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「女性専用車の終日設置」は容認できるのか?



TAKA  2005年07月12日





 旬が過ぎた話題の様な気がしますが、今日他のサイトで見てたら「遂に来たか!」と思う事が発表されていました。
  「女性等に配慮した車両の導入促進に関する協議会」 第3回会合の開催結果について (国土交通省鉄道局)
 この国土交通省の会議の内容を見て正直言って「遂に其処まで来てしまったか!」と言う呆れの気持ちが半分と「何でそこまでするの!」と言う怒りの気持ちが半々です。
 特に内容で問題が有るのは「東急東横線優等列車での終日実施」です。此れを見たときには正直言って「目が点」になりました。少なくとも関東では今まで朝ラッシュ時・深夜の実施例はあっても終日の実施例は無い筈です。「女性へのイメージが良い東横線だからやるのかな?」と言う気持ちにはなりましたが、「何故終日実施されなければならないのか?」と言う強い疑問を抱きました。


(1)女性専用車は安全確保の為なのか?それともサービスなのか?

 今回偶々上記の開催結果を見て疑問に思ったので、過去2回の協議会の開催結果を見てみました。
「女性等に配慮した車両の導入促進に関する協議会」 第1回会合の開催結果について
「女性等に配慮した車両の導入促進に関する協議会」 第2回会合の開催結果について
 本来女性専用車は多発する痴漢犯罪から女性を守る為に登場した物であった筈です。
 関東圏では朝ラッシュ時の混雑は非常に激しく、弱者に対しては非常に酷な状況です。又同時に近年のモラルの低下は著しく痴漢犯罪が多発しているのはまぎれもない事実で、その余波として男性への冤罪等も多く発生しており、社会問題になっていたのも事実です。
 その様な状況を改善するために統一キャンペーンが開かれたり、犯罪摘発強化等が行われていましたが、その様な状況の改善の一環として、世論と政治家が動き関東圏でも一斉に女性専用車が導入された筈です。(詳細が乗っている 「公明党HP」 を参照してください)
 この様な事はエルアルコン様・和寒様・とも様が前に行われた一連の議論の「そもそも犯罪に隔離で対応する事が問題」と言う点から考えれば「その存在自体が治安悪化の問題に対するすり替え」と言う事になりますが(私もこの点に大いに同感ですが)、痴漢と言う犯罪が多発している現実の中で緊急避難的対策と考えれば、女性の安全確保の為に女性専用者導入は致し方ない点が有ったと考えます。
 しかし今回の第三回会合の結果文章を見ていて「終日導入」と同じ位、目が点になるほど驚く事がありました。文中の「快適で安心な車内空間確保との観点」「輸送サービスの一環として着実に定着」と言う2点です。揚足を取るような内容かもしれませんが、痴漢からの安全を保証する「安全」と言う事には納得いたしますが、「快適」「サービス」と言う言葉には納得がいきません。
 本来治安・犯罪防止の側面からの「痴漢からの安心・安全」確保の為に導入された筈です。女性専用車は女性に男性より「快適」を提供する為に実施されたのでしょうか?快適を提供する為のサービスなのでしょうか?もしその様な考えに変わりつつ有るのなら、極めて大きな問題が有ると思います。


(2)何故同一運賃なのに男性と女性でサービスが違うのか?

 その極めて大きな問題とは表題の通り「何故同一運賃なのに男性と女性でサービスが違うのか?」と言うことです。女性専用車がそれを利用する女性に快適な環境を提供するサービスで有るならば、何故女性専用者を利用する女性だけ特別料金を取らないのでしょうか?
 もしそれが治安・犯罪防止対策で朝ラッシュ時の痴漢多発時間や深夜の危険な時間帯に実施するのであれば、特別なサービスとは言いがたいですから特別な料金は不要でしょう。しかも犯罪の現実が有のですから、「仕方ない」と言う心境が強くても利用者の一定の共感を得る事も可能でしょう。
 しかし「終日女性には専用の快適な車輌を1両用意しています」と言うことになれば、治安・犯罪対策と言う側面は薄れます。此れは「女性への快適な環境を提供するサービス」なのではないでしょうか?
 此処で問題なのは「同一の運賃で特別なサービスが提供されている」と言うことです。男性・女性で運賃差が無いにも関わらず女性には専用車両(東横線の場合輸送力の12.5%)が終日提供され、専用車両利用客だけが快適な移動を保障されているという点です。
 例えば快適な移動が保証される例として、 自由席・指定席・グリーン車の料金の関係 が有ります。高速で移動するサービスの代償として特急利用客には特急料金が課せられますが、その中でも着席の保証されない自由席利用の場合その犠牲の対価として自由席特急料金510円が割り引かれます。逆に上質な座席の提供サービスであるグリーン車を利用すればその対価としてグリーン料金が課せられます。
 此れは「提供されるサービスに応じた付加料金」と言う例で料金体系として普通の形です。普通列車でも自由席グリーン料金が有り、東海道・総武・横須賀線・湘南新宿ライン等のグリーン車を利用すれば(席指定が無いから)着席しなくてもグリーン料金が課されます。此れは「グリーン車を利用するからその空間に対する料金」と言う意味合いであり、ラッシュ時などは普通車の混雑を避ける為に座れないことを覚悟の上でグリーン料金を払って利用する人も居ます。
 此れに対して「終日設置の女性専用車」は如何でしょうか?女性専用車は設備こそ普通車と同じですが、普通車グリーン車と同じように普通車と違う特別の空間を提供している事になります。グリーン車では特別な空間で立席でもグリーン料金が必要ですが、終日設定の女性専用車では女性だけには普通の運賃で快適な空間を提供されています。この差を如何に説明するのでしょうか?そこに「女性専用者終日導入」の問題点が有ると思います。


 この様に今回関東(東急東横線)で一歩踏み込んだ「女性専用車終日設定」(関西では一部導入済み)が行われる事になりますが、少なくとも手放しで歓迎できる物ではありません。
 有る意味今までの朝ラッシュ時・深夜時間帯の女性専用車導入の様な、治安・犯罪対策用の緊急避難的な物とは根本的に異なります。今までは「痴漢犯罪防止の為に努力する事が正道」と言う正論があれど「痴漢犯罪が止まらない」と言う現実と世論の導入促進の流れの前に、女性専用車設置を正当化する事が出来てスムーズに導入する事が出来ました。
 しかし今回の終日導入では「治安・犯罪対策」と言う今回の女性専用車導入の「錦の御旗」が使えなくなることになります。「錦の御旗」が使えなくなると、その時には今回提示した「同一運賃なのに何故男女でサービスが違うのか?」と言う問題や今までのフォーラムの中で議論されてきた「 性差による「棲み分け」を公共の場で実行する 」等の問題が表面化して来る事になります。
 今回は関東では「蟻の一穴」と言う状況です。しかし国交省は女性専用車が快適さを提供するサービスで有ると考えているのなら、関東の他民鉄等も積極的に導入する可能性は否定できないと言えます。その時にもう「緊急避難的対応策」とは言えません。今回提示の「運賃とサービスの関係の問題」や「公共の場での性差による棲み分け」等に関する問題について説明する必要に迫られる可能性が有ります。その事を認識しないと痛手を受ける可能性が有ると考えます。



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