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新幹線も 360km/h運転時代に突入?
TAKA 2005年 3月11日
JR東日本のHPを見たところ 新型新幹線高速試験車のプレスリリース が出ていました。JR東日本は 360km/h営業運転を目指して、本年 6月に新幹線用試験車両1編成・来年春に新在直通用試験車両1編成を試作して、2007年度にかけて各種試験走行を行うとのことです。
今や新幹線をはじめとして、世界の軌道系高速鉄道は 300km/h運転が主流ではありますが、実際には試験走行という範囲内では、 TGVは 515km/h・新幹線(JR東海)は 443km/hを最高速度として達成 しています。その記録はすでに10年〜15年前に達成しているもの物であり、今回のJR東日本の最高速度 405km/hという性能は過去の成果から考えて、特別優れたものではありません。
しかし上記プレスリリースを見る限り、実際の運用に耐えられるレベルまで技術が煮詰められていると見えます。高速運転に伴う弊害に対応する為の方策や快適性の向上や新在直通運転車両の並行開発等から考えて、今回のJR東日本の 「FASTECH360」はJR東海の300X系の高速試験の時の「最新で最良な高速鉄道システムのあり方を追求するデータ集め」というコンセプトではなく、「数年後には実用する高速運転車両の先行試作車両」という、かなり現実的かつ実用可能な車両の開発であるといえます。
この 「FASTECH360」が実用化されれば、「運転速度面でリニアに近づける新技術の登場」という点で、鉄軌道系高速交通機関は新しい時代を迎える事になります。現在最高速度は リニアモーターカーが 581km/h に対してTGV 515km/h・新幹線 443km/hという状況ですが、営業運転の最高速度は トランスラピット 430km/h に対してTGV 320km/h・新幹線 300km/hという状況です。現在では実際の運転速度でリニアと軌道系高速鉄道には 100km/h強の速度差がありますが、もし 「FASTECH360」が開発され実際に運用されれば、新型車両はちょうど新幹線とトランスラピットの中間の速度で運行される事になります。
そうなると、既存システムの上に高速化を達成した 「FASTECH360」の存在が、リニアモーターカーの存在を否定する第一歩になるかもしれません。確かにJR東海のリニアも一般試乗を重ねるレベルまで来ていますし、トランスラピットも短い距離ですがかれこれ15ヶ月事故も無く 430km/h運転を行っているので、一般的な使用に供するのに問題ないレベルまで熟成は進んできています。
しかし「今存在しているネットワークの有効利用」という点で考えれば、世界的にも鉄軌道系の高速交通機関を採用するのが好ましいことは明らかです。完全なクローズドシステムで新しく2地点間(間の都市を除いて)を結ぶのであれば、より早いリニアを採用する意味は十分あります。けれども「標準軌を採用している」「すでに標準軌で高速交通ネットワークを作っている」所であれば、多少高速性が劣る事に目をつぶってもそのネットワーク構成のメリットを考えたら標準軌高速鉄道を採用したほうが効率的になります。今までは鉄軌道系高速鉄道は最高速度でハンデを抱えていましたが、 「FASTECH360」はそのハンデを緩和する一つの方策であると言えます。
それだけでなく 「FASTECH360」の 360km/h運転は二つの点で、日本の新幹線に新しい時代を切り開くことになるかもしれません。ひとつは「北海道新幹線」でもう一つは「海外市場への輸出」です。
北海道新幹線は最高速度 350km/h・表定速度で 280km/hで東京〜札幌間4時間未満 というものを目指していましたが、この航空機に対抗できるこの目標に 「FASTECH360」が技術的裏付けを与える事になりますし、それは北海道新幹線が事業的にもメリットがあるとの裏付けを与えることにもなります。東京〜札幌間4時間未満と言う事は、東海道・山陽新幹線に置き換えれば東京〜広島間とほぼ同一になります。4時間という所要時間は航空機+アクセスと新幹線で所要時間で競争できるぎりぎりの範囲です。 東京〜広島間で航空機対新幹線のシェアは2000年度の比率で53:47です。 北海道新幹線開業時に所要時間の似通った東京〜広島間の比率で東京〜札幌間の移動シェアを新幹線が獲得できるとすると 羽田〜新千歳間の年間利用客数 9,255千人 の47%の 4,350千人が単純に考えて 「FASTECH360」の発展形で運転される新幹線を利用する可能性があることになります。これは現行整備中の整備新幹線の中で長距離需要の存在と言う点で大きなアドバンテージになる可能性もありますし、それに基づいて 「FASTECH360」の登場が北海道新幹線新函館〜札幌間の全面着工への大きな後押しになる可能性もあります。
それはJR各社間の垣根を越えられれば、 「FASTECH360」の技術が東海道新幹線の高速化をするのは難しいかもしれませんが、今でも 300km/h運転をしている山陽新幹線の高速化や、九州新幹線の高速化を計り、関西・東京と九州の距離を大きく縮めることが出来るようになるかもしれません。特に現行で新幹線のシェアが 5〜35%で劣勢の北九州・福岡対東京で新幹線を有利にする武器にもなる可能性があります。そこまでの期待はしすぎかもしれませんが、そうすると日本の交通機関で新幹線の位置はより大きなものになるといえます。
それに 「FASTECH360」の360km/h運転実用化が達成できれば、それが「海外市場への輸出」への大きなアドバンテージになる可能性もあります。日本の新幹線は 台湾で 700系新幹線改良型 が、 中国在来線第六次大提速プロジェクトでE2型改良型が採用 され、海外への輸出・進出が本格化しています。その中で 360km/h運転可能でしかも軌道幅が合えば在来線直通可能な技術を持つ 「FASTECH360」シリーズの存在は、技術面で海外市場における競争に対しての大きな武器になる可能性を秘めています。運転最高速度が60km/h違えば、表定速度も50km/h程度異なる事が想定されます。そうなると 1,000kmの距離では運転時間が30〜40分程度変わってくる事になります。これは海外で競争する事になるであろうTGVやICEに対して大きなアドバンテージになります。JR東海と異なりJR東日本は比較的新幹線の海外進出に積極的であると見えるので、なおさら 「FASTECH360」を武器に新幹線の海外進出促進に道を開く事になるかもしれません。台湾で「ホップ」中国在来線で「ステップ」して次は 「FASTECH360」でどこかの国で「ジャンプ」する事が出来るのか今から楽しみです。
今回「FASTECH360」の発表と内容を見て、妄想という訳ではありませんが、それだけの夢を見させてくれる最新技術が 「FASTECH360」にはあるように感じました。ちょっと先行する形で同じ試験編成でもより量産先行試作車で実用性の高い JR東海・JR西日本共同開発のN700系 も同じ時期に(実車を含めて)発表されましたが、「東海道・山陽新幹線の現実」の中での新型車として開発されたN700系を否定するわけではありませんが、運行路線の状況と現実に合わせて即時実用投入が可能なレベルにまとめてきたN700系に比べて、より高い技術の 360km/h運転を現実の物とする試作車の 「FASTECH360」には「技術の夢」があるように感じました。でも技術的に飛躍するにはそのような「華のある技術開発」が必要なのかもしれません。私は「FASTECH360」というJR東日本作の「華のある技術」が日本の新幹線技術の大きなエポックメーキングの一つになり、日本の新幹線に over300km/h運転の時代と高速化がもたらす「鉄道が東京〜北海道を固く結ぶ時代」が来ることを期待してやみません。
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