このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





経営における「株主配当か?内部留保か?」の究極の決断とは?

−稀有な黒字第三セクター鉄道「智頭急行」に迫られた判断について考える−



TAKA  2006年07月31日



 「地方の鉄道系の第三セクター」と言うと「赤字」と言うイメージが付き纏いますがそうとは限りません。全体の数から見れば数少ない物の、例外と言える「利益を上げている地方の鉄道系第三セクター」は実際には存在します。
 そのような数少ない黒字の第三セクターの中で、恒常的に利益を計上している「地方の鉄道系第三セクター」の優等生と言える「至宝」とも言える存在が、新潟県の 北越急行 と兵庫・鳥取県の 智頭急行 の2社です。
 両者共旧国鉄の赤字ローカル線の転換でなく、鉄建公団が作り出したが国鉄再建の段階で工事凍結になった「旧公団A・B線」を地元が第三セクターで引受け工事再開した鉄道の一つで(他には野岩鉄道・三陸鉄道・井原鉄道などが該当する)その中でも、高速・高規格化工事を行い都市間連絡機能を強化した北越急行・智頭急行は特急による長距離・通過利用客により高い収益性を上げています。
 
 今回取り上げる問題は、その様な地方の鉄道系第三セクターの優等生であり、毎年の様にコンスタントに利益を上げている智頭急行において筆頭株主の鳥取県(33.89%保有)から上がった「配当要求」です。(参考: 4/18中国新聞
 報道によるとその内容は、『財政健全化に取り組む県は、遊休資産は株式も含めて整理する方針』『黒字基調の智頭急行には、片山知事が高宮史郎社長に直接、配当を要求したという』『片山知事は「黒字の時に配当がなく赤字時には追加出資などを求められるのでは、権利がなくて義務だけ背負う世にもまれな株主になってしまう」などと述べた。』と言うのが今回の問題の内容です。(『』内は中国新聞よりの引用)
 実際に智頭急行は倉吉・鳥取⇔大阪・京都間の特急「スーパーはくと」が好調で九八年度から七年連続黒字で二〇〇五年度も黒字の予想であり、〇四年度の経常利益は五億八百万円と言う優良企業です。鳥取県は33・89%を保有する筆頭株主ですから、これだけ黒字を出していれば配当を要求するのもわかる気持ちはします。
 但しいくら堅調な黒字経営と言えども、第三セクターで筆頭株主の自治体が「配当を要求する」と言うのは前代未聞の事例ですし、果たしてここで配当をして県の財政を短期的に潤すのが果たして全体的に見て好ましいのか?と言う疑問も残ります。

 そう言う訳で今回は、恒常的に利益を出している経営状況の中で筆頭株主の鳥取県に配当を求められた「地方の鉄道系第三セクターの優等生」である智頭急行の取るべき道について「配当が正しいのか」「内部留保が正しいのか」「新たな投資を行うのが正しいのか?」と言う視点で考えてみたいと思います。



 * * * * * * * * * * * * * * *


 ☆ 智頭急行の経営の現状について

 先ずは智頭急行の経営の状況について分析したいと思います。本当なら智頭急行の決算単信などを仕入れれば良いのですが、智頭急行のHPには残念ながらその様な広報資料は載っていませんでしたので、運輸政策研究機構の「数字で見る日本の鉄道」から主要数字を下記に引用して其れを参考に話を進める事にします。

 「智頭急行主要経営指標」
年度営業キロ輸送人員輸送密度職員資本金営業収益営業費用全事業経常損益
平成13年56.1km1,236千人2,785人/日78名450百万円2,895,338千円2,278,347千円539,905千円
平成15年56.1km1,266千人2,930人/日88名450百万円3,131,318千円2,553,858千円536,080千円
 ※上記数字は「数字で見る鉄道2003(平成13年度)」「数字で見る鉄道2005(平成15年度)」より掲載しています。
 ※議論においては上記に加えて「鉄道・運輸機構7月7日プレスリリース  「地方鉄道の活性化に向けて〜地域の議論のために〜」について  エクセルファイル内智頭急行データ」も参考にしています。

 この智頭急行の数字を見ると、輸送人員では真岡鉄道より少し少なく輸送密度は上信電鉄より少し多いと言うレベルにあり、決して恵まれたレベルにありません。この数字は一般的な地方民鉄や地方第三セクター鉄道の数字と変りません。
 しかしこの輸送人員・輸送密度で有りながら収入は伊予鉄道・伊豆箱根鉄道とほぼ同じ約31億円の売上が有ります。本来鉄道事業の収入の根幹で有るはずの輸送人員も少なく輸送密度も少ないのに、中堅民鉄並みの売上が有るという効率の高い経営が、智頭急行の黒字・経営の好調の秘訣で有ると言えます。
 
 では兵庫・鳥取の県境で沿線の人口密度が321.1人/k㎡しか無い(これは沿線の若桜鉄道より低い)智頭急行が、何故これだけ少ない輸送人員で利益の上がる高効率の経営(職員1人当たり旅客収入19,730,600円・営業収益/人件費比率876%と言う効率を示す指標はずば抜けている)をする事が出来るのでしょうか?
 これは「輸送人員の大部分が関西・岡山〜鳥取間の都市間輸送の為、特急利用の高単価の客が全線を乗ってくれる」「メインのスーパーはくと7往復で使用の HOT7000系 車両は智頭急行所有の為乗り入れ先のJR西日本から車両使用料が入る」と言う2点が経営上大きな収益源になっていると言えます。
 「特急の高単価客が全線乗ってくれる」と言う点は、智頭急行と同じ様な「東京〜北陸の都市間輸送の動脈」になっている北越急行にも同じ様な現象が起きています。北越急行も智頭急行とそんなに変わらない59.5kmの路線で40億円の売上と983百万円の利益を挙げていますが、この大部分は東京〜北陸連絡特急の「はくたか」が稼ぎ出している物であり、智頭急行の収益も関西〜鳥取連絡特急の「スーパーはくと」が稼いでいるのと同じ状況です。
 つまりは未成線である地方幹線を、第三セクターとして開業させた時に高速化と言うもう一段の投資をする事で、地方幹線でなく都市間連絡鉄道として昇格させた「英断」が大きく作用していると言えます。しかも北越急行は北陸新幹線上越延伸で優位が奪われると言う将来へのリスクが有る状況で高速化事業に240億円(負担は国20%:県20%:JR東日本60%)もの投資をした北越急行に対し、智頭急行は「電化・因美線高速化」を諦め最低限の高速化投資(23億円)で、今の高速輸送網と恒常的な高収益の収益源(ライバルの他の高速鉄道は当分登場しない)を確保したと言う意味では、極めて割りの良い投資をしたという事が出来ます。
 同時にインフラで割り切った分の高速化を高性能振り子機能付きディーゼル特急車両に求め、そこでもう一つ大きく投資してその特急車両を智頭急行の投資で購入したと言うのは正しく慧眼であったと思います。高速化の内容を割り切ってインフラ投資を抑えると同時にその高速化への負担を車両性能に求め、車両には投資して車両を保有しJR西日本に賃貸する事で収益を稼ぐと言う絶妙のスキームを作り上げています。
 
 智頭急行が何故成功したかと言えば、「地方の鉄道系第三セクター」の中で極めて恵まれた「都市間連絡鉄道」としての機能を保有し、しかも特急輸送と車両賃貸と言う収益の二本柱を構築する事が出来たという点あると言えます。
 このスキームが有ったからこそ、人口密度が低く地域輸送だけでは成立しない鉄道が今でも「地方の鉄道系第三セクター」の優等生として利益を出す事が出来たと言えます。「特急が走らない智頭急行」で有るならば今頃赤字に喘いでいた事でしょう。智頭急行の成功は都市間輸送に対応できた「地理的条件」と「投資の決断」に有ったという事が出来ます。


 ☆ 果たして智頭急行の取るべき道は?

 その様な環境の中で智頭急行のとった道は「 配当の実施 」でした。(4/21:中国新聞)
 中国新聞の報道を見ると、詳細は『一株につき千円の配当(配当率2%)を出す議案を六月の株主総会に提案』『智頭急行の発行株数は九千株で、配当原資は九百万円。三千五十株保有する筆頭株主の鳥取県には三百五万円が入ることになる。』『取締役会には高宮史郎社長や会長の片山善博知事ら取締役十四人が出席。配当提案に片山知事らが「三セクとはいえ株式会社。株主に利益を還元するべき」と賛意を示した。これに対し「(完成が近づく)高速道(姫路鳥取線)との競争に備えた内部留保や安全面への設備投資に回すべき」との反対意見も出た。採決の結果、賛成九、反対五で承認された。』『配当の使い道について片山知事は「観光振興など、乗客数にはね返るよう有効活用したい」と話している。』(『』内は中国新聞より引用)と言う事で、今回の配当の問題に関しては「配当か?内部留保か?」と言う問題で取締役会でも議論が割れた様です。
 但し金額的には2%配当であり必要な配当原資は900万円であり、経常利益で5億円台をコンスタントに出せる会社にしてみたら経常利益の10%以下を配当原資に廻す事は決して困難な事では有りません。その事から見ても今回の智頭急行の「2%配当」と言う決断は、片山鳥取県知事の「利益が出ているから配当せよ」と言う正論に会社が可能な常識の範囲で答えたと言う「シンボル的」な配当決断であったと言う事が出来ます。

 けれども将来を見渡せば、今は「第三セクターの優等生」である智頭急行もずっと安泰であるとはいえません。
 今まで高速化がされずに懸案として残っていた 因美線智頭〜鳥取間の高速化 も達成され、 15年10月ダイヤ改正 でスーパーはくと・スーパーいなばの増発も果たされたので、今や智頭急行の収益向上・地域の利便性向上に直接大きく結びつくような大きな設備改良工事等の設備投資先は出尽くした感があります。(これ以上の高速化への設備投資は今の技術では投資効果が伴わない?)
 又安全設備への投資もすでにATSに関してはATS−Pが導入されており、元々鉄建公団A・B線として作られた路線なのでPC枕木化・重軌条化・立体交差化もほぼ達成されており、車両・設備の経年も経っていないことから考えて、安全面に多額を投資する項目も存在しないのが事実です。
 その様なことから考えると、智頭急行にとって見れば「今や有効な設備投資先は存在しない」と言っても過言ではない状況です。それに会社の収支的には将来の減価償却費が増えるだけで設備投資は別腹ですから、利益の処分方法とは元々関係ありません。

 では利益の使い方として内部留保を増やすか?これも一つの方法です。取締役会でも話が出たようですが今や 鳥取自動車道 の建設は今や急ピッチで進んでおり、平成21年度には全線開通し智頭急行とは佐用〜智頭間で完全並行するのみならず、高速道路を使えば鳥取⇔大阪が2時間50分(鉄道は2時間20分台)で結ぶことが可能になり 日本交通の高速バス が完全な強敵になります。
 その様な将来に存在するであろう危機に備えて今から危機管理の一環として内部留保を蓄えておくと言うのは一つの方策です。それを実施しているのは地方では最大の黒字第三セクター鉄道である北越急行です。北越急行は『北越急行は設立当初に「配当しない」との方針を決めている。』(4/18 日本海新聞 )と言う方針を打ち出しています。実際北越急行の場合ライバルの 北陸新幹線 が平成26年度までには金沢まで延伸されます。そうなると今の北越急行の収益源である「上越新幹線〜はくたか乗り継ぎ」での東京⇔北陸間の客は根こそぎ新幹線に取られてしまいます。そうなっては会社存亡の危機ですし、智頭急行の場合より遥かにダメージが重いと言えます。
 その為に資本金である45億円に迫る勢いの約37億円の余剰金を溜め込んでいると言う訳です。これはこれで理に適った説明です。確かに北越急行の場合はより直接的に経営に響いてくることは間違いありません。その時に「利益を配当で配っちゃったから赤字は補填してね」と言うより「貯金でがんばれる限りがんばります」と言った方が正しいですし世間の受けも良い事は間違いありません。北越急行の場合は北陸新幹線開業が「今そこにある危機」だからこそその理論に十二分の説得力を持つと言えます。

 但し智頭急行の場合は鳥取自動車道の開業と高速バスのレベルアップと言えども、北越急行の「新幹線に通過客を根こそぎ取られる」状況に比べれば未だ楽観できる状況で有ると言えます。高速道路が開通して高速バスがレベルアップしても、今までも高速バスの方が本数・運賃では有利でしたし今後も所要時間の差が縮まる事は有っても逆転する可能性は殆ど無いと言えます。
 その様な状況で有るならば北越急行のように「収益源が断たれた時に地域輸送を維持する為」にと一生懸命利益の全てを内部留保を溜め込む必要性も必ずしも高くは無いと言えます。
では第三セクターの使命の大本に戻って、利益の地域還元と地域の活性化の為にと「2002年4月に通学定期の割引率を55%から72%に初めて引き上げ」を図ってもなかなか効果は出なかったようですし、大河ドラマ「武蔵」でブーム時に智頭急行も色々イベントや1日乗車券等を出したりした様ですが、此れも地域の観光へ大きな貢献は無かったようです。この様に通過客で稼いだ利益を、地域に還元したり活性化に寄与できるようなイベントを打っても、其れに対する効果はなかなか出ないと言う状況に有り、利益の再生産をもたらさないと言う点で利益の投資先として好ましくない結果で有ると言えます。
 この様な事から考えると「智頭急行の取るべき道」として大元は「鳥取自動車道開業や不慮の災害等に備えた内部留保の拡充」と言う今までの基本方針の路線を進めると同時に、利益の一部は配当として株主へ還元すると同時に地域の活性化の為に地域へも(特に観光の活性化が出来れば一番良い)戦略的に投資(もしくは運賃値下げ等の還元)をする事が必要かと思います。ですから今回の智頭急行の2%配当と言うシンボル的配当と言う判断は極めて常識的で理に適った経営判断であり、刀を振り上げた筆頭株主の面子も立てた判断で有ったと思います。


 ☆ 第三セクターへの出資は投資が目的か?それとも地域の恩恵が目的か?

 現在の状況を見れば、成功し第三セクターでは珍しい「高収益企業」になった智頭急行ですが、額面5万円株に3050株出資し33.89%の筆頭株主である鳥取県は「何の為にこの第三セクターへ出資」を行ったのでしょうか?それは「投資」の為なのでしょうか?それとも純粋に「地域の振興の為」なのでしょうか?それによって今回の「配当を求める」と言う鳥取県の行動の是非が分かれると言えます。
 基本的に投資行動の一環として第三セクターに出資しているのであれば、「投資」ですから当然リターンを求めなければなりません。そのリターンを求める方法にも色々ありますが「配当を求める」と言うのは一番穏当なリターン追求の方法であると言えます。
 しかし智頭急行と言う第三セクターへの出資が、「智頭急行という鳥取⇔関西間の高速鉄道網整備」の為であれば、その出資の目的は「利潤の追求」ではなく、国鉄が打ち捨てた智頭線を整備し民間がやらない高速鉄道網整備を地域が主体となった第三セクターに担わせることで鳥取県にとっては非常に重要な「鳥取⇔関西間高速交通網整備」を行うと言うことがメインになり、出資の直接的回収より智頭急行により地域が受けたメリットを(税収等で)間接的に回収すると言う方法で税金投入をペイさせることになるはずです。
 智頭急行への出資に対する鳥取県の姿勢が「投資」目的か?「地域の振興」目的か?このどちらであるかによって、今回の鳥取県の行った智頭急行への「配当要求」と言う行動に対する是非が論じれると言えます。

 これに対し鳥取県の考えが「どちらである」との確証たる証拠は残念ながら存在しませんが、一般的に考えれば「第三セクターへの出資」と言うのは後者の「地域の振興が目的」と言うことになると言えます。
 一般的に考えれば「収益の上がる事業」であれば、民間企業が名乗りを上げて行います。わざわざ公的セクターの出資を求める必要性はありません。「公益性が存在する事業」でありながら「採算性には疑問がある」と言う状況で、「複数の公的組織がうまく責任を分担しながら事業を行う」とか「民間のノウハウを取り入れながら行う」等の理由がある場合に「第三セクター」と言う運営形態が取られることが一般的です。
 但し智頭急行の場合、鳥取・岡山・兵庫3県に渡る事業であるのと同時に、旧国鉄地方交通線の中で工事凍結となった未成線と言う位置付けであり、実際に第三セクター引き受け決定時には補助金として既存の特定地方交通線の半額である15,000,000円/kmの転換交付金を受けている為、公的色の強い第三セクターでなければならないと言う事情があったと推察します。

 このような点から考えれば智頭急行は「地域輸送と鳥取⇔関西間の地域間輸送の為に地元が作った第三セクター」と言うのが設立の目的であると言えます。本来地域輸送をするだけの鉄道として生まれてきたなら「 億単位の赤字を出す第三セクター 」となっても不思議でない路線であったと言えます。それが偶々陰陽連絡に取り絶好の位置にあった為、高速化投資が行われ陰陽直結鉄道としてきわめて収益性の高い鉄道となっただけと言えます。
 果たして鳥取県はここまで読んで「利益が上がる第三セクターになる」と考えて智頭急行に出資したのでしょうか?私は違うと思います。結果論として「高速化投資で陰陽連絡を主眼に置くことで、鳥取県の高速交通網の核となる地域に貢献する鉄道と高収益を上げる第三セクターが偶々作られた」と言うのが実情であると思います。
 そう考えると確かに「利益を上げる事」は良い事ですし、「黒字であれば株主に還元すべきだ」と言う片山鳥取県知事の主張もまさしくその通りであると思います。第三セクターであれども「公共性を重視しながら採算を追求した経営」を行うのは当然の義務であると言えますし、鳥取県の財政状況は地方交付税等も削減され「1円でも収入が有る所からは取りたい」と言う切羽詰った状況にあることは理解できます。それだけを見ると今回の配当を求める動きは「きわめて正論」に見えてきます。

 しかし本当に100%正しいのでしょうか?片山知事は「三セク経営者が、国や地方団体の出資分を補助金と間違えるケースが多い。黒字なら投資者に還元すべきだ」(6/8 共同通信 )と言っていますが、第三セクターとは「すべて黒字になることを想定して作られた会社」なのでしょうか?もしそれならば公的セクターの出資など要りません。採算性に問題がないのだから民間の企業が名乗りを上げるでしょうし、民間に任せれば良いだけの話です。
 ただ実際問題として智頭急行のような利益の上がる第三セクターはほんの一握りしかありません。しかし赤字であれども地域の生活基盤等の確保の為に必要な第三セクターもこの世に存在します。他の大部分の地方鉄道系第三セクターなどまさしくこの例に該当します。「公共性の観点から官が手と口と金を出す事が必要」でありながら「複数の関係者で責任を分担すると同時に民間のノウハウも入れることも必要」な場合、第三セクターを設立と言うことになりますし、その場合は公共性を考えて端から赤字覚悟の場合も多々ありますから、その様な組織への出資は「補助金」と同義語になります。
 しかしその様な事も世の中には存在するのです。智頭急行は「良い方に転じた例外」と言う事ができます。これをもって「黒字なら投資者に配当を」と軽々しく言うべきではないと思います。利益処分金が無駄に使われるのであれば徹底的に指弾しなければなりませんが、智頭急行の場合02年4月通学定期の割引率を55%から72%に初めて引き上げ「地元への利益還元」に乗り出すなど、利益を地域に還元する動きを積極的に行っています。このような動きも評価するべきです。
 もともとが「地域の恩恵」を目的に作った鉄道なのですから、鳥取県の片山知事の言う「第三セクターも株式会社なのだから利益が出たら配当をするのが当然」と言う心境もわかりますが、もっと大局から物事を見て利益の再投資が「智頭急行の安定」と「地域への貢献に役立つ」ような使われ方に向かうように、公的セクターの筆頭株主として配慮することも鳥取県には必要なのではないでしょうか?逆のこのような考えが進んで「利益を出さない・配当できない第三セクターは一律に要らない」と言う公共性を無視した考えに突き進んでいくのではないか?と一抹の不安を感じるのは私だけでしょうか?



 * * * * * * * * * * * * * * *


 今回筆頭株主の片山鳥取県知事から第三セクターの智頭急行へ表に出る形で「株主への配当要求」が出た為に、私も興味を引き「智頭急行の配当問題」として取り上げました。
 世の中ではつい半年位前までは「株価を上げろ」「配当を増やせ」と言う考えが趨勢でした。その為に怪しい行為や違法行為を行い逮捕された人まで出てきましたが、幾ら利益が出ていると言えでも第三セクターにまで「配当を出せ」と要求する姿は、投資ファンドなどこの様な世の中に跳梁跋扈する人々の姿と似て見えてきて今回この様な一文を書く事にしました。
 確かに片山鳥取県知事が今回の一連の中で発言した「黒字の時に配当がなく赤字時には追加出資などを求められるのでは、権利がなくて義務だけ背負う世にもまれな株主になってしまう」「三セクとはいえ株式会社。株主に利益を還元するべき」と言う考え方の根本は決して間違いないと言えます。
 只「利益が出たときに分配する」のは良いですが、第三セクターは利益を主体に経営するものですか?利益が出るのなら民間に任せれば良いのでは?利益が出づらく公共性が高いが効率良く民間のノウハウを得て運営したいから第三セクターにしたのでしょう?と言う疑問が私の中に出てきたのも又事実です。

 今まで色々な第三セクターを見たり分析したりしましたが、設立のスキーム・運営の現状・収益の形態等を総合的に勘案すると智頭急行は一番恵まれていると言う事が出来ます。旧公団A・B線の第三セクター化の為殆ど只で長期に渡り手入れの不要のレベルの高いインフラを手に居れ、それを僅か20億円の金額で高速化投資を行い高単価の地域間流動を手に入れ、しかも特急車両を全部自社丸抱えにしてJRからは賃貸料を貰い安定収益源にすると言う極めて優れた経営スキームを作り出し、年間5億円の経常利益をコンスタントに上げると言う智頭急行は「これほど恵まれた状況は無い第三セクター鉄道」と言えるでしょう。経営課題で有る競争相手の鳥取自動車道が全線開通しても経常利益で5割程度の減益になっても、根本的な所で経営の根幹を揺るがすような「大敗」をする事は無いと思います。
 但しこんなに恵まれた第三セクターは「日本広しと言えどもそう沢山存在しない」と言う現実を見なければなりません。智頭急行は「これだけ利益を出している」と言う点で「極めて恵まれた第三セクター」なのです。その第三セクターに「配当をよこせ」と請求をするのは良いのですが、世の中には真面目に経営し公益性の側面で大きく世の中の役に立っていながら収支均等や赤字を出す第三セクターは多数あります。これ等の第三セクターで「公益性の効果<赤字」で有る場合その存在を考えなければいけませんが、「公益性の効果>赤字」であったり収支均等・小額の黒字で有るような第三セクターの場合「配当をよこせ」「配当出さなければ株売るぞ」などと言う圧力は社会的に見て逆効果になりかねません。今回の一連の配当話を見ていて、「地方財政の厳しさ」と言う側面も理解しますが、「第三セクターへの収益性優先が行過ぎて公益性を損ねる可能性」と言う事が発生しないか?と危惧を抱かずには要られませんでした。




※「 TAKAの交通論の部屋 」トップページへ戻る





このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください