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何だか大げさなタイトルになってしまったし、あるいはそういうものを期待された方には申し訳ないのだが、漫画のお話である。
欲望と成就、そして破滅。
誰のことかというと、ドラえもんののび太くんのことである。
人間誰しも、欲望を持っている。欲望という言葉が必ずしもふさわしいとは言えない。夢や希望と言った方がいい場合もたくさんある。
だが、のび太のは明らかに欲望であろう。自ら何の努力もせず、他力本願。責任転嫁。
但しこの欲望は、実にちっぽけでささやかな思いが出発点であり、そのため共感を得やすく、理解しやすい。罪が無く夢にあふれるものも多い。また劇場用ドラえもんでは、アイテムこそドラえもん(つまり未来世界)に頼るものの、主役はドラえもんではなくむしろのび太であり、ずっこけて役に立たないドラえもんを横目に、愛と勇気の大冒険を繰り広げる。タイムパラドックスを見事に処理していて、大人のSFファンをも満足させてくれる(と僕は想っている)。
おおよそ感動のフィナーレを迎えるわけだが、コミック及びテレビ版では、他力本願で欲望を成就させたあげく、お調子に乗ってやがて失敗、何もかも失ってしまう。
そういう面でドラえもんに対する批判もあるわけだが、これはドラえもん世界の構築上、ドラえもんの未来アイテムを利用し自ら努力を行わない、という設定になっているからである。違う設定の似たような漫画はいくつかある。
例えば、まじかるタルルートくん。これはタルルートの魔法による欲望の成就である。但しこれにも落とし穴があって、たしかタルルートの魔法は時間が来れば消滅してしまったはずだ。
また、同じ藤子氏の作品で、キテレツ大百科というのがある。
いろいろなアイテムを主人公自ら作るのだが、しかしこれも過去の偉大な発明家キテレツ斎様の創作によるものであって、主人公は大した努力をしていない。
そして、「これは面白い」と、最近評価しているのが、「おまかせピース電気店」である。ギャグのセンスはドラえもんをしのいでいるとさえ思う。
ドラえもんなどと異なる点がいくつかある。まず、欲望の種類がきわめて世俗的であり、基本的には「楽をして何かをなしたい」ということであり、夢も希望もない。例えば、冬の寒い日、こたつに入ったまま遊園地に行きたいとか、全く泳げないくせに水泳大会で優勝したいとか、きわめて馬鹿馬鹿しいものである。
そして成就の方法が、そのための機械を自ら作るということである。
ピース電気店は商店街のちっぽけな電気屋であるが、「無い品物はない」と、豪語する。なぜなら、注文の品物はその場で作ってしまうからである。
自ら作るという姿勢は評価できるけれど、これは物語世界が電気店であるからであり、その製品を作るのに努力するシーンはなく、たったヒトコマで完成する。すなわち、四次元ポケットから未来アイテムを取りだしてくることと本質的に変わりない。
そして、もうひとつは、ドラえもんにしてもタルルートにしても、そしてキテレツにしろ、基本的に家族は普通である。一般的な家庭である。のび家ではどらえもんを養っているが、だからといってお父さんがドラえもんに頼んで、何かをするということはない。(少しぐらいあるのかも知れないが)
一方ピース電気店は、家族経営の自営業であり、父が店主で、妹がコンピュータープログラムの天才、とくる。向かいのラーメン屋で居候する同級生の女の子はピース電気の秘密を探るために送り込まれたアメリカのスパイであり、同じ町内の(なぜか大資本大手の)電気製品メーカー「東電気」が、ことあるごとにピース電気と対決し、敗退する。
このように家族町内世界を巻き込んだ壮大な(?)スケールのコミックなのだ。
そして最後に、ピース電気店は非常にボランティア的な仕事をたくさんこなしている、という点。
困った人がいれば、注文もないのに何とかしてあげようと、色々なアイテムを発明する。
そんなわけで、ボクは「今週のビックリドッキリメカ」を楽しみに、毎週少年チャンピオンを買ってしまうのだ。
とらおおすすめのマンガです。
え? 破滅? そう、ピース電気店の破滅の仕方はやはり壮大なスケールです。ドラえもんのように教訓めいたところはあまりなく、「自業自得」と嘲笑したくなるような破滅が主なパターンですね。でも、破滅しないことも結構多いんですよ。
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