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公共交通でのマナー規制を考える

−鉄道車内の携帯電話使用マナーの有り方について考える−



TAKA  2007年 2月18日



今や公共交通車内で一般的になった携帯電話規制のシール


 「私は仕事では公共交通は使わない」TAKAの交通論の部屋を主宰している私が言うには極めてショッキングな内容では有るが、公共交通に対する今の私の考えの一端を示す言葉である。
 私は仕事上は自営業の(実質的)社主であり同時に営業マンであり現場を統括する立場にある。加えて名刺を3枚持ち副業的な物まで手を出しているから「1人数役」と言う状況に有る。その為仕事で東京都内・多摩地域・神奈川県内を中心に比較的狭い地域を打ち合わせ等で1日3〜6箇所を訪問し距離にして80〜150kmを走り回っている。これは日常移動と見るとかなりの移動量になると思われる。今までは仕事の都合上比較的小田急線・京王線・中央線沿線の新宿を基点とした扇状の範囲に仕事の打ち合わせ先が多かったので、荷物を持っての移動以外は基本的に電車・バスの公共交通を利用してきた。経費の精算で交通費が4〜5万円/月有る事を考えるとかなり公共交通を利用してきた事は間違いない。
 確かに東京圏で移動が多い場合、車で移動すると渋滞に巻き込まれ特に長距離移動の場合電車を利用しないと定時性が担保できず、待ち合わせ・アポ等に遅れたりして問題が発生する事が多い。又会社の経営上も昨今のガソリン高騰によりコスト的にも車移動は負担が大きい(私のレガシィツーリングワゴンGTだと「ハイオク満タン」で大体週2回給油が必要)それらの事をあわせてトータルで考えると色々な意味で電車・バスの公共交通での移動が一番好ましい事になる。
 しかしその様なメリットが有れども、公共交通を使う事は大きなマイナスが有ると此の頃感じてきた。その為特に本年に入ると殆ど車利用での移動になってしまい、電車を利用する事が急速に減ってきた。何故だろうか?其れは「公共交通に課せられた規制」特に「携帯電話の通話」に関する規制が原因となっている。


 ☆ 何故「車内での携帯電話禁止」が公共交通から離れる要因になったのか?

 では何故「車内での携帯電話禁止」が公共交通から車へ移行させる要因となるのだろうか?それは私の場合「携帯電話で通話できない」と言う制約が引き起こす「ビジネス機会の喪失」と言う深刻な問題が有るからである。
 今や携帯電話はビジネスマンだけ出なく日本国民全員の必需品と言うまで普及している。その為「携帯電話を持たないビジネスマン」と言う人は想像できない状況になっている。その為私が社会人になった当初の約10年前は「事務所を出てしまえば出先で捕まるか此方から連絡しないと連絡が着かない」と言う状況であり電車の中は「睡眠不足解消の場所」として「座席が空いていれば座って寝ていた」と言う状況だったが、今や携帯電話の普及でビジネスマンは「何処でも携帯電話で連絡が着き」「何処でも気の休まる場所は無い」と言う状況になってしまった。
 実際私も平日は携帯電話に大体約20件/日の着信と約30件/日の発信が有る状況であり、その殆ど大部分が仕事関係の電話でありその殆ど全部が仕事の依頼・手配・クレーム等の電話で疎かにはできない電話で有ると言えます。この様な状況は頻度の差は有れども社会で仕事をしている人で外出が多い人の大部分に当てはまるのではないかと考えます。
 私の場合それらの電話は大概が8時〜19時と言う社会全体が活動している時間帯に掛かって来ます。その為プライベート時間を電話で侵される事は比較的少ないですが、昼間の時間には場所も状況も容赦なく電話が襲い掛かってきます。其れは電車に乗っている時も例外では有りません。

 そこで大問題が発生します。電車の中では筆頭に掲げて有るようなシールが張ってあり原則携帯メールは出来ても通話をする事が出来ません。その為ルールを完全に守ると掛かって来た電話に電車の中では全く対応できなくなります。これが打ち合わせの時等だと着信で相手を見て緊急が予想できる場合先方に断わりを入れて席等を立ち最低限の話だけをする事は可能ですが、電車の中では何も仕事の事をしていないのにルールに縛られて電話に出る事がで来ません。その為「白い目で見られることを覚悟」して相手に伝わる程度の声で電話に出るか電車を降りて通話するかの選択を迫られる事になります。実際東京の場合数分毎に駅に止まるので電車から飛び降りて折り返し通話する事になります。おかげで1日何回電車を飛び降りるか?実際かなりの時間的ロスをする事になります。
 それに対して自動車も「運転中に手に保持しての携帯電話使用は禁止」ですが、「 ハンズフリー装置を併用している携帯電話は交通の危険を生じさせなければ合法 」と言う「逃げ道」が確保されており、私も実際に携帯電話にハンズフリーをつけて使用している為、電車と異なり実質的に制約を受けずに着信を取る事が出来て発信する場合もチョット車を停めて発信だけして通話は運転しながら可能な為、殆どロス無く携帯電話の通話をする事が可能です。
 その為私の場合「車による渋滞ロス+コストアップ」と「電車での携帯電話が通話できないロス」を比較検討した上で「機会損失まで考えると通話できないロスの方が大きい」と言う結論に達し、夜の飲み会が有る日を除いて原則として車を利用するようにして、殆ど公共交通を利用しなくなっています。
 私の場合「日常的に仕事で車が使える」環境下に有る事が大きいですが、「携帯電話のために電車から車に乗り換えた」と言うのは確かに世間一般から見ると「かなり過激な対応」をしたと感じるかもしれませんが、仕事で仕事中に電車を使い移動する人達は大なり小なり似た気持ちになった事は有るのではないでしょうか?


 ☆ 何故「車内での携帯電話禁止」は決められたのか?

 では何故「車内での携帯電話禁止」が決められたのでしょうか?関東の民鉄各社では筆頭のマークを定め「優先席周辺では電源OFF・それ以外ではマナーモード,通話禁止(メールは可)と言う」統一ルールを定めていますが、それは「携帯電話の発する電磁波がペースメーカー等の危機に悪影響を与える」と言う明白な理由が有るにせよ(飛行機内の携帯禁止も飛行機の機器に悪影響を与えると言う理由が有る)それ以上に実際は「電車内での着信音・話し声が五月蝿い」と言う意見が大きかった事が携帯電話のルール制定の背景として有ると言えます。
 確かに「人命」に関わる部分、ペースメーカーの人への配慮としての優先席周辺での電源OFFは当然であると言う事ができます(しかしそれ以上にペースメーカを持つ人の人命を危機に陥れる機械を世の中に氾濫させている事自体が問題である)。しかし何故それ以外の全電車の中で通話を禁止されなければならないのでしょうか?確かに車内で明らかに目立つレベルの大声で通話をする事は迷惑で有るのは分かります。しかし現在のルールでは「小声で通話=×」「大声で会話=○」と言う事になっています。この2つの間には何処に差が有るのでしょうか?それについては説明が有りません。
 その様な良く考えれば「矛盾」とも取れる内容でルールが設定されている事から考えると、携帯電話のルール設定に関して「先ず始めに携帯通話禁止が有りき」と言う事が有り、通話以上に多くの人が電車内でしている「メールはOK」にする事でガス抜きをした上で世間・世論の声高に主張された意見に配慮して「通話全面禁止」にしたと考えられます。
 少なくとも裏読みをして考えると、今色々な点でマナーに関して言われていますが実際問題として目立つ「携帯電話」が槍玉に挙げられたのでは無いか?と思います。少なくとも実際的迷惑度で変わらないのに会話と通話で差が付いている事から、この様な裏読みをされても否定できない物は有ると言えます。


 ☆ 規制ばかりしていたら利用者は公共交通から逃げ出すのでは?

 私自身の個人的意見としては、携帯電話のマナーに関しては「優先席付近は禁止」その他普通席では「マナーモード・通話は着信のみで回りに迷惑にならない程度に小声で短時間・メール等はOK」「全車内で会話も迷惑にならないように」と言うルールでよかったと思います。携帯電話だけ槍玉に挙げずに全体的に「マナー向上」を訴える形にすればよかったと思います。
 又もう一歩進めて言えば、長編成運行している会社ではラッシュ時を除いて車両毎に「電源OFF」「通話禁止・会話自粛・車内放送なし(サイレンス・カー)」「着信・会話OK」と言う様に有る程度細分化させて、希望するサービスを提供できる体制を作る事が必要で有ると言えます。女性専用車・弱冷房車等が有るのですから携帯電話に関しても有る程度の利用形態の細分化で利用者が望むサービスを提供すると言う事が、実現可能な理想的方策で有ると言えます。

 確かに鉄道会社は携帯電話の規制に関して「より大きな声の意見に対応する」と言う方策を取った事は間違いないと言えます。鉄道会社としては「お客様の意見に応える」と言う事は必要ですし、当然有る制約の中で「多数意見に対応する」と言う事は大量輸送機関の宿命として致し方ない事で有ると言えます。
 しかし大量輸送機関と言う「大義名分」に安住して努力をしないで「声なき声」に対応しないと言うことは、比較的少数かもしれませんが「声なき声」の乗客に車等の他の交通機関に逸走されてしまう可能性が有るという事が無視できない問題になる可能性も有ります。実際私も「止むに止まれず」自動車に逸走してしまいました。幾ら「地球温暖化のために車をやめて公共交通機関を」と言われても現実は「将来の問題より明日の糧」と言うのが実情です。私の場合車に乗る事で携帯電話で通話が出来てビジネスチャンスを得られるのなら「将来の地球温暖化より明日の仕事の受注」の方が大切です。実際は携帯の通話を理由に電車から車に一掃した人は少ないかもしれませんが有り得ない話では有りません。
 実際幾ら「地球温暖化の為・道路混雑緩和の為車を降りて公共交通を利用しましょう」と言っても、実際の人々はサービスが劣る場合なかなか転移はしてくれません。実際は鉄道は大量輸送機関で有る以上特に大都市圏の鉄道はなかなか個のサービス要望に応える事は難しいと言えます。しかしそう言うだけで問題は解消しません。
 地球温暖化・Co2削減等を訴えかけて公共交通に誘導するのは良いですが、それ以上に必要な事は「サービスを向上させて人を惹き付けること」です。これからの少子高齢化が進む時代では放って置けば自然に公共交通機関の利用客が減って行く時代です。その時代を勝ち抜くには「可能な事であれば個の希望をかなえる努力をする」ことでありその手法は「利用者が望むサービスを選択肢として複数提供する」と言う事であると言えます。
 携帯電話の問題に関して言えば、首都圏で見れば殆どの鉄道が4両編成以上の複数車両編成で運行している以上、複数の環境の設定を提供する事は比較的容易に可能で有ると思います。可能で有るならばニーズを調べニーズが有るなら対応すべきです。その様な努力をする事が「公共交通の利用促進」に貢献する事は間違い有りません。





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