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 健章時報 1998年8月 

北朝鮮工作員、死体で発見
 
(7月14日)
 報道によると、14日、韓国の東海岸で、北朝鮮(自称「朝鮮民主主義人民共和国」)の特殊工作員と見られるダイバー(潜水夫)の死体が発見されたという。
 またしても、北朝鮮の工作員である。先の潜水艇侵入事件において韓国側に一定の「配慮」を見せた北朝鮮だったが、これで改めて、彼の国の不誠実さが浮き彫りになったといえよう。なお、今回発見された工作員は潜水艦から発進し、推進器を使って潜入したと見られているが、これは、このような特殊部隊を迎撃するには、潜水艦を阻止する機雷だけではだめで、上陸を阻止する対人地雷が必要であることが改めて証明されたのではないだろうか。

日弁連、少年法見直し問題で検察官立ち会いを条件付き容認
 
(7月18日)
 日本弁護士連合会は、17日の理事会で、少年審判における検察官の立ち会いを条件付きで認めた。ただし、その条件とは①少年自身が現行方式(裁判官と少年の2極構造)か対審方式(弁護側と検察側が争う方式)の何れかを選択する、②少年の付添人(弁護人)を国選してつける、③捜査段階での少年の取り調べ状況を録画・録音する、④捜査機関が収集した情報を事前に開示する、⑤審判結果に不服でも、異議(抗告)は認めない等となっており、依然として従来の、少年に過保護を与える現行制度にしがみついたものであって、積極的な方向転換とは言い難い。
 そもそも日弁連は、刑事裁判手続きに関して、これが「国家」と「個人」との対立構造の中にある為、国家権力に圧迫されやすい個人=被告人の側を重視するあまり、社会の健全な刑罰観念や被害者感情から遊離してしまっている観がある。私自身、法律を学びはじめたものとして感じていることだが、刑事法学では「国家」と「個人」を対置し、如何に国家刑罰権=国家権力を抑制するのかという立場に重きがおかれており、そこには本当の当事者=被害者の素顔は見えてこない。例えば刑罰の在り方について、従来学説では「応報刑論」(自由意志の下で行った犯罪に対する道義的非難としての刑罰。旧派)と「目的刑論」(犯罪者の再犯防止の教育をする機会としての刑罰。新派)があり、様々な議論の結果現在では両者を折衷した「相対的応報刑論」が通説となっているが、これは依然として現行法が一定の応報の精神を持っていることを意味する。しかし、例えば死刑廃止論を唱える法学者の中には、死刑が応報的側面しか持たない(=目的刑の性格が無い)ことを理由に廃止論を唱えている者もおり、しかも代替措置としては「仮釈放も認める無期懲役刑の厳罰化」で足りるという学者までいる。しかし、刑罰は「応報だけ」「目的だけ」では正当化されない等といった規則はどこにも無いはずである。事実、現行制度下でも、「目的だけ」の刑罰=保安処分に類する処分(少年保護処分、婦人補導処分)が行われているのであって、その意味で対局に位置する「応報だけ」の刑罰(死刑)を非難する根拠はどこにも無い。確かに、国家刑罰権は法律で守るべき個人の利益を剥奪する重大な権限であり、その濫用は阻止されるべきだが、検察官は国家から公訴権を与えられた存在であると共に被害者側から訴追を委託され、被害者を代弁すべき立場にもあるのであって、「国家ー加害者」の関係における加害者の保護が、そのまま「被害者ー加害者」の関係にまで拡張されて宜しいはずがない。少年法についても、検察官を排除し、被害者の声すら遮断した「なごやかな」現行少年審判は、正にこの「国家ー被害者」関係のみに注目して加害者に過保護を与えるものではないだろうか。
 勿論日弁連は、今回の決定を取りまとめた意見書の中で、上記の措置と同時に、①審判に市民も参加する「参審制」導入、②審判内容の情報公開、③被害者救済の3項目を「早急に検討を要する」としている。しかし、たとえば②にしても少年の実名報道が解禁される訳ではなく(私は、少なくとも殺人等の凶悪な犯罪を犯した者については、一連の処分が不当に軽いことなども考えて、実名報道を一種の応報として解禁すべきだと考える)、つまり国家刑罰権に過剰反応する日弁連の体質がかわったわけではない。今後、弁護士が社会のあらゆる局面において大きな役割を演じてゆく中で、一般社会の常識から逸脱するような日弁連の体質こそ、「早急に検討を要する」のではないだろうか。


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