このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 

 

Overture

 

 

 子供服はすぐ小さくなる。今時の子どもたちは成長が早い。子供洋品も今や多様化して、百円ショップのような衣料品店がある一方で内外の有名ブランドの子供洋品戦略も喧しく報道されている。服を作るという仕事が日本のメインの産業だった時代がある。たくさんの人手を使い、世界中のファッションを学び、一円でも安く生産することが社会の要請だったあのころ……。

 戦国の英雄が築いたその街には、日本中から風呂敷包みを背負った、和装洋装のファッション仕掛け人たちが夜汽車を乗り継いでやってくる。この街を囲む豊かな村々からは、里山の恵みが続々と運び込まれる。ほど近い飛行場には、空の護りを務める若者たちが詰めている。

 仕掛け人たちは一日の商談<しごと>を終えると、村の人々や若者たちは非番<やすみ>になると、歓楽街<よるのまち>へ集った。この街を唄った歌謡曲<うた>が全国へ鳴り響いた時代<とき>もあった。

 汽車から降りて、この街へ出ると、小さな電車がぽつんと駅前広場に佇んでいる。電車は、狭い電車通りの、古い商家の軒を掠め、英雄の山城の麓の水のきれいな大きな川を渡って、里山の村や、刀鍛冶や紙漉の盛んな小さい町へ向かう。

 「岐阜」 この地名を聞くと私はこんなデ・ジャ・ヴを思い浮かべるのです。

 

 

 

 

 

先に進む

元に戻る

 

 

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください