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教科書の通りPWM制御タイプのコントローラを作ってみました。
教科書ってこれ↓のことです(画像はCQ出版ホームページより引用…というか直リンしてしまっています)。
この通りに制作したからと言って、必ずしも動作するとは限りません。
また場合によっては異常発熱による既製品の変形や、ショートなどによる電気火災の発生も招く恐れがあります。
工作は自己責任で行って下さい。
自宅にコントローラがないわけではありません。
しかし割と大きいのです。
その種類はTOMIXのDU-1(品番5015)です。ワンハンドル型トランジスタコントローラと呼ばれていました。
マイプランDXに付属していたものです。
これは運転する(操作する)のは非常に楽しいコントローラです。
ディレクションスイッチを入れてマスコンを非常から加速へ持って行くと徐々にスピードが上がって行きます。
ちょうど良いところで惰行(惰性走行)に切り替えるとその速度で走り続けます。
止める時は減速ノッチにしてスピードを落としていきます。
脱線した時などはすぐに非常に入れて止めます。
なのですが難点も色々。
まぁそんなんで、単独で動いてつまみの位置でだいたいの出力が分かって常点灯対応というのが欲しい訳です。
今ではTOMIXではN-1001-CL(品番5506)、KATOではハイパーD(品番22-013)などが発売されています。
後者の2Aという出力は非常に魅力的なのですが、手持ちの線路はほぼ全てTOMIXなのでそちらに合わせたいところです。
しかしそうするとN-1001-CLも1万円を越えてしまい、とても2台も買えるような代物ではありません。
…でN-1000-CL(or N-1001-CL)と互換性のある、もしくは似たような性能を持つコントローラは無いものかと探し始めた訳です。
ここでポイントとしているのは常点灯です。
調べてみるとPWMというもので制御しているらしいと言うことが分かってきました。
この制御方式だと低速走行も割と得意なようで、ライト類も走り出す前に点灯させることができるようでした。
しかしこれらは自作しなければ達成されないものだということも判明しました。
つまり自分で図面を引いて作り上げなければならないということです。
これがしばらくの間のネックでした。何しろ自作です。
幸いなことに、インターネット上にはヒントとなりそうなページがいくつかありました。
例えば有名(?)なところでは「
カーサロンモリ
」さんのホームページにコントローラの作り方が掲載されていますが、これはPWM式ではありません。
これでは常点灯は無理です。
他のページもいまいちピンと来るものがありませんでした。
その状態で6年以上を過ごしてきました。
「鉄道模型は走らせてなんぼ」という考えの持ち主である私が走らせることから遠ざかっていた訳です。
…で2013年に入り、横浜鉄道模型フェスタに行き、たまたま立ち寄った本屋で今の教科書を購入。
HOゲージ向けの内容が多いものの、十分にNゲージに転用できる内容。分かりやすい作製途中の写真。
その中にスイッチング式パワーパックの製作について書かれた項目もあり、これならできるような気がしました。
パーツを買い集め資料を読み漁り、作ってみたのがこのコントローラなのです!
ちなみにk-otani氏の「
沖縄電気鐵道 浦添線
」などをはじめとするPWM式パワーパックは2008年頃より登場しています。
私が探していた2006年〜2007年頃には見つけられなかった理由がこれです。
ですがこのコントローラを作る際に参考にしています。
必要なパーツ一覧が載っていなかったので回路図を元にして部品表を作りました。
さらにパーツを付けたしているため、それについては付記しています。
パーツ分類 | パーツ名*必要数 | 備考 |
---|---|---|
シュミットトリガインバータ | IC4584*1 | TC4584BP利用 |
パワーMOS-FET | 2SK3140*1 | 2SK2232使用 |
コンデンサ | 0.01µF*1 | |
0.1µF*1 | ||
1000µF*1 | 10µF/50Vに変更 (電解コンデンサ) | |
可変抵抗 | 100kΩ*1 | |
抵抗 | 470Ω*1 | |
1kΩ*1 | 2つに変更 | |
2.2kΩ*1 | ||
100kΩ*1 | ||
トランス | 12V/1A | 不使用 |
ダイオード | 1N4148*2 | 小信号用ならOKということで使用 |
1N4007*1 | SBM1045VSSに変更 (ショットキーバリアダイオード) | |
ブリッジダイオード | 1つ | 不使用 |
LED | 1 | 2つ使用に変更(赤と緑) |
ポリスイッチ | 0.65A*1 | |
ユニバーサル基板 | PCB-90*1 | 1枚で2つ分取れる |
ICソケット | 14ピン*1 | |
切り換えスイッチ | 2回路2接点中立OFF*1 | |
電源スイッチ | 1回路1接点波型スイッチ*1 | 切り換えスイッチでも可 |
ACアダプタ | 12V1A*1 | スイッチングタイプ推奨 |
DCジャック | φ2.1-5.5*1 | 上のACアダプタに合うもの |
電線 | 適量 | AWG-28あたりが妥当? |
アルミケース | MB-2*1 | 少し小さいのでMB-3推し |
スペーサ | M3-10mm*4 | プラねじでも良いかと |
ねじ | M3*1 | 長さ適当、MOS-FET固定用 |
ワッシャ | M3用*1 | 上のねじに合わせる |
ナット | M3用*1 | |
バナナプラグ | 2つ | 2色用意すると吉 |
バナナジャック | 2つ | |
ワニ口クリップ | 2つ | |
ボリュームキャップ | 1つ | 無くてもいいけど… |
ゴム足 | 4つ | シール式でもネジ式でも |
※その他、熱伝導シリコングリスや接着剤なども用意 |
トータルで3000円行くか行かないかぐらいです。
抵抗やダイオードはまとめ買いするので実際にはもう少しかかりますが、それでも製品よりかは安いです。
基本的には教科書の回路そのままです。
しかしトランスによる電圧変換とブリッジダイオードによる整流に不安があったので、その一つ前に紹介されていたスイッチング式電源を利用したシリーズ式パワーパックの製作との合わせ技にしてみることにしました。
容量は1AのACアダプタを買ってきてそれをそのまま使っています。
スイッチング式なので電解コンデンサ(C1)は要らないのかもしれませんが一応取り付けています。
また電源投入が分かりやすいようにLEDのパイロットランプ(LED1とR5)を設置。
DU-1のようにランプが点いているので電源が入っているのが一目で分かります。
MOS-FETは2SK3140というのがかなり高価(300円くらい)な気がしたので、安い2SK2232を選択しました。
それから切り換えスイッチに直付けするダイオード(還流ダイオード、フリーホイールダイオードとも:D4)も変更。
教科書は1N4007という整流用ダイオードを使っていますが、これを切り換えの早いショットキーバリアダイオードにしました。
1Aの電源なので1Aに耐えられればいいと思うのですが、将来2Aぐらいにすることも考えてSBM1045VSSというもの(3Aまで)を選択しました。
逆電圧が低いのがショットキーバリアダイオードの難点らしく、このSBM1045VSSも45Vまでです。
モーターの逆起電力がどのくらいになるのか分からなかった(最大で1000V近くまでと言う人、電源電圧の3〜10倍程度と言う人、電源電圧とほぼ同じと言う人、果ては電源電圧の半分と言う人まで)のですが、後半を信じてみることにしました。
なお、教科書の実態図には間違いがあるようです(回路図は正確なのでお間違えのないように)。
こちらのページ
に記載がありました。
基板に部品を半田付けする訳ですが、動かなかった場合が悲劇なのでブレッドボード上で試してみることにしました。
電源は角型電池(006P)の9V。この時もきちんと電解コンデンサを入れています。
車両…というよりモーターはジャンク品として買って来たMicroAceの721系とTOMY-9scaleのED75を用いました。
結論から言うと動きました。ただボリューム(可変抵抗)につなぐ+と-を間違えたので、右に回すと減速するおかしな状況になったので慌てて付け変えました。
それと周波数がどうのこうのと言うのがイマイチ文面を読むだけでは分からなかったのですが、組み立ててようやく理解しました。
ボリュームをいっぱいに回してモーターが止まっていても、ピーと言うモーターからする音のことでした。
気になる人は気になるのでしょう。私は逆に通電がしっかり確認できるのでいいのですが。
しかしN-1000-CLではこんな音がしませんでした。原因はその周波数のようでした。
今回組み立てたのはおよそ1.9kHz、対してN-1000-CLは20kHzらしいです。
20kHzは人間の可聴領域を超えているために、分からなかったようです。
まずはメインとなる基板からです。
教科書に基づいて同じような基板を用意。
そのまま半田付けに入っても良かったのですが、一応方眼紙に図面を引いてみました。
…すると、一列分小さいことが判明。
これは抵抗の位置をずらすことで解決しました。
その他、電解コンデンサの位置やパイロットランプ用の抵抗などの位置も決め、半田付けを開始しました。
難しかったのはやはりICソケット回りです。
半田面のラインをいかにショートさせずに設置するかというところでした。
それと電線を基板に半田付けするのもなかなか大変でした。
テスタで通電チェックをしたところ、特に問題が見られないようでした。
次にケースの加工です。
さすがに大きな穴あけ用の工具は持っていないので、研究室の機材を土曜日に借りました。
ドリルの調子が良くなく、穴がずれた場所もありました。
また大口径のドリル刃もあるにはあったのですが、色々と怖かったのでシャーシリーマというものでゴリゴリ拡大する方法にしました。
さらに途中でパーツの位置に問題があることが判明。穴の位置を急遽ずらす羽目になりました。
そんなこんなで1日じゃ終わりませんでしたがどうにかアルミケースの加工が終了。
LEDを接着剤で、スイッチや端子をネジ止めでケースに固定していきます。
ケース加工最後の微調整は現物合わせでやったので、スッと固定できたのが何よりも快感でした。
接着剤が乾いたらあとは電線をひたすら繋いで半田付けするだけです。
電源プラグから基板へ、その基板からMOS-FETやLED、スイッチとボリュームへ、そして出力端子へ。
MOS-FETはケースに直付けし、接触面にはシリコングリスを塗ってネジで固定しました。
スイッチに付けるショットキーバリアダイオードも忘れずに。
ただしスペースがなかったので教科書とは反対側の位置に反対向きに取り付けました。
また半田付けのしやすさを優先したために長めに切った電線を使用しましたが、もう少し短くても良かった気がします。
出力端子に接続するバナナクリップ(とわに口クリップ)にも忘れずに電線を半田付けします。
この状態で通電チェックです。
電線を間違って繋いでいないか、スイッチの切り換えがうまくいっているかどうかなどを調べます。
ここで切り換えスイッチ周りでハプニング発生。
通電してはいけないところが通電していることが分かりました。
しかも通電するときとしないときがあり、理解しがたい状況でした。
よーく考えた結果、スイッチに直付けしたショットキーバリアダイオードが原因であることが判明しました。
テスタの当て方で順方向と逆方向が入れ替わっていたのです。
テスタとダイオードの極性を考慮して再度チェックしたところ、問題無しと言う結果になりました。
そのまま動作チェックへ。
レールに繋いで実際に車両を走らせてみるわけです。
ここで初めて核となるICをソケットに填めます。
その結果…ボリュームへの配線がまた逆でした。右に回すと減速する気持ち悪い仕様です。
2本の線を入れ替えて再度半田付け。これで問題なく動くようになりました。
切り換えスイッチの動作もOK。ショットキーバリアダイオードの向きも間違っていませんでした。
いよいよケースを閉じるわけですが、配線がやはり長かったのか苦労しました。
ケースが小さかったのかもしれません。
ケース周りの保護シートを剥がし、ゴム足とボリュームキャップを付けて完成です。
基板の組み込み位置が悪く、ゴム足を取り付けるのに難儀しました。
また表面のラベルは省略しました。
短い線路上ですが走らせてみました。
これだけコンパクトな本体なのにきちんと走るのが夢のようです。
鉄道コレクション用の乾電池式制御器を購入しましたが、結局Nゲージの車両は動かず泣きを見たことを思い出してしまいましたが。
調子に乗って手持ちの動力車を色々引っ張り出して走らせてみました。
やはりフリーホイールの入っている動力車は非常にスムーズな動きを魅せてくれました。
そうでなくてもボリュームの回し具合に応じて速度が変わる様は、もう十分といったところです。
ライト類の点灯も問題ありませんでした。
LEDでも電球でも大丈夫。きちんと光っているのが確認できました。
久々に「走らせて動かす喜び」を感じました。
DCアダプタがコンセント口でちょっと蓋をしますが、それでもこの大きさで動くのが何よりも感動です。
もちろんDU-1のほうが運転操作としては楽しいのは事実ですが、ちょっと走らせるのであればこれでも構わないと私は思います。
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