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立山黒部アルペンルートを行く

1988.10.7.〜10.9.

[北に向かって]国内の鉄道で今年(1988年)開業した線区以外で残っているのは、立山黒部アルペンルートの途中にある黒部貫光の地下ケーブル線と関西電力のトロリーバスだけになった。

JR西日本では「立山黒部往復割引きっぷ」を発売している。22,000円と25,000円の二種類あって、前者は大阪から北陸本線から富山−アルペンルート−糸魚川を経由して北陸本線で大阪に戻る。後者はアルペンルートのあと松本、名古屋を経由して大阪に戻るもの。ともに逆ルートも可能で、指定席特急券(後者は新幹線も含む)付きというもの。いっぽう従来からあるいちばん人気のルート周遊券「アルペンルート」は後者のルートと同じで18,100円。ただし、急行に乗れるが、特急には別に特急券を買わなければならない。

9月の連休前、どの「きっぷ」にしようかと迷ったすえ、1ヶ月間有効である「ルート周遊券」を購入した。立山に行くのに天気が悪ければおもしろくないので、9月に行けなくても10月に行けばいいという考え。けっきょく、9月は天気がもうひとつだったので、10月に持ち越すことになったのだが。

出発は大阪23:00発新潟行急行「きたぐに」。夜行列車が発車する11番ホームは、連休前ということで山へ向かう格好をした人たちなども多い。夜午後9時頃に11番ホームへ行ったときは、「きたぐに」の自由席を待つ人の列はまだわずかだったが、発車時刻が迫るにつれ列が伸び、けっきょく座れない人も多く出た。
定刻に発車。電車が動きだすとうつらうつら夢のなか。いつの間にか、東海道本線から北陸本線にはいっていた。

[富山地方鉄道]富山4:58到着。まだ、夜が明けてない時刻。立山方面に向かう人がどっと下車し、隣の富山地方鉄道へと向かう。電鉄富山駅は近年新しく立派な駅ビルに建て替わったようだ。

立山に向かう一番電車は5:22に発車する。急行となっているが、ほとんどの駅に停車する。立山方面に向かう人たちで車内は混雑。富山市街を抜けて郊外に出ると、しだいに明るくなり、稲刈の終わった田んぼに朝靄が漂い、散村的な風景が広がる。

岩峅寺を出ると常願寺川に沿って走り、徐々に高度を上げていく。山が迫ってくる。富山を出て約1時間、6:16立山到着。この駅も観光ルートのなかの駅として大きく立派な駅になっている。ここに来るのは7年ぶりだ。

[立山開発鉄道]電車が駅に到着するや、乗客はどっとケーブル乗場に押し寄せる。どうせこれだけのお客のいる時期だからピストン運転している。それほど慌てなくてよい。

食糧類はあらかじめ買っておいたので、飲み物だけを購入しておく。ここでは 100円の缶飲料も山に登れば 150円以上するはずだ。

「アルペンルート」周遊券を持っている人はここで、立山−黒部湖間のフリーきっぷに交換してもらうことができる。ルート周遊券は、ふつうは乗り物を乗継ぐたびに周遊券の当該区間の部分を切り取ることになっている。ルート周遊券は一方通行が原則だが、「アルペンルート」ルート周遊券では関係交通機関が別にフリー切符を作り、周遊券の該当区間の切符片券と交換で、3日間有効のフリー切符をくれるわけだ。使い方によっては大幅に得になるだろうが、それほど行き来する人もいないのかもしれない。

列を作って約30分。やっとのことでケーブルに乗ることができた。美女平までの所要はわずか7分。
美女平から室堂までは高原バス。ここでもピストン運転されており、10分ほど待っただけで乗継ぐことができた。
美女平から室堂まで約50分。女性ガイドが添乗、沿線の観光ガイドを行う。ガイドの使う日本語離れしたイントネーションが耳につく。まさか、海外からの女性を使っているわけでもあるまいが…。
天気は快晴。弥陀ヶ原付近では、ちらほら紅葉が見られる。それほど美しい色合でないのが残念。

[立山登山]室堂で下車して、立山登山に挑戦。立山に登るのは二度目。室堂から緩やかな歩道を一ノ越へ。そこで一息いれて、本格的な山登りになる。ガレ場で歩きにくく、急な斜面もあって難渋する。室堂から歩き始めて約1時間40分くらいで雄山神社(標高3004m)まで登りきった。1980年9月に登ったときには神社に神主さんらがいて、入山料を払ったが、10月になると閉めきって下山してしまうらしい。フリーで散策、雲海広がる雄大な眺めを堪能する。

雄山から北に向かうと、いったん下りになって、立山最高峰大汝山(3015m)へと続く。前回はここまで来て引き返したが、時刻はまだ10時を少しまわったくらい。さらに北に向かう。
富士の折立てから別山へ尾根道が続く。別山からは剣岳が眼前に聳える。12時過ぎに剣御前小屋にたどり着いた。ガレ場ばかり歩くので足がだいぶ疲れてきた。

ここで一服したのち雷鳥沢に下る。登るより下るほうが足に負担がかかる。はい松地帯を下っていると雷鳥と出くわした。
雷鳥沢を下り、称名川を渡るとゆるい登りになって地獄谷を経由してようようのこでバスターミナルにたどり着いた。

[黒部貫光]休むのもほどほどに室堂からバスで大観峰に向かう。トンネルだからおもしろみはない。所要は10分。バスは数台並んでいて、時刻がくると次々に発車していく。トンネルの途中で行き違いできる広さの部分がある。(:環境対策のため、1996年4月23日トロリーバス路線に作り変えられた。)

大観峰から黒部平までロープウェイ。定員が決まっているうえ、増発といっても2台のゴンドラが往復しているだけなので、ピストン運転して乗客をさばいているが、ここで待たされることになる。しかも、癪なことにあとからやってきた団体客のほうが先に乗り込むのだから、余計待つことになる。

室堂でバスに乗るときロープウェイの整理券をくれていて、それに従うのだが、けっきょく40分待たされた。順番を待つあいだ、職員が待ち客を退屈させないように、おもしろおかしく黒部貫光発行の写真集を紹介、販売に精を出していた。

大観峰を出るとノンスパンでタンポ平を一気に下るのは心地よい。紅葉の発色はいまいち。わずか7分で黒部平に到着。

黒部平から黒部湖までは地下ケーブル。ロープウェイよりケーブルカーのほうが若干定員も多いのでそのまま乗継ぐことができた。トンネルの中だからおもしろみに欠けるが、これで日本国内のケーブル線を完乗したことになる。所要はわずか5分。

ケーブルカーを降りて二三分トンネルの中を歩くと黒部ダムのサイトに出てくる。立山山頂から遥か小さく見えていたダムまで下ってきたわけだ。観光放水とかで、ダムに貯められた水がどっと放水されていた。

[関西電力]ダムのサイトを歩ききると次は関西電力のトロリーバスに乗り継ぐ。日本唯一の路線だ。これも鉄道の一種になっているから完乗をめざすからには乗らなければならない。この路線もトンネルばかりだからおもしろみはない。(トンネルばかりであるが、観光路線だけあって、いろいろ案内放送が流されていた)。一時間に一本の割で運転されている。トロリー線から電気の供給をうける電気自動車だが、バスとかわらない。乗場に数台並んでいて時刻がくると次々に発車する。扇沢までの所要は16分。

扇沢から信濃大町へバスに向かう。関電バスをうけて発車するので、二三台バスが並んでいる。団体客は観光バスを使っているので、関電バスほど混まない。
信濃大町まで所要35分。大町温泉郷という温泉街を通る。
信濃大町からは数分の接続で松本行があったのでそのまま前進。大糸線に乗るのも数年ぶりのこと。

[松本]今日は松本に泊まろうと考えていたのだが、連休中でどこもかしこも満員ですと断られた。ひと晩くらいなら駅寝(松本駅は可能らしい)とか映画館のオールナイトで過ごす、なんてこともできるのだが、そこまでする気になれず、あっさり夜行で大阪に戻ることにした。まだ、連休は始まったばかりで、長野始発とはいえ自由席の席はあるだろうと思えた。

それならばと、早々と夕食を済まし、銭湯を探しに街に出た。着替えてさっぱりしたかった。
大手町二丁目に「塩井の湯」という銭湯があった。明治時代に鉱泉を掘りあて、それを加熱して銭湯をやっているらしい。すでに暗く詳細はよくわからないのだが、その建物の正面は石張りで、昭和初期の建物のようだった。中にはいると天井は漆喰細工で模様が施され、なかなか古風で格調が高い。

駅に戻り1:02発大阪行急行「ちくま」に乗車。思ったとおりボックス一二人程度の乗客で、ゆったり座ることができた。



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