このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 

【四番館】

地獄の足マッサージ
リプリー再び
ガチョウメシ屋で夕食を
これが噂の新空港?
アレを求めて・・・ (7/24UP)

[地獄の足マッサージ]

足マッサージの話を聞いたことがあるだろうか。あまりに痛くて大人でも悲鳴を上げるという話を。それは本当だ。ほとんど拷問と言っていいだろう。

マッサージというからにはモミモミしてくれると思いがちだがそうではない、木やプラスチックの棒で足の裏を思いっきりぐりぐりするのだな。これで指先あたりをぐりぐりされた日にゃウキャキャキャキャと猿みたいに喚いてしまう。普通誰でも痛いぞそんなことされたら。そしていつもマッサージに出かけたことを後悔するのである。

   「君は何故そうまでして出かけるのか?」

そこに医者がいるからさ。違う違う、終わった後のすがすがしさがいいのだよ。むくみが取れて足がスッキリする。それに体の悪い部分がわかるのもありがたい。
さすが中国四千年というだけあってツボの研究はたいしたものだ。足には体中の神経が集まり、どこか悪い部分があればそのツボを刺激すると痛く感じる。痛いところすなわち悪いところというわけだな。
いろいろ言われたぞ。首が悪い、胃が悪い、肝臓が悪い、はては睾丸が悪いとまで。いつだったか額を指差されたこともあった。そりゃ頭が悪いってことか?

それにしても自分では気づかないが体の中には悪い部分というのがけっこうあるものだな。医者の言うことを全て鵜呑みにする気はないが、やはり指摘されると気になる。肝臓に睾丸、どちらも悪くしたくはないものだ。

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[リプリー再び]

映画には続編というものが多い。ランボー、スターウォーズ、リーサルウェポン 。3作以上というのは今時珍しくもない。しかしながらそのいずれにも共通して言えることは後になるほど感動がなくなるということだろう。
リーサルウェポンのあの凶器のようなアブナさに魅かれたのは1作めだけだった。バック・トゥ・ザ・フューチャーのタイムマシンに心躍らせたのも1作めだけだった。ロッキーの白熱した闘いに感動したのは2作めまでだった。その後の続編になるとドハデなだけで感動がないように思えてならない。

最近見た続編モノにエイリアン-4がある。3作めで死んだはずのリプリーがクローンとして蘇るという内容で、強酸の血液・体内にはエイリアンの子供までいるという乱暴な設定である。しかもいきなり40代だったりする。これがいけない。クローンで再生するならお願いだ、20代で止めてやってくれ。彼女もそれを望むだろう。エイリアン-1のリプリーは美しかった。ラストで見せる下着姿に当時高校生だった私は胸の高鳴りを感じたものだ。その感動は40代のそれじゃない。私の中のリプリーは今でも下着姿の美女なのだ。

とまあ私の思いを綴ってみたが、私の感動というのはつまるところこの程度なのかもしれない。

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[ガチョウメシ屋で夕食を]

私は長く外食生活を続けている。だいたい独り者が料理を作ったところでお金と材料のムダだろう。そういうわけで近所にあるメシ屋によく足を運ぶようになった。
私はここでよく鵞鳥肉ごはんを食べているので、この店のことをガチョウメシ屋と呼んでいる。この店は外にもテーブルを置いており、そこで道行く人々を眺めながら食事をするのはなかなかにもって楽しい。店のオヤジさん達ともすっかり顔馴染みになり、おぉ今日も来たかといった雰囲気で迎えてくれるのが何より嬉しかった。

しかしながら長い間私は店の人達に自分が日本人であることを明かさなかった。広東語をうまく話せないへんなやつを演じていたというわけだ。そのまんまという気もするがな。
そうしていたのにはそれなりの理由がある。この界隈には大陸からの移住者が多い。老人達の中には「日本人なんか嫌いじゃあ!」という人も多かろう、とそう思ったからだ。

さて、メシ屋に通い始めて半年ほどたった頃。その日注文を取りに来たのは初めて見るオバサンだった。どうやらつい最近雇われたらしい。当然私の広東語のヘタさ加減など知るよしもない。一応いつものように注文してみたのだが、これがいっかな通じないのだな。いつものオヤジさんなら「あいよ!」とわかってもらえるのだが、新人さんには私の怪しい広東語は難解なようだ。そのオバサンはまるで要領をえない私を北方から来た大陸人と思ったらしい、今度は北京語に切り替えて攻めてくる。

   ”マズイ、このままでは北京語を話せないことまでバレてしまう”

北京語も広東語も話せないということは、とりもなおさず中国人ではないということだ。中国人でない東洋人といえば韓国人と日本人しかいない。だがここで日本人と明かしたくはない。どうしたものかと思っていたところへタイミングよくオヤジさんが顔を出した。話の通じぬ二人の会話を中で見ていたらしい。オヤジさんは何やってんだよといった顔つきで注文をとり、オバサンは訝しげに去っていった。

翌日の夜である。懲りずにまたまた私はメシ屋にやってきた。いつものようにオヤジさんが出てきて注文を聞いた後、

   「おまえ、どうも中国人やなさそうやけど一体どっから来たんや?」

正確ではないが概ねこういうことを聞いてきた。思った通りだ、バレている。ここで韓国人と言ってもよかったのだが、間違って客の中に韓国人がいてハングルなんぞで喋られた日にはいよいよ立場がない。しょうがない、言うか。

   「日本人だよ、日本から来たんだ」

するとオヤジさんは一瞬驚いた様子だったが、すぐにニカッと笑い喋り始めた。
「上海のやつはなんたらかんたら・・・、中国人はなんたらかんたら・・・ 、おまえ広東語上手だ、ベリグゥ。」
この間1分強、聞き取れたのは最後だけだった。彼は私が日本人だったのが嬉しかったのかあるいは珍しかったのか、多分珍しかったのだろう、店員達にアイツ日本人だぞと言ってまわっていた。
そして私はガチョウメシ屋の有名人となったのである。

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[これが噂の新空港?]

昨年7月、”世界でも有数の国際空港”と鳴り物入りで開港した新空港、ところが早々にコンピューターのバグで機能がマヒしてしまった。私は不幸にしてその渦中にいたのである。

開港直前に私用で帰国し開港2日めに香港へと戻ってきたのだが、関空出発からすでにおかしかったのだ。夕方6時発がいきなり2時間も遅れ 「いったいどうなってんだ?」と思いつつ香港に戻ってみるとなにやらひどく混乱している様子。バゲッジ案内の電光掲示板は消え、バゲッジルームには人がいっぱいいる。はたと見ると係員がホワイトボードでバゲッジ案内をやっていた。

   ”どうやらマズイことになってるみたいだ”

とりあえずホワイトボードで荷物のレーンを確かめそこで待つことにしたのだが、これがもう待てども待てども出てこない。1時間ぐらいしてやっと出てきたと思ったら全然関係ない他の飛行機の荷物だった。結局自分達の荷物が出てきたのは2時間後、その間電話もトイレも機能してない場所でひたすら待っていたのである。荷物を受け取ったのは夜中の2時。それからバスやタクシーを乗り継いでマンションに帰ったのが朝の5時。そのあとほとんど寝ずに出社するというたいへんな1日だった。

その後混乱は1ヶ月以上も続いていた。食料品は滑走路で腐り果て、アメリカ行きの荷物は北京へ行く。もう目を覆うばかりの醜態ぶりである。損害は数十億ドルにものぼると報道されていたが、空港責任者の会見での発言は

   「引越しする時には多少混乱するものさ」

それだけ。責任をとって辞任する人は一人もいなかった。数十億ドルの損害を多少の混乱ですませてしまう、役人なんてどこの国でも似たようなものなんだろうな。

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[アレを求めて・・・]

アレの名前がなんなのか私は知らない。小包やダンボール箱によく入っているビニール製のクッションで、直径1センチぐらいの丸い凹凸のある押しつぶすとプチッと鳴って楽しいアレだ。私は日本にいる頃アレのことをプチプチと呼んでいた。仕事で必要な時も 「プチプチちょうだい」 これだけで通じたものである。
たしか随分前に誰かからその名前を聞いたような気がするのだがよく思い出せない。たぶん憶える気がなかったのだろう。それにプチプチで充分通じるのだから、あえて正式名称を使う必要もなかった。

香港へ来て間もない頃日本の本社に荷物を送ることになった。割れ物が多いため例によってプチプチで包もうと思い探してみるとどこにも見あたらない。買いに行こうかと思ったのだがよく考えてみればアレの名前を知らないではないか。だいたいアレは何屋さんで売ってるものなのだ?
やむを得ん、誰かに買いにいってもらおう。

  「荷物を包む時使うもの・・・ビニールでできてる・・・つぶすとプチッと鳴る・・・」

ほとんど連想ゲーム、香港人相手ではこんなものである。
はたから見てるとお笑いだが私は至極真面目だった。なんせこれを手に入れなければ仕事が完了しないのだ、真面目にならざるを得ない。
しばらくしてようやくわかってもらえたのか同僚の一人が買いに行ってくれることになった。不安を胸に待つこと15分。帰ってきた同僚がかかえているのは間違いなくあのプチプチだった。

   「これの名前、何?」
   「ポッポッチ」

ふざけた名前である。必死で説明していた私がまるでバカみたいではないか。プチプチの方がいくらかマシな気がする。

結局正式な名前はわからずじまいだったが、その後は ”ポッポッチ” で不自由なく仕事は進んでいる。日本のプチプチ、香港のポッポッチ、誰しも似たような名前をつけるものらしい。

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