新聞の記事で隣町に「木の温もりと開放感」が売りの木造庁舎がオープンしたとのことなので早速見学に行ってきました。といっても公式に見学を依頼した訳ではなく、市民が普通に役所に行く感覚でですけど・・(^^)
新聞には地元紙や日経新聞の地方版に写真入りで載っていまして、中々良い雰囲気です。
外観は「農家屋敷」をイメージしたデザインのようで、廻りのケヤキにスッポリ囲まれるような低層の庁舎です。
外観 公式HPより
記事を元に施工者もネットで調べることが出来ました。今流行の建築金物のパイオニアとの事で、継ぎ手・仕口を金物で代用する工法を得意とされているようです。また、集成材の強度と金物を利用した大空間木構造も得意なようで、住宅メーカーとしても活躍されています。
見学した庁舎は金物を利用した大空間建築物で、木造でここまで大空間を確保出来るようになって来たのも集成材や接合金物の技術向上があっての事だと思います。柱は50センチ角はある太さで堂々とした感じです。また構造的な役割があると思われる部材もデザイン的に意匠されています。
ケヤキの木をモチーフ?にした柱のデザイン。太さは50センチはあります!
内観 公式HPより
写真でもお分かりの通り、かなり開放的な空間です。ただ、行って残念に思ったのは、「木の温もり」という点はあまり感じられなかった事です。
相当量の木材を使用しているはずなのですが、建物内は木の薫りではなく、石油系の塗料の匂いしかしないんですね・・多分柱、梁、床に塗られている塗料がステイン系で、その匂いだと思うのですが、塗膜が木の薫りを封じ込めちゃっています。更に構造材や窓枠等の木部仕上げが雑でもうちょっとスベスベ感を出せば良いのに!?と思う位ザラザラです。
確かに内装で木材を多用するには建築・消防関連の法規制があるので難しい部分があるのですが,壁や天井はオフィス建築に多用されている建材で構成されているため、展開図的な木部の面積が少なく、視覚的にも木の感じが薄れてしまいます。せっかく県産の杉を多用したのであれば、もうちょっとその辺の意志を示しても良かったのでは?と思います。また、備品類(カウンターや机など)にも気をくばって欲しかったなと思いました。
庁舎は税金で建てられますので「贅を尽くす」必要は全くないのですが、せっかく木造建築を選択されたのでしたら木を活かす知恵は絞ってもらいたかったなと思ってしまいました。
「木材の構造的な限界へのチャレンジ」「林業再興の為の森林有効利用」「生産エネルギーの削減」という部分では十分評価出来ると思いますが、「木の温もりがある建築物」という部分ではちょっと評価するに値しないというのが個人的な感想でした。
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