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 健章時報 1998年7月 

野党3党、内閣不信任案提出
 (6月12日)

 12日、民主党など野党3党は、共同で橋本龍太郎内閣に対する内閣不信任決議案を提出した。しかし、衆議院において与党・自由民主党が過半数を占め、造反議員が期待できるわけでも無い現状において、このような決議案を出してみても、国民には、所詮は参議院選挙をにらんだパフォーマンスに過ぎないと受け取られるであろう。
 現在の我が国の経済危機は、必ずしも橋本龍太郎首相の「失政」によるものではない。それは、むしろこれまで歴代政権が実施してきた経済政策や、各企業の経済活動の帰結である。そして、我が国は民主主義を標榜する国家である以上、それらの最終的な政治責任は、政権党や首相個人ではなく、国民自身にまわってくるのである。その意味では、1980年代以後、財政出動で一時的な好況を繰り返し、刹那的な経済回復を追求していた国民自身に、責任なしとは言えない。そもそも、菅直人・民主党代表が総理大臣になったところで、結果は橋本首相と大差あるまい。
 もっとも、こと外交・安全保障政策に関しては、橋本首相を不信任する理由は山ほどある。但し、その問題の解決は、民主党政権には全く期待できない類のものではあるが。いずれにしても、参議院選挙が楽しみである。

義務教育内容、3割削減
 (6月23日)

 政府の中央教育審議会は、義務教育の内容を3割ほど削減することなどを柱とする答申をまとめ、政府に提出した。しかし、今回の答申は、我が国のおかれた状況について熟考の上行われたものとは到底思えない、というのが私の意見である。
 そもそも、義務教育の内容を削減する、ということは、「教育の義務」という観点からは規制緩和、「教育の権利」という観点からはサービス低下を意味する。そして、前者の規制緩和という観点から見れば、今後資力と(本人若しくは親の)やる気のある者は他者を追い越し、増えた休日を利用してより過激な受験戦争準備に突進するであろうことは想像に難くない。つまり、規制緩和による競争の激化と、それに伴う格差の拡大である。特に、戦後最大の経済危機下にあって、いまだに将来への確固たる展望が開けない現状において、知識、教育上より高度な付加価値を求めて受験戦争が(あるいは勉強の競争が)熾烈化するのは避けられないことであり、今回のような規制緩和はその冷徹な競争に一層拍車をかけることになるだろう。また「サービス低下」という観点から見れば、資力で劣る低所得者に対する無償教育の量が減少することを意味しており、更には国家的パターナリズムの放棄の方向で進んでいるように思えるのである。
 今、アジア諸国は教育に力を入れており、教育内容の充実を推進している。その様な状況の中で、知識資源しかない技術立国・日本が、現在の経済的繁栄にあぐらをかいて、一人教育内容を削減するというのは、国際的競争の点から見ても時代錯誤な措置なのではないだろうか。


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