このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

99.01.26新規

(8) そっとさよなら

 かつて京王沿線に住んでいた。各駅停車しか止まらない駅の近くだったのでもっぱら当時各停の主流は5000系というやつと、緑色の2010系とかいうくるまで非冷房車が多かった。--形式関係はよくわかっていないので違っていたら教えていただきたい--ある日いつものようにみどりの電車に乗っていると車掌がどこかの客か社員かとこの電車が今日でおしまいだと話しているのが聞こえた。今日の21時何分の多摩センター着で最後になるうんぬんということで、この頃割と写真を撮っていた筆者はおもしろそうなので「参加」することにした。
 当該便より1-2本早い電車で当時の終着駅京王多摩センターにつくと、どこからか聞きつけてきたらしくカメラを持った同業者が数人来ていたが、当時の東京駅の団臨入線時のオマツリ騒ぎにくらべればひっそりしたものであった。
 くだんの電車がやってきた。いつものように客扱いを終了し、「回」の表示を掲げて数分後には若葉台(車庫)に向けて帰っていった。もう二度とこの多摩センターに来ることはあるまい。
 ヘッドマークをつけたり、特別な仕業をつけたりして華ばなしく引退していく車輛もあるが、このように全くいつものように淡々と仕事をこなし終わっていく姿もまた日常生活の足としての路線の車輛にふさわしいものであった。こういう終り方もいいものだと感動して帰った。
 で、ひっそりしたサヨナラ運転に感動してその話をしていたら、沿線に住む某氏曰く「ああ、あれね、あのあと何日かして高幡不動のあたりを走ってたよ」だって。
 予備車扱いにでもなっていたようで何か他の車輛の不具合で幸か不幸か再び出番がきてしまったのであろう。このいかにもしまりのない終わり方もまたこのくるまにふさわしかったりするのである。
 車輛は解体されたり一部は伊予鉄道に移っていったりしたようである。数年後松山で塗り替えられた姿に再会したがなにか不思議な感じがしたものである。

京王多摩センターにて

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