このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

北京郊外の雲助運転手

  北京の市内から南に2,30k位行ったところに大興市というところがあって、そこに暫く家を借りて滞在することになった。大興市は北京市の管轄の市であるので、北京市に付属している市である。衛星都市の一つではあるが、人口の点からも市といっても勿論大都市ではない。北京の田舎である。しかし北京に人口が集中するに従って、ここも北京のベットタウンとなり、多くの団地が建設されていた。当然北京市内に行く人は多いわけであるが、その交通手段はバスである。鉄道も通っていたがこれを利用するのは、日本と違ってかなり不便である。

  問題はこのバスなのであるが、公営のバスと私営のバスとがあり、公営の方は大型バスで、2元、私営の方は3元のマイクロバスであった。私営の方が本数が多くて、座れる可能性が高いのでこれを利用する人は多かった。
但しこのバスの運転は極めて乱暴で、同業者と競争したり、果ては先に行こうとする同業のバスを脅したりする。先を争って走るので、かなりのスピードを出す。渋滞中でも側道を使っての追い越など日常茶飯事である。勿論乗客に対しても、乱暴な言葉で話しているらしい。その言葉の調子は北京風に訛っていて、聞き取り難い。料金のことで乗客が文句を言うと、結構すごんだりする。

  運転手と車掌役が二人組になって営業しているのであるが、車掌役が大声を出して、呼び込みをする。暑い季節には、上半身裸で運転する者も現われる。まさに雲助のようである。
現在は開封への高速道路の工事が行われている側を走るので、窓からモウモウと埃が入り、車内も埃だらけになる。その工事の方法も、日本と違い利用者の都合などはあまり気にしないようである。北京から大興までの道は、まさに中国的混沌の見本のような所であった。

  態度の悪い私営バスではあるが、本数も多く、座席に座れる確率は高いので多くの人が利用する。雲助の様ではあっても、車掌は出来るだけ乗客が座れるようにしてくれるのである。またそうしないと、客が逃げてしまうからである。
知り合いの中国人は、私が大興市に帰るときに、大車と呼ぶ公営の大型バスを勧めてくれたり、私営でも雲助風ではない運転手のバスを探してくれたりした。毎日利用する人は車掌の顔を覚えていて、強暴そうでない人を択んで乗っている人もいた。しかし夜遅くなると公営バスは7時頃で無くなってしまうので、私営バスを利用せざるを得なかった。

  日本の昔の話に出てくる雲助と違って、悪事を働くわけではないが、私には雲助と言う言葉がぴったりの様に感じたのである。

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