伊勝浦 ニ.博多〜佐世保 ヌ.博多〜大分 ネ.岡山〜出雲市 ノ.東京〜下関 ハ.上野〜札幌 ヒ.新宿〜沼津 フ.京都〜関西空港 ヘ.上野〜直江津 ホ.札幌〜網走 マ.青森〜弘前 ミ.博多〜直方 ム.岡山〜福山 メ.岡山〜高松 モ.仙台〜石巻 ヤ.山形〜仙台 ユ.新宿〜小田原 ヨ.上野〜福井 ラ.岡山〜鳥取 リ.熊本〜都城
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