このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

1999年9月へ


  健章時報 1999年8月  


台湾(中華民国)、パプアニューギニアと外交関係樹立(7月5日)

 報道によると、台湾(中華民国)国務院外交部は5日、オセアニアのパプアニューギニアと外交関係を樹立したと発表したという。中国(中華人民共和国)の外交圧力で南アフリカ共和国が断交して以来、台湾は1999年1月にマケドニアと外交関係を結ぶなど、対抗して外交活動を活発化させており、台湾と国交を持つ国はこれで29カ国となった。なお、パプアニューギニアは現在中国とも国交を維持している。
 台湾は東アジアに存在する民主的な独立主権国家であり、国際社会からその正統性を承認されるべき存在である。最近は、中国の圧力で台湾と国交を断絶する国も多いが、その点今回のこの一件はよいニュースであろう。

国旗・国歌法案審議で地方公聴会(7月6日)
 「日の丸」「君が代」を国旗、国歌に制定する国旗・国歌法案を審議中の衆議院内閣委員会は6日、北海道札幌市と沖縄県那覇市でそれぞれ地方公聴会を開き、各党の推薦した有識者の意見を聞いたという。これは、小渕政権との連立協議を進めている公明党が「慎重審議」を求めたために実現したもので、7日には石川県金沢市、広島県広島市でも地方公聴会が開催されるという。
 だが、そもそも、この地方公聴会は、開催場所の選択からして適切でないといわなければなるまい。札幌市と那覇市という組み合わせは一見南北の両県の県庁所在地ということで選択されたようだが、恐らくは両県のアイヌ・琉球といった他県との歴史的な背景の違いが考慮されたのだろう。しかし、この国旗・国歌法案は我が国全体の象徴を定めるものである以上、公聴会は北海道・沖縄県といった特殊事情を抱える県よりも、他の都府県でこれを開催したほうが適切だったのではないだろうか(無論、少数者を尊重するという態度それ自体はむしろ賞賛されるべきことであるが、それが却って少数者の見解を国民全体の見解であると誇張される危険性があるとすればやはり問題であろう)。
 加えて、新聞各社のこの問題に対する報道も問題である。例えば、「君が代」の歌詞の解釈に関して、『「主権在民」を定めた憲法との関係』を問題とするかのような論調が少なからず見られるが、再三指摘しているように、そもそも国歌の歌詞は憲法の規定と同一である必要は全く無く、この問題を憲法と絡めて論じること自体、おかしなことなのである。

台湾、中台関係を「特殊な国と国との関係」と表現(7月15日)
 報道によると、台湾(中華民国)の李登輝総統は「中台は特殊な国と国との関係」との表現を使い、公式的に「一つの中国」原則を修正したという。これまで中台間では、戦後半世紀にわたってどちらが中国の正統政府であるかを巡って争いが続いており、中国(中華人民共和国)と台湾が唯一合意できるのは「中国には一つの正統政府しか存在しない」ということ、つまり「一つの中国」原則だけであるとさえ言われていた。しかし、台湾で経済発展と民主化が進展し、国防政策も当初の「大陸反攻」から「国防」へとシフト、戒厳令の解除や地方行政区分としての台湾省廃止等で、最近の台湾は独自路線を強めており、今回の李総統の発言も「一つの中国」原則から「一つの中国、一つの台湾」原則への移行を物語っている。
 今回の発言について日米両政府は、「一つの中国」政策を確認するなどもっぱらなだめ役にまわっている。しかし、台湾では世論調査でも6割以上の国民が李登輝発言を支持するなど「二国論」を肯定する世論が強く、野党・民進党も今回の声明をむしろ支持しているのであって、この事実を忘れてはならないであろう。これについて中国(中華人民共和国)側の朱邦造・外務省報道局長は「台湾を中国から分割させようとする企てだ」との談話を発表したというが、台湾国民にしてみればそれは「台湾を中国に併合させようとする企てだ」ということであり、「一つの中国」論は絶対視されるべきものではない。今後、中台関係はある程度ぎくしゃくするであろうが、それは台湾国民にとっては大きな問題ではなかろうか。

核燃料輸送船、グリーンピースによって出港妨害(7月19日)
 報道によると、東京電力と関西電力が原子力発電所の軽水炉で使用するプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を、再処理先のイギリスとフランスから運ぶ武装輸送船『パシフィック・ピンテール』『パシフィック・ティール』が相次いで出港したという。このうちの『パシフィック・ピンテール』は19日未明、イギリス中西部のバロー港をいったん出港したものの、過激派国際環境保護団体グリーンピースが2隻のゴムボートを出す等して航路を妨害し、出港を一時取りやめるという騒ぎに発展した。
 グルーンピースは、昨年の11月19日にも、共同船舶所有の鯨類捕獲調査母船「日新丸」及び「第1京丸」の出港を阻止すべく違法かつ暴力的な妨害工作を行ったことが記憶に新しいが、今回の抗議行動もそれに類した悪質なものであり、到底容認し難いものである。しかも、今回のケースは我が国の核燃料を搭載した武装輸送船が対象になっており、こうした抗議活動には断固とした対応(威嚇射撃等)をとるべきであろう(抗議活動に見せかけて接近し、シージャックをしかける輩がいないとも限らないので)。
 それにしても不可解なのは、今回のこの海上輸送の護衛がイギリス側の担当とされていることである。報道によれば、本来今回の輸送については、本来は我が国の海上保安庁の巡視船(及び添乗する特殊警備隊SST)による護衛が必要なところ、様々な理由から2隻の武装輸送船で相互に護衛しながら輸送し、輸送船にはイギリス原子力庁の警察官を添乗させることとなったという。「2隻の武装輸送船で相互に護衛する」というのも意味不明であるが(例えば、小渕総理大臣とクリントン大統領からSPをもぎ取り、拳銃を2丁渡して「総理と大統領で相互に護衛していただきたい」と言っているに等しい)、そもそも警備をイギリス側に依存していること自体、問題ではないのだろうか。『パシフィック・ピンテール』『パシフィック・ティール』両船の旗国がどこなのか不明なため法律上の責任がどちらにあるのかはわからないが、仮に両船が何らかの事故に遭遇した場合、少なくとも国際的に見れば我が国も又政治的な責任を取らされるのは必至であり、無関心ではいられないはずである。

君が代のピアノ伴奏拒否した教諭を処分(7月21日)
 報道によると、東京都教育委員会は21日、東京都多摩地区にある公立小学校で、入学式の際「君が代」のピアノ伴奏を職務命令に反して拒否した45歳の女性音楽教諭を、地方公務員法(昭和25年法律第261号)の職務命令違反(第32条)、信用失墜行為(第33条)に該当するとして、戒告処分にしたという。 校長側の度重なる職務命令に対して同教諭は、「自分の思想信条からできません」と拒否したという。
 この事件について東京都教育庁職員課では「正当な職務命令に従わなかったのだから処分は当然だ。掲揚された日の丸を下ろしたり、掲揚を妨害して処分された例はあるが、今回のような処分例はこれまでない」と話しているというが、全くもって正しい見解であり(更に付け加えれば、通説では実は「正当でない職務命令」であっても、当該職員にその是非を争わせる利益がないので、依然として命令に従う義務はある)、むしろこうした妥当な見解が何故広島県において通用しなかったのかが問題であろう。

国旗国歌法案、衆議院で可決(7月23日)
 報道によると、22日午後に開かれた衆議院本会議で、「日の丸」を国旗とし、「君が代」を国歌と定める「国旗及び国歌に関する法律」案が、賛成403、反対86の圧倒的賛成多数で可決され、ただちに参議院に送付されたという。この日の本会議では、まず民主党が、国旗のみを定める修正案を提案し、反対多数で否決されたあと内閣提出法案が審議され、自由民主党・自由党・公明党改革クラブ等の賛成、日本共産党・社会民主党市民連合等の反対で可決した。民主党は、内閣提出法案については党議拘束を外して自主投票とした結果、賛成に石井 一筆頭副代表、伊藤英成副代表、畑英次郎副代表、羽田 孜幹事長、鳩山由紀夫幹事長代理、仙谷由人筆頭副幹事長、中野寛成政策調査会長、鹿野道彦国会対策委員長、松沢成文同副委員長ら45名、反対に菅 直人代表、横路孝弘総務会長、枝野幸男政策調査筆頭副会長、海江田万里国際交流委員長、上原康助倫理委員ら46名がまわった。
(なお、このニュースについては月刊「健章旗」8月号で詳しく論評します。)

公明党、連立政権に参加(7月24日)
 報道によると、公明党は、24日に杉並公会堂で開催された臨時党大会において、「反自民」の政治路線を180度転換する運動方針案と基本政策案を審議し承認、小渕恵三内閣に閣内協力することを正式に決定したという。
 現在の状況では、参議院で自由党を足しても過半数に届かない与党・自由民主党としては、公明党の政権参加は政権安定化のためにぜひとも必要な決定であった。しかし、それが果たして将来的にも適切な選択であったかどうか、自民党に対する信頼に如何なる問題を生ずるかは予断を許さないものがあるといえよう。同党も公党の一つである以上、如何なる理由で政治路線を変更し、どのような日本を作りたいのか、世論にきちんと説明すべきではないだろうか。

スペースシャトル女性船長、記者会見(7月28日)
 報道によると、アメリカのスペースシャトル「コロンビア」号に搭乗し、史上初の女性船長となったアイリーン・コリンズ船長が28日記者会見を行い、宇宙旅行の成果を語ったという。
 ところで、この中でコリンズ船長は「飛行が大成功に終わりとてもうれしい」「より多くの女性に宇宙飛行士の分野に進出して欲しい」等と語り、第2、第3の女性船長の誕生に期待を寄せたというが、船長のこの発言はやや適性を欠くとの注文をつけねばなるまい。男女の相互尊重ということは「何でも男女同数」 といったフェミニズム的イデオロギーとは異なるのであり、しかし船長の発言は多分にそうしたものと受け取れるからである。

憲法調査会設置法案、可決成立(7月29日)
 報道によると、衆参両院に「憲法調査会」を設置するための国会法改正案が、29日午後の衆議員本会議で採決され、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党等の賛成多数で可決・成立したという(日本共産党、社会民主党は反対)。
 議案提出権が無いとはいえ、憲法問題を協議する機関が国会に設置されるのは日本国憲法下では初めてのことであり、自由党の「憲法改正国民投票法案」と共に、憲法改正に向けた議論が高まることが期待されよう。


表紙に戻る   目次に戻る   健章時報目次へ   1999年7月へ

製作著作:健章会・中島 健 無断転載禁止
 
©KENSHOKAI/Takeshi Nakajima 1999 All Rights Reserved.

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください