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SuicaとPASMOの"evolution"を考える


−PASMO誕生とSuica&PASMOの相互利用化が与える影響は?−


TAKA  2007年04月01日



関東の交通機関の相互利用カードとなったSuica&PASMO


※本記事は「 TAKAの交通論の部屋 」「 交通総合フォーラム 」のシェアコンテンツとさせて頂きます。

 近年鉄道業界では磁気カードによる「共通カード」が一般化しており、首都圏でもJR東日本の「イオカード」・関東の民鉄の「パスネット」・関東のバス会社の「バスカード」が一般的に普及しており、回数券を駆逐して「この3枚のカードを持てば首都圏の交通機関は全て使える」と言う共通カードネットワークが既に構築されていて、高い利便性を提供しています。
 今そのネットワークがSONYの非接触型ICカード技術「 Felica 」の規格・技術を利用したICカード技術を用いて昇華しようとしています。2001年11月に交通事業者で初めてJR東日本がプリペイドICカード「Suica」を導入し2004年3月から電子マネー機能も付加する事でJR東日本利用客を中心にICカードが徐々に普及してきましたが、遂に首都圏でICカードをより一層普及させる「第二の起爆剤」が点火されることに成りました。それが本年3月18日の関東の民鉄・バス会社の共通ICカード「PASMO」の導入と「PASMO」のJR東日本ICカードである「Suica」との相互利用開始です。
 今日本では急速にICカードの普及が進み、前払い型のSONYの「Edy」(2690万枚)・JR東日本の「Suica」(電子マネー対応1533万枚)、後払い型のNTTドコモの「iD」(195万枚)・JCBの「QUICPay」(115万枚)等々のICカードが普及してきており、これに関西限定の交通系ICカードであるJR西日本の「ICOCA」(276万枚)・関西民鉄の「PiTaPa」(60万枚)を加えると、僅か数年で主要ICカードで4869万枚日本人の約3分の1強がICカードを保有するまでにICカード市場は成長しています。
 その中で交通機関を利用する事で「毎日使われる」ICカードで有るSuicaは有力ICカードとして基盤を築いてきましたが、その基盤が「首都圏の公共交通機関が1枚のカードで利用可能」となる事で首都圏と言う地域限定では有りますが、ICカード利用の基盤が極めて拡大・強化される事に成ります。
 これは当然公共交通事業者(特にJR東日本と大手民鉄各社)に取っては大きなメリットの有ることですが、それだけではなく我々利用者にとっても大きなメリットと変化の有ることであり、これで「新しい世界が構築される」と言っても過言ではありません。今回はPASMO導入で世間からも注目を集めている首都圏のICカードネットワークがもたらした物について、利用者の立場を踏まえつつ鉄道事業者の立場を中心にその効果を考えて見たいと思います。

 参考HP: PASMO HP・JR東日本 Suica HP
 参考文献:週刊エコノミスト4/3号「電子マネ−本当の勝者」

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 ☆ Suica&PASMOが引き起こした"evolution"とは?

 先ずSuica&PASMOの導入・相互利用化による変化は、先ず第一に「ICカード1枚持てば切符を買う必要が無くなった」と言う点です。首都圏では既に3月18日のPASMO導入でJR・大手民鉄のほぼ全路線がSuica&PASMO両方に対応可能になっていますしバス会社でも順次導入が進んでおり多くの会社で利用可能になっております。これによりSuica&PASMOを持っていてカードに残額があればわざわざ切符を買うことも無く運賃額を気にすることなく「カードリーダーにカードをかざすだけ」で公共交通機関を利用出来る事になった事です。
 今までは磁気カード等で「切符を買わずに利用する事」自体は可能でしたが、JR東日本・大手民鉄・バス会社で3つのカードが並存していて共用化が果たされていなかった為に3枚のカードを持たないと公共交通全体を網羅する事が出来ず、カードの購入・所持・費用の精算等で手間が掛かっていました。実際定期を持たずカードonlyの私も3枚のカードを持ち使い分けている状況でした。それが今回のSuica&PASMO導入・共用化で解消されました。これが第一の変化で有ると言えます。
 加えてSuica&PASMO両方にキャッシュカード提携による「 オートチャージ 」機能がついた点です。これはSuicaでは2006年10月から有った機能ですが、今回PASMO導入で民鉄各社がアピールして一気に広がりつつある機能です。似たような形でSuicaには「モバイルSuica」が有りましたが、これらの「オートチャージ」機能は前払いプリペイド型ICカードのSuica&PASMOに後払いキャッシュカード機能を付加した物ですが、これにより「財布に現金ゼロ・カード残額ゼロ」でも特殊な事をしなくても公共交通機関を利用したり電子マネーを使う事ができる様になりました。これにより益々「運賃」を気にする事無く公共交通機関を利用出来る事に成ります。


3月18日よりJR・民鉄・バスで一斉に使えるようになったSuica&PASMO

 これらはICカードの導入によりもたらされた「大きな効果」と言う事が出来ます。つまり「ICカード導入で運賃制度を変えずに感覚的な運賃共通化を図ることが出来た」と言う事です。これが公共交通の側面で見るSuica&PASMO導入・共通化の最大の効果・メリットであると言う事ができます。
 日本では公共交通機関成立以後、国営・公営・民営が入り乱れて競い合い公共交通網を構築してきました。その大きなメリットとして都市規模に比例して濃密な公共交通網が構築され現在も維持されていますが、デメリットとして複数の事業主体が入り乱れ個別に運賃体系を構築した事により運賃制度が統一されておらず、複数の交通モードや複数事業者間を乗り継ぐ度に運賃を支払い乗車券を購入し、しかも初乗り運賃を含める別の運賃を取られるという弊害が有りました。
 この複数事業者の存在による運賃制度の弊害は昔から言われていた事であり、その為に複数事業者間を跨いだ ゾーン運賃制 の導入等が主張された事は有りますが、運賃問題は交通事業者の根幹に関わる事であり同時に利害が直接ぶつかり合う物であるが故に(初乗りを運賃を取れない事業者が損する可能性が高い)ゾーン運賃制を導入する事も具体化せず、今までは「 乗継運賃制度 」の拡充等の方策で対応してきました。
 しかし今回のSuica&PASMO導入は、「複数事業者間を跨ぐ事で運賃が割高になる」と言う「根本問題」には手を付ける事が出来ませんでしたが、「切符を複数回買わせない」「乗車時に運賃を意識させない」「直接現金を支出させない」と言うICカードの機能により、実質的に「割高な運賃負担」と言う感覚を利用者に抱かさせないで公共交通を利用させる事が出来る様になりました。
 本来ならば対象範囲が広く事業者数も多く、加えて「公共交通事業者」と言えども利潤追求が至上命題の民営事業者が複数存在する首都圏で、利用者の利便性向上と公共交通利用促進と言う大義名分が有れども、「ゾーン制」と言う様な根本的な運賃制度の変更は極めて難しいのが現実で有ったと思います。しかしSuica&PASMOの導入は、値下げ・運賃制度変更と言う公共交通事業者の運営の根本に触る事無くICカードと言う「技術革新」で現行運賃制度のデメリットを解消しシームレス化を達成したと言えます。
 これぞ正しくSuica&PASMOが引き起こした"evolution"と言えるでしょう。海外では公的セクターの介入・主導により行われている運賃のシームレス化が、日本では民間事業者の新技術導入と言う"evolution"で達成されたのです。確かに実際SuicaでJR・民鉄・バスを色々と利用してみると確かに「ICカード相互利用化でもシームレス化」は利用者にとり非常に便利な物と言えます。これぞSuica&PASMO導入によりもたらされた進化"evolution"であり、それにより利用者が受けた利便性向上は大きい物が有ると言えます。

 ☆ これでSuicaはICカード普及競争で先頭に立ったか?

 その様に利用者に極めて大きな利便性を提供したPASMOの供用開始とSuicaとの相互乗りれ開始ですが、其れは利用者にメリットの有るだけの話では有りません。当然カード発行者のJR東日本や大手民鉄各社にもメリットの有る話です。続いてはその「事業者のメリット」について見てみたいと思います。
 先ずはSuica陣営の盟主JR東日本にもたらされた物について考えたいと思います。Suicaは01年の供用開始以来定期券・乗車券等で必ず使える使用目的が有ると言う交通系カードのメリットを生かして、確実に普及枚数を増やしてきて、東日本の都市圏限定と言う制約が有る物の全国区のSONYのEdyに次ぐ普及枚数第二位の地位を確実にしています。
 加えてモバイルスイカや電子マネー機能の付与など、利便性の向上や交通に留まらない機能の取り込み等で多機能化を積極的に進めており、イオングループ・ファミリーマート・ビックカメラ等異業種との提携を積極的に進め、今やJR東日本の関連事業展開ツールの切り札と化しています。

   
SuicaでJR東日本のVIeWカードと駅ナカは大きな収益源として囲い込めるか?

 今やJR東日本は副業を積極的に進め、JR化後20年間で鉄道事業と物販・不動産等の関連事業が完全に「二本足で立つ」と言う旧国鉄では考えられない状況となっています。実際 97年の連結売上 は「運輸1兆9040億円:物販3638億円:その他3055億円」に対し 03年度連結売上 は「運輸1兆8004億円:駅スペース活用事業3690億円:ショッピングオフィス事業1703億円:その他事業2260億円」 06年度連結売上 「運輸1兆8054億円:駅スペース活用事業3839億円:ショッピングオフィス事業1905億円:その他事業2126億円」と言う様にJR化後20年間でJR東日本の関連事業は確実に強化され大手民鉄に近いレベルまで成長しています。
 その関連事業強化の重要なツールが駅ナカ(不動産事業・流通事業)とカードで有ったのは明らかです。近年JR東日本は「 駅ナカ店舗開発 」に力を入れていますが、この開発の相乗効果は大きい物が有ると言えます。駅ナカは東京で商業出店地としてはピカイチの立地ですし此処はJR独占の立地です。しかも交通利用者がメインに使うと言う事で利用者を囲い込む事が出来て、しかも需要者の大部分がJR東日本のSuicaを持ちSuica電子マネーを使ってくれる又そのSuicaの利便性が上がればオートチャージ・ワンストップサービスと言う点でJR東日本のハウスカードのVIeWカード加入者が増えると言う様に、駅ナカ開発が進めばJR東日本に取り不動産収入・物販収入・電子マネー手数料・カード手数料と言うような収入に跳ね返る事になります。
 この様にSuicaが有機的に結合するJR東日本の副業がその収益で本業の交通事業を支えるほど成長すると同時に、Suicaは「今日本で第二位1533万枚の普及度」と「首都圏の交通機関・駅ナカでは独占的に使えて便利なカード」と言う事で今は交通機関・駅ナカを飛び出して街ナカ店舗でも使われだしています。この様な「Suicaの外部拡大」はJR東日本に取り「関連事業での連結外からの収益確保」と言う点で大きな意味を持ちます。又其れには一般の人々に普及している決済手段としてのSuicaは重要な意味を持つ事に成ります。
 その点でも今回のSuica&PASMOの相互利用化開始は電子マネーICカードの普及と取り扱い店舗(特に民鉄系)の増加と言う点でSuicaの基盤が広がる事になります。今ICカード業界では全国区のEdyが頭一つリードしてますが、首都圏だけを見ればPASMOとの相互利用化での基盤拡大でSuicaがEdy追撃をするの地盤を確保した事になります。今電子マネー業界では各電子マネー間での 決済端末共用化 を実施しようとしてます。その時強豪各ICカード間では「加盟店での端末普及度」と言うネックが無くなり「営業力勝負」となります。Suicaの場合東日本限定の営業範囲と言う足枷が「電子マネー読取機の相互乗り入れ・共用化」で無くなるのに対し、交通での運賃決済等サービスはSuica&PASMO独占となり極めて有利な販促ツールとなります。その時Suicaは今まで発行した1533万枚の発行枚数と公共交通での利用と言う基盤の上に一層の発展が可能になり、Edyを抜く可能性が出てきます。
 この様な点から見れば、近い将来SuicaはICカード業界の盟主となる可能性も有ると言えます。JR東日本は今回のSuica&PASMO相互利用化でそのための大きなチャンスを手に入れたと言う事が出来ます。

 ☆ 大手民鉄各社はPASMOでやっとJR東日本の背中が見えてきたか?

 その様に早い時期でのICカードSuicaの導入によりICカード業界の先頭を突っ走っているJR東日本ですが、JR東日本が91年のイオカード・01年のSuica導入と先頭を切ってカードシステムを導入してきたのに対し、大手民鉄は「共用化」と言うネックが有ることもあり磁気カードのパスネット導入が2000年・ICカードのPASMO導入が2007年とJR東日本から見ると「2周位周回遅れ」と言う状況にあり、大手民鉄はJR東日本から見れば「完全にカード戦略で出遅れた」と言う事が出来ます。
 その大手民鉄の「周回遅れ」を巻き返す方策がSuicaとの相互利用化とPASMOが前面に押し出す「大手民鉄ハウスカード付与によるオートチャージ機能」であると言えます。例えば大手民鉄の中では JAL小田急カード の様に「ハウスカード付PASMOで鉄道利用でポイント付与、しかもJALのマイレージポイントに交換可能」と言うICカード+ポイント付クレジットカードと言う機能を前面に出し差別化を図るなどの作戦で、Suica追い上げを図っています。

   
大手民鉄各社はPASMOでやっとハウスカード&駅ナカ戦略を充実させられるか?

 今まで「副業」と言う側面では、旧国鉄時代に副業が制約されていたJR各社に比べると大手民鉄各社の方が進んで居たと言うのが実情です。しかしバブル崩壊後大手民鉄がバブルの後始末等で事業のリストラクチャリングに苦心している間にJR東日本がその財力と「駅ナカ」「Suica」と言うツールを武器に副業の活性化を進め、今やJR東日本の関連事業は「関東大手民鉄が束になっても敵わない」レベルにまで成長してしまっています。
 実際今や副業の肝となる「駅ナカ」「カード」と言う物に関して言えば、大手民鉄の方が先輩で有った事は言うまでも有りません。駅ナカといえば(改札の外ですが)ターミナル百貨店が有り、クレジットカードも大手民鉄では昔から発行されています。しかし大手民鉄はその副業を重点的に展開するヒンターランドは自社沿線に限られ必然的に範囲が狭かったが故に在京大手民鉄の関連事業の展開は限定的となり、沿線の首都圏全域を含む東日本全域に副業を展開できしかも新技術のICカードSuicaを持つJR東日本に抜かれて仕舞っているのが実情で有ると言えます。
 その「はるか先を進むJR東日本」に何とか迫る為の武器がPASMOで有ると言えます。PASMOもSuicaと乗車券だけでなく電子マネーも相互利用化した事で今までJR東日本が築いてきた土俵に乗ることが出来ます。と言う事はSuicaを経由し将来的にSuica・Edy・iD・QUICPayが構築する供用決済端末を活用する事が出来ます。つまりPASMOは自社の大手民鉄ネットワークをSuicaに開放する事で全国ネットのICカードネットワークへのアクセスを確保した事になります。
 これにより関東大手民鉄もPASMOの商品力による顧客囲い込みが重要になりますが、これは完全に企業努力の世界の話になります。其れは如何にしてPASMOに付与するハウスカードを充実させてハウスカード付PASMOに加入させるかが重要になります。その為関東大手民鉄各社ではポイント付与等あの手この手でハウスカード付PASMOの充実を図っていますが、このハウスカード付PASMOの活躍がSuicaを始めとした先行電子マネーに対抗して「ICカード・電子マネーを商売にする」為に顧客囲い込みのツールとして必要になります。
 加えて京成・京王を除く大手民鉄6社(小田急・東急・西武・東武・京急・メトロ)と東京都交通局は㈱PASMOと「 PASMO電子マネーの加盟店募集・管理業務に関する電子マネー事業契約 」を結び、PASMO電子マネー事業者(アクワイアラ)として電子マネー事業にも関与して行く事になります。この契約により(当然ですが)加盟鉄道事業者は手数料収入が入ることなり、関連事業・加盟店舗を自社経由でPASMO電子マネーネットワークに加盟させることでも新たな収入を得る事となり、ここでも新たな有望な収入源を確保する事となります。此れもPASMO付ハウスカードとそのポイント制度で顧客を囲い込むのと同時に事業者もPASMO電子マネーシステムで囲い込む事になり、これは今後鉄道事業者のグループ戦略にとって非常に重要な事になると言えます。
 つまり大手民鉄各社は先行の電子マネー機能付交通系ICカードであるSuica(1355万枚)・ICOCA(276万枚)・PiTaPa(60万枚)に対抗するツールをPASMOネットワークをSuicaに開放し電子マネー・乗車券の相互乗り入れを果たす事で達成し、Suica追撃のスタートラインに立ったことになります。後は自社の顧客と加盟店網をカード戦略と加盟店獲得戦略で如何に囲い込むかと同時にPASMOを武器に新しい顧客を引き込みハウスカード付PASMOに誘導し新規顧客として根付かせ自社獲得のPASMO電子マネー加盟店網で決済・購買をさせるかです。PASMO陣営の関東と大手民鉄はやっとその新しいハウスカード&電子マネービジネスのスタートラインに立ったと言えます。

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 今回PASMOの運用開始とSuicaとPASMOの相互利用化で交通系ICカードで世界最大のネットワークが構築されることになりましたが、この世界最大のネットワークは今まで見て来た様に利用者・JR・大手民鉄各社の3者に取り、交通系ICカード乗車券として利便性が高いと同時に電子マネーとして色々な可能性を秘めたツールで有ると言えます。
 その事は利用者も分かっているようで、PASMO導入後僅か4日間でPASMOの発行枚数は100万枚を越えPiTaPaを越し3月23日の段階で119万枚を発行しQUICPayの115万枚をも越してSuica&PASMOで2000万枚を越すまでに成長しています。( JR東日本プレスリリース より)
 ましてプレスリリースを見る限り今の段階では「SuicaとPASMOの食い合い」と言う状況ではなく、PASMOの分は純増でしかもSuicaも3月18日以降20万枚発行枚数が増加し1日当たりの発行枚数が倍増するなど、どちらもWin・Winの状況となっています。これはSuica&PASMOの共用化と言う相互開放が大きく影響していると言えます。その点では今回の取組は大成功で有ったということが出来ます。
 しかも交通系ICカードに並ぶもう一つの目玉である「電子マネー機能」はその 決済回数が50万件/日を越え Suica&PASMO相互利用化以降急拡大してます。この電子マネー機能は交通系ICカード相互利用化によるシームレス化の達成だけでなく、決際回数増加によるカード事業者への各種収入の増大(=副業収入の増大)と言う形で公共交通事業者(特にJR東日本)に大きな利益をもたらし、その収益が連結決算の中を廻り回って公共交通維持・投資への下支えをするという効果も期待できるという状況になる可能性も有ると言え、正しくSuica&PASMOの交通系ICカードと電子マネーが「今後の鉄道会社経営を大きく左右する」可能性を生み出していると言えます。

 確かに一部で指摘されているSuica&PASMO相互利用化による運賃面での矛盾発生とその解消の為の利便性低下も発生しているのも又事実です。なるべくならばその様な利便性低下は避けなければなりませんがその様な問題はあくまで「ミクロの側面」の問題です。その「ミクロの問題」は複数事業者間で運賃を弄らずシステムだけで相互利用化を図ったが故に出てきた矛盾であり、その矛盾解消の為に運賃制度根本を弄ればこんなに早く「Suica&PASMO相互利用による運賃支払の実質的シームレス化」は達成できなかったと考えます。ですからその様な「ミクロの問題」に関しては個々の事例に対応する形で相応しい改善策を考えて行くしかないと言えます。
 「ミクロの問題」に関して放置せよとは言いませんが、このシステムはその様な一部の利便性低下を帳消しにして余りある「マクロの側面での可能性」を持っている事は間違いない事ですし、そのマクロ側面での可能性は鉄道会社の経営を大きく変える物であるのと同時に、「決済」と言う我々の経済活動の根本で我々の生活をも変える物であると言えます。
 産業界で銀行が圧倒的影響力を持っているのは銀行が産業界の中で「融資と決済」の役割を果たしているからであると言えます。つまり「融資と決済」の機能を持つ物は経済活動において極めて大きい影響力を持つということです。今回PASMOの登場とSuica&PASMOの共用化では鉄道会社が一般個人に対し「電子マネーによる決済機能」と「オートチャージによる融資識能」を提供する事になります。この影響力は鉄道会社・私たち利用者両方に大きく及ぼすと言えます。
 その利便性の大きさと言うメリットを受けながら「交通系ICカード&電子マネー&カード機能」と言う個人の「融資と決済」機能を持つと同時に日本最大級の規模のICカード&電子マネー相互利用ネットワ−クを持つ事になったJR東日本と関東民鉄各社が今後どの様に事業を展開し成長して行くのか?その結果我々にどのようなメリットが有るのか?今後ともSuica&PASMOの行方を興味深く見て行きたいと思います。




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