このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
Intermisson
この冬、再びこの街を訪れた。低い山を越えてきた雪雲の下、弱い日差しを受けて街はくすんだ輝きを放っている。
歓楽街のはずれのうだつの旧家の軒先を歩き、この街の放つ渋い輝きを味わってみた。猫の歩く路地や、古物商の店先、そのどこからでも見える山城。角角にエピソードを思わせる石碑、道祖神。突然現れる由緒ある伽藍、楽市楽座を誇りとした市場町、山城の麓ふいにとぎれる広小路。
バスポールに寄り添うようにバスを待つ山の人々、大きな袋を抱え、飛び跳ねるように電車のステップを登る若い女性たち、スタッドレスタイヤの回転する音、信号機の奏でる人工的な鳥の声。
屋根の高いアーケード街と漂う焼けたソースの匂い、平日の午後外商が忙しそうな、客のまばらな大きな店、丸イスに腰掛けた店番の老人。
夕方の電車で刀鍛冶の街へ行ってみる。
仕事が終わって会社から出てくる車の間を電車は行きます。右折レーンの無い車の海に溺れそうな赤い電車。古い集落に寄り添う薄暮の交換停留所で行き違いを繰り返し電車は暗くなるころ刀鍛冶の街へ着く。
古い街道の商店街は日暮れたばかり、すでにことごとく店を閉めていた。歩くのは襟巻きをした私。街道の踏切で引き返し、電車駅のバス乗り場へ向かう。正月休みの夜、高速バスは学生ばかり。ツインタワーを目指し、阿弥陀籤のような高速道路を縫って何時に着くか解らない渋滞の中、バスは里山から都市へ下りてきた。
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