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機会を生かせないからこそ廃止されてしまうのでは?

−北海道ちほく高原鉄道とラリージャパン輸送にみる「地方鉄道とイベント輸送」の関係−



TAKA  2006年08月31日  (※9/4HTML化の上一部加筆修正・9/24写真追加)



 とも様こんにちはTAKAです。
 (※本文は「交通総合フォーラム」8月31日にとも様が投稿された「 潜在能力は顕在化させてこそ意味がある 」を受けて書きました)
 
 WRCラリージャパンは、(プチ)スバリストの私にとって興味の有るイベントです。(ちなみに私の車は現行レガシイワゴンGT)加えて私の弟は(免許取ったときから車はスバルと言う)真のスバリストで今日からラリージャパンを見に行っています。
 ラリージャパンが有望な事は、インプレッサWRX・ランサーエボリューションの売れ行きから見ても明らかです。あの様な車を買う人が多いと言う事は日本にWRCに興味が有る人が多い証であり(ある意味だからWRCで活躍したレガシイの高いブランドイメージが構築された)其の点でも有望なイベントであると思います。
 まして3日間で20万人、1日6万〜7万の人が集まり、3日間連続で見通す人が結構居る事を考えると、正しく人口36万人の十勝地方で最大級のイベントでしょう。廃止直前と言えども「ふるさと銀河線」が、それを利用しないでせっかく地域に来た遠来の客をいつもの輸送体制で大混雑で運ぶと言うのは、極めて遺憾な事であると思います。


 ☆地方第三セクターがイベントの機会を生かした好例

 イベント時の輸送に対して、其の輸送力を生かして鉄道が活躍すると言う例は多々有ります。其の象徴が阪神電鉄&甲子園輸送ですが、それに対して第三セクター地方鉄道がモータースポーツで上手く観客アクセスに入り込んでいる例が、伊勢鉄道つ鈴鹿サーキットの関係です。
 伊勢鉄道の場合沿線にF1日本GPや鈴鹿8耐の行われる 鈴鹿サーキット が有り、最寄り駅として鈴鹿サーキット稲生駅があります。サーキットの公式アクセスガイドでは「 鉄道は近鉄 」しか案内していませんが、伊勢鉄道はそんな事お構いなしで、 自社HPの専用ページ でアピールしている様にF1開催時にはJR東海と協力して特急・快速を停車させた上に臨時快速運転(05年10月12日で開始時向けに上り4本24両・下り8本47両)・自社車両総動員(区間運転普通も1両の時も有ったが、大概は3〜4両編成)での輸送を行っています。


「伊勢鉄道のF1日本GP輸送に活躍する伊勢鉄道・JR東海の列車」
    
左:伊勢鉄道の気動車@四日市 中:JRの快速みえ@名古屋 右:JRの特急南紀@四日市

 実際其の効果は抜群で 05年の日本GP決勝戦の日の鈴鹿サーキット稲生駅の降車客数は15,856人 と日本GPの観客の約10%を運ぶまでになっています。( 03年・04年の降車客データ )これだけ利用してくれれば、伊勢鉄道にとっては「F1様々」でしょう。降車客が15,856人と言う事は決勝戦の日だけで約3万人の利用客が有ったと推察されます。(予選から入れればもっと多い)3万人が鈴鹿サーキット稲生〜河原田間の運賃300円(逆の端の津より安い)落としてくれたとしても3万人*300円=900万円です。これは 伊勢鉄道の年間収入 の1.65%に当たります。これは無視できません。
 伊勢鉄道に関しては第三セクターの中で「優等生」に近い存在であると言えます。しかしこの900万円の収入が無ければ、鉄道事業の営業赤字が6割増える事になります。(まあ臨時輸送の原価もあるので其処までは行かないだろうが)実際F1日本GPは3日間ですし、其の他にも利用人数は少なくても鈴鹿8耐等の著名レースも行われていますから、伊勢鉄道の年間の鈴鹿サーキット輸送はもっと収入をもたらしている筈ですから、これが無いと伊勢鉄道の経営はかなり困難度を増すと言えます。(1千万円単位で赤字が増えていたろう)
 この様なチャンスはなかなか有る物では有りません。その様な増収機会を生かすことが経営的には極めて重要であると言う事を伊勢鉄道のF1日本GP輸送の事例は示しています。


 ☆翻って北海道ちほく高原鉄道は機会を生かせたのか?

 翻って今回とも様が取りあげられたラリージャパンとふるさと銀河線の関係はどうでしょうか?ふるさと銀河線とJR北海道根室本線は十勝平野で数少ない大量輸送公共交通機関です。まして大会公式ガイドにアクセス機関として掲載されていると言う、イベント内でのアクセス手段と相手の取り扱いは伊勢鉄道より恵まれた状況です。
 確かにとも様のご指摘のように無為無策で過去の大会を見過ごしてきた訳でなく、色々と策は打ってきたようです。しかし年に1回しかない絶好の増収チャンスをみすみす指をくわえて見過ごして、遠来からの来客に不快な経験をさせると言う事は愚かであるとしか言えません。
 確かに第三セクターですから保有車両に限界があるでしょう。しかしそれは伊勢鉄道とて同じ条件です。其処は伊勢鉄道は「通過需要用の特急・快速の有効利用」と言うふるさと銀河線では出来ない対応もしていますが、それと並ぶメインはJR東海車両での臨時列車運行です。伊勢鉄道にJR東海車両の借り入れが出来て何故ふるさと銀河線にJR北海道からの車両借り入れが出来ないのか?大きな疑問です。
 伊勢鉄道ほど大規模でなくても、既存インフラに手を加えないで生かせる範囲で少なくとも3両*3編成ぐらい借りてきて、帯広から直通で臨時快速を運転してあげてもそれだけで違うはずです。それに定期列車に増結してあげれば大混雑と言う事は無かったでしょうし、とも様が取り上げたような大規模な不平不満は出なかったはずです。需要は存在しているのですから快適に目的地まで行ける手段であると広まれば、自然と客が集まり増収を図れたはずです。
 せっかく地元で「 国際ラリー支援歓迎実行委員会 」を作り足寄等で「 観客者向けの施設無料開放 」を行って歓迎しても、其処まで来るのに「苦行の道」では来訪者に嫌われてしまいます。それでは「地域に密着した鉄道」とはとても言えません。


 ☆増収の機会を生かすことが出来ないから廃止に追い込まれてしまうのだ!

 確かにふるさと銀河線が廃止されたのは、「日常利用が少なくて経営的に成り立たない」と言う根本問題があるのはわかっています。もしラリージャパンで大規模輸送体制を引けて増収が図れていたとしても焼け石に水なのは残念ながら事実ですし、年に1回のレースの為に色々投資するのも厳しい話です。其の点は鈴鹿サーキット輸送対応だけでなく伊勢神宮式年遷宮とまつり博伊勢94対応で対応で93年に部分複線化されている伊勢鉄道のほうが恵まれているのは確かです。其の点で言えばラリージャパン輸送で、インフラが貧弱なふるさと銀河線に実際出来た事は限られていたかもしれません。しかし「出来る事が限られた中で最大限の努力をする事」と「出来る事が限られているから何もしない」では天と地程の差が有ります。
(逆説的に言えば今までふるさと銀河線が活躍していなかったが故に今年のラリージャパンで遠方の足寄・陸別への輸送に関ふるさと銀河線廃止の影響が無かったと言えます。其の証拠にこの原稿執筆後の9/1の午前中に弟から「今陸別に居るのだが、釧路か北見か帯広に出たいのだが如何すればいいの?電車は無いのかな?」と言う電話が入りました。取りあえず「ラリー見に行っているんだろう。案内か何かに聞いてみろよ!電車なんて廃止されたよ!バスが帯広と北見に出ている筈だよ。よく探してみろよ!」と言って電話を切りましたが、スバリストで東京でもいつも移動は車の弟が田舎に行って電車を探すと言う状況に、とも様の言われるように『観客は当然ながら「車好き」のマニアだ。ラリーは日本でマイナーであるし、スバリストなどのいわゆる「エンスー」が多く集まるイベントである。ただ、その多くは大規模イベントにおいて鉄道をファーストチョイスとしていた。「大規模イベントなら鉄道が便利」と思っていたのだ。鉄道マニアが言うところの「車ヲタ」の人たちなのに。』( 潜在能力は顕在化させてこそ意味がある より引用)と言う言葉に偽りが無いと同時に、日常移動が車onlyの車マニアでも「交通」と言う側面で車が不便な時には電車を頼る物なのだと改めて感じました。)
 だからこそ問題は北海道ちほく高原鉄道の姿勢なのです。地域での外来客が来る大イベントで「地域内輸送が命」で「地域と共に歩む事を宿命づけられた」地方第三セクター鉄道が、地域活性化の絶好の機会を生かせず何も出来ないで混雑と言う不快な印象だけばら撒いていたのでは仕方が有りません。
 ローカル鉄道で地域と協力できない鉄道に生存の道は有りません。当然のことながら地域と協力して共存できなければ支援は受けられないのですから・・・。ましてや両端で接続しているJR北海道と少数の車両の融通も出来ないほどの疎遠な関係では仕方が有りません。その様な関係では一時期話題に上った「 高速化事業 」などはとても出来なかったでしょう。地域とも地位の同業交通機関とも協力できない関係でどうやって弱者が生き残るのでしょうか?
 利用客数が少なく赤字と言う以前に、地域と共存できない鉄道、増収機会を生かす経営努力の出来ない鉄道に生き残る道はないといえます。このラリージャパンの輸送に関するふるさと銀河線の姿勢を見れば、赤字と利用客数という問題以前に人為的かつ必然的な廃止の要因が有ったのではないかと考えます。経営的に言っても「機会を生かせない会社は滅んでも当然」と言う事が出来ます。
 ふるさと銀河線の様な地域とも協力できない消極的な対応では「座して死を待つだけ」になってしまう事を他の地方第三セクター鉄道も気が付くべきであると言えます。他の地方第三セクター鉄道もこの話を決して「他人の出来事」と鼻で笑う事は出来ないと言えます。





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