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アジア地区米陸軍特殊活動隊 粟国・渡名喜両島で奉仕活動
琉球列島では依然として医療技術者の不足が、難問題の一つになっています。医師払底(現在約二三四〇名に医師一名の割合)の問題をいっそうむずかしくしているのは、訓練を受けた医療従事者の大部分が都市地区に集まり、多数の離島や辺地には医療専門家がほとんどいないことです。
医師不足の緩和に資するため、現在沖縄中部病院で看護婦、病院管理職員、医療技術者の訓練と並行して、新しい医師を養成するインターン研修計画が実施されています。この訓練は米民政府(出資者)との契約によりハワイ大学の監督下に行なわれていますが、ここ当分の間は、全琉球で必要な公衆衛生従事者総数のほんの一部を補充しうるにすぎないでしょう。
琉球政府厚生局および米民政府公衆衛生局の離島に対する定期的医療業務具体化策の一環として、アジア地区米陸軍特殊活動部隊(SAFAsia)は、これら両当局と協議の上作成した予定表に従い、沖縄周辺の離島や八重山地区の島々に定期的に公衆衛生班を派遣しています。北部沖縄や宮古群島の島々には、琉球政府医療班が同様の目的をもって派遣されています。
米陸軍特殊部隊公衆衛生班は数年前に奉仕活動を始め、琉球の児童生徒からトラコーマを一掃する五か年計画にも参加しました。トラコーマ罹病率が五〇パーセントを越える離島も幾つかあることがわかってから、公衆衛生班はsらに大きな役割を持つようになりました。つまり、班員に公衆衛生技術者や工学技術者をも加え、患者発見という仕事だけでなく、トラコーマその他の伝染病の原因になっている環境の改善を援助することになったのです。その結果、訪問先の島々で医療班員が患者の治療に当たっているあいだ、他の熟練技術者たちは水源の衛生状態や水質、廃物処理法の適否、その他病気予防に関連した事項の調査を行なうことができるようになりました。公衆衛生班には歯科医とその助手も所属し、定期訪問の際に歯の緊急治療を行ないます。
米陸軍特殊部隊公衆衛生班は昨年後期に二週間にわたって粟国・渡名喜両島(沖縄群島)を訪れ、典型的な奉仕活動を実施しました。
粟国島に無事到着
粟国島の仲里剛村長や部落会員たちとの事前の連絡どおりに、有資格技術者三二名と医薬品、その他の物資を大量に積んだアジア地区陸軍特殊活動部隊の上陸用舟艇が字浜に近い島の港にいかりをおろしました。
上陸するとすぐ、陸軍軍医アルビン・ニューマン大尉と部下の医療員一〇名は忙しい検診期間のための準備をしました。粟国駐在の琉球政府の公衆衛生看護婦玉城ケイ子さんが手ぎわよくそのお手伝いをしました。
最初の夜は無料で映画を見せ、見に来た人から一滴ずつ採血してフィラリア病の調査をしました。粟国での数日間に四二五名がフィラリア病の検査を受けましたが、この病気は見つかりませんでした。診療班の人々は、これらの検査を受けた島人たちの率先的協力を喜びました。
ふつかめは、字浜で無料の一般検診が行なわれ、一〇八人が検診を受けました。ふつか後字東でおとなのための診察が行なわれ、二九二人の患者が発見されました。約七五人の疑似トラコーマ患者が見つかり、患者は薬をもらいその使用法を習いました。また重症の心臓病または血液循環障害患者一四名、皮膚ガンの患者一名、糖尿病患者一名、肺結核患者一名が発見されました。
粟国島の水を調べる公衆衛生班技師。粟国・渡名喜両島の水質はきわめて良く、
簡単な塩素殺菌で安全に飲めることがわかった。粟国での第三日は、中学生一〇六名と小学生三五五名がトラコーマの検診を受けました。その結果は健康な者二七六名、疑いのある者九〇名、初期の患者五六名、軽度の患者二七名、重症の人一一名、失明した人一名でした。患者たちには治療用の薬が無料で与えられました。
陸軍の歯科医三名と歯科技師一名にとって、粟国滞在の一日と渡名喜での一日は多忙をきわめたものでした。合計一一三名の歯科患者が治療を受け、二一四本のむし歯が抜き取られました。時間的制約でもっと徹底した歯科治療はできませんでした。
一方、四人の予防医療専門家で構成する環境衛生班と三人の政府職員とひとりの技術者で構成する民事班とが、問題地区を見つけるために粟国島内各地を回りました。虫害やねずみなどの害を少なくするために専門家たちは、台所の廃物を燃やすことと殺虫剤を噴霧器で重点散布することを勧め、また、台所の廃物やその他のごみを衛生的に処理できるように、簡単な焼却炉を作りました。
陸軍の獣医フィリップ・デボク大尉は粟国の家畜類には伝染病の病気は比較的少ないが、内蔵寄生虫を持っているものが多いことを発見しました。これに対する薬品も処方されました。
第五日、アジア地区陸軍特殊活動部隊員は、渡名喜島訪問を控えて衣料品を補給するために、船で沖縄に戻りました。
医療用具や医薬品を補給する必要のあったことは、分遣隊が粟国と渡名喜両島の短期間訪問の際に使った数量を調査してみるとはっきりします。二週間の間に使われた医薬品は次のとおりです。顕微鏡用スライド(一〇〇〇枚)、小形スポンジ(五〇〇〇個)、中形スポンジ(五〇〇〇個)、標本容器(二〇〇〇個)、木製舌圧子(五〇〇本)、綿棒(五〇〇〇本)、カバーグラス(一〇〇〇枚)、メスの替え刃(二五組)、無菌の手術用具(一〇組)、無菌手袋(二五)、アセトン(五〇〇cc)、フォルマリン(一〇〇cc)、エチル・エーテル(五〇cc)、試験管(一〇〇本)、可処分灌腸器(一〇〇個)。また医薬品は次のとおりです。眼科用軟膏(五〇〇チューブ)、アスピリン(五〇〇〇錠)、ロバクシン(一〇〇〇錠)、セキ薬(一〇〇びん)、タムシ外用水薬(一〇〇びん)、セルサン・シャンプー(三六びん)、石けん液(二〇〇〇cc)、過酸化水素(二〇〇〇cc)、フェノバルビタール(一〇〇〇錠)、クロロチアサイド(一〇〇〇錠)、ビタミン(一万錠)、注射用ペニシリン(七二〇〇万単位)、服用ペニシリン(二〇〇錠)、ダーボン複合剤(五〇〇カプセル)、バシトラシン軟膏(二〇〇チューブ)、コーチスポリム軟膏(一〇〇チューブ)、テトラサイクリン(二〇〇錠)、ゼルスシル(一〇〇〇錠)、ピペラジン・クエン酸塩(一〇〇〇cc)、ヘトラザン(五〇〇錠)、テトラクロロシリン(二〇〇カプセル)、イア・ドロップ(一二びん)、ハイドロコーチゾン・クリーム(一〇〇びん)、ガントリジン(五〇〇錠)、ジギタリス(二〇〇錠)、デカドロン注射液(五〇cc)、セレモネックス・イア・ドロップ(五〇びん)。
渡名喜島の上陸の問題
アジア米陸軍特殊活動部隊の上陸用舟艇を渡名喜島に着けることは、粟国島で水の深い桟橋に楽に横づけしたように簡単ではありませんでした。低潮時に入港した上陸用舟艇は、渡名喜島の海岸から数メートル先で止まりました。島の人たちが出て来て、進んで特殊活動部隊の島への荷揚げを助けました。
渡名喜島の一一六八名の住民は一つの村に住んでいますので、九原平三郎村長は特殊活動部隊の医療班が村の新しい診療所一か所で診察することを提言しました。
渡名喜島の1100名以上の住民は、島でいちばん高い丘のふもとにあるこの部落だけに住んでいる。渡名喜での二日目のおとなの診察日に、総計二二五名の患者が受診しました。四日目のおとなの診察で、さらに一五五名の患者が診療を受けました。渡名喜島の琉球政府公衆衛生看護婦の大城ヨシ子さんと、米民政府公衆衛生看護婦の島袋マサ子さんはよく手伝ってくれました。
非常に重い病人を診察するため、数軒の家に往診が行なわれました。こうしたさまざまな診療で循環系統の重症三件、ガン二件、結核二件、卒中三件のほかに一五件のフィラリア病が発見されました。
三日目に、中学生一五〇名と渡名喜小学校児童二二五名にトラコーマの検査が行なわれました。渡名喜島の子供の約三九パーセントはトラコーマ感染の形跡があることが見つかりましたが、この病気による視力障害は一件もありませんでした。薬とその使用書が無料で配られました。
渡名喜島全児童生徒のトラコーマ検診終了後アルビン・ニューマン軍医大尉(左から3人目)は
島の学校の先生たちと話し合い、トラコーマの治療法を説明した。獣医のバディ・レイノルズ少佐は、渡名喜島の家畜はわりあい伝染病にかかっていないが、寄生虫を持った家畜が多いことを見つけました。一部の豚にサナダムシがいることは、同島の家畜飼育者が家畜の手当てに駆虫剤と抗生物質の薬剤を継続的に用いる必要があることを示しています。
渡名喜島の農家で特製の豚の寄生虫駆除剤の飲ませ方を説明しているバディ・レイノルズ獣医大佐。環境および技術班は、渡名喜の給水がきわめて良好で、安全に飲めるようにするには簡単な塩素処理をするだけでよいと認めました。渡名喜島は中央給水装置を作るにしては地下水が少なすぎるので、給水は個々の井戸にたよっています。
虫とネズミの害を防ぐため、ごみの焼却装置が造られました。同班は、燃えないくずは少なくとも週一回集めて、安全に処分するため沖に運んで棄てるよう勧告しました。
企画将校ロバート・L・ズィクマン大尉はこう語りました。
「粟国、渡名喜両島民の暖かい接待とわれわれの努力に対する深い感謝を得てわれわれの訪問は特に有意義であったと思います。班の医師たちは、多くの場合初期の段階で病気を発見することができたので、あとでこじらせないようにするため早めに治療することが可能でした。もし班の勧告した環境衛生状態の改善策がよく守られるなら、将来病気と寄生虫は驚くほど減ることでしょう。住民がみずからよりよい、より健康な生活を送ることができるようにするために、最近の進歩した予防医学と公衆衛生について彼らに知らせることは、われわれの使命です。」
アジア米陸軍特殊活動部隊が今年中に沖縄群島と八重山群島のあちこちの離島へ同じような訪問をする計画が、いま立てられています。琉球政府のチームが一九六八年中に沖縄本島北部のかけ離れた地域と、宮古群島の小さな島々へ同じような訪問をすることも計画されています。
粟国島での検診で婦人患者の血圧測定の前に脈はくを調べる米軍特殊活動隊の医療技師。●おまけ
同じ時期、文化大革命の中国で、僻地の農村で「人民の為に奉仕する」医療活動を行っていた「裸足の医者」。
やはりプロパガンダ用の写真って、構図が似てますね。
でもアメリカの宣伝写真は「真剣に任務を遂行する兵士」をアピールしてますが、
中国の宣伝写真は「人民に明るく接して親しまれている」を強調してますね。
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