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JRで喫煙者が虐げられていいのか?

−近年の鉄道における喫煙車削減の動きとJRの道義的立場について考える−



TAKA  2006年12月27日


    
この禁煙化への流れは止まらないのか? JR東日本E257系あずさ号@立川


 「私は喫煙者である」これは公然の事実であり私は自分が喫煙者であると同時に愛煙者です。そのことは事実なので否定の仕様がありません。その前提で「一愛煙家のぼやき」としてこの一文を書いています。あらかじめそのことに関しましてご承知置きの上読み進めていただければと思っています。

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 ☆ ま え が き

 近年愛煙家にとっては非常に肩身の狭い状況が続いています。平成14年 健康増進法 の施行以来、「多数の人が利用する施設では受動喫煙防止の為に必要な措置を講じなければならない(健康増進法第二十五条)」と言う法規則の下で、分煙化が進められてきており今や仕事中でも席を立ち喫煙スペースに行かないとタバコが吸えない状況になってきておりますし、加えて平成14年に施行された「 千代田区生活環境条例 」で路上喫煙が規制されて以来、各地の自治体で路上喫煙も規制されるようになってきております。
 確かにタバコ自体が健康に対してマイナスの側面を持つ物である事は否定の仕様がない事実であり、受動喫煙が害を知りつつ吸っている人以外の第三者に害を与える問題があるのは事実です。又今までの路上喫煙のマナーの悪さと言う事実に関しても一喫煙者として深く受け止めなければならないと考えております。
 ですから「公共の場所での分煙化・分煙不可能な場所での禁煙化(要は喫煙スペースを作った上での禁煙化促進)」と言う世の流れ自体に関しては致し方ないと思っていますし、健康増進法施行以来鉄道会社でも起きている「受動喫煙防止」と言う「錦の御旗」の下での喫煙スペースの撤去も「過剰である」とは思いつつ「世の趨勢として致し方ない」と諦めていました。
 しかし鉄道業界において、遂に「愛煙家最後の聖域」と言える「有料特急の喫煙車の廃止」と言う動きが遂に本格化してきました。交通機関ではなかなか喫煙と禁煙の物理的区切りを作りづらい飛行機やバスでは全面禁煙化が進んでいましたが、車両毎である程度の単位に仕切れる鉄道では数は少なくなれども大部分の列車に「喫煙車」が作られ、喫煙者の「有料特急の特急料金支払いへの大きな動機」となっていました。その鉄道での喫煙者の最後の砦が今急速に崩されようとしています。

 ☆ 鉄道の有料特急における「全面禁煙化」の動き

 私が知る限り、駅に関しては前述の様に健康増進法施行以来民鉄の駅を中心に喫煙コーナーが撤去されていて、今や民鉄液ではほとんどお目にかかれない状況になっていますが、全面禁煙の列車と言う事になると、個別では成田エクスプレス等色々在りましたが、まず最初に「有料特急全面禁煙化」に踏み切ったのはJR北海道です。JR北海道は平成18年3月ダイヤ改正から「 道内相互発着の全特急列車の禁煙 」を実施しています。
 その先行したJR北海道の動きを見てから動いたのでしょうが、今回JR東日本が平成19年3月のダイヤ改正で「 特急列車全面禁煙 」を打ち出すと同時に、JR東海が「 一部の列車の全面禁煙を含む禁煙車両の増加 」をJR西日本も「 乗車時間がおおむね3時間未満の列車を中心とした全列車禁煙列車の増加 」をJR九州も「 乗車時間がおおむね2時間未満の列車を禁煙へ 」と言う様に各社足並みをそろえて一斉に全面禁煙車両の増加を図っています。
 加えて今回民鉄でも西武鉄道が平成18年10月1日から「 レッドアロー号の全面禁煙 」を始めたのを筆頭に、JRのダイヤ改正にあわせて 東武鉄道小田急電鉄のロマンスカー も全席禁煙化されることになり、一斉に特急列車の禁煙化が進むことになります。
 確かに各社が言っているように「禁煙化は時代の流れ」と言うのは致し方無い事ではあります。実際私もこの年末年始の移動の東海道新幹線のチケットを無謀にも12月15日過ぎに予約しましたが、繁忙期の12月30日・1月2日でも大概の列車は「喫煙グリーン車のみ空席あり」の表示がついていました。たぶん席の売れ方として「禁煙指定席→禁煙グリーン車or喫煙指定席→喫煙グリーン車」と言う順番で、価格と禁煙喫煙で利用者が選択しながら座席を指定したのでしょう。そうであるならば、鉄道会社にとって「喫煙車」は「売りづらい車両」と言う事になり、その結果今回のような「需要の太宗に対応した変更」が行われたと推察します。
 これに関しては私個人の好みとしては「喫煙ブースぐらい残して欲しい(小田急はVSEの喫煙ブースまで閉鎖する・・・)」と言う気持ちはありますが「現実的に需要が無い」と言う結果を見てしまった以上かなり反論には厳しいものがあるといえます。(個人的には「これでロマンスカーに乗る回数は半減する」と言えます。仕事の移動時に「ロマンスカーで一服」は至福の時だったのですが・・・)

 ☆ しかしJR各社の場合「全面禁煙化」は道義的に許されるのか?

 確かに民鉄各社の場合、タバコによる恩恵を何も受けておらず「利用者の方々の嗜好」に合わせて座席の条件を設定することは民間企業として当然のことであると言えます。しかしその同じ論理がJR各社にも通るのでしょうか?これには「愛煙家」として「異議あり!」と言わせていただきます。すなわちそれは「タバコ特別税と旧国鉄債務」の関係があるからです。
 旧国鉄が巨額の債務を抱えJR各社に分割民営化された時に、JR本州3社は一部の国鉄債務を負担しながらそれ以外の大部分を国鉄清算事業団に背負わせて民営化しています。国鉄清算事業団は旧国鉄資産の売却等でその債務を返済してきていますが、最終的に返せない債務は「国民負担」と言う事になっています。
 実際その一環として平成十年に「 一般会計における債務の承継等に伴い必要な財源の確保に係る特別措置に関する法律 」が作られ、その法律の中で国鉄清算事業団の債務処理方法として「日本国有鉄道清算事業団の長期借入金に係る債務等を一般会計において承継すること」とその財源としての「郵便貯金特別会計殻一般会計への特別繰入金」「1000本につき82円のタバコ特別税」が明記されています。つまり愛煙家の負担において旧国鉄の債務を返済していくと言うことが明記されているのです。
 今道路特定財源の話が盛り上がっていますが、その「道路特定財源の一般財源化」に比べれば、タバコ税自体は一般財源に算入されるべき物なのでその特別税たるタバコ特別税で一般財源での償還が法で決まった国鉄債務の償還と言うことはそれほど矛盾が有る訳ではありません。実際 タバコ特別税は平成18年度で2237億円の税収 が有り、そのかなりの部分が旧国鉄債務の返済に当てられているのです。このことから考えれば私も20本/日程度はタバコを吸いますから年間で7300本*0.82円=5986円旧国鉄債務の償還に貢献していることになります。
 この私たち愛煙家が「身銭を切って」払っているタバコ特別税により償還されている旧国鉄債務は元を言えばどこから出てきたのでしょうか?旧国鉄の継承法人は国鉄清算事業団であり、分割民営化されたJR各社は基本的に旧国鉄の負った債務に関係は無いと言えどもその債務で作られた資産で現在も営業し収益を上げている以上、法的には継承債務以外には関係なくても道義的には「関係ない!」と断言できるのでしょうか?私はそうとは言えないと思います。

 問題は其れなのにJR各社は競って禁煙化を進めている点です。もし国鉄債務が清算事業団→一般財源に移行されていなければ今頃JRは存在しないか莫大な債務を抱えて危機的状況に陥っていた筈です。今愛煙家はタバコを吸う事で必死になって国鉄債務を返済しているのです。其れなのにJR各社は愛煙家を締め出そうとしているのです。其れならばタバコ特別税の代わりにJRが旧国鉄債務を返済してくれるのでしょうか?それもNOです。JRは自分の肩代わりをしてくれている愛煙家を締め出すという今の構図は正しく「矛盾」していると感じるのは私だけでしょうか?
 確かに世間一般の要望と大多数の利用者で有る禁煙家のニーズに答える事は民間企業であるJRに取っては必要なことです。そのニーズに沿った施策や健康増進法の趣旨に沿った施策として分煙化・喫煙所の整備を行うのであれば、其れは致し方ない事で有ると思います。さすがにJRに世間一般の流れに逆らえとまでは言えません。
 その様な世間の流れが有るのを踏まえながらも、実際問題としてJRの場合はタバコ特別税の極めて特別な背景を考えると大手民鉄のように「簡単に全面禁煙化を推し進める」と言う訳には行かないと思います。せめて利用者のニーズに答えるという側面から禁煙家に快適な環境を提供するのと同じ位、タバコ特別税を通してJRが道義的に引け目を感じるべき旧国鉄債務の償還に貢献している愛煙家に「快適な喫煙空間を確保する」事に努力するべきであると思います。そう思うのは私だけでしょうか?

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 今日本において「タバコを吸う事」自体は合法の事です。「体に害が有る」と言う点では似た物である麻薬等と異なり決して「吸ってはいけない」と法律で規定されている物では有りません。その点は酒と沿う変わらない扱いで有ると言えます。
 まして元々タバコは専売制度で扱われていたほど、国家にしてみれば大切な税収源であり、実際問題現在タバコ税の税収は国・地方・特別税分等を含め23,235億円と言う巨額な金額になり税収の中でそれなりの地位を占めています。又その税収は国・地方を通じて公共の福祉の向上等に使われているのです。それらの点に関しては「事実」で有る以上愛煙家として強く主張して良いと思います。
 しかし今や社会的には愛煙家は「隔離状態」に追い込まれている事は間違い有りません。吸えば冷たい視線で見られ煙たがられます。周りの人に迷惑を掛ける事は道義的に好ましい事では有りませんが、迷惑を掛けない限りはタバコを吸う事は犯罪行為で無く合法的なものなのですから何も恥じ入る事では有りません。けれども人前では隔離されるか恥じ入りながらタバコを吸わなければならないのが残念ながら今の社会の現実です。
 その様な状況の中で、今回タバコ特別税による旧国鉄債務返済で間接的に恩恵を蒙っているJR各社が、その税収をもたらしている愛煙家の数少ない権利で有る喫煙車を取り上げようとしています。この「喫煙車の維持」はまだJRの努力で何とかなる物です。又喫煙車を減らしても「喫煙コーナー設置」等の喫煙者への対応策を取ることが出来るはずです。しかしその様な努力もせず只単純に世の中の流れに流されて全列車禁煙家を勧めようとしています。
 今回この様な鉄道での車内全面禁煙家の流れに対して愛煙家の視点で筆を取ったのですが、世の中の逆らえ切れない流れ自体は理解しているつもりですが、タバコ特別税と旧国鉄債務の問題の視点を絡めて見るとこの様なJR優等列車の全面禁煙化が果たして「誠意の有ること」「道義的に許される事」なのでしょうか?これは愛煙家の愚痴になるのかもしれませんが「JRの流れは好ましい事では無い」言えると思います。
 そう思いまして今回筆を取りました。特にタバコを吸わない人達にはなかなか同意できない内容かとは思いますが、「愛煙家の悲しい叫び」と思い御一読頂ければ幸いに思います。





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