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四川省の山奥へ、SL軽便鉄道に乗りに行く
2004年7月 芭石鉄路之1日本でもあちこちの観光地でSL列車が走ってますが、なんかわざとらしくて乗りに行く気がしません。
蒸気機関車なんか、中国へ行けばウジャウジャ走ってるし、広州や上海のような大都会の近くでもモコモコ煙を吐いて列車を引いてたので、乗りたければいつでも乗れるとタカをくくっていたのですが、中国も急激に近代化が進んでいるようで、この10年足らずの間にあれよあれよという間に蒸気機関車は姿を消して、中国国鉄ではSLの旅客列車はなくなってしまったそうです。
そこで慌てて四川省の山奥に残っているという、蒸気機関車が引く軽便鉄道に乗りに行きました。
その軽便鉄道は芭石鉄路と言います。四川省の省都・成都市から高速バスで3時間の楽山市へ行き、そこからさらにミニバスで1時間ほど行った石渓という町の外れの山の麓から出ていて、他の鉄道とは接続していません。石渓で一泊しましたが、この町は「兎の頭の串焼き」が名物料理なようで、夜中に食事をしようと町へ出たら、ウサギの頭を売る店ばかりで、困ってしまいました。。。。
それはともかく、こんな渡し舟に乗って軽便鉄道の始発駅に向かいます。
川岸から石段を登ると線路がありました。軽便鉄道だけあって、レールとレールの幅が狭いですね。中国の国鉄の半分くらいしかありません。たぶん762mmでしょう。
あれ、架線が張ってある・・・電車も走ってるのかしら?
電車は走っていませんでしたが、電気機関車が頻繁に行き交っていて、石炭を運んでいます。芭石鉄路は炭鉱の鉄道なんですね。それにしても、ホントに蒸気機関車は来るのか・・・?
ホームの端で売店が店開きしました・・・ということは客を乗せる列車がそろそろやって来るということでしょう。
駅舎の扉も開きました。待合室には列車を待つ人がチラホラいます。
駅舎の中にはあれこれと掲示があります。この駅は石渓駅じゃなくて、その名も終点站(終着駅)という名前の駅みたいですね。反対側の終点は起点站(始発駅)という名の駅らしい。
全線乗ると1時間ちょっとかかるようですが、肝心な発車時刻が書いていない・・・。それにしても、列車のイラストがカワイイ!
営業規則だの布告だのあれこれ細かい字でびっしり書き込んである掲示の隅に、発車時刻が載っていました。1日4往復で、終着駅からの列車は9時30分発があるはずなのに、10時を過ぎても列車が出る気配はありませんが・・・。
「このたび福利乗車(炭鉱の従業員や家族の無料乗車制度)を廃止して、一律有賃乗車とする」「石渓の住民以外からは特別運賃を徴収することにした」などと書かれています。なんでも、炭鉱が閉山になるとかでこの軽便鉄道も廃止する予定でしたが、観光列車として売り出すために、運行をしばらく継続することにしたようです。その代わり、独立採算が取れるように、運賃を大幅に値上げしたとか。大幅に値上げといっても、1時間乗って地元民以外の「特別運賃」で14元(約200円)ですが、炭鉱で働いている人は、職はなくなるわ列車は有料になるわで大変でしょうね。
待合室の片隅に共産党の宣伝用黒板がありました。なんでも党的生日(共産党のお誕生日)だそうで・・・。二昔前の中国では、いたることろにこんな宣伝掲示板がありましたが、最近は都会ではさすがにあまり見なくなりました。しげしげと眺めていたら駅員がやって来て「俺が書いたんだよ」だって。色チョークでイラストまで書いて、ご苦労様なことです。
やっと蒸気機関車を先頭にした旅客列車がやって来ました。ホームの駅名票には、確かに終点站と書いてありますね。
客車からは思ったよりたくさんの人が降りてきました。なんでもこの鉄道の沿線には車が通れる道路がなくて、この軽便鉄道は沿線住民にとって唯一の足になっているそうです。
それにしてもボロい機関車なこと・・・。蒸気や熱湯を飛び散らせながらシュウシュウ音を立ててます。
ボロと思われて機嫌を悪くしたかのように、機関車だけどこかへ行ってしまいました。
水と石炭を補給しに行ったようです。喉が乾いたり腹が減っては山道を走れないですからね・・・なんか蒸気機関車って人間みたい。
駅の掲示板に出ていた発車時刻から遅れること1時間、切符の販売が始まりました。たぶん運転時刻が改正されたのに、掲示を直していなかったのでしょう。
のんびりとウロウロしてたら、他の乗客に「切符を早く買わないと売り切れちゃうよ」と言われました。切符に売り切れってあるの?理由はあとでわかります。
改めて客車を見れば、機関車以上にボロです。工作車というのが1両連結されていましたが、工作員が乗る客車?まぁ、日本語に正しく翻訳すれば「作業車」という意味になりますが。
車内はこんな感じです。乗り心地が楽しみですね・・・。柵のある一角は家畜(ブタとか)の優先席でしょう。
ひょっとしてこれは一等車? じゃなくて、ソファーは積荷のようでした。
意外にもこの軽便鉄道は全車指定席で、切符には車両番号と座席番号が記入されていました。「早く買わないと売り切れる」というのは、指定席だったからなんですね。
私が乗車することになった12号車には、屋根の上に怪しい台がありました。何だろう、コレ?
中国の列車は1両ごとに服務員(乗務員)がいて、駅に到着するたびにドアの前に立ち、乗ろうとする人の切符をチェックしていますが、芭石鉄路でも1両に1人ずつ服務員が乗っていました。1両にたかだか15人くらいの客しか乗せられないのに、客車の数だけ乗務員を載せるのは、とっても非効率に思えますが、実は切符のチェックよりももっと大事な役目がありました(Part2で明らかになります)。
私が乗る予定だった12号車の服務員(白い帽子の人)は、客車に乗り込むと「この車は危険です!別の車に取り替えるので、全員ただちに降りてください」と言い出しました。見たところ、他の客車だって同じようにボロなのに、何が一体危険なんだかよくわかりませんが、絶対的権限を持つ服務員(あえて日本語に直訳すれば奉仕員ですが)に降りろと命じられたので、仕方がなく降ります。12号車は別の客車に取り替えられて、発車はますます遅れます。
さ〜て、いよいよ「始発駅」を目指して出発進行!機関車はバックで進みます。
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