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「セントラルライナー」の問題点

「セントラルライナー」(以後「CL」と略します)の問題点を一言で言えば、
無理な列車設定ゆえに「中途半端」が過ぎる

のである。
主な内容としては、
a.単なる増発ではなく「中津川快速」を振り替えてしまったこと。
b.利用にあたって乗車整理券が必要なうえに、その料金310円の効用が薄いこと。
c.利用者を無視した乗車整理券の販売方法の問題。
d.列車を利用するうえで、様々なところで乗客が不安に陥いりやすいこと。
e.JR東海が利用者の心理的影響をまったく理解していないこと。
f.行楽客として想定可能なはずの2人以上のグループ利用をJR東海が想定していないこと。
g.利用者の多くが改善の恩恵を受けられないこと。
h.JR東海が目先の利益獲得のために、失っているものがあまりに大きいこと。

などがあげられる。この内容について、具体的に検証してみたい。

1. 地元が求めていた列車ではない
岐阜県東濃地方の利用者が求めていた列車は、混雑緩和(乗客の遠近分離)のために停車駅を減らして スピードアップした列車であり、かつ乗車券のみで乗車可能で、早朝深夜を除き運行する列車であろう。 「CL」は名古屋〜多治見間での停車駅削減、スピードアップを実現し、地元の需要に応えたが、データイ ム限定の運行でしかも乗車整理券(310円)を必要とする(名古屋〜多治見間利用の場合)有料列車であ ることは、地元の要望に反したものである。

2.「中津川快速」の振り替え
「CL」を回避する乗客や岐阜見東濃地方の利用者にとって最大の問題点は、データイムにおいて従来1時間に2本あった「中津川快速」 のうち1本を「CL」に振り替えてしまったことである。「CL」登場によって、データイムに 乗車券のみで名古屋〜岐阜県東濃地方を乗換なしで利用できる列車本数が、土岐市・瑞浪の両駅で33%減、 釜戸〜中津川の各駅では50%減という前例の無い大幅減少となった。土岐市〜中津川の各駅で利用者数が 大幅に減少していたということも無かったのに、ここまで露骨なダイヤ編成をしてしまったのだから、苦 情が出ても仕方ない。既存の「中津川快速」2本に加え、「CL」1本が加わるのなら、今回のような 大問題にならず、むしろ賞賛の声が聞かれたかもしれない。

3.東濃地区での中途半端な運転
「CL」が「中津川快速」の振り替えによる弊害として、名古屋〜多治見では「中津川快速」を上回る時間 短縮を達成したものの、多治見〜中津川間は各駅停車にしてしまったため、同区間では時間短縮がほとん どできなかった事があげられる。そのため、「CL」のメインターゲットとなるはずだった、東濃地方の利 用客は時間短縮効果の少ない「CL」を敬遠するようになった。「CL」では多治見〜中津川間で極端に利用 者数が少ない釜戸・武並・美乃坂本の3駅は通過させてもよかったのだが、そうするとデータイムの列車 本数が半減してしまい、地域に深刻な影響を及ぼす可能性が出てくる。そこで通過駅へのフォローとして 新たに各駅列車を設定させても、それに見合う利用客数が期待できないと判断したのであろうか。

確かに「CL」は、これまでに無い新しいタイプの列車であって、JR東海も利用客の予測も難しい列車であ っただろうが、JRの消極的な姿勢がたたって、本来発揮すべき特徴(スピード)を十分に発揮できなくなっ たため、結果的にセントラルライナーの魅力をJR自身が自ら殺してしまったことは非常に残念なことであ る。

4.乗車整理券購入者の心理的影響
乗車整理券を購入して利用する乗客にとって、最大の問題点は310円の効用の薄さと 乗車整理券を購入した乗客までもが不安に陥ることである。 下り(中津川行き)「CL」は、名古屋〜多治見は全車指定席であるが、多治見からは全車自由席とまった く趣を異にする。そのため、名古屋・金山・千種のいずれかの駅から、静かな空間と快適性を求めて310円 の投資をし乗車したはずが、多治見駅に到着するとこの先が全車自由席区間になるため多数の乗客が乗り 込んでくる。そのため、それまでの車内環境が崩れると共に快適性が失われる可能性が高く、投資額310円 の効用喪失になりかねない。

また、上り(名古屋行き)「CL」では多治見〜中津川が全車自由席のため、この区間内のいずれかの駅 から名古屋方面へ行く為、乗車整理券を購入し乗車したものの、自分に割り当てられた席に別の人が座っ ていることがある。この区間では「乗車整理券を持つ人には席を譲る」というルールがあるが、その相手 が高齢者・身障者・妊婦などであったら、追い出しを躊躇しかねない。そして、仮に席を譲ってもらった とはいえど、座席が生暖かったり、ゴミが散乱していては追加料金の価値はなくなり、乗車整理券購入者 にとっては不快であろう。土岐市駅利用の知人の話によると、実際、夕方の「CL」多治見〜中津川では 高校生らによって車内が騒がしくなったり、菓子類のゴミが車内に散乱することがあるという。

5.自由席区間内利用者の心理的影響
上り(名古屋行き)「CL」の多治見〜中津川の全車自由席区間内利用者にとって、最も深刻な問題は座 席の追い出し問題である。全車自由席とはいえど、「乗車整理券を持つ人には席を譲る」というルールが あるため、常に追い出される可能性を抱いて乗車しなければならない。この利用者も 正当な運賃を支払い、JRが公認している正当な方法で乗車しているのに、遠慮して乗車しなければなら ない。これは理不尽なことである。

この問題の対策として、全車自由席区間(多治見〜中津川)では乗車整理券を持つ人が乗車しない(つ まり追い出されない)はずである多治見・高蔵寺割当分座席と、始発駅・中津川発車時に確定する「名古 屋・飯田ライナー&バス回数券」利用者枠の空席へ誘導すればよいのだが、そういう案内放送や車掌 の誘導を受けたこともなければ、そういう報告もまったくない。

本当はそこまでして、上り「CL」に乗車する必要はないのだが、土岐市〜中津川では33〜50%の大幅な 本数削減によって、「仕方なく乗っている」「乗らざるを得ない」という乗客が相当数発生してしまったので ある。利用者を旅客ではなく貨物のような扱いで「乗せてやっている」という態度が感じられる。乗客を不安 にさせたり、理不尽な思いをさせることは、公共性の高い鉄道事業者のサービスとしてはかなり強いマイナス要素であろう。

【補足】
2001年2月14日、中津川駅にて同駅15時08分発の「CL」14号に乗車したところ、この列車の車掌さんが発車 前に乗車券のみで中津川〜多治見間を利用する乗客に対して「1号車の空いている座席をご利用ください」 と案内放送をしていた。1号車は全車自由席区間の終点である多治見駅からの利用者が座るはずの座席が 確保されており、ここに座れば中津川〜多治見間を乗車券だけで利用する乗客が「追い出し」被害を回避 できる。そこで車掌さんの判断を評価したかったが、乗客がどの座席に座るのか確定していないのに、発 車前にそれをしては、1号車内で乗車整理券を購入した乗客と乗車券だけで利用する乗客が混乗し、混乱 するだけである。また、次の美乃坂本駅では座席についての案内放送はなかった。そして、瑞浪駅や土岐 市駅では座席が空いていても座らずに、ドア付近に立つ乗客が多いことに気づいた。彼らは正当な運賃を 支払っているのに乗客としての権利が行使できないでいる。多治見に近づくにつれて、空席に座っても追 い出されないことが確定している座席数は増えていくのだから、面倒でも中津川〜多治見間の各駅で乗車 券だけで利用する乗客に対して案内放送をすべきである。もう少し、中津川〜多治見間を乗車券だけで利 用する乗客への配慮が必要であると改めて感じた。

6.乗車整理券の販売方法
「CL」は計画的に利用することが難しい列車である。それは「CL」の乗車整理券は事前購入ができず、「CL」 の発車20分前からしか購入することができないシステムだからである。しかも、乗車整理券販売機は改札を くぐった先にあるからややこしい。したがって、確実に購入する為には早めに駅へ向かわねばならず、乗車 において時間的制約を受ける。

また、下り(中津川行)「CL」の利用が期待できるはずの高蔵寺駅では、乗車整理券が発売されていな い。乗車券のみで「CL」に乗り、車掌さんから乗車整理券を購入すればよいが、車掌から購入した乗車整 理券には座席保障が無く、自分の座席は下車駅まで確保することができるのかわからない。利用者に不安 を与えるものである。

7.座席の指定ができない
「CL」の乗車整理券は、乗車整理券券売機のみで発売するため、利用者からの座席についての要望は まったく通らず、券売機が勝手に座席を割り当てる。そのため、3人以上のグループで向かい合って 座りたい場合、前後の座席の人に座席の交換交渉をする必要がある。また、座席の指定は一方的に詰め込 むだけであるため、同じ「CL」車内では、ある部分では全席埋まっているものの、別の部分では空席がで きているケースがある。

【補足】
JR東海は2001年2月13日から座席指定制度を変更し、各列車の「調整席」を使いグループで利用する場合で も隣同士(又は向かい合って)で座席を利用することができるようにした。しかし、それは乗車 後、車掌に希望を申し出た上で、調整席が空いている場合に限るという条件があるため、「CL」 乗車前に希望が叶うかはわからないというのは相変わらずであり、利用者に不安を与えているようでは、 とても改善という領域には達しない。

8.乗車整理券の発売枚数割り当てについて
「CL」の乗車整理券の販売枚数は、停車駅に決まった数を割り当てられており、その数は固定されている。 これは利用状況を考慮したものとみられる。 しかし、乗車整理券の割当数を超える需要があった時はどう するのだろうか。これを下り「CL」を例に考えたい。
中央西線名古屋市内各駅は分散ターミナルとなっている。そのため、中央西線利用者が最も多いのは名 古屋駅ではなく、名古屋の中心・栄に近い千種駅である。しかし、「CL」の乗車整理券発売割り当ては、JR セントラルタワーズ及びジェイアール名古屋高島屋開業後、名古屋駅に偏った比率になっている。 また、 仮に名古屋・金山で発車時に乗車整理券が半分売れ残った場合にも、千種駅到着時までにその売れ残り分 が振り分けられることはない。そのため千種駅で乗車整理券が売り切れで乗車整理券を買えなかった人が、 全車指定席でかつ満席のはずなのに空席のある「CL」を見送るケースがある。「なぜ空いた座席があるの に自分は乗車できないのか」という疑問を感じるのではないだろうか。
このようなケースが「CL」では頻発している為、千種駅では乗車整理券を買わずに飛び込み乗車するケー スが増えている。

9.座席数の少なさ
これは「CL」の根本的欠陥である。中央扉があるため1両当り48席しかない。せめて締切となる中央扉付 近だけにでも補助席を設け、飛び込み乗車客に割り当てる程度のサービスは必要ではなかったのだろうか。 各停車駅へ割り当てる必要があるため、その数も少なくなりがちで3両編成の場合、上り(名古屋行)では武 並では4枚、土岐市では16枚、高蔵寺では8枚というケースが見られる。武並や高蔵寺で突発的な需要があ り、売り切れてしまった場合はどうするのだろうか。

10.救済列車が救済をしていない
「CL」を回避して名古屋市内〜岐阜県東濃地方(土岐市以北)を移動する際には、「中津川快速」と名古屋 〜瑞浪の普通列車(各駅停車)を利用することとなる。JR側も『(「CL」の)整理券代を払いたくない人は多 治見で乗り換えになるが、すぐに続行便が来る。』(中日新聞2000年2月15日朝刊「JR東海・東海鉄道事業 本部佐藤慎一部長に聞く」)と説明しており、この列車が「CL」回避客への救済列車としての位置付けを しているようだ。しかし「中津川快速」は鶴舞停車実施で更にスピードが落ちているうえに、上りでは多治見 ・高蔵寺で特急「しなの」に追い越されるものがあり、全般的に以前より所要時間が5分程度余分にかかっ ている。また、名古屋〜瑞浪の普通列車は各駅停車で遅いうえ、途中で優等列車回避の運転停車があり、 名古屋〜瑞浪では57分程度を要している。

【参考】土岐市駅・平日データイムにおける、
上り(名古屋行)時刻表の変遷
1993年3月改正1997年10月改正1999年12月改正2001年3月改正
10021135501121 46 5914394301224756
1104 25355930 59103943093943
120825395510 29 59093943093943
1310254011 29 5909394310*293943
140210254210 27 55093943093943
150510 234605 2546053943053943
16001825385303 28 4105 27394305#27 *28
39#43 *44
【補足】青字=快速、緑字=セントラルライナー、黒字=普通列車
#=土曜・休日運休、*=土曜・休日運転、行き先はすべて名古屋行。
(出典:『JTB時刻表』)

前回(1997年10月)のダイヤ改正では、データイムの 土岐市・瑞浪の両駅では列車本数は、1時間あたり4 本から3本に削減されたものの、その代償として、ほ とんどの列車が快速になったため、かえって便利にな った。しかし、今回(1999年12月4日)ダイヤ改正で「C L」登場後、それまでの利便性は失われた上にその代 償はなく、列車本数は実質1時間あたり2本となり不便 になった。

また、多治見駅で上り「CL」から多治見発 の列車に乗り換える際には、跨線橋を渡る必要があ り、高齢者・身障者・妊婦などには酷である。また、仮 に移動できたとはいえ、座席が確保できるとは限らな い。

更にJRが主張する「CL」回避のための続行便は 各駅停車で遅いうえに、途中の新守山駅で特急に追 い越されるなどサービスの低さが目立つため、本来 の目的である救済の役割を果たしていないのであ る。したがって、瑞浪発着の続行便(左表でいうと、1999年12月以降のダイヤにおける黒字・毎時43分発の 普通列車)は、瑞浪〜高蔵寺では空気輸送に近い状態であり、逆に1時間1本になってしまった 「中津川快速」に乗客が集中するようになった。そのため、「中津川快速」は名古屋地区のデー タイムでは異例の6両編成でも、高乗車率をキープしている。

11.乗車整理券券売機について
この券売機にはボタンがなく、310円以上投入すると自動的に乗車整理券が発行されるという仕掛けであ る。そのため1度に1枚しか購入できない。2人以上複数で利用する際には同じ動作を何度も繰り返す必 要がある。これは非常に効率の悪いものである。

12.「名古屋・飯田ライナー&バス回数券」関連の問題。
2000年2月より、「名古屋・飯田ライナー&バス回数券」というのが発売された。これは「CL」と中津川 と長野県の飯田を結ぶ高速バス「いいなかライナー」を組み合わせた回数券である。この利用において、 「いいなかライナー」は事前に座席の予約が必要となっているものの、「CL」は座席の事前予約ができな いので、座席の確保は保障されていない。「CL」と「いいなかライナー」を比較すると、「CL」の需要・ 利用実績の方が多い。事前予約制度の確立が急務だったのは、むしろ「CL」の方だったのではないか。 また、JR東海のホームページによると、この回数券の利用者は上り・下り共に「2号車の1番〜3番の 席をご利用ください」とある。つまり、「CL」のおけるこの回数券利用者の枠は12席用意されている。し かし、13人以上の利用があった時はどうするのだろうか。

13.列車の性格が中途半端なため、増収に貢献できない。
「CL」は既存の快速列車を振り替えた経緯から、名古屋〜多治見間でのハイグレード列車と多治見〜中 津川間でのローカル輸送を両立させる必要があったため、列車の性格が中途半端なものになり、車内設備 も既存の快速列車で使われる転換クロスシート車両と大差なく、こちらも中途半端であった。「CL」 は突出した魅力が乏しいうえに乗客の少ない昼間中心の運転であるため、早めのホームライナーの役割を 持ちあわせた、夕方の名古屋発下り「CL」19号・21号以外で、固定客やリピーター客を大量に獲得する のは難しいと思われる。また、上りでは中津川行き快速と終点で「CL」に乗り継ぎできる多治見行き列車、 下りでは中津川発の快速をそれぞれ利用し、「CL」を回避しようとするの乗客動向も見られる。「CL」が 在来線の増収に貢献しているかは疑問である。JRは「CL」について、これまで何度も「好評」と発表していた が、名古屋駅のJR高島屋フィーバーも去り、セントラルタワーズの活況も開業当時ほどではなくなるはず である。

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