このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 
 

地方への一人旅を終えてヤンゴンへ戻ると、
街は旧正月の真っ赤な色に染まっていた。

やはりここはチャイナタウンなのだ。

彼女の家にも親戚が集まり食卓には様々なごちそうが並んでいた。
彼女は挨拶も早々に私をムリヤリ食卓につかせると、
喜々として料理をふるまった。

ザジゴン、あなた今までどこで何していたの?
食事はどうしてたの?
地方にはおいしいものがないでしょ?
ほらエビ食べて、スープは?野菜は?揚げ物は?

世話を焼きながら嬉しそうな横顔。
 

旅立つ日の朝、彼女はお金を燃やしながらこう言った。

「ひとりで来てひとりで帰るのね、
ねえ、ザジゴンひとりで怖くないの?」

「怖い!?
ピアノのレッスンの帰りが遅くて心細かったことがあった、
8才のときかなあ」

「8才?!
ひとりでレッスンに通っていたの?!
あなたって本当に強いのねえ。」

「自分がやりたいって決めたから、怖いと思ったら何もできないよ」

そんな思いをぐっと飲み込んだ。
お金が次々と燃えて飛んでいく。

「祖先がむこうでの暮らしに困らないように。」

時は流れた。

人づてに彼女がアメリカで医者のインターンとして働いていることを聞いた。

彼女のいないチャイナタウン。
中華寺院の前を歩きながら涙がでた。

私はいつまでもいたずらな旅行者だ。
未来も過去もなく、ただ歩き続けるだけ。


(Travel Note vol 3 Yangon、おしまい)
 

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written by ザジゴン

 

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