このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
いまだから話せる話 ■ 恐怖の電話 Z営業所は電車線から離れていたので、社内電話はありませんでした。外線電話だけです。 しかし、これが強烈でした。 電話が鳴ったので、新入社員らしく真っ先に電話を取って、「はい、○○営業所…」と言おうと したところ、おばさんがいきなり、「○○商店です。聞いて下さい書いて下さい。1000円 を4つ、3000円を5つ、5000円を2つ。がちゃん」 「???」と思いつつ助役さんに報告しに行くと、「ああ、代売の回数券の注文だよ。」と事も 無げに言われました。「代売」というのは、バス停周辺の商店さんに回数券を売ってもらってい るのですが、しかしあれが注文の電話とは…?この店だけかと思ったら他のお店も似たり寄っ たりの電話でした。そういう土地柄なのかなあ…? ■ 英語で示談 ある日、営業所にアメリカ人がやってきました。その人が入ってくるのを見た途端、助役さん も事務主任さんも、「やばい!」と青ざめました。 聞いてみると、バスと事故を起こした外人さんなのですが、運転士が外人だと思って事故の 時余計なことをいったらしいのです。それを助手席に座っていた日本人の奥さんがそのまま通 訳してしまったので、大喧嘩になったとか…。 助役さん達は、「お前大卒なんだから英語出来るよな。相手しろ。」とまた無責任なことを 言います。仕方なく私は外人さんのところに行きました。 外人さんは、「外へ出ろ。」と言っているので、言われるがまま助役さん達と外に出ました。 そこにはバスとぶつけた車が止まっていました。助役さんによると、修理はこちら持ちで終わ ったはずだとのこと。 仕方なく外人さんと片言の英語で話しました。 いのこう:「こんにちは。何か問題がありましたか?」 外人さん:「修理は終わったんだけどさ、ちょっと気に入らないんだよね。」 いのこう:「えっ、何か当方に不手際でもありましたでしょうか?」 外人さん:「この方向から車を見てくれ。」(と車の側面を指す。側面をぶつけたらしい。) いのこう:「…?」(別にちゃんと直ってると思うけどなあ…?) 外人さん:「この角度から見ると、側面のふくらみが少し足りないんだよ。」 いのこう:「…?」(そう言われればそうかもしれないけど…?) 外人さん:「実は俺の親父はアメリカで自動車修理工をやっているんだ。俺も腕はある から後はアメリカから材料と道具を取り寄せて自分で直すよ。」 いのこう:「…?」(日本人みたいに細かいやつだなあ…。) とりあえず助役さんに事情を話すと、 「よし、じゃあお前がいまここで示談をまとめてしまえ。そうすればもう関係ないから。」 えーっ!?英語で示談なんて…、日本語でも示談交渉したこともないのに…。 仕方なく外人さんを事務所に連れて行き、示談を始めました。 いのこう:「私どもの修理はあれで問題ないということでよろしいですね。」 外人さん:「イエス。」 いのこう:「今後いかなる請求をされても認められなくなりますがよろしいですね。」 外人さん:「イエス。」 いのこう:「では、今回の件はこれで全て終わりということでよろしいですね。」 外人さん:「イエス。」 よく分かんないけどまあいいか…、と助役さんに、「もういいと言っています。」と言うと、 助役さん:「じゃあ示談書にハンコを押させろ。」 …、外人がハンコなんて持ってるわけねえだろうが…、と思いつつ、 いのこう:「ハンコ持ってますか?」 外人さん:「イエス。」 そして外人さんは、カタカナのハンコを示談書に押して、「サンキュー。」と言って帰ってい きました。 助役さんには、「お前よくやったなあ…。」と褒められましたが、その後1年くらいは、「今頃ま た文句言いに来てるんじゃないか?」と気が気じゃありませんでした。 ■ 異動しないの…? それでもなんとか1ヶ月経って、いよいよ正式配属の内示の日になりました。 定期の人事異動と同時なので、対象者が営業所長に呼ばれました。 「えー、まず、私が○○営業所長に異動になります。」所長は自分が異動するもんだから舞い 上がってしまっています。 「それでは、異動の内示を発表します。○○さんは○○営業所へ…、○○さんは…、以上で す。では、異動される皆さんは新しい職場でも頑張って下さい。」 …!?おいおい、俺はどこに行くんだよ…?まさか営業所に残留するのか…? 助役さんが落ち着いて助け船を出してくれました。 「所長、いのこう君の異動は…?」 「あっ、ごめん。忘れてた。経理部に行ってもらいます。」だって。
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