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里見電鉄四季物語 〜葉月〜 「那古駅」
1 里見市上信乃 青梅家
ジリリリン。電話が鳴っている。少しすると、
「かすみ、電話よ」
「はーい。すぐでるから」
かすみはパタパタと、階段を下りてきた。電話を受け取る。
「お母さん、誰からの電話?」
「根岸さんからよ」
「由加里から?何だろう」
かすみは受話器に話しかけた。
「もしもし、電話替わりました。かすみです。由加里、何かあった?」
「かすみ、海行かない?」
「唐突ね。で、どういうこと」
かすみは詳しいことを聞き出そうとする。
「那古に住んでいる、おばさんから遊びにお出でって言われたの。それでみんなに行こうって声かけているところなの」
「それで、みんなは?」
「当然、みんな大丈夫だって」
「じゃあ、私が言うまでもないじゃない」
「じゃ、全員参加だねっ!」
気の早い友人のせりふに少し苦笑しながら、
「で、いつ行くの?」
と、かすみは聞く。
「今度の土曜日に行こうかって」
「うん、いいわよ。集合場所は何処にしたの」
「集合場所はね、那古の駅にしたよ」
「そうなの・・・」二人の会話は長く続いた。
2 里見電鉄 那古駅
かすみの乗った電車はゆっくりと南へ走っていく。里見信乃駅から里見に行く電車は、真夏と言うこともありクーラ−付きの新車(と、言っても、どこかの大手私鉄の払い下げだが)と、言うわけで快適な涼しさである。ちなみに里見電鉄の電車は基本的に全部弱冷車である。駅をでるとすぐJRと国道をくぐり抜ける。そして田園風景の中をゆっくりと下り西森に着く。そして西森をすぎて少しすると電車は小さなトンネルを抜け、海岸に出る。瀬戸内の夏の日に照らされ、右側の窓から見える海はきらきらと輝いている。海が見えるとすぐ那古駅である。かすみはホームにおり、車掌に切符を渡す。駅舎の方へ渡ろうとするとホームにある警報機が鳴り、電車の警笛の音がした。里見からの電車が来たらしい。確かこの電車には文香が乗っているはずだ。
少しすると、上り下り両方の電車は那古駅を発車した。向かい側のホームに由加里、めぐみ、文香が見える。かすみは彼女たちに手を振りながら駆け寄った。
3 里見市 那古
かすみたちは小さな那古の駅舎を出ると坂道をゆっくり下り始めた。たわいもないことを話しながら葛折りになっている坂道。それに沿って小さなうちが並んでいる。
「ところで由加里の伯母さんの家ってどんなところ?やっぱり迷惑じゃないかな」
かすみが由加里に聞く。
「大丈夫だって。実はおばさんちって民宿なの」
「なら忙しいんじゃないの?それに部屋だって」
「実は今使ってない離れがあるんだ。だから大丈夫」
「もしかして出るとか?」
かすみは、ある単語を連想したらしい。それを聞いて文香は顔が青くなる。由加里は、
「どうだろうねぇ〜」
と、はぐらかす。とうとう文香は、今にも卒倒しそうなくらい真っ青になる。めぐみが笑いながら、
「幽霊が出るような所に由加里が泊まるわけ無いじゃない。大の苦手なんだから、幽霊。何しろ中学3年の時に・・・」
「それ以上、言っちゃダメっ!」
どうも何か昔にあったようだが、何があったんだろうか。まぁ、なんだかんだといいつつも4人は由加里の叔母の民宿にたどり着いたのでした。
4 里見市 那古海水浴場
かすみ達は民宿に荷物を置くと、さっそく水着に着替えて民宿のすぐそばにある海水浴場にやって来た。
「きゃあ、由加里っ!いきなり水かけないでよっ!」
「知らないよーだ。えぃっ!」
「もー、怒ったからぁ。ええぃっ!」
「もうっ、由加里ったら、止めたらどうなの?って、あたしにもかけないでよ」
「いいじゃない。みんなで遊ぼう!」
結局、きゃあきゃあ言いながら水かけっこをする4人でした。
後書き
やあっと出来た。慣れないFrontPage Express を使ったので今回は大変でした。海水浴の話のはずなのに海のシーンはちょぴりですね(苦笑)。まぁ、作者が作者だけにしょうがないでしょう。
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