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お と ぎ の 国 の 夢 の モ ノ レ ー ル
− ディズニーリゾートライン (舞浜リゾートライン) −
TAKA 2008年05月17日
東京ディズニーランドの花火とディズニーリゾートライン |
☆ ま え が き
日本では「遊園地とモノレール」という取り合わせは結構色々な所で存在しました。日本で最初に出来たモノレールは「上野動物園モノレール」としてお馴染みの
東京都交通局上野懸垂線
ですし、それ以外にも名鉄の
モンキーパークモノレール線
や(既に廃止されましたが)小田急の
向ヶ丘遊園モノレール線
など複数存在しました。
それらのモノレールは、基本的には「遊園地の付属品」「遊園地のアクセス手段」「遊園地の遊具の延長」という感じで作られました。しかし、現在これらの「遊園地の付属品」的なモノレールは、テーマパークとしての遊園地の衰退・閉鎖などに合わせてモノレールも廃止される例が多く、小田急の向ヶ丘遊園モノレール線は2001年に廃止され、名鉄のモンキーパークモノレール線も09年3月での廃止が決まって居ます。
今回取り上げる「舞浜リゾートライン(以下ディズニーリゾートラインと称す)」も、テーマパーク業界のトップ企業であるオリエンタルランドが東京ディズニーリゾート内のアクセス手段として造ったモノレールで、考え的には上記の様な「遊園地の付属品」「遊園地のアクセス手段」「遊園地の遊具の延長」という考えが強いモノレールです。
しかしながらディズニーリゾートラインのモノレールは、日本最大のテーマパークである東京ディズニーリゾートの好調な来客数に支えられて、他の「遊園地系モノレール」の苦戦・廃止とは「全く関係無い」順調な運営を行って居ます。実際舞浜リゾートラインの「47,488人/日、17,333千人/年の輸送量・3,875百万円の収入」という規模は、日本のモノレールでは東京モノレール・大阪モノレール・多摩都市モノレールに次ぐ第四位の規模を誇り、千葉都市モノレールやゆいレールよりかも大きい規模のモノレールです。
今回はこの様な「隠れた大モノレール路線」ともいえるディズニーリゾートラインを取り上げます。ディズニーリゾートラインは果たして何処が他のモノレールと違うのでしょうか?
* * * * * * * * * *
「舞浜リゾートライン 概要(平成19年3月時点)」資本金 営業キロ 駅数 平均駅間距離 保有車両数 所要時間 表定速度 1日当り輸送人員 3,000百万円 5.0km 4駅 1,250m 30両(6両編成5本) 12分45秒 23.5km/時 47,488人
「舞浜リゾートライン 主要指標」年度 輸送人員 輸送密度 従業員 客車走行キロ 営業収入 営業費用 営業損益 平成14年度 19,375千人 26,699人/日 178人 2,249千km 3,643百万円 4,438百万円 △795百万円 平成16年度 16,712千人 22,856人/日 139人 2,088千km 3,135百万円 4,264百万円 △1,129百万円 平成18年度 17,333千人 23,635人/日 142人 2,063千km 3,875百万円 3,704百万円 171百万円
※上記資料は「数字で見る鉄道2003・2005・2007」より作成しています。
「参考HP」・
ディズニーリゾートラインHP
・
東京ディズニーリゾートHP
・
舞浜リゾートラインディズニーリゾートライン線
(wikipedia)
☆ ディズニーリゾートライン試乗記(5月3日夕方〜夜)
ディズニーリゾートラインを訪問したのは、5月3日の夕方薄暮時でした。今年のGWは(暦上では)連休が3〜6日の4日間しかなく、谷間の平日に休みを取れない人の場合は遠出が難しい暦であり、比較的「近場のスポット」が人気が出易い暦で有ったといえます。実際私もGW後半の連休は3日・5日に仕事が入り完全に「飛び石連休」状態になり遠出が出来ませんでした。その為3日の仕事の後「近場の交通を見に行く」という事で、典型的な「近場のスポット」でありGWという「超繁忙期」を向かえた東京ディズニーリゾートにあるディズニーリゾートラインを訪問する事にしました。
しかし到着したのが18時近い「薄暮時」という事もあり、既に家路についた人も多くいたのか、舞浜駅を降りても人気の有る東京ディズニーリゾートのGW繁忙期にしては「チョット人出が少ない」感じで拍子抜けの感じがしました。
左:リゾートゲートウェイステーションを出発するディズニーリゾートライン車両 右:リゾートゲートウェイステーション駅での乗降風景
舞浜駅を降りて駅前広場に出ると、目前にディズニーリゾートラインの車両が走って居ます。JRの舞浜駅は東京ディズニーランドのメインゲートとは(歩けない訳ではないが)微妙に離れていますし、東京ディズニーシーのメインゲートはもっと離れて居ます。しかも舞浜のホテル群はJR舞浜駅前からバスアクセスです。広大な敷地に巨大なテーマパークが有る事が売りの東京ディズニーリゾートで有る以上これらの点在する施設間を結ぶ「場内アクセス」は考えざる得なかったのでしょう。その結論がディズニーリゾートラインで有ったといえます。
JR舞浜駅に一番近い駅は、JR舞浜駅直近に有るオリエンタルランド経営のショッピングモールの
イクスピアリ
にある、リゾートゲートウェイステーション駅です。此処から反時計回りにループ状に運転されて居るディズニーリゾートラインの試乗を行う事にしました。
イクスピアリ内に有るリゾートゲートウェイステーションは外部からの公共交通機関のであるJR京葉線舞浜駅と接する「ターミナル駅」です。その為1線2面の駅構造で乗降ホームが分離されています。又駅構造も「此れから東京ディズニーリゾートで遊ぶぞ!」いうイメージを膨らませるディズニーのイメージ・キャラクターで飾ってあり普通の鉄道の駅とは違い、如何にもテーマパーク運営企業が運営する「遊園地の交通機関」という感じです。
左:特徴有る制服で乗務している車掌(ドア扱いがメイン) 右:東京ディズニーランドの夜景
先ずはリゾートゲートウェイステーションから隣駅のディズニーランドステーション駅まで乗ってみます。ディズニーリゾートラインはATOによる自動運転が行われて居ますが、車掌が乗っていてドア操作・一部の案内放送を担当しています。その車掌の服装も「メルヘンチック」とでも言うのか?普通の鉄道会社とはチョット違います。この辺りにも特色が出て居ます。
ディズニーランドステーション駅は、東京ディズニーリゾートの中核で有る東京ディズニーランドの玄関口です。その為東京ディズニーランドのイメージに合わせて駅舎が造られて居て、周囲の東京ディズニーランド・東京ディズニーランドホテルなどと見比べても違和感はありません。ディズニーランドステーション駅はリゾートゲートウェイステーションから非常に近いですし、JR京葉線舞浜駅からも歩ける距離ですが、乗車だけで無く降車客も存在します。結構1日乗車券を買い「乗り放題」という客も居るのかも知れません。
左:東京ディズニーランドステーション駅と7月開業予定の
東京ディズニーランドホテル
右:ベイサイドステーション駅の乗降風景
ディズニーランドステーション駅を出ると、東京ディズニーランドの駐車場の上を通り、車窓左手に東京ディズニーランド・車窓右側に東京湾岸に並ぶ(東京ディズニーランド狙いで造られた)舞浜の東京ディズニーランドオフィシャルホテルであるホテル群が見えながら暫く走ると、ホテル群へのアクセス駅になるベイサイドステーション駅です。この駅は流石に鉄骨造の屋根で「普通のモノレールの駅」に近い感じです。
ベイサイドステーション駅を出ると東京ディズニーランドの裏側を通り、暫く走ると車窓左手に東京ディズニーシーが見えてきて、東京ディズニーシー・ステーション駅になります。東京ディズニーシーは東京ディズニーランドに次ぐ「第二のテーマパーク」として、丁度舞浜リゾートラインの開業した2001年にオープンしたテーマパークで、
東京ディズニーシー
(49.0ha)は
東京ディズニーランド
(51.0ha)に匹敵する規模を持つテーマパークで、「東京ディズニーシーが完成して規模が拡大したから東京ディズニーリゾート内の移動手段としてディズニーリゾートラインを造った」という事です。
その為ベイサイドステーション駅は乗降の量の多さを考えて、リゾートゲートウェィステーション駅と同じく1線2面のホーム構成になっています。夜も7時を過ぎたこの時間では、東京ディズニーシーから帰る人も多くこの駅からの乗車客が多いですが、同時に降車客も居ます。ホテルに一度チェックインして夜のイベントを狙い東京ディズニーシーに戻ってきた人達かもしれません。こう見ると結構ディズニーリゾートラインの乗客の動きは複雑なのかもしれません。
基本的に東京ディズニーランド・東京ディズニーシーを中核とする
東京ディズニーリゾートは年間2500万人を越える集客力を持つ
日本最大のテーマパークです。この巨大な集客力が有るからこそ、「場内交通機関」としてモノレールのディズニーリゾートラインが成立するのでしょう。そう言う意味では「非常に特殊な交通機関だな」と感じました。
左:東京ディズニーシーの夜景 右:東京ディズニーシー・ステーション駅の乗降風景
☆ (感想①)普通の鉄道に無い「ホスピタリティ」と「トータルデザイン」がディズニーリゾートラインには有る?
私は実をいうと東京に住んでいながら、東京ディズニーランドには過去に2回(開業当初の小学生の時・社会人1年目の組合のイベント)しか行った事が有りません。非常にリピーターが多いのが東京ディズニーリゾートの特徴で有る点から考えると、私は「東京ディズニーリゾートの素人」という事が出来ます。
今回も千葉の帰りに「何気なく途中下車してディズニーリゾートラインだけに乗った」状況であり、予備知識も「オリエンタルランドの会社としての情報」位しかなく、頼りない状況で始めてディズニーリゾートラインに乗りましたが、それ故も有り今回ディズニーリゾートラインに始めて乗って見てその特長について色々と感じた物が有りました。
ディズニーリゾートラインの車両内部 左:展望席になって居る最前部 中:特徴的デザインの車内 右:車掌が居る最後部
一つ目は、テーマパークの交通機関の特色といえるのでしょうが、特徴的な「ホスピタリティ」に基づいた「乗った人を楽しませる仕掛け」です。
普通の公共交通機関であれば「人を目的地に運ぶ事」が最大の目的ですが、ディズニーリゾートラインの場合少々違います。確かに「東京ディズニーリゾート内の利用客を運ぶ交通機関」ではありますが、不特定多数の人達を運ぶわけでは有りません。ディズニーリゾートラインは「テーマパークに遊びに来た人達を運ぶ交通機関」であり、テーマパークの来訪客という「特定多数」の人を運ぶ交通機関です。その為「テーマパークに夢を求めて遊びに来て居る人達」が相手の交通機関ですから「只運ぶだけ」では利用客を納得させる事は出来ません。
其処で一つ目のキーワードになるのが「ホスピタリティ」という「おもてなしの心」です。ディズニーリゾートラインはテーマパークに夢を求めて遊びに来た人たちが利用客ですから、その利用客を満足させる「仕掛け」を作らなければなりません。実際ディズニーリゾートラインの車両にはその様な「特色」が出て居ます。
上の写真はディズニーリゾートラインの車両ですが普通のモノレールの車両とは異なります。写真を見れば明らかな様にこのモノレールはATOによる自動運転であるのを生かして最前部は「パノラマカー」並みの展望席になっていますし、車内もロングシートですがソファの様に湾曲して居ますし、吊革や窓にはミッキーマウスがデザインされて居るなど、誰もが乗るだけで楽しい車両にデザインされています。
この様にディズニーリゾートラインは非常に特徴的なユーザー層を狙う交通機関ですから「お客様の望みを先回りして察して実現させる」という事が非常に重要です。ましてその特徴的なユーザー層が「夢を求めてテーマパークに来た観光客」ですからその人達の希望を満たして満足してもらうには、交通機関にも「ホスピタリティ」という「おもてなしの心」が非常に重要であり、それが達成されて居るからこそ来訪客が喜んでディズニーリゾートラインを利用して居るといえます。
左:ミッキーデザインが随所に有る東京ディズニーランドの交通機関 中:ディズニーデザインの交通機関は世界共通?@香港 右:素敵な乗り物は夢を与える? 夢のモノレールのデザイン画@東京ディズニーシー・ステーション
もう一つ特徴的なのは、「ディズニー自体の発想」という側面も有るのかもしれませんが、ディズニーリゾートラインを含む東京ディズニーリゾート内の交通機関にも、「ディズニー」を生かしたトータルデザインが実施されて居る点です。
東京ディズニーランドで直接関係する交通機関となると、東京ディズニーリゾート内部の移動を担う交通機関として此処で取り上げたディズニーリゾートラインと東京ディズニーランド・東京ディズニーシーと各ホテルを結ぶ送迎バスが有りますが、これらは「東京ディズニーランド・東京ディズニーシーに入場する前からディズニーの世界」という考え方か?ミッキーマウスを前面に出したデザインで、如何にも「ディズニーの世界に来たんだ!」という感じのトータルデザインが成されて居ます。
これは本年正月時に香港訪問時に見た香港ディズニーランドへのアクセス路線で有る香港地下鉄(MTR)の迪士尼線も、モノレールと鉄道車両の差などが有り完全な同一車両とは言えませんが、同じ様に吊革や窓にはミッキーマウスがデザインされて居る等、同じディズニーランドの交通機関という事で統一性の有るデザインとなっています。
☆ (感想②)ディズニーリゾートラインの経営的な「割り切り」も有る意味重要?
今回ディズニーリゾートラインについて訪問時に驚いた事は「運賃の高さ」です。全長5km・全4駅のディズニーリゾートラインですが、運賃は全区間均一料金250円・1日フリー切符650円(どちらも大人)という価格設定になっています。此れは距離と価格を比べて考えて見ると決して安くありません。それでもお客さんは乗って居ます。全体量で見たら都市交通機関で有る千葉都市モノレールより乗って居るのです。此れには驚かされました。何故なのでしょうか?
確かに都市交通で見たら「5kmで250円」という運賃設定の会社はなかなか無いですし、ディズニーリゾートラインの場合ループ運転ですから「全区間5kmを乗る」事は殆ど有りませんから実際的には1km当り50円を大幅に越える運賃設定は「かなり高い運賃設定」と言えます。
それで居て「利用客数で東京モノレール・大阪モノレール・多摩都市モノレールに次ぐ第四位」というのはこの運賃設定を見たら驚きで有ると言えます。
しかももう一つ驚きなのは「平成14年度・16年度は約8億円・約11億円の赤字」であり乗客は微減傾向に有ったのに、平成18年度になると「171百万円の黒字・乗客約50万人増」という様に運輸成績が改善しています。確かに舞浜リゾートラインの規模から考えるとこの急回復は驚きです。
この間に何が有ったかと言えば2007年4月1日に大人200円⇒250円への25%の運賃値上げを行っています。確かに運賃値上げをすれば収入が増加して収支が急改善される事は容易に想像出来ます。しかし大幅値上げをすると値上げを嫌い乗客が逸走する場合が結構あります。ですから値上げの後で乗客減であれば驚きませんが、舞浜リゾートラインの場合乗客が増えて居ます。しかもこの時期で沿線最大施設の
東京ディズニーランド・東京ディズニーシーの来園者数
は大幅に増加しておらず、02年以降2400万人台後半〜2500万人台をずっと推移しています。その状況でしかも値上げの悪条件の中での乗客増は何が起きたのでしょうか?
実は今の持って居る資料では明白な理由を説明する事は出来ません。ですから推測で「来園者数が横這いで何故値上げしても乗客が増えたのか?」を考えなければなりません。
ですから此処から先は「推測」をするしか有りません。という訳で推測をして見ると「非日常利用のテーマパーク来園者は小額の支出を深く考慮せず、世間一般の相場から見て多少高くてもそんなに躊躇わず支出してしまうのではないでしょうか?皆さんも「非日常的場面で(実際は高くても)小額の場合に躊躇わず支出してしまう」という経験ありませんでしょうか?
もしこの様な心理が、東京ディズニーリゾートへの来客にある場合、この客達は元々観光施設に遊びに来て居る人達ですから、価格への負担対応力は普通に移動目的だけに公共交通を使う人達と比べるとかなり高い事になります。その心理を上手く使って運賃設定をしているのであれば、ディズニーリゾートラインの運賃設定方針は非常に巧妙で有ると感じます。
逆に言えば日常的な公共交通としての利用度が低く、観光目的が主体の遊覧鉄道となって居るような鉄道・交通機関の場合、この様な「割り切った運賃設定」が必要なのかもしれません。この様な鉄道の場合、公的支援が期待出来ない分採算にはシビアで無ければなりません。しかし上手く利用者が満足をするようなサービスを提供できれば、相手は比較的高額な運賃負担の出来る観光客で、満足度に応じた高い運賃も負担してくれます。この様な鉄道の場合「お客様を満足させるサービス業だ」と割り切った上で「高サービス=高運賃」という設定に大きく軸足を振った経営をするのも一つの方策で有ると、ディズニーリゾートラインを見て改めて感じさせられました。
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