このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

沖縄の旅のつれづれ −与那国島−


久部良集落にて
 以前バイト先で、元税関のえらい人だったおじさん(E氏としておきます)に聞いた話です。

 与那国島には沖縄地区税関の監視署があって、職員がたったひとりで勤務しているんだそうです。ヘリコプターに乗って視察に行ったE氏、その職員に「何か要望はあるかね」と訊いたところ、「こちらではTVのチャンネルが2つしかないんで、夜がツライです」という返事(ついこのあいだまで、八重山地方には民放の電波が届かなかったのです)。それはかわいそうに、とE氏は衛星放送受信の手配をさせました。

 しばらくして、「その後どうかね」と電話したところ、その職員はこう返事したそうです。

「はい、島の人がTVを見にくるようになって、交流の機会が増えました」

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 数年前、日本の西と南の果てをきわめる旅行をしました。最西端与那国島で、友人とふたりで道路の左端を歩いていると、時おり後ろから車が追い抜いていきます。そのうち私たちは不思議なことに気がつきました。後ろから来た車はみんな、センターラインを越えて反対側の車線に入り、私たちを追い抜いてから元の車線に戻るのです。私たちが道の真ん中を歩いていたわけじゃありません。都会育ちの身についた習性で、道路の端に引かれた歩道の印の白線からはみ出さないように歩いていたのに、なんです。

 その後私たちは与那国を後にし、波照間島へ渡りました。島内観光のマイクロバスは、島内一周道路をのんびりと走る……ふと気がつくと、バスはなんとセンターラインをまたいで走っていました。

 どちらもめったに対抗車が来ないからこそできることですが、与那国の車たちにはあくまで人を優先する優しさを、波照間のバスには細かいことにはこだわらないおおらかさを感じた、と言ったらほめすぎかなあ。車がわがもの顔にのさばり、人が隅に追いやられて小さくなっている都会に比べると、島では人と車が対等な立場で、いい関係を築いているように見えて、なんだかうらやましかったものです。

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 与那国島に行った時、島のみやげもの屋「サンアイ」で、与那国の象形文字「カイダティ」をプリントした藍染めの風呂敷を2,000円で買いました。濃淡二色の市松模様に白いカイダティ文字がいい色合いで、生地も木綿でしっかりしているし、結構大判なのでテーブルクロスにもいいかな、と思ったのですが、これが思った以上のすぐれもの。帰りに偶然手にいれた貴重な泡盛「泡波」の一升瓶をくるんで、無事家まで連れ帰ってくれました。

 さらに役に立ったのが、ヨーロッパに旅行した時です。市内観光のバスの中では膝掛けになってくれるし、パラパラと雨が降った時にとりあえず傘の代役をつとめてくれるし、もちろん買ったみやげを包むこともできる。使わないときはたたんでバッグに入れておけば場所もとらない。一番脚光をあびたのが、パリのブティック。ブランド物の紙袋を下げてメトロに乗るのはネギしょったカモと同じ、と聞いていたし、その日はちょうど雨だったので、貴重なブランド名入り紙袋を濡らしたくなかった私は、やおらカイダティ風呂敷を取り出すと、それでささっと袋をくるみ、即席のショッピングバッグを仕立ててみせたのです。店員さんには「トレビヤン!」と大受け。わたしは日本文化の奥深さ(?)をおおいにアピールし、気持ちよく店を後にしました。ありがとう、カイダティ風呂敷。


カイダティ文字

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