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TX開業に伴う優勝劣敗が明らかに
TAKA 2005年12月18日
8月24日に開業したTXは、その持つ潜在的能力の高さ(利便性・高速性等)から、開業から3ヵ月半で周辺の交通機関に大きな影響を与えています。未だ全部出尽くしているとは思いませんが、色々な所で粛々と変化が起きています。その変化に関して、此処で一区切りとして見てみたいと思います。
「(参考)TAKAの交通論の部屋 『
つくばエクスプレス訪問記
』」
●TXは取りあえず好調な発進?
先ずはTXです。TXは取りあえず好調な発進のようです。TXは当初「
開業初年度約13万人・開業5年後約27万人
」と需要の予測をしていて、当初は開業人気で「
開業初日に20万人
(朝日新聞)」「
開業1週間で105万人
(朝日新聞)」と言う堅調な需要が有りましたが、この堅調な需要は今の段階では続いているようです。
先日つくばエクスプレスが「
10月度の1日平均輸送人員
」を発表しましたが、それによると1日当たりの平均輸送人員は153,500人と開業初年度予測13万人を約18%overしています。
又各駅の利用状況は「守谷〜つくば間各駅の苦戦・乗換駅(守谷・流山おおたかの森・南流山)の需要は多い」と言うのは予想の範囲内ですが、浅草・六町・八潮が意外に好調と言うのには驚きました。それから見ると新御徒町・三郷中央は大江戸線乗換・住宅密集とフィーダーバス整備等が寄与しなかったのか意外に不調だなと感じました。
それでも今までの新線の場合、大体は需要予測割れと言うパターンが多かったということを考えると、「堅実な需要予測」が行われていたのだろうと推察すると同時に、「高速・高利便性が需要増を招いた」と言う事も有るのだと思います。
需要の増減に一喜一憂する事は無い(
ゆいレールの様に数%の差で一喜一憂
するのは可笑しい。1年目利用客が需要予測の99.4%と言うのは「ビンゴ」と言うほどの数字で何も問題は無い)と思いますが、事業の採算性を考えれば堅実な需要予測に基づいた堅実な収支計算は重要な話です。数%〜10%の誤差が出るのは致し方ないでしょう。
でもその点から考えても、今の段階で+18%と言うTXの数字は、開業当初で乗客の転移が進んでも沿線開発が進んでいない状況の、今の数字としては評価できる数字で有ると考えます。
後は中期的に順調にTX沿線の開発が進むかに掛かっていると思います。低価格で質の高い住宅を供給できて、それが上手く需要を引き付ける事が出来るかに中期的なTX需要の伸びに影響すると言えます。そういう点では「姉歯問題」に起因するマンション需要の冷え込み(その兆候は現れているらしい・・・)がTX最大の逆風になると言う意外な結果になるかも知れません。
●関鉄常総線はフィーダーとして機能している?
次は関鉄常総線です。関鉄常総線に関しては利用客数が発表されていませんが、どうも意外に好調のようです。
その証拠に8月24日のTX開業時に快速新設等を含むダイヤ改正を行ったにも関わらず、12月10日に「
快速倍増を含む列車増発
」のダイヤ改正を行っています。この改正の目玉は「快速倍増(3往復増発)・取手〜守谷5往復(土日4往復)増発・守谷〜水海道11往復(土日13往復)増発」と言う内容です。
これはかなり積極的なダイヤ改正です。僅か3ヵ月半での再度のダイヤ改正は、TX開業に伴う常総線への影響が関東鉄道の思ったより少なかった事を表していると言えます。
当初8月24日のダイヤ改正では、快速に新設に対し編成両数減等の「スクラップ&ビルト」のダイヤ改正でしたから、少なくとも「新守谷・南守谷から取手に流れる人たちが、守谷からTXへ流失する」と読んでのダイヤ改正であったと言えます。
しかし現実としては、3ヵ月半の様子の結果が「常総線は上手くTXのフィーダー路線として機能した」という事であったと思います。だから「守谷から水海道行・取手行・快速」の順番で増発が行われたと推察します。
只此れも関鉄常総線に取り「沿線客が直接TX守谷に流れてしまう」と言う最悪のシナリオが避けられただけの話です。常磐線のフィーダーからTXのフィーダーに変わったと言う事は乗客数が変わらなければ、降車点が取手から守谷に変わる事での乗車距離減少で収入が減収になる筈です。その点から考えると「最悪のシナリオは避けられたが、状況は厳しい状況に有る」と言えるでしょう。
今回のダイヤ改正はTXフィーダーとして生き残る方策を強化する一方策として行われたと推察します。
●関鉄・JR高速バスは玉砕か?
上記これらの「比較的好調・持ち堪え組」に対して「一人負け」状況に有るのが、TXと直接バッティングした関鉄・JR高速バスのつくばセンター・水海道・南守谷線です。これらの路線は
12月1日にダイヤ改正
をしましたが、内容は「つくばセンター線4割減便・南守谷線廃止・バス停削減」と言う完全なリストラダイヤになっています。
つくばセンター線・守谷線12月1日ダイヤ改正ポスター
8月の段階で「減便せず・値下げと停留所増加で対応」と言う強気の方策でしたが、早くも方針転換のようです。図らずしも私の「
つくばエクスプレス訪問記
」での予想が当たった形になってしまいました。
TX開業直後の高速バス路線の状況は上記訪問記の中で書いていますが、上のポスターの写真を取った時(12月6日に東京駅の近くに行った時に寄った)10時近くでしたが、水海道行きとつくばセンター行きのバスの乗車率をチラッと見ましたが、やはり15名〜20名程度の乗車率でした。この時間はそんなに利用率が落ちる時間とは思えません。民鉄各線などはこの時間の座席指定特急は殆ど満席の状況です。それに高速の渋滞も無い時間なので、定時制の面でも不利な時間ではありません。それでも店員の半分程度しか乗らない状況と言うのは極めて厳しい状況と言えます。
しかもつくばセンター線は
メガライナー
と言う未だ導入してから3年なのに、座席数が多くしかも認可の関係からつくばセンター線から転用が極めて困難な車両を抱えています。その様な今までの強気の予測から大きな設備を抱えた路線で、深刻な利用者減に悩まされ、その上打つ方策が「運賃値引き・割引切符販売」と言うダンピング方策しか打てないと言う状況が、TXがもたらしたこの路線への影響の深刻さを物語っています。
正しく「玉砕」状況の高速バスつくばセンター線・水海道線に生き残る方策は有るのでしょうか?
この3ヵ月半の状況を見ると、9400億円の巨額の建設費を掛けたつくばエクスプレスが好調な滑り出しであると同時に、その影響を茨城県南部地域最大の交通企業である関東鉄道のドル箱である高速バスつくばセンター線・水海道線を直撃したと言う事が出来ます。
巨額の建設費を費やしたつくばエクスプレスが挫折すると言う事は、出資している地方自治体に巨額の負担を強いると言う点で大きな問題で有るので、何としても避けなければならない事であります。
しかし同時に茨城県南の公共交通を支える関東鉄道の経営不振も茨城県にとっては非常に重要な問題です。私のつくばエクスプレス訪問記で「関東鉄道の経営問題は茨城県南の公共交通維持に入内な問題を投げかける。その第一歩は鹿島鉄道の廃止問題に波及する」とその競争の弊害について述べましたが、その危機は今回出てきた影響の第一歩で段々明らかになってくると言えます。
多分その第一歩の変化は2007年3月に訪れると考えます。それは2006年3月は関東鉄道決算に半期分しかTXの影響が反映されません。それが通期で反映される2007年3月には、今の状況のままでは関東鉄道が不採算事業のリストラ策を打ち出すことは間違いありません。
又その第一対象が
2007年3月までの補助しか約束されていない
子会社の鹿島鉄道に向かう事は間違いありません。その深刻な問題に関して地域や自治体が深刻に考えなければなりません。もう残されている時間は決して多く有りません。
前のつくばエクスプレス訪問記でも述べた話ですが、此処で改めて述べておきたいと思います。茨城県南地域のローカル輸送を考えると言う問題に残された時間はもう多く有りません。
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