悲鳴を聞いて飛び出してきた家人も事情を聞いて皆大笑い。
マノ母が大喜びして何度もカエルを照らしてみせる。
「ザジゴンはこんなものが怖いのかい?」
翌朝同じ場所。カエルが存在した形跡などどこにもなかった。
罪のない夜行性の両生類。
しっとりと冷たい水瓶が気持よかったのだろう。
が、なんとなく納得がいかない。
私がカエルに驚いて腰を抜かしたという話が村中に広まるのは時間の問題だ。
村の皆のうれしそうな楽しそうな顔が浮かんだ。
マノ父はそんな私を気の毒に思ってか、私が水瓶に向かうときには懐中電灯で周囲を照らしてカエルがいないことを確認してくれるようになった。
そしてそのたびに家人が「ザジゴンはあんなものが怖いのねえ」とはやすのだった。 |