このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 

 

千葉モノレール訪問記

 

TAKA  2004年11月10日

 

 

 前に多摩モノレールについて書きましたが( 拙「多摩モノレール運賃値上げに対する一考察」 )、「一つばかり見るだけでなく何処かで比較の対象を探そう」と思い、多摩モノレールに似たような環境(赤字・乗客計画未達に苦しむ/東京近郊の地域拠点都市と周辺地域を結ぶ新交通である)の千葉都市モノレールを一度見てみようと思い、又サフェージュ式懸垂型モノレール独特のダイナミック感(湘南モノレールで味わいあのジェットコースターみたいな感じに嵌ってしまいました)を味わうのも一興と思い色々調査すると共に、10月11日(月)の午後に現地を見に行ってきました。

 日曜・祝日の限られた時間しか遠出できない仕事の都合上、本来平日にゆっくり見るのがベストなのでしょうが、その様な贅沢は出来ず、駆け足での訪問になってしまいました。その点必ずしも現況を示しているとはいえません。その点はご承知置き頂き一読して頂くと幸いです。

 ※此の頃多忙で執筆時間も取れず、掲載まで1ヶ月近く掛かってしまいました。その点はお許し下さい(多摩モノレールは仕事の経路上で利用したので仕事のついでに観察出来ましたが、千葉モノレール周辺に仕事が無いので……。私が平日見るのは現状では不可能です)。

 

 

□千葉都市モノレールの概要

 千葉都市モノレールの概要を調べるのなら、HPを探すのが一番速いと思って検索したら、会社のHPが有りました。中身を見てみると中々充実しています。

    千葉都市モノレール株式会社
    千葉都市モノレール 概要

 これを見たら、それ千葉モノレールについて以上の説明は要らない位詳しく出ています。それに加えて千葉モノレールに関しては、インフラ整備主体の千葉県街路モノレール課にもモノレールの概要が記載されています。

 県が設置した“千葉モノレール検討調査委員会”のホームページにも千葉都市モノレールに関する概要が出ています。

    千葉県街路モノレール課
    千葉都市モノレールに関する調査検討

 これだけ充実した資料が揃っていますし、“千葉都市モノレールに関する調査検討”のホームページに関しては、他モノレール企業のデーターも豊富に掲載されています。ですのでこれからのこの議論に関しては、このデーターを参考にしていきたいと思います。

 

 

□千葉都市モノレール試乗レポート

 先ずは一度も乗った事ない路線なので、「見てみないと議論も出来ない」という事もあり10月11日の祝日の午後ですが、下記の経路で全線を見学してきました。

 (乗車経路) 都賀15:09→千城台15:17〜千城台15:38→千葉港16:07〜千葉港16:08→県庁前16:18〜県庁前16:25→千葉16:31〜その後千葉駅周辺を1時間ほど観察

   Ⅰ.千葉モノレール路線図
   
  ※この路線図は千葉都市モノレール㈱様のHPよりダウンロードさせて頂きました。
   話が分かり易い様に敢えてママ掲載してますが、この図の著作権は千葉都市モノレール㈱様に帰属します。

 

1)都賀(15:09)→千城台(15:17)間

 今日は午前中仕事先周りの後、小田急線→総武緩行線→総武快速線で都賀に向かいます。総武快速線では錦糸町 14:18発の快速エアポート成田に乗るが、混雑していて座れません。仕方なく贅沢にグリーン車を利用するが、グリーン車も6割程度の乗車率です。祝日だからかも知れませんが、総武区間でも意外に高い利用率で驚きました。

 都賀に降り、千葉都市モノレールの駅に向かいます。その前に駅前広場に下りてみると駅前は乗換駅&ニュータウンの玄関口の割には開けていない感じです。

   Ⅱ.都賀駅前広場写真
   

 早速時間も無いので、モノレールの駅に向かいます。モノレール都賀の駅はJRの駅との連絡通路は整備されている物の多摩モノレールの駅に比べると比較的質素なつくりです。階段を上り自動改札を通ります。其処でパスネットを入れると……なんと「ピンポン」音が鳴ってゲートが閉まるでは有りませんか! 関東の私鉄でパスネットが使えないのは驚きです。そう言えばパスネットの各社の車両が出ているバージョンに千葉モノレールは出ていなかった様な気が……。

 便利になれると不便になったときにはより一層強烈に不便さを感じます。しかしJR接続がメインの千葉モノレールの場合スイカ併用が出来た方が良いのかもしれません(自動改札は東京メトロ中古で更新するとの事なのでそれも難しい?)。

 早速ホームに上がってみると、ホームには10人程度の人が待っています。しかし対向の千葉行きホームには殆ど人が居ません。

   Ⅲ.都賀駅モノレールホーム
   

 暫くすると千城台行きモノレールが入線。 2両編成はやはりかわいい感じがします。待っている人の数から考えて、輸送力的には 2両編成が適当なのかもしれません。しかし 2両で定員は約 150名程度です。朝一部は 4両編成運転にすると言っても、大部分の時間が 2両編成で賄えてしまう現実は、千葉モノレールの厳しさを象徴しているともいえます

 都賀から10人程度が乗車して発車していきます。車内は座席がサラリと埋まる+αの程度の乗客です。2両目は車両間移動不可なので移動して見ては居ませんが、同じ位の利用客でした。

   Ⅳ.千城台行き車内:15時 9分都賀
   

 桜木・小倉台・千城台北と数名の乗客が降りていきます。沿線は殆どが住宅地で戸建てがメインです。マンションは殆ど見かけませんでした。又モノレール下の道路は片側1車線+αの道路で、車もそれなりに走っています(渋滞するほどは多くない感じ)。

 そうこうしている内に 8分であっと言う間に千城台に到着です。千城台到着時点では未だ15名/両程度の乗客が乗っています。意外に終点までの乗客が多かったのは驚きです。

   Ⅴ.千城台行き車内:15時17分千城台)
   

 

2)千城台駅周辺を見学して

 千城台で折り返す合間にカメラの電池購入も兼ねて、駅前のラパーク千城台に入ってみます。

   Ⅵ.千城台駅前広場とラパーク千城台
   

 ラパーク千城台は長崎屋とベスト電器の同居した複合商業施設ですが、電池購入&時間調整にワンフロア歩いて見ましたが、人の入りは祝日の午後だけ会ってまあまあの感じです(普通の郊外型店舗と言う人の入りと感じです)。

 約10分の電池購入&ウインドーショッピング後駅前広場に下りてバス停を眺めてみると駅前広場のバス停から京成バスの千葉駅前行きのバスが発車していました。「モノレールも千葉行きなのにバスも出ているのか?」と最初は感じましたが、良く考えて見るとモノレールは穴川経由の迂回ルートなので、経由地が異なる事に気づきました。

 千葉駅〜千城台駅間には 3系統有るようで、大体10分程度の間隔で運行されているみたいです。千葉行きのバスに何処まで乗るかは不明なものの、15名程度の乗客が確認できました。

    京成バスHP 千葉営業所路線図

 千城台駅からは千葉駅〜千城台駅及び以遠地域間を結ぶ路線と、千城台駅からのフィーダー路線の2つに分類される感じですが、モノレールに直通と都賀乗換がありその上に京成バスと千城台〜千葉間には多くの交通機関が有る事を改めて感じさせられました。

☆千城台〜千葉駅間の交通手段の比較

 (千葉モノレール)千城台〜千葉駅間 → 24分 450円
 (千葉モノレール+JR総武本線)千城台〜都賀乗換〜千葉間 → 20分(内乗換 8分) 450円
 (京成バス)千城台〜千葉駅間 → 所要時間不明 420円
 ※鉄道に関しては「駅前探検倶楽部」で平日午前10時で検索した結果。バスの運賃はバス停で確認

 こう考えると、対東京ではJR総武線に都賀での乗換が比較的優位ですし、対千葉でも乗換の手間があってもモノレールを使うより都賀乗換のほうが速く運賃が同じ結果が出ています。

 モノレールの運賃設定こそは「乗換の手間」「定時性」等を考慮すると絶妙な設定と言えますが、モノレールが路線迂回していると言うマイナスもあり、必ずしも沿線の千葉市内交通機関として有効に機能して居ないことをこの結果が示しています。

 

3)千城台(15:38)〜千葉みなと(16:07)

 さて千城台をゆっくり見学している時間も無かったので、早速千城台からモノレールに乗って千葉みなとへ向かいます。祝日の16時頃と言う時間帯もあり微妙な具合で、座席の40%位が埋まる程度の乗客で、途中駅でも長崎屋の袋を持った人が降りたり、乗客が有ったりして殆ど乗客数の増減無く都賀まで進みます。

   Ⅶ.千葉みなと行車内:15時38分千城台
   

 都賀では、乗車も有るものの降車の方が上回り車内は空席が増えます。多分千城台方面からモノレールを総武本線のフィーダーとして利用している人々が多い分千葉行きでは都賀で降車が目立つのでしょう。

   Ⅷ.千葉みなと行車内:15時50分都賀
   

 都賀で一度空いた車内は、動物公園で家族連れのレジャー客・スポーツセンターで施設利用客・千葉公園で競輪の帰り客(見たいな感じ?)のような休日・ギャンブル開催日独特と思われる客層の乗客が増え、千葉駅到着時には一部立ち客が出る程になります。

 普通の感じの客層(いかにも遊び帰りやスポーツ帰りでない&競輪新聞を持っていない)でも座席はサラリと埋まる程度の利用客は有る感じです。都賀〜千葉間各駅とも降車客は極めて少ないですが、乗車客は数名〜15名程度ありました。

 飛びぬけて多いという駅は有りませんでしたが(強いて言えば動物公園・スポーツセンター・穴川が比較的多かった)、都賀からは千葉に向けて乗客が増えていくと言う形であり、千葉駅周辺地域へのフィーダー路線として機能しているとは感じました。

   Ⅸ.千葉港行き車内:16時 5分千葉)
   

 それら客も殆どが千葉で降りてしまい、千葉みなとまで利用する客は3割位しか居ない感じです。その点「交通結節点」「業務・商業核地域」としての千葉駅の求心力は大きい物が有ります。千葉〜千葉港間の千葉市役所・各公共施設以外に主だった施設が見当たらない点や空き地が目立つ点を考えると、尚更その印象が強まります。ましてや千葉港では京葉線に接続していますが、対東京・対蘇我でも、京葉線より千葉乗換の総武線や内房・外房線の方が便利ですので、千葉港での京葉線との結節は極めて限定的にしか機能して居ないと言う感じです。

   Ⅹ.千葉みなと行車内:16時 7分千葉みなと)
   

 

4)千葉みなと(16:08)〜県庁前(16:18)〜千葉(16:30)

 とりあえず全線完乗もしたいし、時間も16時を廻ってきたので、千葉港で慌てて改札を出て折り返しの県庁前行に飛び乗ります。県庁前行列車は空気輸送に使い状況で 2両合わせて10名強しか乗っていません。市役所前で何処かの施設で行われていた結婚式帰りの人が20名位乗ってきましたがその人々も千葉で降りてしまいます。

 千葉からは1号線単独の路線に入りますが、千葉の繁華街の近接の裏側を通る路線で有るにも関わらず、乗客は数えるばかり疎らな状況です。又中間の2駅での乗降客も限りなくゼロに近い状況です。県庁前までの乗った人間も又数えるばかり(一桁の人数)の量であり、栄町・葭川公園に関しては、デパートや専門店から遠くないものの、千葉から歩く人も多いみたいで利用客は非常に少ないです。又県庁前は休日で官庁街は閑散としている状況で、少なくとも休日には利用客が極小の状況です。

   ⅩⅠ.県庁前行車内:16時18分県庁前
   

 県庁前でもう一度改札を出て、折り返しの列車に乗車しました。改札を出てもう一度ホームに上っても、ホーム・車内共に閑散とした状況で、立派なホームと乗客の居ない状況が何か侘しさを滲ませています。常時片面のホームしか利用して居ないみたいで対向ホームは保線車両の留置所となっています。

   ⅩⅡ.県庁前駅状況:16時20分県庁前
   

 折り返しの列車も、同じような状況です。県庁前では数人に乗車があったものの、途中駅ではほぼ乗降ともゼロの状況です。そのまま千葉駅に滑り込むものの、千葉駅から千葉みなと方面に乗る乗客も多い訳ではなく(数人の乗車)何ともさびしい限りです。

 

5)モノレール千葉駅・千葉駅周辺を観察して

 約1時間半を掛けて、モノレール全線を試乗後、多少時間も有ったのでモノレール千葉駅を観察してみて、その後買い物がてら千葉の繁華街を見ながら京成千葉中央駅まで歩いて見ました。

☆モノレール千葉駅を観察して(16時30分〜16時45分)

 県庁前から1号線で千葉に戻った後、モノレール千葉駅を観察して見ました。モノレール千葉駅はJR千葉駅の総武緩行・内房・外房線ホームの直上に作られた2面4線ホームの駅で、規模的には 4両止まれるホームの長さが有るものの、壁・天井が囲われている為ちょっと薄暗い感じです。JRへは改札入口までエスカレーターが有り・京成へは連絡改札口が有ります。乗換自体は傘も要らず短い距離で可能です。

   ⅩⅣ.モノレール千葉駅外観
   

 モノレール千葉駅で15分強観察して見ましたが、賑わうのは2号線の列車が着いたときと2号線の列車待ちの乗客が居る時だけで、それ以外の時には駅の規模と比べると閑散としています。

 それでも賑わっていても数十人の人が居るぐらいで、曜日・時間等を考慮に入れても、JR千葉駅構内や千葉駅前のバスターミナルと比べても一番閑散として言う状況は否定できません。

   ⅩⅤ.千葉駅ホーム:16時半千葉みなと行方面)       ⅩⅥ.千葉駅ホーム:16時40分千城台行ホーム)
       

 ホームの下にはJR千葉駅方面〜千葉そごう方面を結ぶ連絡通路が有りますが、賑わいの有るテナントが有る訳でもなく、ダンスの練習をする若者やホームレスが居る状況で、活気も無く逆に異様な雰囲気で通りづらいような状況です。

 通路を通っていくと京成千葉駅の入口の先は千葉そごうのビルの間の屋上庭園に出れます。屋上庭園の上には千葉モノレールの軌道が通っています。ビルの谷間をモノレールが通過する姿は「都市の造形美」と言える位綺麗な物です。

   ⅩⅦ.千葉駅に進入する千葉都市モノレール
   

 

☆千葉駅周辺を観察して(17時〜18時)

 モノレール千葉駅を見学後、「帰りはたまには京成で」と思い買い物がてら千葉中央まで駅前大通りを散歩しながら、駅周辺を観察して見ました。

 千葉駅前のバスターミナルは、さすがに政令指定都市の玄関口だけあってひっきりなしにバスが来ます。主に小港鉄道・千葉中央バス・京成バス等の京成系のバスがメインです。人通りも多くバスを待っている人もかなり居ます。JR千葉駅から降りてくる人も多く、何か孤立している感じで寂れている感じの千葉都市モノレールの千葉駅とは賑やかさは大違いです。

 その後駅前大通を葭川公園方面に歩いて見ますと、千葉そごう移転後の商業ビルと千葉三越等の百貨店と銀行支店等の金融機関が混在しているものの、百貨店が有る分日曜日の夕方でもかなり賑やかです。 5分ぐらい歩くと駅前大通を跨ぐ千葉都市モノレールが見えてきました

   ⅩⅧ.駅前大通を跨ぐ千葉都市モノレール:栄町〜葭川公園間)
   

 その後葭川公園駅近くのパルコに寄り買い物をし、千葉中央駅の京成ミラマーレを覗いて見た後千葉中央駅から京成に乗り東京へ戻りましたが、パルコ・ミラマーレ共に日曜日の夕方と言う時間帯もあり、東京の商業ビルに負けない程度のそれなりの人が入ってました。

 千葉中央駅前のバスターミナルも、JR千葉駅前程ではないもののそれなりに人が居ます。千葉中央も千葉の中心市街地への利便を考えれば、JR千葉駅ともそんなに差が有りません(距離的には僅かにJR千葉駅のほうが近い、差が有るとすればターミナル其の物の商業等の集積と対東京の利便性)。サブターミナルとしては十分機能している感じです。

 

 

□千葉モノレールに乗って見て

 半日にもならない時間で駆け足で、千葉都市モノレールを試乗して見ましたが、其処で感じたことも幾つか有ります。千葉都市モノレールと同じく此の頃良く利用する多摩都市モノレールも、似た様な時期に構想され同じように経営問題で苦しんでいます。

 前回は多摩都市モノレールについて私見を述べましたが、今回は「似たような時期に構想」「同じく経営が悪化」「似たような規模・経営体系」「距離的に近い(此れが一番大きい)」等の理由が有り多摩都市モノレールとの比較の対象として千葉都市モノレールについてレポートしてみようと今回訪問しました。

 多摩都市モノレールでは地域的に良く利用するので、色々な時期(平日・休日等)に利用しているので有る程度状況が分かりますが、1回しか乗った事のない千葉都市モノレールは周辺の土地勘も無く今回の時間以外の状況も良く分からないので、得心がいくような比較をする事が出来ません(当然多摩都市モノレールのレポートより荒い内容になってしまいますが……)が、1回の乗車だけでも多摩都市モノレール以上に厳しい状況が私には見えてきたと感じます。

 その様な点を含め千葉都市モノレールについて特に導入の経緯についてと経営について感想を述べて見たいと思います。

 

1)千葉都市モノレールは何故作られたのであろうか?

 この小見出しは漠然とした内容ですが、千葉都市モノレールが「どのような目的」で作られ「何故懸垂式モノレールを選択」し「どの様な意図がありこの経路選択がされたか?」が私にはどうも明確に感じられませんでした。特に第一期線の経路選択にはその意図がさっぱり理解できません。

 多摩都市モノレールの場合“多摩地域の南北交通の確保”と言う大目的の中で“多摩ニュータウンの南北交通の確保”“多摩の副都心立川へのアクセス確保”“東大和・武蔵大和の交通不便地域へのアクセス確保”という目的達成のために今のルートが選択されたと言うのは簡単に推測できます

 しかし千葉モノレールでは今の路線ルートからその目的を推測する事は非常に困難です(路線の立地に目的の意図を感じずらい)。と言って何も調べないのは手抜きなので、最初に概要を示したHPで導入の経緯を説明した内容は無いかと思い調べましたら、1箇所有りました。

    千葉モノレールに関する検討調査より〜千葉都市モノレール導入の経緯

 此れを読む限り「目的」「経路選択理由」「システム選択理由」について一応答えは出ています(私の責任で要約・抜粋して掲載します)。

  「目的」→・千葉市内のNTと千葉市都心(千葉駅周辺)とのアクセス強化
       ・モノレールネットワークが千葉市内交通処理の骨格となると同時に鉄道を補完
       ・将来的には千葉駅に集中しているトリップを分散させる
  「経路選択理由」→・対策協議会で経済性・道路空間の有効利用等を踏まえ決定した。
  「システム選択理由」→・機種選定委員会で跨座式・懸垂式比較検討の結果検討した。

 要約すると以上の結果ですが、総論的な目的については理解できますし、昭和40年代後半に基本計画を考えたと言う時代から考えれば、右肩上がりの人口増が未だ想定できた時代であり将来公共交通がパンクする可能性が有ると言う想定をしてもおかしくはない時代ですから、「思い切ってモノレールを導入しよう」と言う考えになったのは理解できます。

 しかし「何故第一期ルートを今のルートにしたのか?」「何故跨座式を導入したのか?」と言う疑問には明確な答えが出ていません。と言うよりかも誰でも書ける在り来りの表面的な事しか書いていません。

 経路選択に関しての「既開業区間の穴川経由ルートは対千葉駅を考えれば迂回ルートでは?」とシステムの「標準の跨座式を何故導入しなかったのか?」と言うのは非常に疑問です。

 経路設定で言えば千城台・小倉台からは、対東京で考えれば総武線都賀へのフィーダーとして機能しています。しかしそれは道路さえ整備すればバスで十分です(モノレールと同時に道路も十分な状況で整備されている)。それに本来の「千葉市内とのアクセス強化」と言う点では、千城台・小倉台対千葉ではモノレールは十分は機能していません。それは前の京成バス・都賀乗換・モノレールでの千城台〜千葉間の交通手段の比較でも明らかです。

 又千城台・小倉台に関してはバスで千葉に流れるトリップを都賀に分散させていると言う副次的効果は有るかもしれませんが、穴川で考えれば逆に対東京で稲毛方面に流れる客を千葉に引き寄せかねない路線設定であり、正しくは「マスタープランで提示した路線を繋ぎ合せて第一期路線にした」と言うのが真相でしょうが、それでも釈然としません。

 県庁前〜私立病院前間の延伸予定区間でも千葉寺経由の迂回ルートを選択しています。これも又バスとの競争的には不利であり、正しく「同じ過ちを繰り返す」状況であり問題で有るといえます。

    参考資料〜詳細な千葉モノレール路線図〜千葉都市モノレール調査検討委員会HPより

 試験路線的な役割で作られた湘南モノレールを例外にしても、本格的な路線であり既開業区間だけで15.2kmもの距離のある千葉モノレールで何故懸垂式が採用されたのかも大いなる疑問です。

 例えば懸垂式モノレール選択の理由についても、千葉県街路モノレール課のHPに“千葉モノレールの特徴”と言う記事は出ていますが、それが跨座式モノレールより懸垂式モノレールが優れている理由としては説明不足です。

    参考資料〜千葉モノレールの特徴〜千葉県街路モノレール課HPより

 単純に考えても懸垂式モノレールでは「軌道桁が箱型になっているので走行環境が外部環境に左右されない」と言うメリットが有りますが、跨座式モノレールではゼロの「保守管理としての軌道桁の塗装工事費」だけでも馬鹿にはなりません(鋼製桁ですから理想は十年に一度の塗装が必要です。釣り足場等の仮設工事費も考えると塗装工事費はかなりの物になります)。コスト的に考えれば他都市で採用されている標準的な跨座式を採用する方、明確な比較資料を持っていませんが一般論で考えれば有利であったと考えます。

 現在経営の悪化で税金投入等もされている状況で有る以上、経営悪化の要因の一つとして過去の経緯をはっきり明確化させる必要性は有ると思います。

 迂回ルートを建設すれば建設費投資は増加します(インフラ部は補助でもその補助は私たちの税金で負担しているのだから)。その迂回ルートに意味はあったのか? 迂回ルートが今の千葉モノレールの窮状の一因になっていると言えますので、何故このルートを選択したのかはハッキリさせるべきであると言えます。  それはモノレールシステム導入に対しての選択の理由に対しても同じ事であると言えます。少なくとも千葉市・千葉都市モノレール・千葉都市モノレール調査検討委員会のHPを探しても明確な答えが出ていないと言う事は、明らかにされていないと同義であると言えます。

 

2)千葉都市モノレールはモノレールとして必要か?

 1)ともラップする内容ですが、果たして千葉都市モノレールは「モノレール」として必要であったのでしょうか? 休日の1日しか見ていない状況なので何とも言えませんが少なくとも「モノレールを作るだけの需要が有るのか」といえば、トータルで考えると疑問で有ると思います。

 今であればモノレールの他に「ガイドウエイシステム」「LRT」等も選択肢として存在します。しかし昭和40年代後半〜50年代という今から30年前の時代を考えれば「技術的にモノレールしか無かった」と言えるかもしれませんが、其処に「需要の過大な見積」が有ったからこそ、「将来を見込んでモノレールを選択した」と言う点が大きかったのでは?と私は感じています。

 その当時であっても、インフラ外部のみ第三セクターで投資すれば、インフラ部は税金で作ってくれるモノレールという条件が有るからこそ、モノレールを作ったと考えることは出来ますが、その安易さが需要を過大に見積し、需要に見合わないモノレールを作ってしまったと言う事が十分ありえると思います。

 千葉都市モノレールの場合、多摩都市モノレールに比べてインフラ外部第三セクター負担分が少ないのに営業赤字に彷徨っている状況です。此れは事業的には深刻な状況です。

 ・千葉 インフラ部2070億円(81%) インフラ外部 480億円(19%) 総事業費2550億
 ・多摩 インフラ部1163億円(48%) インフラ外部1258億円(52%) 総事業費2421億円

  モノレール建設に関しての「インフラ部」と「インフラ外部」の区分けに関しては下記HPに詳しく出ています

    参考資料〜インフラストラクチャー〜千葉県街路モノレール課HPより

 これは前回の多摩モノレールのときにも指摘した内容です。しかし多摩モノレールの視点から考えれば、「補助が少ないから赤字が第三セクターに被さっている」つまり千葉並の補助をしていれば多摩モノレールは赤字で苦しまなかったと言えます。裏返して言えば千葉は補助が厚い分事業全体としてみれば、「果たして正しかった事業なのだろうか?」と言う問いかけが成立する事になってしまいます。

 比較の対象を多摩都市モノレールに据えると、漠然とした感じにはなりますが多摩と千葉の間がより専用的な軌道システムとして成立するかの境目ではないかと考えます。その根拠は下記の資料の通りです(第三セクターモノレールでは、千葉・北九州が私的基準で不適に該当)。

    参考資料〜千葉モノレールと他のモノレールの比較〜千葉と塩のレール調査検討委員会HPよりⅰ
   

 上記の比較資料によると、比較の千葉・多摩・大阪・北九州の第三セクターモノレール4社と民間の湘南・東京のモノレール2社の計6社での比較していますが、概要は以下の通りです。

 モノレール各社の経営・輸送実績状況(詳細は上記の資料を見てください)
   ●懸垂式→2社(千葉・湘南)・跨座式→4社(その他)
   ●営業損益→赤字2社(千葉・多摩)・黒字→4社(その他)
   ●輸送人員→2000万人以下(湘南・北九州・千葉)・2000万人以上(その他)
   ●輸送密度→2万人以下(千葉・湘南・北九州)・2万人以上(その他)
   ※輸送人員2000万人・輸送密度2万人で分けているのは、あくまで目安です。

 千葉の場合路線が長いだけあって輸送人員でこそ湘南・北九州を上回っていますが、上記で掲げたそれ以外の指標全てが最下位です。輸送人員も極端に多くないのに最低限の営業損益ですら多摩モノレールと最下位争いです。多摩モノレールの場合問題は収益だけであり輸送成績的には、それこそバスでは賄えない量を運んでいます。しかし千葉の場合は全ての指標で平均的レベルを大きく下回っています。

 もっとも今の段階で廃止をするには疑問です。調査検討委員会の答申でも「廃止すればバス 1分毎で運ばなければならない輸送量が有る以上廃止は非現実的」と言っています。「このまま赤字を垂れ流すのも好ましくは無いが廃止も出来ない」と言う極めて難しい状況に現在有ります。

 今からこの路線を建設するのであれば、明確に「モノレールはのNO」と言えるでしょうが、昭和40年代後半〜50年代の決断ですから「今後も人口が増え続けるからモノレールは必要になる」と言う判断を、今の時点で否定するのも又「後知恵」の世界になります。

 千葉モノレールはこの深刻なジレンマを抱えています。今の段階で継続的に有効と思える根本的解決策が残念ながら簡単には見当たらない、というような難しい状況に有ります。その究極の状況が“千葉都市モノレール”と言えます。

 此れは第三セクターモノレールだけでなく、他の交通系第三セクターでもほぼ共通して抱えている問題です(ニュータウン鉄道・地下鉄等でも問題の根源は同じ)。要は「初期においては“過大な設備投資or需要予測の誤り”で減価償却するまで収益が上がらない」と言う問題が存在します。

 根本的な問題として“償却前の段階でも赤字(減価償却費<償却前損益の赤字)”となると悲劇的ですが、千葉モノレールもここまでは行っていません。

    千葉モノレールの損益対照表

 ただし此れは「将来の設備更新の為の資金の準備が実質的に出来ていない」(減価償却費を積み立てても赤字と相殺されてしまう→実質的キャッシュが存在しない)と言う事を意味します。

 其処に千葉モノレールの抱える問題の深刻さが存在していると言えます。事実公共セクターからモノレールの鋼製桁等の塗装費の補助を受けている状況です。これは「自分で施設の修繕費を面倒見れない」と言う事を意味します。

 この様な状況で、当座は運営できますが、将来に渡って「設備更新資金」の蓄えの無い会社が生き残れるとは思えません。ましてや乗客も据えている訳ではないですし、経費もリストラが進んでいます。

 収入が頭打ちで、支出は削れる物は削って有るのに赤字で経営が苦しいという現状が、今の千葉モノレールの経営に対する苦しい現状を示していると言えます。此れに関してはなかなか難しい内容なので、今回は触りだけにして、今後「多摩モノレール」「千葉モノレール」の2つのレポートを基にしながら時間をかけながら分析・研究を進め、考えていきたいと思います。

 

 

 

 

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