このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

里見電鉄四季物語 〜水無月〜 「初瀬駅」

1 里見電鉄 初瀬駅

 今日も、朝から雨が降っていた。めぐみは傘をさして駅へと歩いていた。衣替えしたばかりの夏服も激しい雨のせいか、肌に張り付いており余り気持ちいい感じではない。白を基調として薄い水色の帯のセーラー服。特徴と言えば胸当てに校章が入っていることか。新しくもなく古くさくもないデザインのこの服が静谷学園の女子の夏服だった。
 小さなホームが向かい合う形の初瀬駅に着いた。小さな駅舎と待合室の他は屋根すらない駅。ふたつのホームには色とりどりの傘の花が咲いている。犬懸駅の方から4両編成の電車がやってきた。少しして秋篠からも4両編成の電車がやってきた。いつも通りめぐみは里見行きの最後尾の車両に乗った。

2 里見電鉄 犬懸駅

「あーあ。結局今日も雨かぁ」
「しょうがないわよ、めぐみ。梅雨なんだから」
と、かすみが答える。
「おかげで練習は筋トレばっかり。思いっきり走りたいよ」
陸上部員であるめぐみは恨めしそうに空を見上げる。
「明日晴れたらいいね」
「晴れて欲しいな」
かすみの言葉にめぐみはそう応えた。

3 里見電鉄 運行管理室

「はい、こちら里見電気鉄道運行管理室です。−−−はい、分かりました」
受話器を降ろした社員は同僚に、
「気象台から警報の発令と降水量に関するお知らせだ。このままだと運休しないといけないかも知れない。学校にも通知しとかないと」
「里見高校に、里見商業、秋篠高校に、静谷学園で良かったね」
「あぁ、頼んだよ」

4 静谷学園高校 2年C組教室

 昼休み。雨は降り止まず、それどころか、さらに激しくなっていくようだった。めぐみは陰鬱とした表情で窓の外を眺めていた。そうしていると教室のスピーカーから、
「生徒の皆さんへ。全校生徒は直ちに教室に戻って下さい。繰り返します、全校生徒は・・・」
なんだろうとみんなが思っていると、教室に先生が入ってきて、
「雨の影響で電車が止まる可能性が出てきたので、これからの授業を休講にします。皆さんは電車が止まる前に速やかに自宅に戻りなさい」

5 里見電鉄 電車車内 

「この電車は秋篠行き普通です。ですが、天候により途中で運転を取りやめる可能性がありますのでご了承下さい」
電車の放送もいつもと違う。めぐみがいるのは乗務員室のすぐ後ろ。乗務員室には運転士の他に、普段ならいないであろう作業着にヘルメットを付けた人(保線係)がいる。電車のスピードもいつもより遅い気がする。電車はゆっくりと初瀬に向かって走っている。

6 里見電鉄 初瀬駅

 電車はなんとか初瀬駅に到着した。めぐみは、ホームに降りると傘をさして歩き出した。



後書き

 すみません×3。やっと新作をアップします。色々と諸般の事情という物があったのですけど理由になりませんね。と、言うわけで御免なさい大幅に遅れてしまいました。閑話休題、今回は梅雨の大雨の話になりましたが、今年はなんか空梅雨っぽいですね。でも別に作品でも空梅雨にする必要はないでしょう。だいたいこの作品前後10年の範囲なら、いつの年でもおかしくない話だと思いますし。
 しかしこの話、「鉄道員の詩」でフォローしないとかなりきつい話ですね。うぅ、仕事が増えちゃった・・・
 
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