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駅ナカの商業施設は普通の商業施設と一緒なのか?

−東京都の打ち出した「駅ナカ商業施設への固定資産税課税強化」について考える−



TAKA  2006年05月05日





(東京駅銀の鈴と周辺の駅ナカ店舗)


※本記事は「 TAKAの交通論の部屋 」「 交通総合フォーラム 」のシェアコンテンツとさせて頂きます。


 近年鉄道駅構内での商業施設展開(以下駅ナカ店舗と略す)が注目を集めています。今までも駅中の店舗と言う物は存在していましたが、JR東日本が積極的にかつ大規模に進め「 駅ナカビジネス 」と言う形で成功を収め、今やJR・民鉄が鉄道施設を有効利用した副業として競って駅ナカビジネスを進めています。
 しかしその「駅ナカビジネス」の活況に目をつけて、東京都が「駅ナカ施設への固定資産税課税の一般並み課税」を打ち出しました。(参考: 石原東京都知事記者会見
 確かに駅ナカビジネスは非常に競争力を持っており、駅周辺の商店街に影響を与えるほど活況な場所も出ているようです。加えて鉄道施設の固定資産税は周囲の3分の1の評価基準で評価されています。(参考: 雑種地(鉄軌道用地)の評価に関する調査研究
 この様な基準が有る中で今回東京都は「駅ナカ店舗」の固定資産税の課税強化を打ち出しました。今まで「駅ナカ店舗」については色々と触れてきましたが、今回は「駅ナカ店舗に吹いた始めての逆風」である、東京都が提案した駅ナカ店舗への固定資産税課税強化について考えて見たいと思います。


 ☆固定資産評価基準上の「鉄道施設」とは?

 先ず問題なのは鉄道施設の何処が固定資産評価を減免されているのでしょうか?「鉄道施設は固定資産を減免評価」されていると言うのは事実ですが、鉄道会社の全ての土地が固定資産評価を減免されている訳では有りません。
 固定資産税賦課の為の評価の基準となる「固定資産評価基準」で、鉄道用地に関して「当該鉄軌道用地に隣接する土地の価値の3分の1」評価し価格を求めると定められています。又「鉄軌道用地」の具体例として「線路敷、停車場建物、転車台、給炭水・給油施設、検車・洗浄施設、乗降場、変電所、車庫、倉庫、踏切番舎、保線区、検車区、車掌区、電力区、通信区」となっています。
 ※参考資料: 雑種地(鉄軌道用地)の評価に関する調査研究 ((財)資産評価システム研究センター)
 要は「主に鉄道事業に供する鉄道施設」の固定資産評価は「周囲の価格の3分の1で評価」されこれを基に課税されると言う事です。
 これは「公共性の高い鉄道事業に供される土地である事を踏まえて割り引く」「鉄道施設の転売が容易でなく(廃止しないと転売できない)、普通の商業利用地と比べて売却による資産価値の現実化が容易でない」と言う事が、この様な鉄道用地に関する特例措置が発生した裏にあると言う事が出来ます。
 実際問題として一番大きいのは「鉄道事業に供される鉄道用地の公共性」と言う事であると言えます。
 その為、上記の鉄道用地に関する「固定資産評価基準」には例外が存在し、停車場建物・乗降場で有っても「百貨店、店舗その他専ら鉄道又は軌道による運送の用に供する建物以外の建物の用地として併用する土地を除く」と言う例外が設定されています。この例外事項については「 雑種地(鉄軌道用地)の評価に関する調査研究 」に詳しく出ていますが、駅ビル・高架下用地等が除外され、地目は「宅地」として評価されるが、高架下は建物の高さ制限等利用上の制約が有るのでそれを勘案して評価すると言う内容になっています。


 ☆それでは「駅ナカ店舗」は固定資産評価上の「鉄道施設」なのか?

 では実際の固定資産評価の運用上では、鉄道事業の「副業の店舗施設」は「鉄道施設」なのでしょうか?これには「白・黒・グレー」の分類になると言えます。その3分類について具体的例を交えながら検討したいと思います。

 ・白な物(鉄道施設と認定される鉄道事業施設内の店舗)→ホーム・駅構内にある売店・飲食店等


(JR新宿駅新南口コンコースにある駅ナカのベーグルショップ)

 上記の「鉄道施設」の定義の中で例外事項として「百貨店、店舗その他専ら鉄道又は軌道による運送の用に供する建物以外の建物の用地として併用する土地を除く」と有ります。と言う事は「専ら鉄道・軌道の輸送に供する建物の用地として供用する土地」であれば、「鉄軌道用地」として認定されるという事になります。
 例えば写真の様に駅のコンコース・ホームの一部に商業施設が置かれる場合は、駅のコンコース・ホームは本来「鉄道・軌道輸送に供する施設」であり、其処に便乗する形で小さな商業施設を置く場合、あくまでも「鉄道施設→主・商業施設→従」と言う事になります。
 この様な場合は正しく上記の例外事項に該当しない事になり、固定資産評価では「鉄軌道用地」と認定されると考えられます。ですからこの様な場合は「鉄軌道用地」適用は「白」になります。

 ・黒な物(鉄道施設と認定されない鉄道事業施設内の店舗)→駅ビル内の百貨店、鉄道高架下に作られた飲食店・物販店等

(小田急線豪徳寺駅高架下に駅施設と独立してあるファミレス・美容室)

 これは「黒」な例と言う事になりますが、「黒」な物は上記の「例外規定」に当てはまる物が「鉄軌道用地」と認定されず、「宅地」「商業地」と認定される物であると言えます。
 実際駅ビル等は鉄道施設と商業施設が同居していますが、建物的には鉄道施設と商業施設は区画が分かれていて相互に干渉しないようになっています。又高架下店舗も高架躯体で鉄道施設としっかり区画されており分けられています。この様に鉄道用地内にありながら、駅機能・鉄道機能に直接関係なく同時にしっかり区画されており分けられている事で、はっきりと「商業施設」と分けられている施設は、当然のように「鉄軌道用地」と認定されず例外規定は使えず「黒」と言う事になります。

 ・グレーな物(比較的規模が大きい店舗で「専ら鉄道・軌道輸送に供する」の例外該当に微妙な物)→JR東日本の「駅ナカ」店舗等
   
(左:駅舎コンコースに隣接して造られたecute品川 右:同じく駅舎コンコースに隣接して造られたDila品川)

 最後に「グレー」な例と言う事になりますが、これは上記の「例外規定」を鉄道事業者の副業展開が追い越してしまった為に「専ら鉄道又は軌道による運送の用に供する建物」の同一区画内に大型店舗が出来てしまい、上記の例外規定の解釈ではどちらとも取れる状況が発生してしまっている為「グレー」の分類が出来てしまっています。
 その象徴が今回問題になっているJR東日本の「駅ナカ店舗」です。JR東日本の駅ナカ店舗である「ecute」にしても「Dila」にしても実際は立派な商業施設です。そういう観点から見れば「専ら鉄道又は軌道による運送の用に供する建物」と言う事は言えず、例外規定には当てはまり「黒」と取る事も出来ます。
 しかし考え方を変えると「駅ナカ店舗」は駅の改札内に有り鉄道施設と明確に区画されているとはいえません。同時に品川・大宮等の例を見ても、実際の駅施設の面積と駅ナカ店舗の面積を比べれば「駅施設面積>駅ナカ店舗面積」となると言えます。しかも建物が増築で建てられたり既存建物を改修した場合「専ら鉄道又は軌道による運送の用に供する建物」に「専らでない商業施設が建物に同居している」と言う事も出来ます。
 こうなると現行制度上は「どちらとも取れる」と言う事が出来て「グレー」と言う事になります。少なくとも「固定資産評価基準 第1章第10節 三」を読む限り、私は大規模な駅ナカ店舗が「評価基準として鉄軌道用地に当てはまるか?」と言う点で「駅ナカ店舗は白・黒どちらとも取れる」と言えます。

 この様なグレーの点が有ったからこそ、今回東京都が「駅ナカ店舗は鉄軌道用地に有らず」と言う話になり、今回の「固定資産評価の変更」と言う話になったのだと思います。そのグレーの要素から考えてみれば今回の東京都の行動は「一理有り」と言う事になります。以下において公的セクターの「固定資産評価変項」が図らずも示した「鉄道事業者の鉄道資産を有効活用した副業」への考え方と、公共事業を運営する民営企業者のあり方と社会との関係について考えてみようと思います。


 ☆今回の東京都の「駅ナカ店舗固定資産課税強化」の真意とは?

 では今回何故東京都は「駅ナカ店舗への鉄軌道用地認定」を外して、一般並みの固定資産評価に変更する事にしたのでしょうか?その表向きの理由は「直ぐ近くにある一般商業店舗に比べて固定資産評価で優遇されているのは不平等である」と言う事です。この事は上記引用の 石原都知事の記者会見 でも述べられています。
 しかし優遇されているのは事実ですが、果たして大騒ぎするほど不平等なのでしょうか?実際鉄道敷地内にあるが鉄道客以外の一般客も入れる駅ビルや高架下店舗等の、一般店舗と立地的に大きな差の無い鉄道施設隣接施設を副業で貸している場合、その固定資産評価は「建物の建築規模に制限が有る分の減免」を除いて基本的には駅隣接地と変りません。そういう意味では駅ビル・高架下店舗と隣接商業地の間では不平等は存在しません。
 実際に隣接商業地と固定資産評価で差があるのは「ecute」「Dila」等の駅ナカ店舗です。これらの駅ナカ店舗は大部分の物は「ラッチ内」に存在します。「ラッチ内」にあるという事はその店舗の利用客は鉄道利用客に限定される事になり(実際外から入場券を買って駅ナカ店舗に買いに行く人も多い)、無条件に一般客が集客できる駅隣接地商業店舗に比べ集客的に大きなハンデを抱ています。
 その様な事から考えると、駅ナカ店舗は上記で検討したように「鉄軌道用地」であるか?と言えばグレーになりますが、「立地」と言う名の土地の価値としては駅隣接商業地に比べてハンデを抱えている事になります。まして「ラッチ内」と言う鉄道施設内なのですから、固定資産税評価的に「鉄軌道用地」であると言っても可笑しい事では有りません。(実際今までは其れで通ってきている)。判定の基準も何も変らなくて、実際鉄道施設内で立地もハンデを抱えているのに「不平等」の一言で固定資産税算出の基礎となる「固定資産税評価基準の見解」が変わってしまう事は可笑しな事であると言えます。

 では何故今回東京都がこの様な「固定資産税評価基準見解の変更→固定資産税課税強化」を打ち出したのでしょうか?理由は極めて単純「税収源の確保」と言う事であり「儲かっている所から金を取ろう」と言う発想が根底に有る事は間違い有りません。
 実際今「駅ナカ店舗」は極めて注目を集めています。私も「 JR東日本の駅ナカビジネスを見る 」で取り上げましたが、私以外にもTV東京の「ガイアの夜明け」や「ワールドビジネスサテライト」等でも頻繁に取り上げられ、鉄道会社の副業の成功例として持て囃されています。又実際にJR東日本の「ecute」「Dila」を始めとした「駅ナカ店舗」の成功は目覚しい物が有ります。
 其処に偶々「商業施設だが「ラッチ内」と言う鉄道施設内に有る為に、固定資産評価上は「鉄軌道用地」として優遇されていた」と言うグレーゾーンが有った為に、東京都が目をつけて「見解の変更」と言う事で今後は評価基準を変えて課税を強化使用と考えたと言うのが、今回の真相であると考えます。


 ☆「見解の変更」だけで簡単に徴税基準を変更するのは「民業圧迫」ではないのか?

 しかし単純に考えて、今回の東京都の「固定資産評価基準の見解の変更→固定資産税課税強化」は筋の通った物ではありません。「駅ナカ店舗」は明らかに鉄道利用者限定で狙った商業施設であり、一般駅前商業地の商業施設とは明らかにハンデを抱えています。その実体を無視して「儲かっているから商業地と価値は同じ」と言う考えをするのは逆に不平等ではないでしょうか?
 「儲かっている所から税をとる」と言うのは徴税の立場からすれば理解できなくも無いですが、余りに安易な発想です。JR東日本にしても「駅前商業地をスルーして入場券を買ってまで駅ナカ店舗に買い物に行かせる」と言う所までの駅ナカ店舗の繁栄を作り出したのは、地道な「企業努力」です。其れを無視しての安易な「固定資産評価基準見解の変更→固定資産税課税強化」は決して容認できる物では有りません。
 せっかく民間企業が努力して見つけた「隙間ビジネス」に対して、大きな制約を加えると言う「形を変えた民業圧迫」に他ならないのではないでしょうか?理に適った課税の強化であれば受け入れるべきですが、法も制度も規則も基準も変っていないのに只単純に「見解」だけを変えて、民間の鉄道事業者新しく見つけた収益事業に対し制約を加えるのは好ましい事では有りません。東京都は即刻今回の方針を撤回すべきであると言えます。

 実際問題として鉄道事業者に取っては駅ナカ商業ビジネスは、いまや鉄道事業者の副業の中でも成長株の一つであり、収益源としても大きな物が有ります。そういう意味から考えれば鉄道事業者にして見れば重要な事業であると言えます。
 今日本では公共交通のうち鉄道分野の大部分を民間企業に委ねているのが実情です。民間企業は数十年〜百年の間に亘り土地を買い線路を引き各種インフラに投資をして、鉄道事業で収益を上げると同時に公共の為の輸送に邁進してきました。その為日本では本来公共セクターが投資すべき大都市圏の鉄道公共輸送のインフラのかなりの部分が民間資本で造られてきた歴史が有ります。その中で民間企業である大手民鉄は、リスクを分散し収益を上げる為に色々関連の副業にも力を注いできて、今の日本独特の私鉄経営が公共輸送を担うシステムが出来てきたのです。
 その中で近年こそ「鉄道事業の参入退出規制」が緩和され、赤字路線廃止が簡単に出来る様に成って来た為大手民鉄の赤字ローカル線廃止が多数出てきましたが、今までも又今でも大手民鉄は不採算路線であっても「参入退出規制緩和」を乱用せず可能な限り「内部補助」で不採算の公共輸送を支えてきました。
 その「内部補助」の原資となってきたものが「黒字路線との相殺」と「副業による収益」です。特に大手民鉄は「成長分野を他に求める」と言う理由も有りますが、近年積極的に副業による収益向上に取り組んできました。「駅ナカ店舗」もその一環であり「鉄道資産の有効利用」と「不動産・物販収入の向上」と言う目的の為に積極的に力を入れてきて、やっと「収益」と言う名の果実を得る事が出来る状況までになってきたのです。
 その鉄道会社の「内部補助の原資ともなりえる果実」を東京都が「トンビが揚げをさらう」様に「固定資産評価基準見解の変更→固定資産税課税強化」を行い税収を増やす様な「濡れ手に粟」のような行為を行おうとしています。少なくとも「(極めて間接的でも)公共交通の一翼」を担う「鉄軌道用地内の事業用地の有効利用」である「駅ナカ店舗」が、公共交通が街に運んできた来た客を集める事で収益を上げる一般商業地と同列に扱われると言うのも可笑しな話です。
 もしその様な事の真の真相を考えずに、東京都が自分達のミクロ的な税収だけを考えて、利己的に行動するのであれば、民間鉄道事業者も利己的に動くべきです。実際「参入退出規制の緩和」が行われているのですから、官が新規開拓の事業に厳しい税金の壁を課すのであれば、民は収益重視路線を強化して赤字路線の内部補助を取りやめバシバシ不採算路線を廃止しても良いのではないでしょうか?官が「トンビが油揚げをさらう」行動をするのであれば民も「資本と市場の原理」に基づいて行動しても良いと考えます。
 只そう杓子定規に物事を語っても仕方がありません。今回の「固定資産評価基準見解の変更」はグレーゾーンの話ですし、理論的には検証の通りグレーでも現行基準に問題や著しい不平等は無いのですから、実体は「課税強化・税収増」を狙った「見解の変更」で法規も基準も変っていないのですから、東京都が大人になりグレーゾーンを「御目こぼし」する柔軟な対応が好ましいと思います。実際「副業の収益」がJR・民鉄内で幾ばくかの内部補助を通じて多少は地方公共交通の維持に役立ち、本来は税が行うべき「富の再配分」を交通の分野で少しは行っているのだと考える「広く物事を見る余裕」が東京都に有っても良いのではないでしょうか?





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