このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

栄家旅館


電話番号:0898-68-7164
郵便番号:791-0502
住所:周桑郡丹原町願蓮寺173


コメント3
 『遍路道は大分変わったが、五十歳くらいのご婦人でさえ、無事香園寺に到着できました。と電話を
寄こしたのだから、大丈夫だよ』
一番心配していた横峰越えの遍路みちに、返ってきたご主人の言葉であった。
採石場へのみちは完全に通行止め、香園寺奥の院を経由しての香園寺行しかない。とのことであった。
倒木や橋の流失があって歩行困難な所もあるので、今までより20%ぐらい時間がかかると思って間違い
はない。
『だが、注意をすれば大丈夫』
ご主人のこの一言で、今まで通りの山越えを決める。

 客は60歳前後、足の速い男性。もう一人は三味線を弾く高知市在住のお嬢さん。崩壊崩落現場の写真
などを見せられて迷っていたのに、3人共山越えをすることにした。
『香園寺に着くまで、面倒を見てあげてね』
宿の女将さんにそう言われたが、冗談じゃない。誰が見てもあげる方ではなく、もらう方が歴然として
いる。

 翌日、少し早めに出立した。 
『香園寺に泊る人は、荷物を寺まで運んで上げるよ』
ふたりは宿坊に泊ることにして、荷物を預けた。
宿は別な所に既に予約していたので、私は12kgの荷物を背負って上ることにした。
荷物を背負って登って本当は如何なのか。と言うこと知りたかった。それに三坂峠で2回転んでいる。
滑って後ろに転んだら後頭部を打ち、あの世に参る切っ掛けになるやも知れぬ。背中にリュックがあれ
ば避けられる。老人の狡猾な計算が其処にはあった。重くて身体には随分と負担を掛けたが、ここでも
2回転んだことで、己の強かさににんまりとしたものである。
 3人が一緒に山を下りたとき、2回転んでしまったよ、と言ったら
『3回でしょ』
咄嗟に三味線嬢ちゃんから言葉が返った。今時の若者は物覚えが良くて困ったものだ。
年寄の鯖すら読ませてくれない。

 それは如何でもいい。道の状態はどうなのだ。
ついつい申し訳ありません。それはへんろみち、道、路があるに載せてあります。
どうぞ、下記をクリックして下さい。
横峰へんろみち

カンカンラリー

行程表
         56 ↓                      ↓3.0km        ↓        57        ↓        ↓2.5km        ↓        58        ↓        ↓6.2km        ↓ 59〜60 59国分寺        最短24.7km ↓ 興隆寺〜 ↓ 生木地蔵   ↓        番外11 生木地蔵               ↓        ↓24.7km         ↓←←←←栄家旅館         60横峰寺       ↓            ↓9.3mk        ↓        61香園寺        

コメント2
 平成11年4月4日。宿泊をお願いしている。
『申し訳ありません。お部屋が全部塞がっておりますので……』
心配が本当になった。電話口で女将さんの声であった。初めての遍路、計画は此処に泊る
事になっている。ああ左様ですかと、簡単に引き下がる訳にはいかない。横峰山越えが出
来なくなるからだ。電話は顔が見えない事をいいことに、電話を切らずに粘り続けた。

 娘の部屋を空けますが其処でもいいですか。狭い部屋ですよと相手が折れた。
人間死ぬ時、お棺の広さがあればいい。布団の敷ける1畳あれば言うことはない。お大師
さんは見たこともないが、地獄に仏を痛感した時であった。

 あの時のことなど、女将さんは覚えておりますまい。
2度目にお世話になったとき、廊下でも階段の下でも泊めて下さいと念を押しておいた。
これも覚えておりますまい。

 玄関で赤ちゃんを抱いた若いお母さんを見た。4月4日に部屋を取り上げられた、あの
時の娘さんかも知れない。そうであっても、この男に自分の部屋を取り上げられたとは
思ってもおりますまい。

 自分の都合のいいようにお願いしてしまった事、何時までも忘れない。
丹原町願蓮寺に来ると必ず思い出す。申し訳なかったと……
客とははいいながら、一番扱い難く、一番厭なへんろの部類なのかもしれない。

素知らぬ顔をして、来年も靴を脱ぐのだろう。

カンカンラリー

コメント1
丹原町は、60番横峰さんの登山口に当たります。昔はこの街に7軒の宿がありました。
しかし1軒2軒と廃業が続き、また商売替えをする所もあり、当館だけになってしまい
ました。健脚のお遍路さんは別として、山を越えて61番香園寺産に抜ける最適な距離
にあると思っています。廃業したらお遍路さんが迷惑する。これからもこの仕事を続け
ていく積もりです。
シーズンの春と秋、お遍路さんが立て込んで宿泊をお断りすることもあります。昔、相
部屋が当たり前。今はひとり1部屋が当たり前。時代の流れでしょうか。お断りするとき、
この仕事の一番悲しいときでもあります。
 丹波の黒豆で味噌を作り、梅干も、南京豆もその他の野菜も、我が家の畑で採れたもの
を召し上がって頂いていること。横峰の山越え、距離的に一番安全な地点に在ること。
お遍路さんに認めて頂けるのは、此れ位でしょうか。
結願まで、どうぞご無事で…。

◎栄家旅館 主人

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