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北九州市の路面電車は、九州電気軌道によって明治44年(1911)6月門司市東本町−八幡町大蔵間が開通したことに始まる。全盛期には北九州線のほかに、北方(北九州モノレール建設に伴い80年11月廃止)、戸畑、枝光(共に85年10月廃止)などの線があり、全長44.4㎞に及んだ。 砂津−黒崎駅前間(12.7㎞)の廃止で北九州市の路面電車は消え去り、西鉄軌道線としては、専用軌道の黒崎駅前−折尾間(5.1㎞)が残るだけになる。 廃止一週間前から沿線住民が思い出や感謝の気持ちなどを車体に書き込んだ「お別れメッセージ号」が三両走っている。 最終日10月24日は、砂津−折尾間が終日無料運行され、各電停では乗り切れない人であふれ、車内も一日中混雑していた。(翌日の新聞によれば、この日一日でふだんの日の5倍、25万人運んだそうだ) そして午後11時からお別れ式典が行われ、砂津、黒崎駅前双方からモールなどで飾られた「さよなら電車」が走った。 また、小倉井筒屋では「さよなら電車展」が開かれ、西鉄北九州線81年間の歴史を写真パネルなどで紹介したり、昔の切符などが展示されていた。 |
◎沿線漫歩 八幡駅前から東へ500mほど行ったところに旧百三十銀行八幡支店がある。辰野金吾の設計で大正4年に建てられた。保存が決まっており、現在、市の手で補修工事が行われている。 中央町電停から南へ300mほど行ったところに大谷会館(大2)がある。新日鉄の厚生施設らしい。隣接して、旧新日鉄厚生課相談室(昭2)も残っている。上本町から500mほど北には徳養寺(大4)がある。スラグ煉瓦造のお寺だが、外観は教会のように見える。 大蔵電停の近くにあった新日鉄の親和会講堂、親和会事務所はすでになく、更地になっていた。枝光駅近くにあった新日鉄の事務所は取り壊されてスペースワールドの駐車場にされていた。隣接した技術研究所はこの夏に取り壊し工事が行われていた。 大蔵から山を登ったところに北九州市立美術館がある。磯崎新設計の建物だ。 到津の遊園前バス営業所電停の南に旧九州鉄道茶屋町橋梁(明24)がある。煉瓦造のアーチ橋で現鹿児島本線の海岸線経由より先に山線として使用されていたが、海岸線の開通でほどなく廃止されている。市の文化財に指定されている。 西日本工業倶楽部(旧松本健次郎邸 設計辰野・片岡設計事務所 明44)は戸畑と到津のなかほどにある。木造二階建ての立派な洋館で国の重要文化財に指定されている。 |
鹿児島本線宇土から分かれて西へ、三角線を三角に向かう。熊本から約50分で終点三角。 三角は天草方面へのバスの便があり、駅前のフェリーターミナルからは島原へのフェリーが連絡している。フェリーターミナルは「海のピラミッド」と呼ばれる巻貝をモチーフにした円錐状の白い建物で、熊本出身の建築家葉祥栄(ようしょうえい)氏の設計(90年竣工)。 三角駅から海岸線に沿って2㎞ほど行ったところに西港がある。明治20年に竣工した港で、野蒜、三國とならんで明治三大築港のひとつとされる。 工事はオランダ人技師ムルドル(Mulder)の技術指導で行われ、50㎝角の切り石で積まれた埠頭や水路が当時のまま残っている。建物は建て替わっているが、街の区割りも当時のままだそうで、繁栄時の倉庫が築港記念館になっており、築港工事の写真などが展示されている。 また、西港の高台には木造の九州海技学院(旧宇土郡役所 明35)がある。埠頭近くの木造の洋館「龍驤館」(大7)は明治天皇即位50年記念事業として建てられたのだそうだ。 三角駅前から本渡行のバスに乗る。宇土半島の突端から大矢野島、上島へと天草五橋がつなぐ天草パールラインを快走する。 天草の中心本渡市は天草・島原の乱(1637年)の激戦場のひとつである。本戸城跡には戦死者をまつる千人塚やキリシタン関係の資科を展示するキリシタン館がある。 街をひととおり探索してみところ、洋館も二、三あったが下見板張り木造の地味な建物だった。ほかに壁面だけを洋風装飾した写真館を一軒見つけた。 本渡で一泊したあと、下島を縦断するバスで一町田まで行き、バスを乗り換えて崎津に向かう。入り組んだ羊角湾に沿って走るバスの車窓からは美しい眺めが展開する。崎津の集落にはいる岬を回ったとき、ゴシック風の尖塔をもつ教会堂が対岸に見える。崎津教会は昭和11年に棟梁建築家鉄川与助が建てたものだ。隣接してキリスト教関係の資料館がある。 次のバスまで一時間以上あるので崎津から大江に向かって歩き出す。ガイドブックの地図で見れば5㎞くらいかと思っていたが、入江を丹念に回り込み、さらに峠越えもあるというハードな行程であった。 大江教会も鉄川与助が設計したもので昭和8年に竣工している。小高い丘の上に立つ白い教会堂である。国道に面して「天草ロザリオ館」がある。天草キリシタン関係の資料を展示している。 大江教会前のバス停でバスを待っていると、辺りに埃が激しく降ってきた。まわりの山々が白っぽく見えるくらい。通り過ぎる自動車も埃が積もっている。これこそが雲仙普賢岳の火山灰なのだった。今日は天草の方へ飛んできているらしい。 下田温泉で温泉につかったあと、さらにバスで富岡港に向かい、長崎茂木行フェリーで長崎に渡った。 (92.9.26〜9.27.) |