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風使いの館 リレー小説過去ログ


第141話 グリプス2攻防戦 〜エピローグ〜 投稿者: 鳥坂ザ・OB@富良野 由亜季  投稿日: 4月16日(月)23時18分49秒

その後、コロニーレーザーを巡る戦いはロンドベル側がコロニーを奪取する形で終結を迎えた。
アムロ、カミーユの両名がグリプス2を押さえた時点で、ティターンズ側は既に大半の戦力を
失い、ジャミトフは攻防戦の最中地球方面への脱出に成功、グリプス2司令官のアントニオ・カラスは
乗艦したアレキサンドリアと運命を共にした。

アムロとカミーユの2人はティターンズ敗北を受けて、先の戦闘で行方不明となったカトル捜索に合流も
カトル本人はおろか、愛機であるサンドロック改すら発見する事は出来なかった。

「3人ともご苦労だった」
 ブライトは捜索を止む無く打ち切り、疲労の色を濃くするアムロ、カミーユ、ロランの3人に
労いの言葉をかけた。
「すまないブライト。カトル君を発見する事は出来なかった・・・」
 ニュータイプといっても『万能』ではない。カトルを見つけられなかったアムロとカミーユは、
その意味を気分的に、嫌と云うほど思い知らされていた。
「我々は暫く此処に駐留するので、捜索の時間は再び取れると思う。それよりアムロ、カミーユと共に
ラーディシュの援護に向かってくれないか」
「ラーディシュの援護?どういう事だブライト」
 ラーディシュはエウーゴの旗艦である。いくら当方の戦力が四散した現状であっても
相当の戦力は保有している部隊の一つである。そこから支援要請が入るとなると、これは『只事ではない
状況』と考えるのが普通である。
「ラビアン・ローズがティターンズと思わしきMS部隊の襲撃を受けているらしい。何でも敵MSの数が
彼らだけで捌ける数ではないらしい。PGの方も高速戦闘用パーツの換装を急がせている。完了次第急行
してくれ」
「了解した。しかし妙だな・・・この展開の仕方・・・陽動かも知れない」
「アムロもか?俺もこの攻め方は腑に落ちん。裏に何かあるような気がするのだがな・・・」
 すぐさま陽動と見破り、ティターンズ以外の存在を察知したアムロであったが、どの組織が黒幕か
という所までまでは見当が付かないでいた。それは支援要請を受けたブライトにしても同じであった。
「ブライト艦長!」
 ブリッジで通信オペレータも兼任している、ベルトーチカの声が突如響き渡った。
「何だ!」
「ヒイロのウィングガンダムゼロカスタムが着艦許可を求めて来ています!」
「ヒイロが?よし回線繋げ・・・ヒイロ君か!如何した!」
 ブライトはキャプテン・シートに座り、ヒイロの声に耳を傾けた。
「カトルとトロワを回収した。着艦許可を頼む」
 ぼそぼそっと簡潔に事情説明をするヒイロ。先程捜索を打ち切ったカトルをあっさり回収したと言い放つ
彼に、ブリッジ全体がざわついた雰囲気になった。
「何!?判った急ぎ着艦してくれ・・・ベルトーチカ、此処を頼む。私はMSデッキにいる。・・・アムロ、
カミーユ、俺と一緒に来てくれ」
 ヒイロとの回線を閉じベルトーチカに一言残すとアムロ、カミーユを帯同してMSデッキへと一目散に
降りていくブライト。
「了解しました」
 後続のアムロに目をやりながら、ブライトに対し復唱するベルトーチカ。

 MSデッキでは既にヒイロが機体の外に出、医療班のベッドに乗って運ばれていくカトル、トロワの両名
を見送っていた。
「ご苦労だったなヒイロ君。しかし一体何処で?・・・」
 息を切らしブリッジから駆け下りて来たブライトは、ヒイロに労いの言葉を掛けつつ事情説明を求めた。
「たまたまひらっただけだ・・・それより、あまり悠長な事はしていられないぞブライト艦長」
 いつも通りそっけなく返答したヒイロは、表情一つ変えずにある重要な話を切り出した。
「どういう事なんだ、ヒイロ」
 只事ではないと感じ取ったブライトは、何時似なく険しい表情で話に耳を貸した。

「たった今、月面は人類史上嘗てない程の危機に直面した」
 ヒイロの放った一言が、その後彼らを『歴史的大事件』へと導く切っ掛けを作ったのであった。


第142話 赤和服ギンガナムPart7(ホントの最終回^^;;) 投稿者: I・C(紙坂一)ブルース  投稿日: 4月16日(月)23時24分25秒

「これならどう 悪夢の王の一片よ 世界の戒め解き放たれし 凍れる黒き虚無の刃よ
 我が力我が身となりて 共に滅びの道を歩まん 神々の魂すらも打ち砕き神滅斬(ラグナブレード)」
ゴッドガンダムの手から光があふれ光の剣となりデビルガンダムを斬り付けた
「くっ さすがにやりますねぇ」
ボディーの3分の1を切り取られギンガナムの顔から余裕の色が消える
「はぁ はぁ これでもダメなの」
クリスの顔に絶望の色が浮かんだ瞬間 ゴッドガンダムの姿が闇に包まれる
「クリスさん・・・私は本来出ては行けないんですが少しお手伝いしましょう」
黒い神官服を来たにやけ顔の男がすっとクリスの傍らに立つ
「ゼ(もごもご)」
「しーーーーー ここで私の名前は出しちゃいけません とにかく(ごしょごしょ)と唱えるのです
 いいですね」
名前を叫びそうになったクリスの口を塞ぎながら耳打ちする神官服の男
口を塞がれてるので首を上下に激しく振り同意した事を伝えたクリス
「でもあんなバケモン倒せるの?」
「あなたの衣装に付いてある宝石は魔力をUPさせる護符(アミュレット)になってます
 あなたの潜在的に持ってる魔力と護符の力があればあんなものは目じゃないですよ
 では がんばってください」
男が消えると闇も瞬時に消えゴッドガンダムの姿が再びランタオ島に現れる
「クリス 一体」
ゼロが通信回線を通じて問い掛ける
「みんな 詳しい話は後よ とにかくあいつを倒す手段が見つかったわ 少し時間を稼いでて」
「了解」
3人の声がハモる
「闇よりもなお暗きもの 夜よりもなお深きもの 混沌の海よたゆたいし存在」
クリスが呪文を唱えた刹那光がゴッドガンダムを包みゴッドガンダムを金色に彩る
「いくぞ エルメキアランス」
「エルメキアフレイム」
ゼロとクェスが放った風の呪文がデビルガンダムに向け靡く
「ふふ ムダなことを」
「我ここに汝に誓う 我が前に立ち塞がりし すべての愚かなるものに 我と汝が力もて」
「くそっ もう一回行くぞ クェス」
「わかったわ」
二人が再び呪文を放ったがデビルガンダムには傷一つついてなかった
「海王槍破撃(ダルフ・ストラッシュ)」
デビルガンダムから放たれた超高速の衝撃波が3人を叩きのめす
「ふふっふっふ とどめだ」
「等しく滅びを与えんことを 重破斬(ギガ・スレイブ)」
ギンガナムが動き出そうとした瞬間クリスが放った呪文がデビルガンダムを包み込む
「そ、そんなバカなこのわたしが このデビルガンダムが  うぐわぁぁ」
呪文に飲み込まれ断末魔の叫びをあげながら消滅するギンガナム

「終わったわね」
2日後強力な呪文を使った影響で倒れ運び込まれた病院の一室でクリスが呟いた
「ああ、これで仇が討てたありがとう」
ゼロが頭を下げる
「で、これからどうすんのみんな」
「そうだな フォウも気になるしこれからアーガマでやっかいになるさ」
「あたしもあなたといると面白そうだし あたしも一緒に着いてくわ」
「じゃあ これからもよろしくね」


第143話 もたらされた凶報 投稿者: 鳥坂ザ・OB@富良野 由亜季  投稿日: 4月18日(水)23時14分03秒

その後ブリーフィングルーム(作戦室)に処を移したブライト達『ロンドベル』の主要クルーは、
ヒイロから月面で今何が行われているかの一部始終を伝え聞き、大きな衝撃を受けていた。

「何て事だ・・・実際にこんな事を考え、実行に移す奴がいようとはな」
そういってブライトは額に手をやり、天を仰いだ。
「全くだ、ティターンズとかデラーズとか・・・そんな規模の話じゃない」
 ヒイロがもたらした話の、あまりのスケールの大きさにアムロは困惑した。
「地球圏・・・いえ、人類全体の明日が存亡に関わることじゃないですか!」
 あまりに大それた、しかも全人類の抹殺と地球圏の壊滅を意味するその作戦に対してカミーユは、
例えようの無い怒りと憤りを覚えた。
「しかし・・・ヒイロは一体何処でこの情報をキャッチしたんだ?」
 アムロはふと、一番最初の時点から気になっていた疑問を率直にヒイロに対してぶつけてみた。
「月で別れ際に云ったはずだ、トロワを探すと。そのトロワが掴んだ情報だ」
 確かに彼はブレックスの私邸でそう答えていた。その結果としてもたらされた情報だと云うのだ。
「彼が・・・そうなのか?」
 賢明な読者の方ならお気付きだろうが、トロワとロンドベルのメンバーはこれが初接触となる。
 だからクルーの誰一人としてトロワの顔を知るものはいなかった。
 トロワの隣のベッドで伏せっているカトルを除けばの話ではあるが・・・。
「あぁ。奴はトリントン基地でGP−02Aを奪取した後、それを手土産に『ヌーベル・エウーゴ』に潜入
敵情視察に入った。そこで入手したのがその情報と言う訳だ」
 表情一つ変えずに質問に答えるヒイロ。以前の彼とは比べ物にならない位饒舌な語り口である。
「答えになってないぞ、ヒイロ。君は何故その事を知っている」
 返答に対し、更に疑問をぶつけるアムロ。
「ヌーベル・エウーゴ内で極秘裏に会った。その時にその情報の断片を聞いた」
 施設内に単身忍び込み、極秘裏にトロワとの接触に成功していたとヒイロは答えた。
「何故彼が其処にいると判ったんだ」
 皆がぶちあたる一番の疑問を率直にヒイロに対して問い質すカミーユ。
「俺が奴の立場でも多分そうした。敵側に面が割れる事を危惧した俺は、その後はトロワの行動を干渉する
事なく、一部始終モニターする事に徹した。トロワが作戦の全体像を完璧に把握した時には、俺がトロワと
接触不能な状態に陥っていた。作戦前で基地の警戒が強化された為だ。俺と接触するのが事実上困難と判っ
ていたトロワは、独力で脱出して作戦を外部にもたらそうとしたが、寸前のところで失敗。俺が駆けつけた
時にはトロワは宇宙の塵になる寸前だった」
 無表情でいて、しかも簡潔に事の次第を語りだすヒイロ。それは以前の彼では考えられない事であった。
「という事は、この作戦の大方の概要を知っているのはエウーゴサイドでは我々だけか・・・」
 ヒイロの話を聞くにつけこの作戦が意味する事の重大さを噛み締めながら、ブライトはこの情報が他方に
漏洩しない様に万全の体制を整えている黒幕に対し恐怖を覚えていた。
「最終的に手に入れた作戦内容等の情報は、レポートとしてデータディスクに封入されている筈だが
それの所在は現在明らかではない」
 それはトロワが最後に打ち出して四散させたクレイバズーカの『弾丸』の事をである。
 しかし、トロワがそういう方法を用いて敵の手に落ちる事を阻止したという事実を、
ヒイロは知らなかった。
「他の陣営・・・特にヌーベル・エウーゴのタウ・リン派が奪取して握りつぶされでもしていたら事だぞ
ブライト!」
 トロワが命懸けで友軍に伝えようとした情報が、まんまと敵の手に渡っていたら・・・そう考えると
アムロは居ても経っても居られない気分になった。

「艦長!」
 アムロの一言で一気に緊迫の度合を深めていく作戦室に、突如ブリッジにいるベルトーチカの声が
駆け抜けた。
「何だ、ベルトーチカ!」
 ラーカイラム内の内線をモニターに切り替え、ベルトーチカの声に聞き入るブライト。
「クワトロ大尉から緊急通信です。何でも月面のアンマン基地からとか・・・」
「何!ホンコンに向かったんじゃあ・・・繋いでくれ」
 クワトロの思いも寄らぬ場所からの急報に些か驚きを隠せないブライト達。

 このクワトロがもたらす「凶報」こそ今回の事件に於ける彼らの立場を決定的なものに変えていく事に
なるのだが、それは又次回の講釈で。                          <続く>


第144話 暗黒の月 投稿者: I・C(紙坂一)ブルース  投稿日: 4月18日(水)23時51分58秒

「少佐 マフティー派ヌーベルエゥーゴの位置をキャッチしました。」
アリスが車の中で部下の報告を受けていた
「なにっ」
「はっ、どうやら艦隊の中に病人がいるようで、その保護を求めております。」
「で、現在位置は」
そこでスクリーンが月の地図に変わり部下の声だけが流れる
「現在ラカン ザビーネ両艦隊がここ そしてマフティー艦隊はこの
 バハイ発電所を目標として移動中と思われます」
「本隊・・・・タウ・リンの居所はまだつかめないのか」
地図を見ながらアリスが地図に映っていない制圧部隊本隊の行方を尋ねた。
「はい、おそらく後方から指揮を執っているものと思われますが、我が軍の索敵網に敵旗艦アウーラ
 がかかったという報告は未だ入っておりません」
「ご苦労 引き続き頼む」
そう言って部下からの報告を打ち切り、眺めながていた外の景色が闇に閉ざされた瞬間、先ほどとは
別の部下から通信が入る。

「少佐、ヌーベルエゥーゴが動き出しました 既にシッガルドを始め各発電施設に対して制圧行動に
 はいっております。」
部下からの報告を聞きながら苦い顔になるアリス
「くっ、何が起きるかわかっていながらこうも後手を踏むとは、茨の園に緊急連絡敵が既に動き出した模様
 ただし、タウ・リンは未だ発見に到らずとな」
悔しそうに吐き捨てたアリス

「ジン・ジャハナム閣下、共和政府軍より連絡です。マフティー派ヌーベルエゥーゴの旗艦
 ジャンヌ・ダルクを発見至急接触せよ  です」
オペレーターが電文を読んだ
「で、位置は」
ジン・ジャハナムに変わり艦長のゴメス大尉がそのオペレーターに訊ねる。
「はい、どうやらここに向かって移動中のようです。」
アリスの部下からもたらされた情報をもとにスクリーンに位置が表示された。
「ここは、確か」
ジン・ジャハナムが地図を見ながら呟く
「バイイ発電所ですな」
「ああ」
ジン・ジャハナムが頷いた。
「よし、針路変更 目標バイイ発電所 急げ」
ゴメスの命令が艦橋中に響き渡る。


第145話 狂気との対峙 投稿者: 鳥坂ザ・OB@富良野 由亜季  投稿日: 4月21日(土)00時38分48秒

「ブライト、准将が暗殺された」
 声を押し殺しながら、シャアはブライトに対してそう云った。
「ブレックス准将が?!」
 あまりに突拍子も無い事態に衝撃を受けるブライト。
「ヌーベル・エウーゴの仕業のようだ・・・しかしそれ以上に重要な話がある」
 何処の仕業かは判っている。弔い合戦もありうる。しかし、今は一刻を争う深刻な事態である事を
ブライト達友軍に伝えるのが急務である。その為に高いリスクを背負って非常回線を開いたのだから。
「まさか、データ・ディスクを回収したのは大尉なのか?!」
 月がヒイロの云う通りの情勢なら、危険を犯してまで伝えたい話など、現状ではそうそうある筈が無い。
あるとすれば只一つ、今議題に上っている「例の作戦」であろう。そうブライトは考えた。

「情報が早いな。確かにその話だが、この情報はデラーズから私にもたらされたものだ」
 ブライトが既に情報を握っていた事に些か驚きながらも、シャアはすんなりと事実関係を説明した。
「という事はハマーンもこの事を知っているという事か」
 デラーズが黒幕でない事はヒイロの話から大体察知していたが、シャアが掴んだ情報がデラーズからの
供与である事は、些かブライトを狼狽させた。
「しかもシャアに情報をリークした処から見て今回の作戦、デラーズとは一切関係なしという事だな」
 大体の背後関係に目星をつけるアムロ。タウ・リン派の単独犯である事がここで「確定」した。
「しかし何でデラーズ側は情報をこちら側にリークしてくれたんです?」
 カミーユとしては、当面の敵であるデラーズからリークされた事がどうも「気に障る」ようであった。 
「人類全体の危機との捉え方をしたんだろうな。状況を一時棚上げしてでも地球圏そのものは守らねば
ならんと言う事だ。何処の陣営にしても、地球圏そのものが滅んでは意味がないからな」
 と、カミーユに説明するブライト。
「そういう事だ。取り敢えず今は一刻も早く事態の収拾を付ける為、デラーズ側とは一時休戦という形を
取った」
 ブライトの答えに同調しつつ、シャアはデラーズ側と一時的な休戦協定を結んだ事を公にする。
「賢明な選択です。そうしてくれると事態収拾に専念できるというものだしな」
 シャアの選択を支持するブライト。取り敢えず「月危機回避」で全力を傾けられる情勢は出来た訳である。

「実は先程から月面全土で電力の供給がストップしていてな、今この通信は基地に備蓄してある予備電力
を使っているのだ。だからこれがここからの最初で最後の通信になると思う」
 先程の発電所襲撃の影響が既に出始めてきている。ここアンマンですらこの状態である。グラナダ近辺は
暗闇であろう。アンマン基地に備蓄されている予備電源の残量も僅かであった。 

「ご苦労でした、大尉。ところでそちらはこれから如何するのです?」
 シャア達の置かれた状況を鑑みながら、今後の動向を尋ねるブライト。
「幸いこちらには「ネオ・ジオン」名義の物資が色々と備蓄してある。当面はこれらを使って色々と
仕掛けてみるつもりだ」
 元々「ネオ・ジオン」の前線基地として使用する予定だった場所である。他の勢力と一戦交える位の
武器弾薬等の備蓄は十分に蓄えてあった。

「御武運を。こちらも奪取したコロニーレーザーの調整等で本隊は動かせませんが、アムロ、カミーユ
ヒイロの3人にラーディシュの支援任務終了後そちらに向かわせます」
 今後のプランをシャアに明かすブライト。今後は遠隔地どうしの連携が運命のカギを握る。
「それは正直、助かる。宜しく頼む。以上だ」
 シャアがそう言い残すと、月からの通信はプツリと途絶えた。
「聞いての通りだ。3人にはこれから『ラーディシュ』支援に向かってくれ。我々ロンドベル本隊は
当面此処『グリプス2』を拠点とし、地上の主要メンバーとも連絡を取り合いながら善後策を練る」
 これからの作戦概要を掻い摘んで3人に説明するブライト。一刻の猶予もないという緊迫感が
作戦室を包む。
「了解した。では俺たち3人はこれから、指示通り『ラーディシュ』に向かう」
 ブライトにそう告げると、アムロ、カミーユ、ヒイロの3人はMSデッキへと急いだ。
「あぁ。宜しく頼む」
 別れ際の3人に声をかけるブライト。彼にはこれから「グリプス2改修指揮」という仕事が待っていた。


第146話 嵐の前の静けさ 投稿者: ゆらりん@迎春生  投稿日: 4月21日(土)00時48分44秒

マーベットが戻ってきたことにより
同時にMSタイタニアもヌーベルエウーゴにわたったが、
それによって、同時にシロッコを相手にすることにも
なってしまった。
一方、当事者のマーベットはシローとカレンのアイデアによって
ガトー少佐を頼って、どこか治療できるところを探そうとしていた。
しかし作戦行動中であるため、少数で行動することになった。
「タイタニアはどうするんですか?」
シローが出発準備をしているオリファーに尋ねた。
「本当は、置いていきたいんだけどね。
あのMSとの因果関係も調べないといけないかもいけないから
持っていくように勧められたんだよ」
「では、お気をつけて」
「ああ、マフティーもいないんだし、そちらもな」

「マーベット、大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ。オリファー」
マーベットの記憶はまだ戻っていなかったが、
戻ってきたころに比べると、ずっと元気になっていた。
このようにマーベットを気遣っていると、以前ならここで
ジュンコにからかわれた事を思い出し、オリファーは寂しく思った。
「さ、あと少しだよ」

ところが、事はそう簡単には運ばなかった。
「ガトー少佐とお話できないとはどういうことです?」
オリファーは通信オペレーターに詰め寄った。
「そう言われましても、艦隊司令部からの命令でして…」
なお詰め寄ろうとするオリファーをマーベットが言う。
「オペレーターに言ってもどうしようもないわ。」
一旦通信を切ると、苦い顔をしてつぶやいた。
「…一体何が起こったんだ?」


第147話 シロッコ襲撃(前編) 投稿者: I・C(紙坂一)ブルース  投稿日: 4月21日(土)01時43分16秒

「マフティー じゃあ行ってくるよ」
クスイーのコクピットにある通信機からカレンの声が流れる。
「了解」
クスイーの発進作業を進めながらハサウェイが応える。

「マフティーちょっといいか」
カレンに変わりオリファーがスクリーンに姿を見せた。
「なんだい、オリファー」
「ガトー少佐との連絡が取れないんだ」
そこにはオリファーの悲痛な表情が映し出されていた。
「なんてことだ」
思わずシートの肘掛に拳を振り下ろすハサウェイ
「どうすればいいんだ」
「とにかく、落ち着くんだ 君がマーベットを支えてやらなくてどうするんだい」
うろたえてるオリファーを見てハサウェイが優しく励まそうと声を掛ける。
「ああ、そうだったなすまない」
しかし、その言葉を聞いてもオリファーの表情は晴れなかった。
「マフティー閣下 後方より敵多数接近中」
その時 オペレーターが二人の間に割り込み凶報を告げる。

「ふっ、私の傑作であるタイタニアを返してもらうぞ マフティー・ナビーユ・エリン」
ジ・オのコクピットでシロッコが冷たく笑う
「シロッコ様 ヌーベル・エゥーゴの戦艦 ジャンヌダルクを発見しました。」
とそこに、クロノクルから報告が発見の報が入る。
「よし、行くぞ MS隊は私に続け」

「シローの08小隊に連絡してこっちに戻らせろ敵を迎撃する。シュラク隊は発電施設の制圧を急げ」
ハサウェイの鋭い指示がヌーベルエゥーゴ全体に行き渡る。
「了解」
期せずして全員の声がハモった。
「ほう、ガンダムかこざかしい」
迎撃に出てきたクスイーを見てシロッコが呟く
「貴様、何故 俺達を襲うんだ」
ジ・オに向かいながらハサウェイが怒る。
「ふん、落ちろ蚊トンボ」
ライフルを正射しクスイーを落そうとするが避けられてしまった。
「やるな、だが私には勝てんよ」
冷笑を浮かべるシロッコ
「行け、ファンネル」
クスイーからファンネルミサイルが発射されジ・オを襲う。
「ほう、サイコミュ誘導式のミサイルか・・・だが、私には当たらんよ」
ライフルをサーベルに持ち替えさせミサイルをなぎ払うシロッコ

「アイナ気をつけろ こいつなかなか手ごわそうだぞ」
クロノクルのザンスパインと対峙したシローが愛機のEZ8を操りながらアイナに注意を促がす。
「ええ、シローわかったわ」

「前方に光が・・・どうやら戦闘が行われているようです」
リーンホースJrのオペレーターがキャプテンシートに座っているゴメスの方を振り向く
「なんてこった、もう始まってやがるのか」
ゴメスが悔しそうに呟く
「いや、発電施設は10時方向だ  あれはどうやら何者かに襲撃を受けているんじゃないか」
ジン・ジャハナムが冷静に情況を判断しようとする。
「ウッソ達MS隊を至急発進させろ」
ゴメスがそのオペレーターに指示を出した。

「くっ、このパイロット強い」
先ほどからシロッコの操るジ・オに圧倒されハサウェイの額に汗が滲む。
「所詮、貴様と私では実力が違い過ぎるのだよ」
口の端を歪ませ嘲笑うシロッコ
「これならどうだ」
残ったミサイルを一気に放射しシロッコが隙を見せた瞬間ジ・オの懐に飛び込んだ。
「くっ、こしゃくな真似をしてくれるだが甘かったな」
クスイーガンダムのサーベルがジ・オを切り付けた瞬間隠し腕のサーベルが逆にクスイーを襲う。
「なにっ」
やられると思いハサウェイがしまったという表情になった時 別の方角から撃たれたビームが
ジ・オの隠し腕を吹き飛ばした。


第148話 消え行く灯火 投稿者: 鳥坂ザ・OB@富良野 由亜季  投稿日: 4月21日(土)10時30分19秒

高機動型PG・・・PGイェーガー。これがアムロの愛機が改修された姿である。
バックパックには超大型のブースト・ポッドが左右2基装備され、脚部の膝から下の部分も脚部スラスターの
推進力強化の為、一回り以上太くなっている。肩部にも姿勢制御用のロケット・モーターを多数追加装備して
あり、ANBACシステムとの連動により「宇宙空間」での運用を優位に進めてくれるものであった。
「これが「イェーガータイプ」おれの新しい「手足」か・・・よし、申し分ない」
 改修された「愛機」を見上げながら、今更ながらリニューアルした愛機を頼もしく思うアムロ。
「アムロさん先出ます」
 ノーマルスーツのヘルメットを被りながら、アムロに一言掛けていくカミーユ。
 その後ろにはゼロカスタムへと急ぐヒイロの姿も見える。 
「判った、追って出撃する」
 暫くして、3人のエースパイロットが、ラーデッシュ救援に向けて飛び立っていった。

その頃、グラナダを出航したラーディッシュを旗艦とするエウーゴ艦隊は、タウ=リンが放った
偽装ティターンズ艦隊のバーザム部隊を相手にラビアンローズ防衛戦を展開していた。
「キリが無いぞ、こいつら!」
 ガンキャノン2で出撃したキースは、敵サイドのあまりの数の多さと展開の早さに辟易していた。
「落としても落としても・・・このっ!」
 GP01Fbで出撃したコウ・ウラキにしても然りであった。彼一人でもう何十機落としたか知れなかった。
「ラーディッシュはラビアンローズの盾になる。各艦!ラビアンローズの周囲を固めろ!」
 数の多さに振り回される機動部隊の負担を少しでも軽くしようと、ラーディシュを敏速に指揮し
ラビアン・ローズの前に出て艦隊のみで防衛ラインを敷くヘンケン艦長。
「この動き・・・まさか!?ヘンケン艦長!!」
 グラナダ出航前にAEからMk2改2号機を受領し戦闘に参加していたエマ・シーンは、妙に理路整然
とした敵の動きに対し不審を抱いていた。
「何だ!エマ中尉」
 拡声器越しではあっても、どんなに忙しい最中でもエマの声だけはしっかりと聞き取れるヘンケン。
「この動き・・・この作戦の執り方・・・間違いない!これはティターンズではありません」
 長年その「ティターンズ」に在籍していた彼女にとっては、造作もない事である。
「何!では何処の部隊だと云うんだ!」
 云わば「補給部隊」を大戦力で叩くような、悪辣極まりない手段を講じる勢力が他にいるとは
考えにくい。しかしエマのいう事なら信憑性は高い。なら一体何処の勢力が・・・ヘンケンには
思い当たる節がなかった。
「私達をグラナダから引き離す為に、ティターンズとは違う別の勢力が仕掛けた物だと思われます」
「別の勢力・・・バーザムを使うという事はデラーズではないだろうし・・・」
 連邦系、主にティターンズが運用している機体をこうもあざとく使える辺り「ジオン系」以外の
『何者か』である事は確かであった。
 思案に暮れるヘンケンの元に、凶報が伝えられたのはその直後のことであった。
「艦長!大変です!グラナダとの通信が途絶えました」
 オペレータの凶報を伝える声が、ブリッジの緊迫感を煽った。
「何!?どういう事だ!」
「電力供給のトラブルかと思われます・・・月面全土の規模に発展している模様!」
 凶報の内容は、ブリッジを騒然とさせた。
 その「悪夢」としか云い様のない月面の状況にヘンケンは大きな衝撃を受けた。
「しまったっ!こちらは陽動かっ・・・くそっ!まんまとしてやられたっ!」
 完全に敵の「陽動策」に嵌ったエウーゴ艦隊には、もはや打つ手は残されていなかった。
「ヘンケン艦長、このまま消耗戦になれば完全に当方が不利です」
 戦況分析をするオペレータの非情な声が、ヘンケンの心情に追い討ちをかける。
「判っている!くそっ!このまま月面の危機をみすみす黙って見ているだけとはっ!」
 太陽光の反射により、ブリッジからは三日月に見える月を恨めしそうに見遣るヘンケン。

月は、徐々に生活の灯火を失おうとしていた。


第149話 シロッコ襲撃(後編) 投稿者: I・C(紙坂一)ブルース  投稿日: 4月22日(日)01時48分54秒

「ヌーベルエゥーゴの人達加勢するぜ」
クスイーのスクリーンにジュドーが姿を現す。
「ありがとう 助かったよジュドー」
「あ、ああっあんたブライト艦長のとこの」
ハサウェイを見てジュドーが驚く
「久しぶりだな、ジュドーだけど今、僕はマフティー・ナビーユ・エリンってことになってる
 そのことは内緒にしといてくれよ」
クスイーのコクピットでハサウェイが苦笑した。
その頃、クロノクルの率いるMS隊と交戦していたシロー達にも危機が迫っていた。
「くそっ、きりがない」
次々と現れるメッサーラ隊とその隙を突き襲いかかるザンスパインの攻撃の前にシローが焦る。
「なかなか出来るようだが、これで終わりにさせてもらう 行けビット」
ザンスパインから放たれたビットがシロー達に向かって来る。
「くっ、アイナ大丈夫か」
EZ8を操りビットの攻撃を避けるシロー
「ええ、な、なんとか・・きゃ」
避けそこなったビットのビームがアイナが乗るゲルググの腕を吹き飛ばす。
「とどめだ」
サーベルを抜きゲルググに迫るザンスパインの前に水色のR−ジャジャ改が立ち塞がる
「ご無事ですか、アイナ様」
通信機から聞きなれた声が流れる。
「そ、その声はノリス 来てくれたのですか」
「お久しゅうございますアイナ様」
ノリスがスクリーンに映るアイナに向け頭を下げた。
「助かりましたノリス大尉」
ほっとしたシローがノリスに話し掛ける。
「久しぶりだなアマダ少尉 なかなか腕を上げたようだが姫様を守るナイトとしてはまだまだだな」
ノリスがそう応じる
「まだまだ、ケツが青いってさ」
カレンが二人の間に入ってシローをからかうとシローを除くみんなが笑い出す。
「ちぇっ」
その笑い声の中シローが一人いじける。
「くっ、シロッコ様 敵の増援が現れました。 これ以上長引くと」
「しかたあるまい クロノクル全員を退かせろ。」
シロッコが苦々しく指示を出した。
「一体 何者だったんだ」
ジャンヌダルクの艦橋でシローが呟いた。
「どうやらあれは木星帝国の連中のようだ」
その呟きを受けてノリスが応える
「一体何故俺達を」
「ひょっとしたらマーベットを洗脳したのは彼らで、彼女を取り返しに来たんじゃないかしら」
アイナがシローの疑問に応えようとする。
「そういえば、ノリスは何故ここに」
「そうでした、アイナ様 いやマフティー派ヌーベルエゥーゴの諸君等に告ぐ
 直ちに軍備を解き我等デラーズフリートに投降したまえ」
ノリスが全員に行き渡るように宣言する。
「ど、どういうことだ」
ハサウェイが突然の宣言に戸惑う
「ノリス大尉 ここからは私が言おう 私はリガミリティアのジン・ジャハナムである
 月を破壊し地球圏を脅かそうとするタウ・リンの盲動を助けるのはやめよ
 これが、我等が首相アルテイシア・ソム・ダイクンの意思である。」
その言葉を聞いてヌーベルエゥーゴのメンバーが眉を顰める。
「ちょっと待ってください 閣下 確かに我々は月の発電施設を襲い連邦政府に布告を行う事に
 なってますが、破壊するというのはどういうことなんですか」
全員を代表してハサウェイがジンに尋ねる。
「これを見てくれ  今君たちの艦のディスプレイに映ってるのが我々が掴んだ本作戦の概要だ」
トロワからアリスを経て共和政府にもたらされたレポートが映し出される。
「おい、マフティー どういう事だよ 俺達は何にも知らされてなかったってことかよ」
シローが憤りマフティーに詰め寄った。
「そのようだな」
苦々しげな表情になるハサウェイ
「そういうことならさぁ 俺達と一緒にタウ・リンを倒そうぜ」
とそのハサウェイに気楽に声を掛けるジュドー
「そうしようぜ、マフティー」
「そうだよ、あんな連中に従うよりそっちの方がましってもんさ」
シローに続きカレンまでが賛同する。
「よし決まった みんなでタウ・リンをぶっ飛ばそうぜ」
頷いて賛同の意を示したハサウェイを見てジュドーが拳を振り上げる。
「で、これからどうしましょう閣下」
ハサウェイがスクリーンに映るジンに聞く。
「そうだなぁ・・・・・よし、このまま発電施設を制圧しよう」
「ええっ〜〜〜〜」
ジン・ジャハナムの一言に全員が驚く
「し、しかし」
「正直我が軍の諜報網を持ってしてもタウ・リンの居場所は掴めてない そこで、マフティー君達は
 奴等の仲間のフリをして奴がコンタクトを取ったところを突き止めるのはどうだろう」
「なるほど・・それは名案ですな」
ノリスが頷く。
「よし、それで行こう」


第150話 オペレーション・ムーンクライシス −第2夜− 激動の連邦議会 投稿者: 訃霞神威 @ 長良川 祐壱  投稿日: 4月23日(月)12時21分31秒

此処は地球、北米大陸ヒューストンにある地球連邦議会ビル・・・
「これまでの情報をまとめた物です。」
地球連邦中央情報局長官からの報告が続く
「月の各都市はパニックに近い状態です。原因はゲートや宇宙港の爆破テロ、そして大規模な停電・・・」
「現在の状況はシッガルト発電基地は完全に制圧されています。
 月の各都市に送電している各発電所のマイクロウェーブ発信器は破壊され電力供給が
 停止しており、緊急電源に切り替えております。」
「マイクロウェーブ送信システムの復旧にかかる時間は?」
先代の地球連邦大統領であり現副大統領のレイニー=ゴールドマンが問う
「おおよそ・・・2ヶ月は必要になるかと」
「では・・・各都市の電力はいつまでもつのですか?」
現大統領としてリリーナが聞いた。
「酸素プラントは大電力を必要としますから・・・もって5日と言う所でしょう。」
「全都市に送電可能な出力を持つのは最大の発電基地であるシッガルトだけです。」
「つまり彼らヌーベルエウーゴは月に住む2億2千万を越える人間を人質に取ったという事なのですね?」
リリーナが状況を一言でまとめた上で話を進める。
「それで彼らヌーベルエウーゴからの声明、並びに要求の方はどうなっているのです?」
「声明が出ました・・・読み上げます。」

我等ヌーベルエウーゴはシッガルト発電基地を完全に掌握した。電力供給が再開されない場合
月面各都市群は深刻な被害を受けることとなろう。
旧世紀の悪法、連邦法を金科玉条の聖典とし宇宙開拓者(スペースノイド)の血税をすすり
私腹を肥やし強大な軍備をもって人民をダモクレスの剣下に置く地球連邦に対し我々は当然の
権利として策謀をもって望む。
此処に我々は要求する・・・

「分かりました・・・人命には変えられません・・・彼等の要求を呑みましょう。」
声明並びに要求の読み上げが終わるとリリーナが言った。
「しかし・・・テロに屈すると言うのですか?」
ゴールドマン副大統領がリリーナに食い下がる。
「我々はこれまでも血の犠牲を払って連邦制を守って来たのです! それを・・・」
「それでは・・・月の人々を犠牲にすることなくこの事態を切り抜ける方法が有るのですか?
 月に住む人達を犠牲にしてまで連邦制を守る必要など有りません。」
リリーナがきっぱりと言い切った。

                              <続く>


第151話 灼熱の大地 投稿者: I・C(紙坂一)ブルース  投稿日: 4月24日(火)13時27分12秒

「ウッダー司令、月救援の先遣艦隊発進準備完了まであと12時間です。」
ティターンズのキリマンジャロ基地では月に迫った危機に対し艦隊派遣の準備に追われていた。
「遅い、あと3時間で発進させい」
先のホンコンでの戦いの後、キリマンジャロに転属させられたウッダーが司令室で苛立っていた。
「は、艦隊司令官に準備を急がせます」

「なんだと、ティターンズめが・・」
ウッダーの指示を伝えたオペレーターに向かって艦隊司令官が苦々しげに舌打ちする。
「艦隊出航準備急がせますか」
そのオペレーターが司令官に指示を仰ぐ
「しかたあるまい、全部隊至急出航できるように用意させろ」

「いよいよ、我等が待っていた時がきた 今こそこの灼熱の大地から連邦を叩き出すのだ」
砂漠用にカスタマイズされたザク3のコクピットで、ビッターが吼えると通信回線を通じて
ジークジオンの声が砂漠に響き渡る。
「ウッダー司令、敵襲です ジオンのゲリラがこの基地に攻撃を仕掛けてきました。」
「MS隊を迎撃に向かわせろ」
ウッダーがそう指示を出しかけた時新たな凶報が飛び込んできた。
「南側から敵の新手が」
「なにぃ」
「ぐわははは、敵はうろたえて浮き足立っている。今だ、連邦共を叩き潰せ」
ドワッジのコクピットでロンメルが部下に命令を出す。

「始まりましたわグレミー様」
ロンメルの遥か後方に浮かぶミンドラの艦橋にいるグレミーの許に愉快そうな表情を浮かべたドロシーが
近づく。
「ああ、ドライゼの潜水艦隊はどうした」
「はい、既に敵基地の近くでグレミー様の指示を待っております。」
グレミーがその報告を受けて静かに頷いた。

「司令、第一次防衛ライン突破されました」
「くっ、ジオンの連中に邪魔させる訳には行かん、艦隊の発進準備急がせい」
非常事態のサイレンが鳴り響く中ウッダーが叫んだところでまた別の悲報が飛び込む
「敵 水陸両用MSが基地東方海側から侵入 先遣艦隊の発進準備が滞ってます」
「ええい、かまわん 準備出来た艦から至急発進させろ、軌道上で編成させればいい」

「グレミー様、敵が艦隊を発進させたようです。」
キリマンジャロ基地の上方に煙が上がるのを見てオペレーターがグレミーを仰ぎ見る。
「基地の制圧を急ぐようサイクロプス隊に命令を伝えろ。」
「グレミー、私達はまだ出られないのか」
ノーマルスーツに身を包んだプルツーがグレミーに詰め寄る。
「予想以上に奴等が弱体でな、どうやらおまえ達の出番はなさそうだ」
そのグレミーの返答を聞いてプルツーがつまらなそうに自室に戻っていく。

「ガルシア アンディ ミーシャ バーニィ 司令室を制圧する ついて来い」
ガルグイユシャドウを操りキリマンジャロ防衛のジムを蹴散らしながら、シュタイナーが指示を出す。
「隊長、どうやら敵の主力は外に引きつけられたようですな」
同じく敵を駆逐しながらミーシャがズゴックEのコクピットで笑う。
「ミーシャ、油断するなよ」
「隊長、もうすぐ敵の司令室です。」
その二人の間にバーニィの緊張した声が割って入る。

「司令、敵のMSがこの近くまで来ているようです。」
「艦隊はどうした 全て発進できたのか」
「はい、ですが、ほとんどが格納庫か敵の艦砲射撃で破壊されました」
蒼白な顔でウッダーが壁際に崩れ落ちた。

「シーマ様、ティターンズの艦隊が宇宙に上がって来たようですぜ」
リリーマルレーン2の艦橋で副官のコッセルがシーマに向かい笑みを浮かべる
「グレミーのボウヤはあたしの獲物も残してくれてたみたいだねぇ」
「へい、で、MS隊出しますか」
「いや、どうやらMSを出さなくても楽に勝たせてくれそうさねぇ」
そこまで言うと立ち上がり軍配よろしく扇を振りかざす。
「全艦 艦隊戦用意 敵が射程に入り次第敵艦隊本隊に砲撃を集中せよ」

「な、なんとか上がれたようだな」
ティターンズの艦隊司令官がほっとした表情で呟いた。
「司令、て、敵艦隊多数発見」
「な、なんだと  デラーズフリート・・・・・・・・」
そこまで言った時ビームの輝きが先遣艦隊をあっと言う間に消滅させた。


第152話 地上との交信〜これまでの経緯〜 投稿者: 鳥坂ザ・OB@富良野 由亜季  投稿日: 4月24日(火)23時24分25秒

 アムロ達を送り出したブライトは、地上のゼクスと連絡を取り合っていた。
 その話の中で、シャア達がが現在アンマンに居ると云う事の事情説明を受けていた。

「成る程、ではジュドーとルーの両名は現在茨の園、つまりデラーズサイドにいる訳ですね?」
 妹思いのジュドーらしい行動だとキャプテンシートに座りながら心の中で納得するブライト。
一度同じ目に遭っている彼には理解出来る行動であった。
「そう云う事になります。シャア大佐達3人は彼らを引きとめに向かったんですが、アンマンに居てその事に
触れずという事は失敗に終わったんでしょう」
 ジュドーの性格や向かった先を考えると、元々成功する筈の無い『説得作戦』だったのである。
 だからゼクスは、シャア達がアンマンに居る事に何の不思議も感じなかった。 

「月危機の事はご存知ですか?」
 今回の本題を切り出すブライト。地上はどの様に動いているのか、グリプス2からでは推察しかねる
情勢でもあった。 
「ええ、その事でリリーナ・・・連邦代表大統領が先程から奔走していますよ」
 妹の名前を口にして、咄嗟に言い直すゼクス。地球圏が一番酷い状況で貧乏籤を引いた妹に同情する
仕草をも見せた。
「トレーズ准将もその件で?」
「ええ、准将は大統領の後ろ盾をして下さっています。なんと云っても大統領は若いですからね。
どういう形であれ年長の助言者は必要です」
 トレーズは云わば彼女の「後見人」的役所である。影日向になり彼女の支援をする事は、トレーズに
とって既に「使命」の様な気概にまで至っていたし、ゼクスもまたそんな彼らの支えにならんとしていた。

「そうですか。准将に宜しくお伝え下さい。ところで、アーガマの連中についてはご存知ですか?」
 カラバ支援を目的にグラナダから送り出した彼等の事は、グラナダ事変の頃から頭を擡げていた
心配事であった。 
「先日迄ホンコン見物に出かけていたようですね。何でも『ランタオ島に渡ってすごい物を観て来た』とか」
 半ば『呆れ顔』をしながら答えるゼクス。
「何をやってるんだ?あいつらは!」
 こちらも『呆れ顔』のブライト。毎度の事である。
「彼らの活躍のお陰で、地上のティターンズ部隊は活動を停止して現在に至っている様です。
あまり責めないでやって下さい」
 一応のフォローを入れておくゼクス。あんな彼らでも「実績」は上げているのである。
「・・・・仕方ない、今回は不問に伏しましょう」
 彼等の事は誰よりも理解しているブライトである。
 彼等らしく立ち回ってくれればそれでいい位に思っていた。

「ハヤト・コバヤシ氏の事聞きました。お悔やみ申し上げます」
「・・・いい奴でした。惜しい奴を亡くしたなとは思います。思いますが『カラバ』に身を投じた時から
こういう事になる事も、彼自身覚悟していた筈ですから」
 ハヤト戦死の一報は、大気圏突入等で一時送受信不通となっていたゼクス達より先に、他の部隊には
通達が行っていた。その事を知った時ラーカイラムにはアムロとカミーユもいて、ベルトーチカを交えて
沈痛な雰囲気になった。特に一年戦争を戦い抜いたアムロとブライトのショックは相当なものであった。
 今は彼の死を無駄にしない為にも全力でこの窮地を脱するのみと彼らは心に誓っていた。 

「地上の部隊の方はお任せ下さい。あと『月危機』の問題ですが、何かあれば准将や大統領と直接話し
合って戴ける道筋はつけて置きます」
 地上とロンドベル隊の橋渡しがゼクスにとっての急務となった。
 そして彼にはシャアから託されたある任務も同時に遂行せねばならなかった。
「そうして戴けると助かります」
 ゼクスに対しモニター越しに一礼をするブライト。
「では、お互いの健闘を祈って」
 ブライトに返礼するゼクス
「ええ、ではまた」
 敬礼してゼクスとの交信を終えるブライト。
 用件を終えるとブライトは溜息を吐きながらキャプテンシートに沈み込んでいった。
                                      <続く> 


第153話 大統領と首相 投稿者: I・C(紙坂一)ブルース  投稿日: 4月30日(月)00時32分27秒

「アルテイシア首相閣下 ハマーン様 月でヌーベルエゥーゴが動き出したようです」
茨の園の会議室で共和政府首相であるセイラの前で情報部の男が月からの通信を冷静に報告している。
「で、月はどのような状態なのです」
「はい、月の発電施設のほとんどがタウ・リン派の手中に収まったようです」
不安そうに尋ねるセイラの方を向き言う。
「そうか、で、月に向かわせた艦隊  ジュドーはどうした」
ハマーンがそう訊ねた。
「はい、ラカン ザビーネ両艦隊ともアウーラの捜索を続けておりますが、依然発見していないようです。
 ジン・ジャハナムと接触したジュドー少年とノリス大尉ですがマフティーの説得に成功
 ただし、ジン・ジャハナムの計によりしばらくはタウ・リンの指揮下にあるとみせかけ居場所を探る
 とのことです」
「ご苦労様でした。」
セイラが労いの言葉を掛ける男が二人の前から消える。
「ハマーン 地球連邦政府との間に回線を開いてください」
ハマーンがセイラに言われた通りコンソールを開くとスクリーンにリリーナが現れる。
「ごきげんよう、リリーナ大統領 私は茨の園共和政府首相 アルテイシア・ソム・ダイクンであります
 お初にお目にかかります。」
「ジオンの連中が何の用だ」
リリーナが挨拶を返す前に副大統領のゴールドマンがセイラに噛み付いた。
「今の情況でヌーベルエゥーゴを刺激するような策を採るのはやめていただきましょう」
そのゴールドマンを無視しセイラが続けるとゴールドマンの表情が苦々しくなる。
セイラの側に控えるハマーンの冷たい視線がゴールドマンの方を見る。
「どういうことですか、副大統領」
「・・・・」
ゴールドマンが屈辱の為俯きながら、リリーナの視線を受け止める。
「ふっ、大統領閣下 隣にいる男があなたに無断で艦隊を動かそうとして、失敗した事を
 ご存知ないようですな」
「ふざけるな、貴様の差し金だろうが この女狐めっ」
ジオンのゲリラにより月に差し向けようとした艦隊を阻止された怒りをハマーンにぶつける。
「何の事だ 我々には預かり知らぬ事だ」
表情も変えずに応じるハマーンを見てゴールドマンが更に憤る。
「アフリカに残ったゲリラ共を動かし我等の作戦を妨害して ヌーベルエゥーゴなる過激派に
 加担する女が」
「リリーナ大統領 ハマーンの言う通り それは私達の預かり知らぬ事 ただ、一つ忠告しておきます
 ヌーベルエゥーゴを下手に刺激し人質となった月の民の生命を脅かすようであれば 私たちとしても
 それ相応の準備があります。」
今まで二人のやりとりを眺めていたセイラがリリーナに向かい話し掛けた。
「準備ですか」
「ええ、こちらは既にエゥーゴと行動を共にしております。 今度のことは我々スペースノイドで
 処理します。 地球連邦政府には自重願いたく 重ねてお願いします」


第154話 大統領権限 投稿者: 訃霞神威 @ 長良川 祐壱  投稿日: 4月30日(月)23時00分07秒

「まず・・・彼等の要求ですが・・・」
「月にはアナハイムだとかの工場も研究施設も有る・・・見捨てる訳にはいかんだろう」
「しかし・・・テロに屈すると言うのですか? 栄光有る連邦政府が!」
「過去がどう有れ今は目の前の問題を解決することが重要です。」
「奴等は要求を受け入れるならば全メディアを通じて発表しろと言うでは無いか・・・
 此処で言いなりになっていては良い笑い者だ!」
「いえ・・・人道的に見て此処で要求を呑むのは恥ずべき事では有りません!むしろ・・・」
連邦議会は揉めていた。
大統領のリリーナがヌーベル・エウーゴの要求を呑むと発言した物の
ゴールドマン副大統領を始めとする強硬派との意見の対立があり話し合いは難航していた。
「今は一刻を争うのです・・・
 あなた方は月で暮らす2億を越す人間の命を何だと思っているのですか」
堪りかねてリリーナが言った。
「し・・・しかし」
尚も反論しようとする議員に向かい
「大統領権限で命じます・・・彼等の要求を受け入れます。」
鬼気迫る表情でリリーナが言い放った。
「わ・・・分かりました。」
渋々返答するゴールドマン副大統領が言う。
「しかし・・・次の選挙では・・・貴方は落選しますよ。リリーナ大統領殿」
「口を慎みたまえ・・・ゴールドマン副大統領!」
喰ってかかろうとするリリーナ派の議員・・・だが
「私達が言い争っている時間は有りません。宇宙要塞の明け渡しの準備を!」
「は・・・はい!」
「それから・・・
 政治思想犯ならびに旧ジオン系技術者で身柄を拘束されている者の釈放の準備を!」
「はい・・・分かりました。」
数時間後、ニュースメディアを通じて連邦政府からの発表としてヌーベル・エウーゴが月の
発電基地等を占拠し、月の2億を越える住民が危機に晒されている事と連邦政府サイドとしては
人道的見地の元、ヌーベル・エウーゴの要求を受け入れる準備を進めている旨の発表が行われた。


第155話 それぞれの方法論(やり方) 投稿者: 鳥坂ザ・OB@富良野 由亜季  投稿日: 5月 2日(水)00時59分32秒

「よし、到着した」
 コンソールパネルの傍で、なにやら作業をしていたアムロがラビアンローズを視認した。
「バーザム・・・なんて数だ」
 まるで虫が群がるように襲い掛かるバーザムの大部隊に辟易するカミーユ。
「一気に殲滅する」
 戦況を確認したヒイロが呟くように云った。 
「了解した。いくぞ、カミーユ」
「はい、アムロさん」

 無人バーザム部隊に物量面で苦戦を強いられていた、ラーディシュを旗艦とするエウーゴ
主力艦隊は、3人の参戦によって主力艦隊ごと殲滅。ものの数分と経たずに戦場は沈静化した。
  
「よく来てくれたな。礼をいうぞ」
 ラーディシュのブリッジに上がってきた3人を出迎えるヘンケン艦長。
「いや、ヘンケン艦長も無事で何よりです」
 アムロは、端から端という距離でよくも間に合ったものだと安堵した。
「コロニーレーザーを奪取したんだってな」
「いや艦長、それよりももっと重大な話がある」
 行き成りの大殊勲に喜ぶヘンケンだったが、アムロはその歓喜の声を制した。
「・・・月の事か?」
 きな臭い月の情勢を気に病んでいたヘンケンは、真っ先にその件が頭をよぎった。
「そうだ。ヒイロや、アンマンにいるシャアからもたらされた情報だ」
「何故シャアはアンマンなんかにいるんだ?」
 他の者の例に漏れず、その辺にひっかかりを持ったヘンケン。
地球に到着して、今頃は例の少女と逢って・・と考えていた筈で当然の反応である。
「何かトラブルがあったようだ。詳しくは聞いていないがな・・・それより月だ
これは、月でこれから行われるであろう事を、入手した情報を元に纏めたディスクだ。
此処に来る間に俺が作成した」
 此処に到着する迄の間にアムロがやっていた作業の正体がこのディスクであった。
 ヘンケンはそのディスクを受け取ると、内容を確認するや否や驚愕の表情を浮かべた。
「まさか、こんな事を考えてやがったとはな。タウ・リンって奴は何者だ?!」
「詳細は全くの不明。皆目正体が掴めないんだ」
 手にした内容説明用のレポートを見ながら、お手上げのジェスチャーをするアムロ。
「その情報を得る為に、我々はこれからシャア達と合流して諜報活動に入ろうと思う
んだが・・・」
「俺は別行動を取る」
 アムロが今後の作戦内容を説明しだした矢先、ヒイロがその気勢を制した。
「どうしたんだ、ヒイロ」
「単独行の方が何かとやり易い」
 アムロの問いに、いかにも彼らしい理由で返すヒイロ。
「・・・確かにな。ヒイロのいう事も尤もだ・・・判った、好きにしろ」
 彼には自由にやって貰う方が得策と考えて、単独行を許可するアムロ。
「じゃあ、そうさせて貰う」
 そう云い残してヒイロは艦橋を後にした。

「カミーユ、君は此処に残ってラーディシュ及びラビアンローズの護衛に就いてくれ」
 退出するヒイロを見遣り、振り返りざまアムロは、カミーユに向かってそう云った。 
「今のラーディシュは先の戦闘で疲弊しきっている。陽動だったとはいえ、再びここを
急襲されないとも限らない。次に襲われたら多分・・・終わりだ」
「そうですね、判ります。当面の補給兼前線基地を失いたくはありませんからね」
 此処に来て情勢を理解したカミーユは初めから残る決心を固めていた。
「助っ人も1人要請してある。頼む此処を死守してくれ」
「判りました。アムロさんも気を付けて」
「あぁ、すまんなカミーユ」
 そう云い残すとアムロは、ラーディッシュのブリッジを後にした。
                                     <続く>


第156話 ライバル達の握手 投稿者: I・C(紙坂一)ブルース  投稿日: 5月 2日(水)17時55分25秒

「首相閣下・・・潜入させた部下から報告があり、連邦政府大統領はヌーベルエゥーゴの
 タウ・リンの要求を呑むとのことです」
セイラの執務室へハマーンが報告を携えて戻ってくる。
すると、ハマーンの背後にあるドアから小さなノック音が聞こえる。
「失礼します」
大きなトレイを押しながらセイラの秘書を務めるリィナが入室して来た。
「あ、あのお茶が入りました」
ハマーンに怯えながらセイラにカップを差し出す。
「ありがとう、リィナ ハマーンもお茶にしない」
「はい」
そう応えるとソファに腰掛ける。
「それにしても、よく議会が納得したのね」
連邦政府がタウ・リンの要求を受け入れたことに安堵の表情を見せるセイラ
「ええ、副大統領以下強硬派の議員がかなり反対したようですが大統領権限で
 押し切ったようです」
「リィナ 私からリリーナさんに月の民の命を一番に考えて頂き感謝しますと伝えてください」
「はい、わかりました」
元気よく返事して立ち上がろうとしたリィナをセイラが優しく制した。
「頑張ってくれてるのはありがたいんだけど あまり働き過ぎるのはよくないわ
 お茶の後にしましょ それとハマーン 月で謹慎しているガトー少佐の復帰手続きを
 至急に」
「ですが」
ガトーを復帰させることに難色を示すハマーン
「今はそのような時ではありません タウ・リンをなんとしも阻止せねば」
「わかりました、早速」


「シャア大佐 連邦議会はタウ・リンの要求を受け入れたようだ」
アンマンにあるエゥーゴ基地のシャアの私室でアリスがタバコに火を付けながら話し掛ける。
「そうか それにしても奴の所在はまだ掴んでないのか」
「ああ、よほど警戒してるらしく こちらの哨戒網にまったく引っ掛からない」
タバコの煙を吐きながらアリスが苦笑した。
「とにかく、発電施設だけでもこちらの手に戻しておかないと 酸素不足で死ぬのだけは願い下げだな」
アリスにつられたように苦笑しながらシャアが呟いた。
「そう思って 一人逢わせたい男がいる。」
アリスがそう言うと一人の男が部屋に入って来る。
「貴様は」
その男を見てシャアが目を見張る。
「こうして貴様と轡を並べて戦わねばならんのは 私にとって本意ではないのだが」
苦渋の表情で話すガトー
「ああ、とにかく貴官が来てくれて心強いな」
「シャア大佐、今は好みを言っておれる時ではない事は自分としてもわかっている。
 存分に使ってくれ」
そう言うとガトーが武人らしく潔く手を差し出した。
「ああ、こちらこそよろしく頼むガトー少佐」


第157話 復縁 投稿者: 昴 大牙@蒼堀さとし  投稿日: 5月 4日(金)01時26分27秒

 タイタニア奪取に来たシロッコを退けたヌーベルエゥーゴの面々であったが
そのことを知ったマーベットの心は穏やかではなかった・・・。
「あたしのせいで・・・ここのみんなを危険な戦闘に巻き込んでしまった・・・」
 マーベットの足は無意識のうちにタイタニアへと向かっていた。

「どこへ行くんだ?」
 タイタニアに乗り込もうとしているマーベットをオリファーが引き留める。
 マーベットが医務室を抜けるところを目撃してここまで追って来ていたのだ。
「!?オリファーさん、あたしとこのMSのせいでヌーベルエゥーゴの皆さんを
危険な目に・・・だからあたしなんかここにはいない方が・・・」
 ぼそりとつぶやくマーベット。
「何を言うんだ・・・マーベット。キミはここにいてもいいんだ。ジュンコがキミを
守ったように、今度はボクが一生かけてキミを守ってみせるから」
「!?」
「記憶喪失でも、強化人間でも、マーベット、キミはキミだ。そんなキミだから
ボクはキミのことを好きになった・・・もう一度言うよ、マーベット、愛してる」
「・・・・はい」
 こうして誰もいないタイタニアの格納庫の中で2人はひとつになった。


第158話 戦乱の中の祝福 投稿者: ゆらりん@迎春生  投稿日: 5月 4日(金)23時04分16秒

「ねえ、マーベットの記憶って戻ったの?」               
「まだ戻ってないんじゃないの?」
「だって、最近の2人って以前のように…なんていうか、
関係が柔らかくなったって感じがしない?」
「そう言われてみればそうよね」
 シュラク隊がミーティング前にマーベットとオリファーのことで
盛り上がっていた。
 みんな妙齢の女性であるから、そういうことには敏感なのだ。

 すると、噂をすれば何とやらで当のご本人達が部屋に入ってきた。
 少し照れくさそうにオリファーが口を開く。
「えー、実は報告がある…」
マーベットが不安そうに、ちらりとオリファーを見る。
一呼吸おいて…。
「僕とマーベットは結婚することにしました」
そのとたん、
「きゃ〜っ、本当に!」
「ほら、言ったとおりでしょっ!」
と、とたんに部屋が騒がしくなるが、オリファーが続ける。
「みんな、こんな時に驚かせてすまない」
「こんな時だからこそいいんじゃないですか?」
「そうよ。そうよ」
 すっかり祝福モードに入ってしまっているシュラク隊。
 不安そうな顔をしていたマーベットも顔をほころばせた。
オリファーもマーベットに微笑みかえす。
「そうだ、式はどうするの?」
 思い出したように、ヘレンがオリファーに尋ねる。
「戦時だから、あげないでおくよ」
とオリファーが答える。
「それは駄目だよ。このさいだから式だけでも挙げちゃいなよ」
「こんな時だからこそ、ぱ〜っといきましょ」
「物資班に言ってみようよ」
「そうよ、そうよ」
この後も、ミーティングそっちのけで、しばらく盛り上がって
しまった。
もちろん、この結婚についてのニュースはその日の内に
艦内全体に知れ渡ったのであった。


第159話 その名はカプル弐式 投稿者: 鳥坂ザ・OB@富良野 由亜季  投稿日: 5月 6日(日)22時53分54秒

 アーガマのクルーがホンコン観光を終えてアーガマに帰還して数時間後、
やっとの事でアーガマの居場所を知ったソシエが、へろへろになりながらブリッジに雪崩れ込んで来た。
「やっと辿り着いたよ〜・・・クリスぅ」
 安堵感からか、その場にしゃがみ込むソシエ。
「ソシエ!今迄何処でなにやってたのよ!?」
 ソシエの姿を見るや否や、クリスは行き成り罵声を浴びせ掛けた
「それはないよ、クリス・・・あたしがどんな思いで此処まで来たか判る?」
 もう完全に半泣き状態のソシエ。此処までの苦難を考えると当然であった。しかし、
「あんたの泣き言なんて知らないわよ!あんたが機敏に行動してたら、迷子になる事なんて
なかったんじゃないの?」
 マシンガンの如く容赦なく罵声を連発するクリス。何か人格変わったんじゃないの?
「あんたねぇ!それじゃソシエがあまりに可哀想じゃない!謝りなさいよ!」
 その光景を黙って見ていたアレンビーであったが、あまりの仕打ちに堪りかねて口を差し挟んだ。
「ちょっと・・・あんた、誰よ?」
 そりゃそうだ。あんたは知らない。
「あたしは、アレンビー・ビアズリー。この子の親友よ!」
 逢ったばかりでもう「親友」と言い切る処に2人に生まれた絆の強さを感じる。
「こんな子の乗艦許可なんていつ出したの?ねぇビーチャ!」
 尚も因縁をつけるクリス。そんな人ではなかったのだが。
「俺は知らないぞ。聞いてるか、エル」
「知らない。あなた誰の許可を得て乗艦してるの?!」
「えっ・・・それは・・・」
 艦長のビーチャは兎も角、人員管理をしているエルにまで話が通っていないのは流石に拙かった。
「なら、私が許可しよう」
 その光景を見遣りながら、ブリッジの入り口に立つゼクス。
「・・ライトニング・バロン!」
 彼の顔を見るなり、クリスが驚きの表情を見せた。
「その名で呼ばれるのは久し振りだが・・・今は階級が違う。ライトニング・カウントと呼んで
貰おう」
「そんな事はどっちだっていいのよ!なんだってあんたが此処にいるのよ!」
 落ち着いた物腰でクリスの発言を訂正するゼクスに、食ってかかるクリス。
「今日付けで、アーガマの作戦参謀となった。宜しく頼む」
「ちょっと!聞いてないわよ!」
 事情説明をするゼクスに対し、尚も食ってかかるクリス。やっぱり「彼女」ではない。
「上官に対しての態度がなってないな。自習室にでも入って頭を冷やすか?」
「う"〜」
 『上官』という言葉に、クリスの言動は全て遮られた。
「さて・・・ソシエという娘はいるか?」
「はい、私ですけど・・・」
 半べそをかきながらも、健気に返事するソシエ。
「ロラン・セアック君から君宛に贈り物だ」
「え・・・ロランから・・・」
 それだけで目の前が開けた様な気分になるソシエ。そしてゼクスは云った。
「この手紙と、新型MS『カプル弐式』だ!」と


第160話 誤算 投稿者: I・C(紙坂一)ブルース  投稿日: 5月 7日(月)00時48分51秒

「そうか、オリファーの奴 とうとう決めたのか」
占拠した発電施設の会議室に佇むハサウェイの許にアイナから吉報が告げられた。
「ええ、この作戦が一段落したら、式を行うそうです」
緊迫した状況下の思わぬ報に二人の顔に笑顔が生まれる。
「ま、これでこの艦隊の二組の内、片方はかたずいたわけだ、で、あとの一組はいつなんだよ」
クルーの一人、エレドアがにやにやしながらアイナとシローの間をからかう。
「なんだよ、もう一組って」
シローがそれに気付かずエレドアに問い掛けると、カレンが呆れたように応えた。
「まったく、相当鈍いねぇ・・・・あんたらのとこだよ」
「え、ええっ、お、俺は、俺達は 」
真っ赤に照れるシローを見て会議室内に明るい空気が流れた。
「その為にも一刻も早くタウ・リンを倒さないといけませんな」
テリーが真面目くさった口調で呟くと冷たいほど冷静な声が聞こえる。
「ああ、そうしないと式もハネムーンもお預けになるからな」
全員が声をした方を向くとアリスがジン・ジャハナムと共に立っていた。
「みんな、聞いてくれこの月の酸素はもう残り少ない、しかし、タウ・リンの居場所については
 まだ判明していない、そこでだ、タウ・リンはともかく後回ししても月の民を救いたい」
緊迫した面持ちでジン・ジャハナムが話す。
「で、どうするんですか」
ハサウェイが聞き返す。
「奴に気付かれないように発電施設を一つずつ解放していこうと思う、
 マフティー、君はシュラク隊と共にここに残っていてくれ、我々はシロー君、ジュドー君、
 ウッソ達と共にリンホースで出撃する。」
「わかりました」
そう言うとハサウェイがジン・ジャハナムに向け手を差し出した。

「シーマ様、前方にMS多数接近 ハイザックにマラサイ ありゃあティターンズですぜ」
コッセルが前方に映るヌーベル・エゥーゴの機体をティターンズと見誤る。
「ナナイ」
「はい」
シーマの鋭い呼びかけにナナイが即座にスクリーンに現れる
「どうも妙だねぇ」
「ええ、連邦政府はヌーベルエゥーゴの要求を呑んだと聞きましたが、また強硬派が動いてるのでしょうか」
先の派遣艦隊で懲りたと思っていたゴールドマンが動いたことに不信感が拭えないナナイ
「ふふ、おしおきしてやらないとねぇ」
ナナイのその考えに気付かずシーマが残忍な笑みをその顔に浮かべる。
「では、艦隊にMS隊を出させますか」
「ああ」

「艦隊司令、デラーズフリートの艦隊がこちらに攻撃を仕掛けてきます」
「ティターンズの艦隊と偽装したのが、裏目に出たか」
苦りきった表情でオペレータに応じた。
「なんだい、呆気ないねぇ、沈みな」
味方と思っていたデラーズフリートに襲われ狼狽しきったMS隊を瞬時の内に突っ切って敵旗艦の前に出る
とビギナ・ゼラのヴェスパーを撃った。
「な、バカな」
抗議しようと口を開いた瞬間、司令官が乗艦諸共宇宙に消えた。


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