このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

通には判るが一見には判らない・・・「化け準特急」の障壁

とも
2008.04.04


何も寿司とか日本酒とかワインの話しではない。
京王線を日常的に利用されている方には不思議でも何でもないが、他の沿線住民からみてどうにも理解できない列車がある。

それは・・・
京王線の「準特急 北野行」である。
パッと見る限り、なんでもない列車に見える。もちろん、何でもないごく当たり前の列車である。別に貨車で構成されているわけでもSLなわけでもない。京王の通勤電車10両編成で走る列車だ。
しかし、一見さんにはクビをひねる列車でもある。
路線図を見ると北野は京王線終点の京王八王子の一つ新宿よりにある駅であり、高尾線との分岐駅でもある。なぜに八王子ではなくこんなところで終点なのだろうか・・・

この京王線の準特急北野行、その駅での案内はこうなる。
準特急北野行です。この電車は北野から各駅停車高尾山口行です。」
そう、要は「高尾山口行き準特急」なのである。ただ、案内上は「北野行き」なのだ。本来、準特急では通過となる「京王片倉・山田・狭間」の3駅に停車させるために準特急の北野以西を各駅停車としているため、準特急としての運行区間は北野までだから北野行きということになる。

果たして、京王のこの「化け」は利用者への案内として判りやすいと言えるのだろうか。
もちろん、説明されれば判る。だが説明されなきゃ普通は判らない。
発車案内板の表示はあくまで「準特急 北野」である。スクロールする備考欄などに表示はされるが、一見さんには訳のわからんことになってしまう。車両にも「準特急 北野」と表示される。

これが通勤ラッシュ時の数本の列車ならばまだ許容できる。あるいは都心縦貫など大きな導線がない区間の列車ならばそれもいいだろう。
だが「準特急 北野行」は沿線随一の観光地、高尾山への行楽列車、しかも土休日は終日運転だ。行楽客は鉄道マニアや日常利用者とは限らない。京王は関西でも高尾山の車内広告を出すような観光地である。
高尾山に行きたい人は京王新宿や明大前や分倍河原で悩んでしまう。「はてさて、高尾山口行きはどれ?」と。
1本も高尾山口行きがないのであれば、それはそれで「北野で乗換なんだ」と認識されるであろうから問題は無いとも言えるが、困ったことに直通の高尾山口行き各停があり、しかも新宿では準特急の1本前、分倍河原では準特急の直後に来るのだからややこしい。

だからだろうか駅には「準特急 北野行きは北野から高尾山口行きになります」とポスターまで貼られているが、ポスターに目が行くかは何とも言えない。

こうなってくると、一つの疑問がある。

この列車、「準特急 高尾山口行き 北野からは各駅停車」で何か不都合があるのだろうか。
あるいは「区間準特急」という種別を用意しても良い。または土休日には準特急の高尾山口行きは設定されないのだから、準特急の基本通過3駅は「休日は準特急が停車」という形にしても良い。
最終目的地の駅名が表示されない列車というのはどう考えても判りにくいし、理解は簡単だがなんとも判りにくいのだ。

同じように京王には種別と一緒に行き先まで「化ける」列車が数多くある。
上述の他に、
「急行高幡不動→高幡不動から各停京王八王子・高尾山口」(土休日朝・夜間、平日夜間)
「快速調布→調布から急行橋本」「急行調布→調布から快速本八幡」(夕刻、夜間の相模原線から都営新宿線への直通系統)
「急行新線新宿→新宿から各停本八幡」(夕刻以降の都営新宿線直通急行)
なんていうのもある。これらはラッシュや早朝深夜という時間帯限定ではあるが、イレギュラーにしては本数は多い。

たとえば高幡不動以西各停の急行は「区間急行」、調布以東快速の急行は「通勤急行」、都営新宿線直通の急行で都営線内各停は「急行」のままでもいい。都営線内各停と案内すれば済む。
サンリオピューロランドに来た観光客が都心へ戻るのに多摩センターで「急行調布」という案内を見て実は直通だと判るだろうか。通勤通学の日常利用者以外にはなかなか判りにくいものだろう。

行き先も種別もコロっと変わる例は小田急(急行相模大野→各駅停車本厚木等)、近鉄名古屋線(準急四日市→普通白塚、普通伊勢中川→普通宇治山田など)にもある。名古屋線の場合は一応案内が車両にも表示されるのでまだいい。また遠距離乗り通しが少ない区間であるから実害も小さい。

もちろん、利便性を最大限にする工夫であり、このダイヤの工夫は評価できる。そして種別を増やすことが判りにくい案内の原因になるというのは判る。
今現在でもLEDの多用や時刻表への判りやすい案内書きなどはされている。

しかし、行き先まで変わるというのはなかなかに理解しにくいものだ。しかも特定の時間帯はすべてそれになるというパターンもある。

サイン・案内には「ユニバーサルデザイン」の考え方が必要であることはこれまでも何度かこのフォーラムで書いてきた。これらの列車を理解するのはそれ以前の問題とも言えなくはない。
せめて行き先だけでも最終目的地を表示する工夫はしても良いのではないだろうか。

利用者はそんな些細なことでも「電車って不便」という印象を持ちかねないのだから。



交通総合フォーラムへ戻る

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください