このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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迷いの痕跡〜〜新幹線新大阪付近
■新幹線新大阪付近の線形
東海道新幹線に乗車していると、新大阪到着直前にいささか不思議な感覚が生じる。というのは、神崎川を渡ると一旦右に曲がり、阪急千里線と交差すると左に曲がり、さらに新大阪到着直前でもう一度右に曲がるからである。
国土地理院地形図(大阪付近)【現状:青太線が東海道・山陽新幹線】
上記国土地理院地形図において、青太線が東海道・山陽新幹線である。いまの線形は、阪急淡路駅とその周辺市街地を回避しているかのように見える。ところが、この線形には合理的でない面がある。新大阪は当初終着駅であったが、将来の山陽方面延伸を考慮すれば、阪急千里線と交差してもそのまま直進し、在来線とは東淀川で、御堂筋線とは東三国で、それぞれ接続する位置に新大阪駅を設置するのが最も合理的というものだ。
国土地理院地形図(大阪付近)【山陽方面延伸を考慮】
■東海道新幹線の当初計画
即ち、新幹線新大阪付近の線形には、別の意図が含まれていると考えなければなるまい。試みに、神崎川を渡ってから右に曲げず、そのまま直進させればどうなるか。
国土地理院地形図(大阪付近)【神崎川から直進】
柴島浄水場にぶつかってしまうから、この線形を採れないことはすぐ理解できる。とはいえ、この線形の目指す先がどこかを考察することは重要である。赤矢印を更に伸ばしていくと、淀川放水路と交差した先に、梅田貨物駅が見えてくる点はたいへん重要な示唆を与えるものである。
東海道新幹線は当初、山陽方面への延伸を考慮することなく、梅田貨物駅をターミナルと考えていたようだ。これは筆者の憶測ではない。東海道新幹線の工事誌のうち幾つかに、この当初計画の記述がある。ただしこの当初計画は、梅田貨物駅の機能移転に相当な時間を要することから、中途で断念されたという。
国土地理院地形図(大阪付近)【梅田貨物駅乗り入れを考慮】
つまり、新幹線が神崎川を渡ると一旦右に曲がり、阪急千里線と交差すると左に曲がる線形を採ったのは、柴島浄水場への支障を回避しつつ、梅田貨物駅を目指していたからにほかならない。もっとも、この計画を見直したからこそ、もう一箇所カーブが多い現状につながっているわけだ。
■迷いの痕跡
そのカーブに立ってみよう。沿線にも「アヤシイ」匂いが漂っている。
東海道新幹線新大阪直前のカーブ(その1)
平成23(2011)年撮影━━以下同じ
新幹線に沿って側道があるという時点で既にかなり怪しい。新幹線の並行道路は、実は例が少ない。元の道路の付替が結果的に側道になったか、新幹線に合わせて都市側の道路計画が具体化したか、いずれかだ。この場合、具体的証拠はないものの、後者らしき匂いが感じられる。
東海道新幹線新大阪直前のカーブ(その2)
(その1)から数m引いた位置で撮った写真が(その2)である。(その2)から立ち位置を更に数mずらし、視線を 180°反転させた写真が(その3)である。
東海道新幹線新大阪直前のカーブ(その3)
即ち、東海道新幹線を梅田貨物駅まで直進させる線形が、今日もなお道路用地として地に刻まれていることが、これら三葉の写真から理解できる。道路交差は直角が基本と定められているため、道路そのものは直進していないが、歩道・街路樹の空間がしっかり確保されているあたり、なんとも絶妙な痕跡が残ったといわざるをえない。
なんとなく東海道新幹線に乗車しているだけでは、認識できるはずもない事実ではある。しかしながら、それでも歴史は流れていくし、歴史はどこかに必ず形をとどめていくものだ。新大阪ターミナルをどこに設置するか模索した、いわば迷いの痕跡が、今日でもなおうかがえるという点が、歴史の妙味というものだろう。
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参考文献
HP
『国土地理院』
より
(01)
「大阪」付近
(ウオッちず/2万5千分の1地形図)
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