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ジュドー達を、みすみす敵陣に行かせてしまった自分達の無力さに滅入りつつ
グラナダまで帰還したシャア、ララァ、ジョニーの3人は、シャアの自宅にいた。
一言の言葉も無い3人。敵にいいようにあしらわれて本来の目的を何も果たせず帰還した事が
余程堪えていた様であった。
左肘を壁に当て握り拳を作り、俯いたまま唇を噛み締めるジョニー。
時折シャアの様子を伺いながら、寂しそうな表情を浮かべるララァ。
そして、子供の頃妹アルテイシアと一緒に写った写真が収められたフォトスタンドを手に取り
沈痛の表情を見せるシャア・・・・。
其処に思わぬ客が訪れた。デラーズ・フリートのアリスであった。
「デラーズ・フリートが何の用だ!」
応対に出たジョニーが声を荒げる。つい先程いいようにあしらわれた相手である。
彼の苛立ちは尋常なものではない。
「私はシャア大佐に話があって来たのだ。火急の用件だ」
落ち着いて目前にいるジョニーをあしらうと、シャアへの面会を要求するアリス
「私に・・・・火急の用だと?」
自宅の所在などの詳細なデータは当然デラーズ側には筒抜けである。アリスが突然尋ねて来る
のは造作もない事であった。
「アポイントは取ってあった筈だがな。シャア大佐・・・これを」
尚も苛立つジョニーに対して言い放つと、シャアの方に向き直り例のディスクの解析レポートを
彼に見せるアリス。
「・・・何!?・・・これは」
レポートの内容に驚愕するシャア。まさかこんな恐ろしい事を企む者がいるなどとは彼自身
青天の霹靂とでも云うべき事態であった。
「私もこのディスクの中身を知った時、恐怖を覚えました・・・よくもこんな事を企んだものだと」
俯き加減に心境を語るアリス。身を竦めん程の事態に彼女自身恐怖の色を隠せないでいた。
「うむ・・・これでは・・・地球圏の明日は根こそぎ奪い去られる事になる」
あまりの事態の深刻さを前に顔に手をやり、何やら考え込むシャア。
「これを考えた奴は何処のどいつだ!くそったれっ!!」
シャアから手渡されたレポートを読み終え、苛立ちを更に募らせるジョニー。
「なんと・・・おぞましい・・・大佐!」
レポートの内容から、この作戦の悪意までをも読み取ってしまい、顔を伏せるララァ。
「これは何としても未然に防がねばならん・・・」
断固阻止の決意を明確に打ち出すシャア。こんな事は絶対させてはいけない・・・許してはいけない事
なのである。それはこの地球圏に存在し生活する全人類の願いでもあるのだ。
「越権行為である事は覚悟しております。しかし、各陣営が鬩ぎ合いをしている場合ではない様に
思えて・・・こうしてご相談に上がりました」
勢力争いの渦中ではあっても、人類がいや、地球圏が滅んでしまってはどうしようもない。地球圏
あっての勢力争いでもある。これは全勢力共通の事項でもあろう。そんな思いが彼女を突き動かしたのである。
「よく知らせてくれた・・・判った。この一件にカタが着くまでは休戦としよう。エウーゴにも
通達しておく。しかしこの作戦・・・中心で動いている人物は誰だ?」
「こちらも現在調査中なのですが・・・そこまでは判明しておりません。」
「了解した。それはこちらでも調査してみる事にしよう。ご苦労だったな」
アリスに労いの言葉をかけるシャア。彼女が知らせてくれなければ、地球圏の命運が掛かった事態を
知らず、ともすれば全人類の全滅を垣間見る結果になっていたかも知れなかったのだから。
「は、ありがとうございます。それでは。」
毅然とした表情で、敬礼を交わして退出するアリス。
「いいのかよシャア!あいつを信用して!」
デラーズの人間である彼女の話をイマイチ信用出来ないジョニー。
「どう思う、ララァ」
シャア自身の気持ちは決まっていたが、ララァにも意見を求める。
「あの方は嘘をついてはいない様に思えます。本当に地球圏の将来を杞憂しての行動だったのでしょう。」
レポートも内容から全てを読み取ったララァは、シャアの決意に対して異存はなかった。
「うむ、私もそう直感した。・・・嫌な感じがするのだ。彼女の云った事に対してのものだろうな。漠然
とした地球圏に対する不安の様なものだ。」
「大佐・・・・」
シャアもララァがこの事態の裏まで読み取っていた事を確信し、ララァもシャアなら判ってくれるだろうと
判断した。2人の「ニュータイプ」という特性を超えた相互理解の賜物であった。
「この事をエウーゴに通達、ブライトやヘンケン艦長、地球にいる連中も交えて協議する。急ぐぞ!」
そう云うとシャアは、ララァとジョニーを伴って、ブレックス准将の私邸に向かった。
シャア、ララァ、ジョニーは、急いでブレックス准将の私邸へ向かった。
一刻を争う事態である。
シャアは、厳しい表情で下を向いたままだ。
そんなシャアをララァは心配そうに見ている。
その時、シャア達の乗る車の上空を一体の偵察用リーオーが飛んでいく。
「なんだ、あのMSは?ここらじゃ見ないMSだな。
お、おい、この方向は、准将の私邸の方だぞ。」
「ジョニー、急ぐのだ。」
その時、前方ですさまじい爆発音が響いた。
3人が到着した時には、すでにMSはなく屋敷は炎で包まれていた。
シャアが、立ちつくしていると燃え上がる屋敷から出てくる人影がララァの
目に入った。
「大佐、ブレックス准将です」
3人は准将のそばに駆け寄る。
「大尉・・・・・。ヌーベルエゥーゴだ。派手にやられたよ。」
「すぐに病院の手配を。」
「いや・・・・その必要は・・・ない。もう手遅れだ。
頼む、大尉。人の革新を見せてくれ。その・・・・為にも
ヌーベルエゥーゴの野望を阻止・・・・してくれ。
トレーズ君と共にエゥーゴを頼んだぞ・・・・。
大尉、いやシャア=アズナブル・・・・・」
「准将・・・・・。」
シャアは、サングラスを取り新たなる決意を固めた。
「くそっ、ヌーベルエゥーゴめ。やりたい放題にやりやがって。」
ジョニーやララァの目にも涙が浮かんでいた。
准将の私邸の炎は、その後屋敷全体を焼き尽くすまで消えなかった。
まるで、准将の無念の思いに・・・そしてシャアの決意の様に・・・・。
一人の偉大な指導者がこの世を去った。戦局は、また方向を変えていく。
地球圏の運命とともに・・・・・。
「以上がアリス少佐からの報告であります」
情報部員が会議室に居並ぶ幹部の前でそう報告を結ぶ
「ヌーベルエゥーゴがなぁ」
ラルが落胆したように呟く
「うむ、恐らくマフティーのような穏健派ではなく強硬派の一部が暴走したのでありましょう」
ラルの呟きを受けてタシロが応じる
「私も彼がそのような策を取るとは思えません」
一番上座にいたセイラが口を開く
「アルテイシア様 彼を知っておられるのですか」
「いえ、直接はただ彼の両親と共に戦ったことはあります」
ブライト夫妻の名を出すわけにはいかず口を濁しながら話す。
「で、どうすんだよ」
しぶしぶながら会議に出席させられていたジュドーが場の空気に絶えられず割り込む
「とにかく、こちらからも艦隊を出さねばなるまい」
ジュドーの隣に座るハマーンがジュドーを制しながら発言する
「しかし、今我等はシーマ艦隊にも増援を向けねばならぬ状態です その上月に艦隊を派遣すると
なればこの茨の園が手薄になります。」
デラーズが逮捕され現在ハマーンの軍事的補佐官であるタシロが異論を唱える
「構わん エゥーゴとは一時的とはいえ全面的に休戦せねばなるまい その間連邦とティターンズの押さえ
をシーマ艦隊とエゥーゴのロンドベルにさせても問題なかろう」
ハマーンがそう応じる
「ではどの艦隊を差し向けますか」
「その役目私にお任せいただきましょう」
今まで隻眼をハマーンに向けていたザビーネが立ち上がる
「うむ、では貴公に任せる」
ハマーンがザビーネを見ながら頷く
「おい、ハマーン 俺も行かせてくれよ」
ハマーンの隣にいたジュドーが言う
「貴様 無礼であろう 貴様のようなガキの出る幕ではないわ」
タシロがジュドーに向け罵声を浴びせる
「なんだと」
いきり立って立ち上がったジュドーを制してハマーンが口を開く
「タシロ ジュドーは私の客人だ 無礼は許さん いいな」
そこで一旦区切って居並ぶ幹部を眺める
「ジュドー よかろう行ってくるがいいだがわかっているな」
暗に人質が居る事をほのめかしながらジュドーに優しい目を向ける
「わかってるよ」
憮然として応じるジュドー
「ジュドー お前はザビーネと別行動を取ってもらう」
「別行動」
首をかしげるジュドー
「この茨の園に近づきつつあるジン・ジャハナムと接触し協力を仰げ
そこの艦隊にいるナナイの姉が助けてくれるであろう」
「OK」
無事大気圏を突破したトレーズとゼクスは、ザンジバルと合流後ホンコンに到着、現在は
九龍城地下にあるカラバの秘密基地にいた。
九龍城地下基地。
現在、反地球連邦組織中最大級の規模を誇る基地である。
施設がフル稼働すれば、数千人規模のスタッフが稼動する事になるのだが、後に述べる理由により
現在基地移転の方向で話が進んでいた。
「こんな所にこんな巨大な施設が存在するとは・・・驚きだな」
初めて此処を訪れた者は皆、口にする言葉である。
「九龍城は現在廃墟になっている。我々の様な組織にとっては都合のいい場所なのだ」
灯台元暗し・・・九龍城地下を利用した経緯をゼクスに話すトレーズ。とそこへ・・・
「おにいさま・・・」
一際気品のある女性が、ゼクスに話し掛けた。過去を紡ぐような物腰である。
「リリーナか?」
雰囲気や物腰でそう確信を持ちながらも、疑問符を添えながら女性に語りかけるゼクス。
「ご無沙汰しております。おにいさま」
目を伏せ、ゼクスに対し軽く会釈するリリーナ。実に数年ぶりの再会であった。
「私こそ・・・息災なようで何よりだ」
マスク越しだが、懐かしさが込み上げてくるゼクス。
「彼女は今、地球連邦政府の大統領と云う要職にあらせられる」
現在の彼女の立場について補足説明するトレーズ。彼女は数年逢わない内にそんな立場にまで
祭り上げられていたのであった。
「そうなのか・・・リリーナ?」
流石に驚きを隠せないゼクス。信じられないという様相を見せた。
「はい・・・地球連邦政府代表大統領リリーナ・ピースクラフト。それが現在の私です。無戦主義は
相変わらずですが、今はそれを貫ける程状況は甘くありませんので。」
現在置かれた立場を正確に認識し、今やるべき事を正確に把握している自信であろうか、彼女の
受け応えには迷いはなかった。
「裏取引の横行により民主的な議会運営が困難になっている連邦議会に業を煮やしていらしたリリーナさん
と、堕落し腐敗しきった連邦軍に頭を悩ませていた私とブレックス准将が連邦内部の改革、粛清を目的に
組織したのが、反地球連邦組織である『エウーゴ』と『カラバ』なのだ。まぁ我々も組織運営するに
当たって戦争商人共の力を借りてはいるがな。」
エウーゴやカラバの成り立ち、連邦内部の現状、自身を取り巻く物全てを説明していくトレーズ。
余り『エレガント』とは云いがたい現状ではあるが、それを打破せんとする決意だけは伺えた。
「それは致し方なかろう・・・。ティターンズはさしずめ『連邦の膿』という訳だな」
この手の話に企業が趣旨に賛同して資金を提供するという事は殆ど有り得ない。如何してもそこに
商人ならではの『計算』が介入する。戦争景気を煽って儲けようとする企業がこの話に乗って来る事は、
至極当然の事である。理想だけでは片付けられない現実がやはり存在するのである。
そしてティターンズは今の連邦の腐敗振りを天下に知らしめている存在なのである。
「そういう事になるな。ただ連邦議会で正式承認されている為、やつらの連邦内に於ける権力は絶対的だ。
但し先のグラナダの1件やコロニーレーザーの1件は揉み消し出来んだろうから、ある程度の突き上げは
食う事になるだろうが・・・厄介なのは近頃議会を裏で操る『ウォン・ユンファ』と云う男だ」
ウォン・ユンファ・・・ホンコンの首相であり、俗に連邦政府を影で操ると云われている男である。
この男が連邦政府内で強大な発言力を持ち始めたのは最近の事で、ティターンズ再結成の際裏で暗躍して
いたのもこの男と目されている程の『危険人物』であった。
「先程聞いた・・・ホンコンの首相か・・・」
「そうだ。此処が危なくなるのも時間の問題・・・と云う訳だ」
ホンコンにカラバの拠点がある事を知りながら泳がしている公算が高いと云うトレーズ。
「他に拠点となりそうな処は?」
「現在準備中だ。上手く都合が付けば面白い事になるやも知れん」
場所は明言を避けたが、かなりの手応えを感じ取っているようなトレーズ。
「他のメンバーは?」
主だったメンバーは周囲にはこの3人だけである。ゼクスが疑問に思っても不思議ではない。
「聞いた処によると、まだ市内観光だそうだ」
呆れた様にそう言い放つトレーズ。
「呑気な連中だ」
ハードな話が続く基地内部にあって、外に居るメンバーのお気楽さに頭を悩ますゼクスであった。
ホンコンの料理店を殆ど荒らしたクリスがフォウを連れて街をさ迷っていた
「うーん・・・・めぼしい店はほとんど行ったしなぁ・・・」
頭に手を当て辺りを物色するように視線を移動させながら呟くクリス
とそこに一人男が現れる
「クリスティーナ・マッケンジーとフォウ・ムラサメだな」
その男 ゼロ・ムラサメが二人の前に立ちふさがる
「な、なによあんた」
「う、にいさん・・・」
同じNT研で育ったフォウが小さく呟く
「で、あたしらに何の用なの」
「お、お前等をあいつには渡すわけにはいかない ついて来い」
クリスの手を引っ張り強引に走り出そうとするゼロ
「ふっふっふっふ ここにいたんですかゼロ・ムラサメ逃がしませんよ」
数人の部下を引き連れ赤い和服を着た男が3人の前に立つ
「くっ、遅かったか」
ゼロの顔に焦りが浮かぶ
「さぁ この私 ギム・ギンガナムと一緒に来てもらいますよ お嬢さん方」
その男ギンガナムが不敵に笑う
「くっ、これでもくらえ ファイヤーボール」
突然呪文を唱えるとギンガナムに向け放つ
「ふっ 私にはこんなもの効きませんよ」
評定を崩さずじりじりと近づくギンガナム
「ちょ ちょっと一体こいつ 何者なのよ」
クリスが突然目の前で展開された光景に驚く
「とにかく 俺についてこい いいな」
2人に小声でそう言うと再び呪文を唱えだすゼロ
「ガーヴ・フレア」
ゼロが呪文を唱えた瞬間 炎がギンガナムに向け一直線に走る
「小ざかしい真似を」
手をかざして炎をかき消したギンガナムが気づいた時には既に3人の姿はなかった
「逃げられましたか 直ぐに追え そう遠くには行ってないはずだ」
部下に指示を出すと自らも3人を求めて歩き出す
「そう簡単には逃がしませんよ」
「はぁ はぁ なんとか巻いたようだな」
3人がたどり着いたのは一つの廃墟となった雑居ビルだった
「で、あんたは一体何者なの それと」
息を切らせながら問い掛けるクリスを制するとゼロが再び話し出す
「俺はゼロ ゼロ・ムラサメ あいつらは俺がいたムラサメ研を乗っ取った連中だ」
ゼロの話を聞いてフォウの顔が青ざめる
「そ、そんな」
「あの男ギム・ギンガナムはムラサメ研のNTの力を使い魔神を復活させようとしてるアブナイ奴だ」
「まじんって あの21世紀最高の声優と呼ばれた」
クリスがそう言うとゼロが呆れたように応じる
「誰だそれは とにかくフォウ お前をあいつ等には渡すわけにはいかない」
「おにいちゃん」
手を取り合って見つめ合う二人を見てクリスの表情がひきつる
「と、とにかく これからどうするつもりなの」
顔をひきつらせながらも今後の事を問うクリス
「あいつらが俺とフォウを狙ってるのは間違いない そこでだクリスお前の力を借りたい」
フォウの手を離さないままクリスの方を向き話すゼロ
「ちからったって あたしただのMSのパイロットよ あんなバケモンみたいなのと戦えるわけないじゃない」
クリスがびっくりしながら言う
「いや、お前にはその力があるはずだ」
きっぱりと言い切るゼロ
「うみゅ・・・そんなこと言われたってねぇ・・・」
右手を顎に当て考え込むクリス
「お前にはあの伝説のドラまたの血が流れてるのは既に調べた」
「むっ・・・」
ドラまたと聞いてクリスの額に青筋が浮かぶ
「どうだこの言葉を聞いてその反応がでるということはあの胸の小さかったという魔道士の血が流れてる
証拠だ」
自分が自らの死刑執行にGOサインを出したのにも気づかず語り掛けるゼロ
「誰の胸が 小さいってぇ バーストロンド」
怒りのあまり我を忘れて呪文を唱えるクリス
「ふぅ 結界を張っててよかったあやうく 吹き飛ばされる所だった」
ゼロが苦笑する
「クリス あなた」
フォウが呆然とクリスを見るが彼女も自分の手を眺め呆然としていた
「な、なに あたし一体」
「とにかくここを出よう今の呪文でこちらの居場所がバレたかもしれん」
「OK ゼロ」
シュラク隊はファラ率いる偵察部隊と接触してしまった。
「マーベットッ、聞こえるかっ?」
オリファーはさがしていたマーベットをみつけて必死に叫ぶ。
だが、戦闘に突入してしまい、相手の声はミノフスキー粒子が濃くなったため雑音の向こうに
かすかに聞こえるのみである。
「くそっ、聞こえないのか、マーベット!」
「どうしたの!?オリファー!」
ジュンコにはマーベットの声は聞こえなかったのだ。ジュンコ機がオリファーのVヘキサに機体を近づく。
「マーベットが、あのMSに乗っているんだ。やっぱり生きてたんだよ、マーベットは」
今にも泣きそうな声でオリファー。
オリファーは通信が出来ないので、接触回線で話をするべく必死でタイタニアに取りつこうとする。
ジュンコたちシュラク隊もオリファーの為に道を開き、フォローに回る。
(私って、恋敵を助けようとしてるのね。以前はマーベットがいるせいでオリファーとの関係を
堂々とできないと思ってたけど。)
「今だよ、オリファー!マーベットの元へ行っといで!」
タイタニアのファンネルを切り払いながら叫ぶジュンコの顔はもう晴れ晴れとしていた。
「マーベット、聞こえるか?オリファーだ。聞こえたら返事をしてくれ。」
タイタニアに接触回線を開いて呼びかける。
マーベットはもちろん聞こえていたが、その心は混乱していた。
(ガンダムは敵だ、私を傷つける機体だとファラ隊長は言った。でも、この声は
とても懐かしいような気がする。…どっちが本当なの?)
「あなたは誰?私を知っているんですか?」
「覚えてないのか?一緒に戦っていたなか(ザーッ)」
急にノイズが入る。タイタニアとVヘキサの間にファラのザンネックが割り込んできたのだ。
「何をごちゃごちゃ言ってるんだい?ガンダムは敵だっていったろう!?」
「…はい」
そう返事すると、マーベットは取り憑かれたようにタイタニアからシュラク隊にむけて
ファンネルを一斉発射させた。
ザンネックとタイタニアのファンネルが一斉にオリファーの乗るヘキサを狙っ
てきた・・・。
「くっ、避けられない・・・・」
オリファーは死を覚悟した・・・。マーベットに殺されるならそれもいいかも知れない・・・そう思った・・・。
「そうはさせないよっ」
ヘキサを守るようにしてガンブラスターが突っ込んでくる・・・。
「ジュンコ!」
「オリファー、あんたが死んじまったら・・・誰がマーベットを元に戻すんだ?
あんたはここで死んじゃいけない人間なんだよ・・・」
「ちっ、こざかしいまねを・・・」
ファラはザンネックでのファンネル攻撃をさらに続けてくる・・・。
「そんなに死にたきゃ、あんたからあの世に送ってやるよ」
ファンネルのビームが確実にコクピットを狙っていた・・・。
「オリファー、あたしの最後の戦いぶり、しっかり見ておいてね・・・」
ジュンコの乗ったガンブラスターはビームライフルを構えザンネックに突っ込
んでいった・・・ファンネルからの無数のビームがコクピットに向かって放たれ
る。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「あんたもね!」
ジュンコも残りのエネルギー全てをビームにしてザンネックのコクピットに
むかって放った。
ライフルから放たれたビームはザンネックのコクピットを見事に貫くコースで
ある・・・。
「こ、こんなバカな・・・あたしが、このあたしがぁぁぁぁぁ」
ジュンコ渾身のビームライフルの一撃はコクピットを見事に貫き、ファラは
跡形も残ることなく、宇宙の藻屑と消え去った・・・。しかし・・・、
「マーベット・・・あたしが死ぬところを見てもまだそっち側にいるようなら、あた
し、一生アンタを恨むからね・・・」
コクピットでボソリとつぶやくジュンコをファンネルのビームが貫いた・・・
コクピットは木っ端微塵になり、ジュンコもまた還らぬ人となった・・・。
あとには呆然と立ちつくすオリファーのヘキサと同じく呆然としているマーベットのタイタニアだけが残された・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
2人ともショックであったのか、目には光がなかった・・・。
クリス達がビルから離れて数分後 そのビル内にギンガナムの部下が飛び込んで来る
「しまった 遅かったか」
ギンガナムの部下の一人が悔しがる
「どうやら彼らには逃げられたようですね」
とそこにギンガナムが入ってくる
「それにしてもゼロとは違う波動を感じます フォウにもこのような力があるとはすばらしいですね」
よもやクリスとは気づかず一人悦に入る
「とにかく、ここまでくれば大丈夫だろう あいつらはさっきの魔法で引き寄せられてるだろうしな」
街中を歩きつつゼロが話す
「まさか、あいつらもこんな街中で仕掛けられないでしょうしね」
クリスが辺りを探るように見渡しつつ応じる
「ああ」
「あれ・・・そういえばフォウは」
一緒に歩いてたフォウの姿がないことに気づいたクリスが驚く
「なにっ」
ゼロが焦る
「・・・・・・・ねぇ あれ フォウじゃない」
店の中の刃物を愛しげに眺めてるフォウを見てクリスがゼロの肩をちょんちょんと叩く
「ああ、そうだな ・・って」
尋常ではないフォウの様子にゼロが絶句する
「うふふ・・・この輝き この鋭さ うふふふふ ああ・・・」
一人別の世界にいっちゃってそうな表情でナイフに頬擦りする
「ね、ねぇフォウ」
おずおずと呼びかけるクリス
「ねぇこの子可愛いと思わない」
いっちゃった表情のままクリスの方を向くフォウ
「か、可愛いって」
顔を引きつらせるクリス
「決めたわ あたしこのジャックくんを買うわ」
目をキラキラさせながらレジに向かうフォウとそれを成すすべもなく見送るクリス
「ね、ねぇ ゼロ ムラサメ研ってどういうとこなの?」
今まで一言も発せず妹の行動をただ呆然と眺めていたゼロをつつき小声で話すクリス
「あ、ああ いや ・・・その」
なんと返せばいいのか困惑の表情になるゼロ
「うふふ・・・・」
ジャックくんを含め色んな刃物を買い揃えたフォウが満足そうに笑う
「あ、あの フォウわかってると思うけど 街中でんなもん振り回しちゃあたしら警察に捕まっちゃうん
だからね」
「頼むから騒ぎだけは起してくれるなよ ギンガナムに見つかるわけにはいかんからな」
頭を抱えつつ懇願するゼロ
とそこへちょうど警官が一人の少女を引き連れている
「ちょっと 離しなさいよ 痛いじゃない あたしにこんなことしてタダで済むと思うわけ」
その少女クエス・パラヤが喚き散らしているが警官はうるさそうにしながらも無視していた
「・・・スリープ」
警官の視線が自分の方から離れた一瞬の間に呪文を唱えるクエス
すると、クエスを引っ立てていた警官がぱたっと倒れる
「き、きさま一体何を」
側にいた同僚が拳銃を抜きクエスを撃とうとする
「ゼロ」
「わかってる」
呪文を使ったクエスを見て クリスとゼロが目配せをする
「あの子を助ければいいのね」
フォウが日本刀を鞘から抜き構える
「ちょ、ちょっとフォウ」
クリスが慌てて止め様とするが一足遅く フォウが駆け出す
「お〜ほっほっほっほっほっほ このあたしをあの程度の手錠で拘束しようなんてあまいわっ」
勝ち誇って高笑いをあげるクエスに的をしぼる警官だったがフォウに斬られる
「うふふ・・・・・ いい子ね ムラマサくん」
ぶっそうな名前をつけた愛刀を収めながら呟くフォウ
「おい、フォウお前」
真っ青な顔をしたゼロが駆け寄る
「心配しないでおにいさん 峰打ちよ」
ハートマークが幾つもにじませた口調で応じるフォウ
「と、とにかく この場は逃げないとヤバそうよ えーっと」
「クエス クエス・パラヤよ」
「よし、クエスとにかく俺達と一緒に逃げよう いくぞ」
そう言うと走り出す4人
「あーーーん またこんな展開なのぉ もう勘弁してよー」
クリスの泣き声がホンコンの街中に響く
場所は変わって此処は旧フォンブラウン市こと、ムーンレイスの拠点に存在するとある病院。
木星圏からコンテナと一緒にサイド1コロニー群の「シャングリラ」に流されてきた特殊工作員と
目される男は、意識を回復しないままロンドベルのクルーの手により、より設備の整ったこの病院に
移送されていたのであった。
「ウオァァァァァ〜〜〜ッ!!!!ガンダムゥゥゥッ!!!」
その男は突然意識を取り戻した。
男の名はコレン・ナンダー。ウーフェイの前にコールドスリープ状態のまま『木星送りの刑』に
処された男である。
「どうされました?コレンさん・・・あ、漸く気が付かれたのですね。良かった」
突然コレンの病室から大声が聴こえてきた為、様子を見に来たキエルは、血色のいい顔で現在自身が
置かれている状況に驚いているコレンを垣間見、自身の胸に手をあて安堵の溜息を漏らす。
コレンのパーソナルデータは、当然ムーンレイスのデータベースに収められていた。
意識不明であっても正体不明ではなかったのである。
そして、そんなコレンが一度キエルと顔を会わせると・・・
「はぁぁぁっ!?!?ディディディ・・・ディアナ・ソレルさまぁぁぁ〜へへーっ」
木星送りになる前は、ムーンレイスの一員としてこの国の長たるディアナ・ソレルに対し忠誠を誓った
立場である。しかし彼女と瓜二つの容姿を持つ少女『キエル・ハイム』の存在までは知らなかったのである。
だが例え知っていたとしても、おいそれとは見分けが付かない2人である。
『別人』などと言う事実はこの際無視して2人共崇拝するに違いなかった。
「ちょ、ちょっとお顔をお挙げ下さい。私はディアナ陛下ではありません。この病院で看護婦をしている
キエル・ハイムと云う者です。」
ディアナと間違えられた事を受けて、慌てて自己紹介じみた事をするキエル。
「い〜〜えっあなた様はディアナ様に間違いございませんっ!敬愛して止まないディアナ様のお顔を
私が忘れるなど、あろう筈がございませんっっ!」
やはり彼は『お構いなし』であった。彼の目に映るこの少女の容姿や物腰は、間違いなくディアナ・
ソレルのそれに間違いなかったのである。
「困りましたねぇ・・・まぁ今はいいでしょう。あなたはシャングリラの宇宙(そら)に迄流されていた
処をジャンク屋の少年に拾われて以後、ロンドベル隊の協力で此処まで運ばれてきたのです。感謝なさい」
此処へ運び込まれる迄の経緯を掻い摘んで説明するキエル。
此処へ辿り着く迄には、彼の預かり知らぬ処で幾多の苦難があったのである。
「そうですか〜それは・・・まてよ、思い出した!ロンドベルっていやあ『ガンダム』じゃありませんか!
ディアナ様!これは一大事!」
コレンは関係各所に感謝の念を込め始めた刹那、妙な事を思い出した。
彼が刑に処された前後、既にロンドベルは第13独立部隊として目覚ましい活躍を遂げていた。
その陣容はまるで『ホワイト・ベース』を想起させるものであり、巷では別名『ガンダム部隊』として
通っていたのであった。
コレンが以前因縁浅からぬ関係となったガンダムは彼らではないが、『ガンダム』という名前が
彼をどうしようもない衝動へと駆り立てていったのである。
「あ、何処へ行くのですコレンさん!あなたは未だ安静にしておかないと」
突然飛び起きて病室を抜け出すコレンを必死に呼び止めるキエル。
「申し訳御座いませんディアナ様!こればかりはいくらディアナ様の頼みとあっても聞く訳にはいきません!
待っていろよガンダム!!これまでの恨み晴らしてくれる!」
キエルの静止も振り切って一目散に駆け出すコレン。打倒ガンダムの旅が今始まった。
「んで、あたしは何をすればいーの」
逃亡の果てに辿り着いた郊外のレストランで、パフェを頬張りながらクェスが訊ねた。
「実は俺達は今ギンガナムという危ない奴と戦おうとしてるんだが、一人でも強力な仲間が欲しい
手伝ってくれるか」
「ん、そーねぇ・・・・ あ、ウェイトレスさーーーん もう一杯追加ねぇ〜」
少し考えこんでから、くるっと向きを変えてウェイトレスの方を向き、呼びかけたクェス
「あ、あのなぁ・・・」
「そういえばさぁ クェスあなたなんで魔法が使えるわけ あ、おねーさーーーん
こっちフルーツサンデー追加ね」
クェスに語りかけながらも食う事には妥協しようとしないクリス
「クリス お前なぁ」
ゼロが頭を抱えながら、クリスに話し掛けた。
「えーっとねぇ インドに居た時にソコの子達と遊んでたらいつの間にか使えるようになったの」
「流石はインド仏教発祥の地だけのことはあるわねぇ」
仏教徒が聞いたら石を投げてきそうな表現で相槌を打つクリス
「で、これからどうするつもりなのゼロ」
目の前に食器やらなんやらを散乱した机を挟みながらクリスがゼロに問い掛ける
「そうだな、俺にお前に フォウにクェス4人だけであいつに勝てるだろうか」
3人の顔を見渡しながら呟くゼロ
「お〜ほっほっほっほっほっほっほっほ あたしに敵う奴なんていないわよ」
「うふふ・・・このムラマサくんが血を吸いたいって騒いでるわ」
急に高笑いをあげるクェスと日本刀を握り締めたまま静かに笑うフォウを見て
二人の表情がひきつる
「・・・・・クリス」
殺気を感じクリスに小声で話し掛けるゼロ
「わかってるわ」
同じく小声で返すクリス
「左に5人 右に10人ね」
ずっと高笑いをあげていたクェスが真剣な表情で辺りを窺う
「どうする」
ゼロがまた小声で問い掛ける
「とりあえずあたしは右」
クリスがぼそっと応じる
「じゃああたしも右」
クェスが同じく右の方をみて呟く
「じゃあ俺とフォウは左で」
「OK」
3人の声がハモる
サイド7空域のロンドベル隊とシーマ隊の戦闘は、コロニーレーザーという招かれざる客
の介入によって、双方痛み分けの形となった。
「シーマ隊は・・・引いたか。各員に通達!ロンドベル隊はこのままコロニーレーザー奪取
に向かう。各人の健闘を祈る。以上だ」
戦況を確認したブライトから総員へ新たな通達が下った。それは現在ティターンズが保有する
コロニーレーザーの奪取作戦であった。
「アムロさん、聞きましたか?」
まだ慣れぬ機体で苦戦しながらも戦い抜いたカミーユが、疲れをものともせず次の作戦事項
の確認をアムロと交わす。
「あぁ。ティターンズにこのまま、コロニーレーザーを持たせて置く訳にはいかないからな」
アムロにしてもカミーユにしても、過去にコロニーレーザーの恐怖を体感した者だけに
狂気とも云うべき集団、ティターンズに所持させて置くのは地球圏の脅威以外の何物でもない
と直感していた。
「我々も協力します」
ハリーのスモーが、ロランのターンAと共に協力を申し出る。
「宜しく頼みます」
改めてムーンレイスの2人に協力を仰ぐアムロ
4人は結束も新たにコロニーレーザー(グリプス2)奪取に向かった。
「ロンドベル隊がグリプス2に向かって突出してきます」
大慌てで対応するアレキサンドリアのオペレータの声が、ブリッジを駆ける。
グリプス2のコロニーレーザーは、アレキサンドリア側からの指示で運用がコントロール
されており、グリプス2周辺の状況は逐一モニターしていた。
「何!コロニーレーザーの再発射はどうなっているか!」
「準備に後3時間余りかかります」
「えぇーいっ!MS隊を出撃させい!」
時間稼ぎの必要性を迫られ頭に血を上らせるアントニオ・カラス司令官。
直後、ティターンズサイドの僚艦から支援用に大量のMSが射出されていった。
敵の陣容は、ガブスレイありハンブラビありバーザムありとその数ざっと30数体。
先の戦闘で傷ついたロンドベル隊にぶつける戦力としては大仰すぎる数である。
「来たな」
臨戦態勢のアムロ。敵の技量を、その独特の能力で推し測り問題なしと判断したからか
表情には少し余裕すら感じられた。
「あの程度なら何とかなりますよ」
カミーユの方もそう感じた様で、既にコロニーレーザーをどう奪うか?の方に頭が向い
ていた。
「ターンA1機でも凌げそうですよ」
相当な自信をもっているように聴こえるが、ターンA自体のスペックを考えればロラン
の自信に満ちた物云いも納得できるものであった。
「私も手を貸そう」
ティターンズの悪行を、ロンドベルのメンバーと共に嫌と云う程垣間見たハリーには
『今倒すべき相手はティターンズ』の意思が明確に現れていた。
「僕もお手伝いします」
愛機、サンドロック改に乗り込み世界を正しい方向に導く為に戦う気構えを見せる
カトル。
「では、ロラン君とハリーさん、カトル君の3人は迎撃部隊の方を頼みます。カミーユは俺と
コロニーレーザーを押さえる。行くぞ、カミーユ!」
「はい、アムロさん」
大部隊の相手を3人に任せ、アムロとカミーユは世界の秩序を脅かす大元を押さえに、
漆黒の宇宙を駆けていった。
「行くわよ フレアーアロー」
クリスが呪文を解き放ったと同時にクェスも呪文を解き放つ
「お〜ほっほっほっほ フリーズアロー」
お互いの呪文が消滅した瞬間 二人が睨みあう
「ちょっと あたしの邪魔しないでよ」
クリスがクェスに食ってかかると
「それはあたしのセリフよ」
クェスも負けずに反論する
火花が散る程のにらみ合いにギンガナムの部下の気圧され手を出しかねていた。
「ふっ どうやらあなたには一度格の違いを思い知らせておいた方がいいようね」
クェスが見下したような視線でクリスを見る
「望むとことよ」
クリスが臨戦体勢を取りクェスを牽制する。
「な、なにをしてる 行け」
その時 ギンガナムの部下の一人が二人を襲おうと仲間に指示を出した
「死ねっ」
ナイフを構えて二人を攻撃しようと男が数人走りだした瞬間
「えーい うっとしいっ ファイヤーボール」
クリスが放った呪文が近づいた男達を吹っ飛ばした。
「くそっ」
「ディルブランド」
尚も襲い掛かろうとしたギンガナムの部下だったがクェスの呪文で一瞬にして吹き飛ばされる
「やるわね」
クリスがクェスに賞賛の言葉を送る
「お〜ほっほっほっほっほ あなたこそね」
クェスが、高笑いをあげながら応じた。
「ば、ばかな バケモンかこいつら」
今まで指示を出していた隊長格の男がひるむ
「さて、後はあんただけのようね」
クリスがにやっと笑う。
「くらえっ エルメキアランス」
ゼロが放った真空の矢を受けた男が声も発せず倒れた
「大丈夫かフォウ」
敵に斬りかかられながらもフォウの方を見やり声を掛けるゼロ
「でぇい」
鋭い気合と共に相手を切り伏せたフォウの姿が視界に入る
「おのれこうなったら」
仲間を倒された隊長格の男がなにやら呪文を唱える
「ふわははっはっはっはっはっは 行け スケルトン」
召喚された骸骨戦士たちに指示を出した
「くっいくら 弱くてもこう数が多いんじゃあ」
呪文でなぎ倒すクリスの表情に焦りの色が浮かぶ
「な〜はっはっはっはっはっは」
その時 戦場となった街に軽薄そうな笑い声が響く
ついに、ファラのもとからマーベットは戻ってきた。
ファラが撃墜されたため、ファラ隊はマーベットを残し
さっさと退却していったので、マーベットを救出するのに苦労はしなかった。
が、そのための犠牲はあまりにも大きかった。
シュラク隊のメンバーはリーダー格のジュンコを失い、悲嘆に暮れていた。
「マーベット…、おかえり」
オリファーは医務室のベッドの傍らに置いてある椅子に座りかけると、
ベッドに横たわるマーベットにやさしく話しかける。
「…私はここにいていいの?仲間だったひとを撃ったのよ?」
表情のはれない様子でマーベットはおそるおそる答える。
「そのことならもう、気にしなくていいんだよ。
それよりも、今日はよく休んだ方がいい。」
「…うん」
マーベットはファラの元にいた頃にかんじていた不安や違和感が
すっかり消えていることに安心したのか、すぐに眠りに落ちた。
こんな戦艦に脳や神経の専門医がいるわけもなかったが、オリファーは船医に尋ねた。
「マーベットの記憶は戻らないんですか?」
「人の記憶っていうのは、そう簡単に戻る訳じゃない。が、
何かきっかけがあれば戻る可能性がないとも言えない。
ゆっくりと今は様子をみることだよ」
「やはり、それしかないですか…」
オリファーはジュンコが命を賭して守ったマーベットを
もう二度と離さないと決意を固めた。
「マフティー ちょっといいか」
シローそう言いながらマフティーの部屋に入ってくる
「どうした、シロー」
何かを思いつめた表情のシローを見てマフティーの顔が曇る
「今回の作戦 本当にやるつもりなのか」
拳を握り締め搾り出すようにして話し出すシロー
「ああ、命令だからな」
俯きながら応えたマフティー
「俺は納得できない 月の発電所を抑え月の市民を人質にするんじゃ 俺達はティターンズと変らない
じゃないか」
「・・わかってるさ だがそれがタウ・リンいやヌーベルエゥーゴの首脳部の考えだ」
唇を噛み締め苦い表情を浮かべたマフティー
「俺はあんたならと思ったから命を預けたんだ それなのに」
「シロー 今回の作戦やりたくなければ強制はしない ここに居てくれ もし俺に何かあったらこの船と
仲間を頼む」
マフティーのその言葉を受けシローがマフティーに掴みかかった
「俺があんたを見捨てるわけねぇだろ」
「いいかげんにしな 甘ちゃん」
とそこにカレンが二人の間に入りシローを制した。
「カレン」
部下になだめられ手を離しそっぽを向くシロー
「いいかい、あたしらは軍人なんだよ 上からの命令には従わなきゃならないんだ」
「だが、こんな命令を黙って受け入れられるのか」
シローが憤りカレンにくって掛かる
「マフティーだって辛いんだよ あんただってあたしらの隊長としてそれぐらいわかるだろ」
諭すように話し掛けるカレン
「とにかく 今回の作戦は俺一人でやる 君たちとシュラク隊はここに残っていてくれ
もし失敗して俺に何かあれば 共和政府にいるアルテイシアさんがなんとかしてくれるだろう」
「あんたも一人で背負い込み過ぎなんだよ あたしらはそれほど頼りにならないかい」
「すまない カレンさん」
「ま、とにかくあたしはマフティーあんたの命令で動く それが上からの命令違反でもね」
にやっと笑いながらカレンが言った。
「おいおい」
カレンの言葉を受けてシローが苦笑いを浮かべる
「あたしら08小隊は命令破りはお手の物だからさ 誰かさんのせいで」
今までの苦々しい表情とはうって変わって笑みを浮かべるマフティーとカレンを横目にシローが一人いじける
「ところでカレンさん何か用でも」
「ああ、そうだ シュラク隊が連れ帰って来たマーベットなんだけどどうも強化手術を受けたようです」
急に表情を引き締めマフティーに向かい話し掛けるカレン
「強化人間 というわけか」
その言葉を聞いてマフティーが眉をひそめた
「ええ、正直正規の医療スタッフも設備もないこの艦じゃあ なんとも」
元看護婦として艦内の医療設備を知り尽くしたカレンがそう報告する
「今はどうなんですかカレンさん」
マーベットの様子を思いやって尋ねるマフティー
「オリファーが付き添って看病してますが如何せん強化手術の影響からか感情が安定していない様子です」
「とにかく早急に何処かで診てもらうしかないか」
カレンの報告を聞いて考え込むマフティー
「月に行って診てもらうわけにはいかんしな」
シローが頭に手をやり考えこむ
「この際 近くにいるガトー少佐を頼ってみてはどうでしょう」
ガトー不在を知らないカレンがマフティーにそう提案する。
「なるほど あそこならその技術があるな よしマフティーそうしようぜ」
シローもカレンの提案に賛同する
「そうだな 早速共和政府軍と接触してお願いしよう カレンさん 手配お願いします」
「了解」
ファラの戦死によって、シロッコの下に退却した偵察部隊だったが、マーベッ
トがヌーベルエゥーゴへと戻ったことにより、ある不都合が生じた・・・。
「なに?タイタニアがヌーベルエゥーゴに?」
ファラの補佐をしていたクロノクルによってこの事実が報告されると、シロッ
コは眉をひそめた・・・。
「はい、我が偵察部隊はヌーベルエゥーゴの部隊と接触、戦闘。その結果、
ファラ・グリフォン中佐が戦死、マーベット・フィンガーハットがヌーベルエゥーゴ
へと戻りました。」
「ほう・・・」
「その結果、マーベットがテストパイロットを努めていたタイタニアはヌーベル
エゥーゴへと回収されました」
クロノクルは淡々と報告を続ける
「ファラ中佐の戦死によって、他の兵たちは混乱していたため、タイタニアの
奪取を諦め、いったん退却しましたが、すぐに部隊を編成し直し、出撃します」
「・・・そうか、ならば今回は私もジ・Oで出よう・・・」
クロノクルは我が耳を疑った。
「い、今、何と・・・」
「私も出撃すると言ったのだ・・・。ちょうどいい機会だ、タイタニアの奪取も兼
ねてヌーベルエゥーゴを全滅させようではないか・・・。お前にはザンスパイン
を貸してやろう・・・」
こうして史上最悪の部隊がヌーベルエゥーゴに対して牙をむくこととなった。
月面のプラトー発電所で爆発が起きた。MSの攻撃によるものである。
「この作戦を成功させて・・・旧ジオン軍の宇宙要塞を奪還できれば・・・
この薔薇の騎士マシュマー・セロ、胸を張ってハマーン様の元に戻ることが出来る!」
MS隊を指揮するのは木星圏より特殊部隊とともに秘かに帰還したマシュマーであった。
かつてハマーンより拝領したMSハンマハンマを駆って大慌てで飛び出してきた守備隊の
ジェガン、GM等の機体を蹴散らして行く。
「ふっ・・・発電基地の守備隊の連中は・・・素人ばかりか?・・・相手にならん!」
事実、軍事基地と言う訳でもなく民間施設へのエネルギー供給を目的とした基地であるから
敵に襲撃されることなど考えても居なかったのであろう。守備隊の機体も2戦級の旧式機が
殆どである。マシュマーのハンマハンマ率いるMS隊の敵ではなかった。
「よし!マイクロウェーブの送信施設を破壊し次第撤退だ!」
マシュマーが部下達に指示を飛ばした。
「プラトー発電基地、沈黙!マイクロウェーブ送信施設の破壊を確認しました。」
「月面各都市のゲート並びに宇宙港の爆破工作も順調です。」
アウーラ司令室のタウ・リンの元に報告が届けられた。
「バイイ発電基地に向かったマフティ隊からの報告はまだか?」
本来はヌーベルエウーゴの象徴とも言えるマフティが率いる部隊が今回の最大の目標
月面最大の発電基地であるシッガルト発電基地の制圧に向かうところであったのだが
本作戦に消極的な態度を見せたためマフティ隊の攻撃目標は中間規模の発電基地の1つ
バイイ発電基地に変更されたのであった。
「これより交戦状態に入るとの連絡は有りましたが作戦完了の報告はまだです。」
「各地のマイクロウェーブ中継用の衛星破壊作戦とシッガルトの方はどうなっている?」
「中継衛星の破壊は8割方終了! シッガルトの方は・・・歩兵部隊の突入が始まりました。」
この瞬間、フォンブラウンを始めとする月面の各都市で停電が発生した。
「何事だ!」
「発電所からの送電が突然ストップしました・・・原因は不明」
報告が終わるか終わらないかと言うタイミングで灯りが点った。
「現在、予備発電施設で発電を開始しましたが・・・発電所からの送電は止まったままです。」
此処はフォンブラウンにある月面都士信託統治本部。
突然の事態に職員は上へ下への大騒動である。
「月面各都市で爆弾テロらしき報告も入っています・・・現在までに16件。」
「月全土でか・・・警察に治安出動を! パニック阻止を最優先しろ!」
月面最大の規模を誇るシッガルト発電基地にはフロスト兄弟率いるMS隊が強襲を架けていた。
「なっ・・・何事だ? テロか? 戦争か?・・・な・・・何故、此処が?」
「ガンダムタイプを含むMS部隊が接近中・・・敵機、発砲しました!」
「セキュリティの全MSを起動させろ! 全機発進! 敵機を近づけるな! 時間を稼げ!」
「何処の部隊だ・・・旧ジオン系の機体も混ざっているようだが・・・」
旧ジオン系ゲリラを含むアウーラから発進したMS隊とシッガルト守備隊のMSが戦闘を
開始した時に別働隊の特殊歩兵部隊がシッガルト内に突入をかけていた。
シッガルト基地の制圧を目的とした本部隊こそが今回の作戦の主役である。
「くっ・・・奴等の目的は何だ・・・地下の核燃料か?」
モニターに写るMS同士の戦闘に基地司令が呟いたその瞬間、指揮所の扉が勢いよく開いた。
「違うな・・・この基地そのものだ」
振り抜いた基地司令の前に重武装の歩兵が居た。
「なっ・・・歩兵部隊が・・・」
基地司令を始めとする指揮所内の兵士達が銃を抜こうとするが発砲する間もなく倒されて行く。
「シッガルト発電基地・・・制圧完了! アウーラに連絡を」
突入した歩兵部隊の隊長が部下の通信兵に指示を出した。
<続く>
「うわぁっ何だこいつら!」
彼らにエース級のパイロットがいないと決め込んでいた節があったのか、
ラーカイラム防衛の任に着いた3人は、思わぬ大苦戦を強いられていた。
「一般兵ばかりだと思った貴様らが、アマちゃんなんだよ!」
MA形態でターンAをなぶり者にする3機のハンブラビ。
「ラムサス、タンゲル『蜘蛛の巣』を仕掛けるぞ!」
「了解です!ヤザン大尉」
ヤザンの号令でターンAを中心にして三角形を描くようなフォーメーションを取った3機の
ハンブラビは、細いワイヤーの網を張り、ターンAを包み込んで放電を開始した。
「な、何をする気だこいつら・・・あ、ぐあぁ〜っ!!」
高圧電流を機体中に流され、機能停止に陥るターンAと電流の衝撃に翻弄されるロラン。
一方ハリー大尉の方も、メッサーラに乗り込んだライラ大尉の一撃離脱戦法の前に
なす術がない状態に陥っていた。
「ティターンズのやり方は、あたしも好きじゃないけどさ、あんたらを血祭りに上げる
のが今回の任務なんでね。悪く思わない事ね」
何十往復も仕掛けられ、ナノコーティング済みであるスモーの機体表面は見るも無残な姿を
晒していた。
トドメの一撃ともいえるクロー攻撃が、まともにハリー大尉の操るスモーのボディを貫通する。
「こんな凄腕が残っていたとは・・・不覚だ。ブライト艦長すまない、1機撃ち漏らした」
ハリーがそう云い残した後に、彼の乗機スモーは全機能を停止した。
「何、了解した。滞空監視怠るな!左舷弾幕薄いぞ!何やってんの!」
ハリー大尉からの通報でラーカイラムの戦闘ブリッジは緊迫の度合が一気に高まった。
其処へハリーのスモーを撃破した、ライラのメッサーラがラーカイラムへ向けて突出して来る。
「もらった!!」
完全に相手の間隙を突いた攻撃に、してやったりのライラ。とそこへ・・・
「この〜っ!」
粗方の敵機を片付けたカトルのサンドロック改が放った『シールド・フラッシュ』がライラの
メッサーラに炸裂する。
「何!」
完全に不覚を取ったライラは、信じられないといった表情を浮かべながら、サンドロック改を見やる。
「ラーカイラムは僕が守り切る!」
大見得を切るカトル。それが別れ際アムロ達と交わした約束だからであろうか。
「坊やに一体何が出来んのさ、落ちな!」
そう云い放つとMS形態へ瞬時に変形し、両肩口のミサイルランチャーに装填されているミサイルを全弾、
サンドロック改に見舞うライラのメッサーラ。
「うわぁーっ!」
全弾を全身に食らって虚空へと飛ばされるサンドロック改。
「カトルっ!やってくれる・・・左舷、敵MSに対し一斉掃射!」
ブライトの顔に焦りの色が出始める。彼にとってエース機がこうも次々と落とされると云うのは、
過去経験した事のない『非常事態』であった。
「な〜はっはっはっはっはっはっは」
突如起こった軽薄そうな高笑いに4人が一斉にそのほうを見た
「とぉっ」
ビルの上からすっと飛び降り すたっと着地するサイ・サイシー
「おねえちゃん達 手伝うぜ」
そう言うとスケルトンに向かい拳を繰り出していく
「サンキュ」
クリスがサイに向かいウィンクする
「お〜ほっほっほ 行くわよ ボム・ディ・ウィン」
クェスが放った風がスケルトンをなぎ倒していく。
「く、くそ」
召喚したスケルトン達をあっという間に倒され焦るギンガナムの手下A
「ちょっと ギンガナムがどこにいるかさっさと吐きなさい さもないとあそこで聞こえる高笑いを
あんたの耳元に炸裂させるわよ」
クリスが手下Aの胸倉を掴み少し離れた所で高笑いをあげているクェスをちらっと見ながら
脅しをかけた
「う゛・・・・・それは」
クリスに誘われるようにクェスを見た手下Aが心底いやそうな顔をした
「ギ、ギンガナム様はランタオ島におられる だが 最早手遅れだがな」
「どういうことなのよ」
クリスがさらに迫るがその時手下Aが倒れる
「ごふっ」
「な、なんてお約束な」
最後の言葉を聞いたクリスがジト汗を滲ませる
「さて ギンガナムの居場所もわかったし 殴り込みをかける」
ゼロが声高に宣言した時どこからか制止の声が聞こえた
「ちょっと待った」
みんながその声がした方を向くとシュバルツが立っていた
「な、なんなのよ」
クリスが唖然とする
「ギンガナムはMS部隊を展開してるらしい 丸腰では危険だ」
「なに」
シュバルツの言葉を聞いて全員に戦慄が走る
「じゃ、じゃあアーガマに戻ってMSを用意しなきゃ」
クリスがそう提案するがそこにまたシュバルツの声が響く
「その心配はない 既に用意してある」
シュバルツがそう言いながら指した地点にはレイン イーノがMSを持って来ていた
「よし 行くわよ」
クリスがそう叫ぶと全員がMSに向かおうとするがまたもやシュバルツの制止も声があがる
「ちょっと待て その前にみんなこれに着替えてもらう」
シュバルツがそう言いながら全員に衣装を渡す
「これは」
そう呟くクリスに渡されたのは某・インバース風の衣装だった
「それぞれに似合うだろうということで天からの与えものだ」
さらっと言うシュバルツ
「天からの?」
全員が一斉に首をひねる
「そうだ 先ほど神官風の男がこれを持ってきて『わたしはここにはいられないので』と言ってこれだけ
を渡してさっと居なくなってしまったのだ」
「なるほどね で、あたしは魔道士風 ゼロはフードを被った魔法剣士風 フォウは戦士風
で・・・・・・・・でぇっ な、なんなのあれは」
クェスが着ているラバーの悪の魔道士ファッションを見てクリスの目が点になった
「お〜ほっほっほっほっほっほっほ 誰かは知らないけどなかなかいい趣味してるじゃない」
腰に手をあてさらに高笑いをグレードアップさせるクェス
「よし 行くぞ クリスはゴッドガンダム ゼロはウィングガンダム フォウはシャイニング
クェスはヤクトドーガだ」
シュバルツがMSを指しながら搭乗員を指名するとクリスとフォウが怪訝な顔をする
「でもあたしとフォウはガンダムファイターじゃないわよ」
「心配するな お前たちに渡した衣装にはGFでなくともトレースシステムが動くようになってる
そうだ」
「なじぇ」
「それは ひ・み・つです」
シュバルツがそう言った瞬間あたりの空気が凍りついた
「・・・・・こほん これも天の啓示にあったんだ」
恥ずかしそうに咳払いをするシュバルツ
「あんの くされ神官!!」
拳を握り締めながら憤るクリス
「とにかく 行くぞ 決戦場はランタオ島だ」
着替えたゼロが叫ぶ
「落とす!」
仕切り直しを宣言してラーカイラムを再び急襲せんとするライラのメッサーラ。
「絶対落とさせない!いくぞサンドロック!」
再び状況を見やり、全速力でメッサーラ急襲阻止に向かうカトルのサンドロック改。
「何!まさか?!」
驚きのあまり顔面蒼白になるライラ。
それも当然である。サンドロック改がMA形態変形前のメッサーラを捕まえ、あろう事か
羽交い絞めに取ったのである。
「云ったはずだよ・・・絶対に落とさせないって!」
「しかし坊や、これから如何すろのさ」
「あなたとまともに張り合ったって勝ち目が無い事は良く判ったからね。こうするのさ・・・
ごめんよ・・・サンドロック!」
サンドロック改はメッサーラを羽交い絞めに捉えたまま、ロンドベル艦隊から十分に距離を取ると
爆発光をあげた。
カトルがサンドロック改の『起爆スイッチ』に手を掛けたのだ。
「冗談じゃないよ!」
コクピットハッチを強制解除してメッサーラからの脱出を図るライラ。
「逃がしはしないよ!」
サンドロック改は、メッサーラを羽交い絞めに取っていた右手を動かすと、ライラを
その手に中に収めた。
2体のMSは爆発光を上げながら、そのまま漆黒の虚空に消えていった。
その頃、ロランのターンAもハンブラビ隊の放つ『蜘蛛の巣』攻撃の前に成す術なく翻弄されていた。
「あああ〜・・ど、どうやったら打破できるんだ?この状況を・・・」
全身を駆け抜ける電流に耐えながら、必死に打開策を模索するロラン。
「貴様には死ぬしか道は残されてないんだよ!いい加減落ちろ、ヒゲ野郎!」
ダンゲルがロランに向かって冷徹に言い放つ。
「こ、これまでか?!」
ロランが覚悟を決めたその時、コクピット内部が怪しく光り始めたかと思うと、
ターンA本来の力が発動した。
ターンAの手首を中心にして突如発っせられた『ビームシールド』の様な光の輪は、高圧電流を
遮断し、尚且つダンゲル、ヤザン、ラムサスの各機体に電流を逆流させたのである。
「何!うぉあ〜」
突如逆流した高圧電流の直撃を食らって爆光を上げるタンゲルのハンブラビ。
「タンゲル!だぁ〜っ」
同じく高圧電流の直撃に耐えられず、機体各所から爆光を上げるラムサスのハンブラビ。
「僕は何もしていないのに・・・」
思いも寄らない状況を垣間見て呆然とするロラン。
俄かには信じがたい光景であった。
「この野郎・・・俺の部下を2人も倒してくれるとはいい度胸だ。そんなに死にたいかーっ!」
咄嗟に蜘蛛の巣を構成するワイヤーを切り離したヤザンのハンブラビは難を逃れ、雄叫びを上げながら
ターンAに向かって放電ムチともいえる武器『海ヘビ』を仕掛ける。
「やられるものかーっ!!」
咄嗟に両方の肩口後方から2本のビームサーベルを抜き取ると、瞬時に右手のサーベルで海ヘビを薙ぎ払い、
刹那左手のサーベルはハンブラビの機体を真っ二つに切り裂いていた。
「貴様ーっ!うわぁっ!」
サイド7宙域に一際大きな火球となって爆砕するヤザンのハンブラビ。
「はぁはぁはぁ・・・」
緊迫した状態が続いたからか放心状態に陥ったロラン。そこへブライトからの通信が入った。
「・・・聞こえるか?・・・無事か・・・ロラン君」
「は、はい、何とか。如何しましたブライト艦長?」
「カトル君が行方不明になった・・・すまないが捜索に出てくれないか。こちらの方は今のハンブラビ隊
撃破で何とか自力でやっていけそうだ」
「カトル君が?!判りました、早速行って来ます」
ロランはカトルの安否を気遣いながら、漸く戦闘の沈静化した空域を後にターンAを駆り
捜索に出かけていった。
<続く>
「さぁ ランタオ島よみんな 準備はいいわね」
魔道士ファッションに身を包んだクリスが叫んだ
「こっちはOKよ」
鎧を着けたフォウがシャイニングを操り親指を立てた
「任務了解」
ゼロがウィングのコクピットで呟いた
「お〜ほっほっほっほっほっほっほ あたしに任せなさい」
クェスがあいかわらず高笑いをあげながらヤクトを操縦する
「流石に本拠地だけあって警護のMSも多いわねぇ」
クリスの顔に焦りが浮かんだ
「クリス ここは俺とサイ・サイシーに任せてお前たちは急げ 何を企んでるかはわからんが
ギンガナムは早く倒さねば危険な予感がする」
シュバルツが襲い掛かるザコをなぎ倒す
「ギンガナム出て来い ムラサメ研の人たちの仇を今こそ獲ってやる」
ゼロが山頂に向け叫ぶと同時に山頂から巨大なMSが現れた
「このデビルガンダムの力今こそ見せて差し上げましょう」
ギンガナムがコクピットで呟く
「くらえ 青魔裂弾波(ブラムブレイザー)」
ゼロが呪文を唱えると衝撃波がデビルガンダムに向かって走った
「ふふっ こんな攻撃では落ちませんよ」
「くそっ 生半可な呪文では効かんのか」
ゼロが焦る
「ダイナストブラス」
クェスが放った稲妻の呪文がデビルガンダムを襲うが破壊するには到らなかった
「さて いきますよ 轟風弾(ウィンド・ブリッド)」
風の衝撃波が二人を吹き飛ばす
「大丈夫ゼロ クェス」
「ええ、なんとかね」
苦痛に顔を歪めながらクェスが応じた
「こうなったら 行くわよ 黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの 時の流れに
埋もれし 偉大なる汝の名において 我ここに闇に誓わん 我等が前に立ち塞がりし
すべての愚かなるものに 我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを!
竜破斬(ドラグスレイブ)!!」
クリスが放ったドラグスレイブがあたりの山肌もろともデビルガンダムに炸裂する
「やったわねクリス」
フォウが喜びながらクリスに近づく
しかし、爆煙の中からデビルガンダムが再び現れる
「うそ そんな」
フォウの顔が真っ青になる
「うそっ ドラグスレイブでも効かないの」
「ふふふ・・なかなか凄い呪文ですが まだまだこのデビルガンダムには通じませんよ」
コクピットの中で余裕の表情で呟くギンガナム
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