このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

漫歩通信
第21号 2005年4月1日発行

梅は咲いたか−JR奈良線漫歩

奈良と京都を結ぶ「みやこ路快速」が走るJR奈良線は、木津−京都間34.7kmを結ぶ路線。1984年10月に電化されるまでは、ディーゼルカーがごとごと走るひなびた路線だったけれど、城陽、長池あたりまでは宅地化が進み新興住宅が建ち並んでいる。

奈良線は1896(明治29)年に全通している。この路線には天井川をくぐるトンネルがいくつかあるが、それが煉瓦巻きだったり、電車のためにかさ上げされたホームの下部に煉瓦積みが残っていたで歴史を感じる。駅舎のなかには、建て替えられたり、外壁が改修されたりもしているが、小さな駅舎に昔の意匠が残っている。

京都と奈良を結ぶ街道筋のほぼ中間にあるのが長池である。古い宿場町、という雰囲気はほとんど残ってないけれど、部分的というか古い町屋も見られる。

町のなかほどに郵便局があった。いまの局舎の横に古い建物が残っていた。むくり屋根のポーチがあって、その端っこに載っている棟瓦には〒マークがついていた。昔の局舎にちがいない。
町並みも尽きようかというところで、小さな石柱が建っている町屋があった。なんだろうと近寄ってみると、「木戸孝允公御中飯処」とあった。一行がここに立ち寄って、昼食を取ったことを記念するものだった。明治10年2月8日とある。まだ、奈良線は開業する前だから、足は何だったのだろう。そもそも、目的は?
観梅には少し早いか、でも、京都から馴染みの綺麗どころを引き連れて梅見にきてた、のかもなんて、小さな石柱の記述から、いろいろ想像がふくらみますね。

山城青谷駅から東へ1kmほどはいったところに青谷梅林がある。この駅、大正末に開設されたのだが、当初、青谷梅林といっていたようだ。2月下旬から3月上旬にかけて「梅まつり」が行われる。

さらに南下した棚倉駅、駅から40分あまり山間にはいったところに不動川砂防公園というのがある。不動川沿いにデレーケが築いた日本初の砂防ダムが多数残っていて、それらを公園として整備したのだ。広場や東屋があってデレーケの胸像が建っている。

デレーケは、明治時代に来日したお雇い外国人のひとり。とりわけ治水関係に功績のあった人で、日本各地に業績が残っているようだ。この園内に多くの堰堤が残されているのだが、いまひとつ近代土木遺産という重みが感じられなかった。公園として整備されたせいかな。



近鉄寺田駅の南に「文化パルク城陽」がある。この施設は、大ホールをはじめ、図書館、プラネタリウム、歴史民俗資料館など備えた複合文化施設、1995年の竣工。

クリーム色の外装で、図書館などが納まる西側、大ホールが納まる東側が四角を寄せ集めたような形で、中央部のプラネタリウムの納まる部分とガラス張りのアトリウムと頂部を欠いた円錐型がくっついている。

形の組合せとしては、ありふれた公共施設から抜けた感じを受けるし、斜路で上まで上がれる構造とか、工夫がなされている。複合施設として機能的には、オーソドックスな感じもするが、北側の掘りこまれた水上ステージなど、建物と一体として利用できる施設になっているのは、よく考えられた結果なのだろう。




関西文化学術研究都市(関西学研都市)

関西学研都市は、京都府、大阪府、奈良県にまたがる地域−けいはんな、で、その名のとおり文化、学術、研究を促進する基盤として都市計画がなされた進行中の巨大プロジェクトである。広大な敷地をいくつかの地域に分散してあるそうだが、これから向かうのは祝園駅から精華大通りという広い道路が通じている精華地区である。この道路沿いに企業などの研究所がいくつも設けられている。

自動車道を越えたところにある巨大な建物は、「私のしごと館」という雇用・能力開発機構が設けた施設だ。南側は地味なタイル張りながら、北側の精華大通り側は全面ガラス張り。この施設は、いろいろな仕事について、「見る」だけではなく、「触れて、体験する」という、少し変わった展示施設である。

とくに、小学生、中学生に、日常行われているいろいろな仕事の実態を紹介しようというもので、将来のやりがいある仕事の発見に結びつけてもらおう、というねらいがある。多くの人たちが、サラリーマンやっている今の世の中、仕事の中身は、なかなか見えない。そいうったことにスポットをあてて紹介、あるいは体験できるという施設は、いままでなかったと思うので、おもしろい試みだと思う。

訪れたのは土曜日であったが、中学生の団体とか小学生を連れた家族連れなどけつこう賑わっていた。でも、ここを見学した小中学生は、どう感じているのだろうね。

この向かいには、けいはんな記念公園がある。精華大通りを西に向かうと、広大な空き地が広がっている。日用品の量販店があったのには、場違いな感じがした。そして、1kmほど行くと、国立国会図書館関西館があるのだが、その前には、ファミレスなど飲食店が並んでいる。

量販店とか飲食店があること自体悪いことと思わないのだが、ほかの場所と同じ、ふつうのロードサイドショップと同じ雰囲気で出店させるのはどうかと思う。せっかく、新しい町並みを作ったのだから、都市景観デザイン上でのくふうがほしいところだ。

国立国会図書館関西館は陶器二三雄の設計になるもので、1996年国際設計競技の最優秀賞を受賞。2004年日本建築学会賞にも輝いた。外観の四角いガラスの箱は、いたってシンプルな印象を受ける。

さらに西に行くと、学研都市展示館の案内が出ていたので立ち寄ると、建物は別の用途に使われ、展示館はすでに閉鎖されていた。閉鎖されたのなら、早々に案内標識を撤去しろ、といいたい。

けいはんなプラザがある。ホテルとか住友ホールという劇場も付属するこの地区の中核施設。向かいには、国際電気通信基礎技術研究所とか、ホテルの並びには、松下、京セラ、CSKの大川センターなどの研究所がある。住友金属もあったはずだけど・・・。
研究施設が建つ近くに住宅街が迫っているけれど、研究所の広い敷地に比べて、敷地目一杯建てたって印象で、バランスよくないな、と思える。




近鉄京都線山田川駅と高の原駅の間、線路の西側にあるのがハイタッチ・リサーチパーク。精華地区に比べて狭い敷地にPHPとか福寿園とか、各社の研究所などが並んでいて、ちまちました感じだが、ガラスのピラミッドを筆頭に個性的な建物が多いように思う。通りの向かいにある積水ハウスの総合住宅研究所は巨大な施設だ。


 




このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください