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| モケット【Moquette】 それは、座席の表地に使われる織物の一種。 それは、バスの乗ると必ず目にするインテリア。 それは、車内の印象を大きく左右する重要な役目を果たしながら、日々、摩耗や汚濁にひたすら耐えつつ、乗客の体と心を支える存在。 バスから見る「景色」が、「車窓」である所以の一つは、旅路を共にする座席・モケットが映じるがため。 ・・なのに、趣味の世界ではなかなか注目されない裏方役。 そこで、西鉄バスの路線バスの座席モケットについて、纏めてみました。不完全ではありますが、どうぞご笑覧ください。 |
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紺 モ ケ (80年代中盤〜90年代前半)
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| 西鉄バスの58MCと言えばコレ! ・・という印象の強い、通称「紺モケット」。 (青モケとも呼ばれているようです) B−Ⅱで量産されるようになった1980年代中盤から、中ロンがデビューする90年代中頃までのデザインだったように思います。(1986年〜1993年頃??) スペースランナーの初期や、ハンペンで茶モケットからこのカラーに貼り換られた車もまとまって在籍しました。 気が付けば絶命危惧種です(2015年現在)。 |
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(右)紺モケの車のシルバーシートは赤色でした。ひじ掛けにもスポンジが入っており、フカフカして快適でした。 (右右)紺モケの車のシルバーシートは、標準的なドア側以外に、運転席後方3〜4列目となる車もいました。 その分中ドア前は、折り畳み式の車椅子格納座席です。 | | |
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赤 モ ケ (90年代中盤)
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| 90年代中盤の数年間採用された赤紫系のモケット、先代の紺モケに対抗してか、通称「赤モケ」と呼ばれています。 中ロン(中型ロング車)が車椅子対応のワンステとして大量増備されていた年代のモケットです。(1993〜1995年頃??) 写真左は、中型車の2人掛けに採用された「肩が触れないシート」。2人掛けシートの背もたれを約5センチ前後にずらすことで、『お互いの肩に遠慮することなく座れる』ことを狙った西日本車体工業の傑作です。 |
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| もちろん大型車にも赤モケの車は在籍しています。 ご覧の通り、ひじ掛けは「スポンジタイプ」から「プラスチックタイプ」の物に変更されています。 元々製造年数が短かったことから数が少なかった上に、モケットの張り替えが早く進んだ事もあり、なかなか目にすることの無いタイプになってしまいました。 |
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| 赤モケ車のシルバーシートは、青系のモケットでした。 色彩から見た完成度としては、今でも十分通用するレベルかと思います。。 |
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青+灰色モケット (座席貼り換え用?)
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| 紺モケよりやや色を明るめにして、着席部分のグレーに洒落たライン調のデザイン(青+灰色モケット)を入れたタイプです。 ・・新製車輛ではあまり見た記憶がないのですが、ひょっとして青モケや赤モケが貼り換えられる際のモケットだったのでしょうか?? 結構な台数が在籍していました。 |
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| 八幡営業所のワンステ車にもこのモケットの車が在籍しています。 |
| 「紺モケ」の車に比べ、青色は明るめになった一方で、 シルバーシートの赤色は多少鮮やかさを押さえた雰囲気になりました。 右手前の座席、スポンジのほころびが目立ちます。 手を置いた時の感触はプラスチック製よりも良いのですが、こうした耐久性とメンテナンスが課題だったのでしょうか・・。 |
| 元々は「紺モケ」の車でしたが、 この「青+灰色モケ」に貼り換えられた車です。 80年代後半の58MC車でお馴染みだった、中ドア前の対面座席。 車椅子対応が目的だったのでしょうか?しかし平常時は、互いに大変目のやり場に困る座席配置のため、やがて無くなりました。。 |
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水色モケット(90年代後半)
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| 90年代後半、58MC末期から96MCにかけて導入されていたモケットです。 ベースカラーは「紺モケ」に似ていますが、少々明るく、「濃いめの水色」であることから、 便宜上『水色モケット』と称しています。(1995年〜2000年頃採用??) 写真左は、このモケットが採用された、福岡空港内連絡バス3418(1999年式)の車内です。 |
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| 「紺モケ」と同じく、青にグレーのベースカラーですが、帯の色が青と赤の濃淡となりました。 車内が明るく映るデザインです。 |
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| (左)先ほどご紹介した1999年式の空港内連絡バスのふそうワンステップ車。溶岩のごとくせりあがった巨大なタイヤカバーが特徴的です。 (下)福岡市内を走る水色モケット車の二人掛け座席。 |
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水色モケット(デザイン違い)
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| 小嶺営業所所属3301号車(1998年式)。一見「水色モケット」のように見えますが、背もたれの色が明らかに異なります。 赤モケの模様によく似たこのタイプの座席、まだ撮影できておらず今後の要研究対象です。 |
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水色モケット&ラベンダーモケット 混合版
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| 5700代(2002年式)に導入されていた、 外側は『水色モケット』ですが、背刷りや着席面は、次にご紹介する『ラベンダーモケット』になっているタイプです。 過渡期が故の合いの子でしょうか? 前にもご紹介したとおり、中型車での「肩が振れないシート」は健在です。 |
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ラベンダーモケット(2003年〜2008年)
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| それまでのふそうやいすゞ、日野に代わって、UDの大型車が福岡地区にも大量導入されるようになった2003年に登場したモケットです。 薄紫色から、通称「ラベンダーモケット」と呼ばれることもあるようです。 先にご紹介したモケットからの張り替えも、このラベンダーモケットで貼り換えられることが多いことから、スマートループのモケットに並んで非常にポピュラーな存在です(2015年現在) |
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| 従来のツーステップ車(58MC)が、ラベンダーモケットに貼り換えられた貼り換えられた例です。 それまでのモケットに比べて、ずいぶん明るい配色です。 |
| 58MCの「紺モケ」で登場した車も、このラベンダーモケットに改装されて最後まで活躍した車が多くいました。 モケットの貼り換えを受けた後でも、シルバーシートは運転席側で健在です。 まだひじかけも「クッションタイプ」であることに注目です。 |
| 同じくラベンダーモケットですが、 座席をビニールコーティングした特装仕様車。 海辺関係の路線、能古島島内線(愛宕浜営業所)や志賀島線(新宮営業所)の車の一部に、このような仕様の車が居ます。 砂の汚れ防止と、清掃の簡略化のためでしょうか?? 愛宕浜営業所の車は、シーズンオフには都心まで乗り入れる系統でも運用されていました。 |
| 篠栗営業所の5844号車。 元々ラベンダーシートで登場した車ですが、シートを更新する際に、シート全体をこのモケットで覆うように改装されています。 近年の車体更新では、この全体ラベンダーモケット改装を受ける車が多いようです。 |
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スマートループ(2008年〜)
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| 2008年に登場したスマートループでは、外装だけでなく、車内も全面的に改装されました。 モケットはグレーをベースに、薄紫や山吹色のドットが入った洒落たデザイン。『動くリビングルーム』をコンセプトに設計され、背もたれが分厚く、座り心地も硬めになっています。 当初は2人がけの席も一人づつに分かれていましたが、現在では2人纏めての席に変更されています。(写真左と下左参照) |
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| ・・デザイン上は良いのですが、 背もたれの高さが非常に低く、かつ座席の前後が狭くなったため、長時間の乗車には非常に不向き。お尻が痛く、うとうと居眠りもしがたい形状です。 通勤でこの座席が来ると、正直「ハズレ」と思ってしまいます。 広島電鉄が、居住性向上の為にあえてハイバックシートを導入しているのを見ると、少々羨ましくもあります。。 |
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日野ブルーリボンノンステップバス Hybrid(2009年〜)
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| 2009年より少数が導入されている、日野ブルーリボンのノンステップハイブリッドバス。 車内は、国土交通省の標準仕様に合わせた配色。 オレンジ色や黄色の握り棒や降車ボタンと大きく異なる色を用いる必要があることから、紺色の地味めなモケットが用いられています。 |
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| 左は8015号車(桧原営業所所属/2009年式)。 上は8502号車(早良営業所所属/2011年式)。 2009年式では「スマートループに合わせた」セパレートタイプの二人掛け座席だったのが、2011年には一体型に変更されています。 他にも写真には写っていませんが、最後部座席中央のひじ掛けが撤去されるなど、細かな修正が加えられています。 ・・スマートループの座席は、モケットこそ最近の増備車でも一部残っていますが、 デビュー時のコンセプトに基づいたオリジナルの座席形状(クッション等)は、ひっそりと増備が終了されています。 |
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茶色モケット(〜80年代中盤)
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| 古めの西鉄バスでお馴染みの「茶モケ」こと、こげ茶色のシートモケット。 58MC初期の車までの仕様でした。 車内を撮影できておらず、外装からの写真です。 門司営業所には、58代の銀サッシ2弾窓の58MC初期車がまとまって在籍していたため、95番や96番でよく茶モケを目撃することが出来ました。 |
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北九州電車代替バス-中ロン(1990年代半ば)
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| 1992年にデビューし、小倉〜黒崎・折尾間を走る北九州路面電車代替カラーの車は、グレーを基調としたモケットが採用されていました。 これも撮影を行わないうちに、いつの間にかモケット貼り換え&廃車・・。 外からばかり記録して、車内の特徴的な部分を記録に残せていない光景が、実はたくさんあったりします。。 |
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市内急行用青バスの「茶色チェック柄」(1983〜1992)
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| 90年代半ばまで北九州市内や福岡市内を颯爽と走っていた市内急行色(通称:青バス)。 紺と赤のカラーリングやエアサス装備と、他の路線バスを大幅な差別化が図られていました。 車内もしかり、こげ茶色のカラーで統一された室内。モケットも「茶色のチェック柄」で、急行路線投入時には座席にレースカバーまで装備される豪華仕様でした。 写真左は、恒見急行専用車だった当時の5960号車。 (恒見営業所所属/1985年式)。 急行色の車体に窓から見えるハイバックシート、レースカバー。『特別さ』を感じさせるには十分すぎる佇まいです。 バスに魅せられた大きな要因の一つが、この市内急行です。 |
| 90年代も後半に差し掛かると、青バスも他路線の赤バスと共通運用となり、外装は次々に赤バスへと変更されていきました。 そんな中でも手間がかかるのか、車内は青バス時代の「茶色チェックモケット」が生き残ったままでした。 レースカバーこそありませんが、茶色のチェックは健在です。 ・・2003年頃に撮影した、早良営業所所属の6300代の車内。当時は200番の早良〜天神〜都市高速〜タワー系統をメインに活躍。都市高速では往年の急行らしい走りを楽しむことが出来ました。 |
| 2013年、廃車直後の8624号車(柏原営業所所属/1992年式)。 残念ながらラベンダーモケットに貼り換えられていますが、ハイバックシートや、こげ茶色に塗られた金網など、端々に急行車の風格を残していました。 既に執筆時点で、この仕様の車は全廃しています。 |
福岡空港空連バス 「黄土色モケット」(1985〜1990)
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| 福岡市営地下鉄が福岡空港に延伸される1992年まで、渡辺通1丁目〜天神〜/博多駅〜福岡空港間に、西鉄の空港連絡バスが運行されていました。 青バスにも似た専用塗装車が投入されていましたが(写真下/実車の画像が無く模型で恐縮です)、専用の黄土色モケットを用いたハイバックシートが車内に並んでいました。 (写真左)2003年頃、のこ渡船場〜福岡空港線の運行開始時。宗像から愛宕浜に転属していた元空連バス2台(8041・8043)が同路線で運用されました。車内の黄土色モケットはそのまま、都市高速区間も長く、往年の空連バスを彷彿とさせる粋な運用でした。 |
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| 西鉄バス宗像で、赤間・鐘崎・福間周辺のローカル輸送で往年を過ごしていた元空連車8348号車。 中ドア正面には荷物置き場が撤去されるなどの改造はありましたが、車内のモケットは廃車まで健在でした。 |
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玄海交通(現:西鉄バス宗像)自社カラー
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| 宗像地区をカバーする西鉄バスの子会社、玄海交通が導入した自社カラーの車です。グレーを基調とした独自のモケットを採用しています。 写真は自社コード1003号車の車内。ローバックの座席が並ぶ車内です。他に1001号車(写真下)はハイバックシートが装備されるなど、仕様に違いがみられます。 |
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西鉄バス大牟田 大牟田駅〜三池港 汽船連絡バス
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| 大牟田交通自社発注の3002号車(1999年式)は、西鉄で唯一、1台だけ存在する「青帯大型車」。黒バンパーと合わせて、端正な顔つきをした異端車として有名です。 車内も独特、モケットは上でご紹介した「水色モケット」のシルバーシート用のモケットを全席に装備。運転席側も2人掛けの座席が並ぶ仕様からも、西鉄バスらしからぬ車内です。 大牟田駅〜三池港の、島原行高速船連絡バスの専用車として活躍しています。 |
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直方交通 自社カラー
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| 直方に本拠を構える直方交通自社発注の車に装備されているモケットです。 グレーを基調に、花の文様が散りばめられたモケット。 ハイバックシートでも、西鉄バスの独自仕様用「肩が触れ合わない」仕様は健在です。 |
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嘉穂交通(現:西鉄バス筑豊) 自社カラー(UDサンプル色)
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| 嘉穂交通自社発注のスペースランナーの車内です。 直方交通のモケットと類似した、グレー系統に赤紫で花の紋様をあしらったモケットです。 貸切兼用として、補助席を装備した仕様です。 |
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二豊交通 路線・貸切兼用車 (晩年は西鉄バス佐賀に転属)
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| 西鉄グループの分離子会社には、様々な独自仕様のバスが導入されていますが、元二豊交通(大分県中津)に導入された貸切兼用のスペースランナーもその1台。 車内には赤系のハイバックシートが並ぶ独自仕様です。 床面も、路線車ながら座席に合わせて赤色が選ばれ、統一感を持たせています。 ちなみに側面方向幕には、「内幕」の装備が無い等、通常車の違いを挙げていけばきりがありません。 |
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| 1995年式にも関わらず、 ・前面は58MC仕様では無くスペースランナーオリジナルの一枚窓 ・ひじ掛けはクッションタイプ ・糊のきいたシートカバーなど、 分離子会社としての力の入れようを感じる仕様です。 側面入口の2枚折り戸も珍しさをより一層際立させていましたが、残念ながら廃車となりました。 |
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マイクロバス 三菱ローザ(2001〜2002年)
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| 2001年〜2002年に30台近くが大量増備された三菱ローザ。 当時の廃止候補路線を中心に、地方の路線に配属されました。 車内は青色のシンプルなモケットです。 後方は車椅子乗車用のリフトが格納されています。 |
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マイクロバス 三菱ローザ(2013年)
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| 社会実験を伴うコミュニティ路線が相次いで登場した2013年、再度、前面にLED幕装備のローザが増備されます。 車内の仕様は・・上記の2001〜2002年式とさほど変わり無いようです。。 |
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那珂川町コミュニティバス「かわせみ」(西鉄バス二日市 月の浦営業所所属)
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| 立ち席に対応できる国産小型バスとして、全国各地のコミュニティバスやバス事業者で引っ張りだことなった「日野リエッセ」。 西鉄管内のコミュニティバスでも、西工RNの製造が中止されて以降、リエッセが各地で導入されています。 那珂川町のコミュニティバス「かわせみ」の車内です。薄青色のモケットが並ぶシンプルな内装です。 |
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ぐ り ー ん
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| 2008年から2014年まで、福岡都心の観光客の周遊性向上を目指して運行されていた、シティループバス「ぐりーん」。4台が、内装・外装共全面改装され活躍しました。 バス趣味の視点からも既に深く研究されている車輛ではありますが、独特のインテリアは随分と洒落ていました。 (写真下)福岡流通センターに現れた「ぐりーん」 |
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| 内装は2パターン。 後方座席が横向きに配置されたAタイプ(写真左)、 後方座席が通常のバスと同じBタイプ(写真上)。 木材を多用したインテリアは、非常に特徴的です。 ただ着席すると「背中が痛くなる」という弱点も。 しかし、短い区間を乗り降りしながら市内観光を楽しむというコンセプトを十分満たす仕様と思えます。 路線廃止の2014年以降も、能古島・志賀島等の観光需要のある路線で活躍するほか、各地のイベントへも顔を出すなど、「人気者」としての地位は未だ揺るいでいません。 |
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福岡オープントップバス
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| 2012年に運行を開始し、以後好評を博しているFUKUOKA OPEN TOP BUS。 土休日は都市高速経由のコースを中心に満席が続く盛況ぶりです。 座席ですが、金属製の簡易椅子に、黒色の簡素なネットが付いたのみ! 軽度な雨天でも運行されるため、座り心地よりも耐久性・排水性を優先した内装となっています。 ただ乗ってみると、エキサイティングな車窓に目を奪われて、座り心地を意識する時間が無いほど、充分楽しめます。 |
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