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「セントラルライナー」乗車レポート

「セントラルライナー」(以後、「CL」と略します)は1999年12月に登場して以来、1度乗って見たかった列車 であった。名古屋駅や金山駅・千種駅でその姿を見送る機会は何度かあったが、乗車する機会はなかっ た。しかし、2000年8月25日、岐阜県の実家に行く際にその機会がようやく訪れた。今回乗車するのは、 名古屋駅16時30分発「CL」15号である。

16時10分頃に名古屋駅の10番ホームにたどり着くと、すでに 乗車整理券の発売が始まっていた。この列車には乗車券の 他に乗車整理券(310円)が必要なため、発車する名古屋駅の 10・11番ホーム上にある乗車整理券券売機で乗車整理券を 購入する。1000円札を投入すると勢いよくお釣りの690円が 出て、その左脇から青地に黒字で印刷された乗車整理券が 出てきた。

乗車整理券の大きさは自動券売機で購入する乗車券と同じ で、青地のものと乗車券と同じオレンジ地のものがメインであり、未確認ではあるが緑地のものもあるら しい。また、乗車整理券には磁気が入っておらず裏側は白色である。

この券売機には「2枚」「3枚」といった複数枚発行のボタンは無く、310円以上入れると自動的に乗車整 理券が発行される仕組みである。今回は1人で利用するので問題ないが、2人以上で利用する際には 同じ動作を何度も繰り返さねばならず不便である。

乗車整理券券売機の上には残席数が表示されている。20分前に発売が始まった時には80席と表示した。 乗車整理券の事前発売はないので、名古屋・金山・千種で座席の割り当てがなされている模様。この列 車は3両編成のため、座席は144席程度であるため、名古屋駅の割り当て数はかなり多めにとってある ことがわかる。

16時13分、お目当ての「CL」が到着した。車両は「CL」専用の313系8500(8000)番代である。中津川を15 時08分に出た「CL」14号が折り返し「CL」15号となる。列車が到着したので、飲み物と夕刊スポーツ紙を 購入した上で乗車する。私が購入した乗車整理券には「1号車3番」と座席が指定されている。進行方向 (中津川方)から1号車・2号車・3号車となっているため、先頭車両に乗車することとなる。「3番」のため 3列目かと思いきや、先頭車両には1番と2番の座席が無いためドア脇の最前列に座ることとなった。

窓側・通路側の選択は自由とのことであったが、先客がいたので進行方向に向かって左側でかつ通路側 の3B席に座る。最前列の特権で前景を期待したが、仕切板に遮られ右側しか見えず、左側の車窓も窓 が左後方半分程度にしかないため見にくい。コンサートなどでは「よい席は御早めに」などというが、 発売直後の乗車整理券購入は遠慮したほうがいいのかもしれない。乗車整理券販売機上の残席表示は、 発車1分前の発売終了時には34席であった。発売開始時には80席だったので、名古屋駅の乗車数は46 人であり、割り当て座席数に占める乗車率は57.5%である。

16時30分、VVVF独特の音を出しながら定刻通り発車。日本語と英語の自動放送の後、車掌さんのアナ ウンスと続く。東海道線や名鉄線とへ並走しながら、16時34分金山駅到着。ドアから顔を出し乗車人数を 確認するとここで7〜8人乗車。名古屋都心部の外周を回りながら鶴舞駅を通過し、16時38分千種駅到 着。ここで14〜15人乗車した。

JRのルールでは「CL」全車指定席区間で乗車できるのはこの駅までなので、ここで全車指定席区間の乗 車人数が確定する。この列車の乗車数は70人弱であり、乗車率は約47%である。JR東海はこの列車の利用状 況乗車率について、「定員に対して終日平均で約六割の乗客があり、非常に好評だ。」(中日新聞2000年2 月15日朝刊)とコメントしていたが、今回乗車した列車はその平均をやや下回っている。「CL」には17号 や19号のように、早めの「ホームライナー」としての役割を担っているため立席が出るものもあれば、9号 や11号のように利用者が1ケタということも珍しくない列車もあり、時間によって利用者数が大きく異なる。

千種駅到着時に1号車先頭に車掌さんが立ち、ドアが閉まると同時に車内改札が始まる。しかし、目視で 乗車整理券の有無を確認する程度で、車内改札印などは省略される。金山・千種両駅で飛び込み乗車した 客がいたようで、車掌さんから乗車整理券を購入していた。千種駅から高蔵寺駅までの各駅には停車しな い。大曽根駅を通過し、右手にナゴヤドームが見える頃には車内改札が終了した模様。庄内川を渡りやや 急なカーブを曲がり勝川駅を通過した後で車内を見物してみる。1号車の前半分はぎっしりと座っている にもかかわらず、後の車両ほど空席が目立ち、3号車の乗客数は1ケタであった。また、「CL」では車掌 さんが2人乗務していることがわかった。春日井駅を過ぎると左に神領車両区が見える。このあたりから 田畑が広がり始める。車内は静寂であるが、ポイントやレールの繋ぎ目を通過する時の音が気になった。 「CL」の車両は313系車両をグレードアップさせた車両と聞くが、遮音効果は他の313系車両と変わり無い ように思われる。

16時48分高蔵寺駅到着。ここで7人が下車し2人乗車した。名古屋市内各駅から高蔵寺駅までは15分程度 の利用(千種駅から乗車の場合は10分)であり、運賃に匹敵するほどの乗車整理券料金を支払って利用す る人がいたのは驚いた。特急列車のような位置付けでの利用形態があるようだ。さすが、中央西線名古屋 口有数の乗降客数を誇る駅だけのことはある。高蔵寺から乗車したうちの1人は、「CL」の乗車整理券シ ステムを知らなかったようで、310円を徴収される際に不満そうな表情をしていた。未だに知られていな いのだろうか。高蔵寺あたりでは上下1時間当り7・8本の列車運行があり、そのうちこの列車だけが特 別なシステムであることから、「普通・快速列車と同じだろう」という誤乗もあるのだろう。この駅を過 ぎると、定光寺・古虎渓の渓谷が見え、トンネルもいくつか登場する。車窓は都市近郊路線とは思えない 劇的な変化である。トンネル内の遮音効果はまあまあ。ただ、他の313系車両との差はあまり無いのでは ないかと思われる。

16時56分多治見駅到着。15人ほど下車し、多数の乗車があった。ここからは全車自由席となるからだ。ま た、この先は列車本数が大幅に減少するので、自然と乗客数は大幅に増加するのだ。しかし、2人掛けシー トの空きが無くなる程度である。夕方だけあって高校生の乗車が多いがこの日はまだ夏休み中であり、2 学期が始まればこれを遥かに上回る乗車があると見られる。といっても、名古屋駅から保たれていた車内 の静寂さはここで失われる。1分停車で16時57分発車。この先は各駅停車であり、2〜3駅の短距離利用 が多い。

トンネルを2つ抜けると土岐の町並みが見えてきた。私の実家も見える。17時03分土岐市駅到着。乗車より 下車の方が圧倒的に多い。この先は乗客数が減る一方なのである。私の実家はこの駅が最寄り駅であるが、 今回はこの取材のため、このまま乗車し終点中津川まで向かう。多治見から先は各駅停車でかつ全車自由 席であるはずなのに、なぜか、車両中央の扉はこの区間でも締切られたままである。また、車内の電光表 示は「指定」 のままである。後者はまだしも前者は、乗客の利便性を阻害してはいないだろうか。

17時03分瑞浪駅到着。ここで初めて進行方向に向かって左側の扉が開く。ここまで来ると高校生以外の乗 降数は少なくなる。車内も閑散としてきた。次の釜戸・武並は、数人の乗降があるだけ。このあたりから 車窓の山の形が変わり、いよいよ山間部へ入ってきたことを知らせてくれる。17時23分恵那駅に到着。名 古屋行き「CL」と擦れ違う。

次の美乃坂本も数人の乗降。釜戸・武並・美乃坂本の3駅はこの自由席区間では極端に乗降客数が少ない ので、通過にしても良さそうでもあるが、従来の快速列車を「CL」に振り替えたため、列車の運用の関係 上(3駅に停車する列車が新たに必要になるため)、快速列車と共にこの3駅にも停車している。そのた め、多治見〜中津川間の時間短縮効果は小さい。

17時33分無事定刻通り、中津川駅に到着し63分の旅は終了した。車掌さんは乗車整理券を回収に来なかっ た。乗車整理券を持たない乗客がいるためであろう。乗車整理券には『着駅で係員にお渡しください』と 記載があった。駅改札近くには回収箱があり、そこに入れればいいようだが、特に強制力はないようで、 「記念に欲しい」と改札氏に言うと「どうぞ、お持ち帰りください。」とのことだった。

中津川駅から、長野県の飯田駅まで「いいなかライナー」という高速バスがある。これは、幻に終わった 国鉄中津川線(中津川〜飯田)を高速バスというかたちで実現させたものである。JRがこれとセットにし た回数乗車券を発売しているため、さらにバスに乗り換える人もいるそうだが、名古屋・名鉄バスセンタ ー〜飯田を直通する中央道高速バスと競合しているため、中津川での乗換を強いられる「いいなかライナ ー」は苦戦しているようだ。

「CL」にはやはり中途半端な点が多く、特別料金を徴収する列車としては、魅力がやや乏しいように感 じた。また、なぜ全席自由席区間で中央扉を使用しないのかなど、疑問な点も多数あった。そして、名 古屋市内〜高蔵寺といった近距離利用者の存在で、座席確保というシステムがある程度評価されて いることがわかり、この列車が今後の改善次第で、大化けの可能性もあると感じた。
今度、機会があれば「いいなかライナー」に1度試乗しようと決意して、土岐の実家へ向かった。

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