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急速に”現代化”が進む中国国鉄の現状とは?
−「海外技術導入」による高速列車運転が示す中国国鉄の今後−
TAKA 2007年05月01日
「世界有数の鉄道大国」と言える中国国鉄ですが、90年代の改革開放の進展と期を合わせ近年急速に”現代化”が進んでいます。
元々発展途上国で有った中国では旅客・貨物とも国内輸送の根幹を鉄道輸送が担っていました。近年広大な国土での航空の整備・高速道路整備によるバス輸送拡大等での旅客の逸走、高速道路の発展・黄河や長江を軸にした国内水路の整備等により道路輸送・水運の発展による貨物輸送の逸走が原因となり、今や中国国鉄に対する競争相手が旅客・貨物両方で増加しており、「親方五星紅旗」の国営企業である中国国鉄(中国鉄道部)も安閑とはしていられなくなりました。
その90年代からの中国国鉄近代化の流れの中で、本年大きな転機を迎える事となりました。それは本年4月18日に行われた「第六次大提速」(大規模ダイヤ改正)による高速化の進展です。此処で中国国鉄に取り「革命的」と言える転換が行われました。つまり「長距離電車運転」の導入と「大幅な外国技術」の導入による旅客運転高速化が行われ、今までの中国全土津図浦々までを結ぶ長距離輸送主体の旅客輸送から高速鉄道の威力の発揮できる中距離輸送主体に輸送形態の転換を図った点です。
その象徴が日本から導入され今回の第六次大提速で登場した「CRH2型」です。日本の新幹線E2型1000番台を改良した車両を川崎重工と南車四方機車車両股有限公司の合作にて製作した車両が今回の第六次大提速で高速列車「和諧号」の主力として登場し、日本の新幹線が遂に中国大陸を走ることになりました。
今回はその中国国鉄の”現代化”の新しい第一歩と言える「第六次大提速」とCRH型高速電車導入が示した、”現代化”の行き着く先の中国国鉄の将来の姿について考えて見たいと思います。
「参考サイト」 ・中国情報局 「
全国鉄路第六次提速
」 「
和諧号
(調和号)」 「
鉄道高速化:「和諧号」が「はやて」のごとく出発進行
」
「
技術導入の高速鉄道車両、広州−深セン間でも運行
」 「
CRH、京広線の許昌−安陽区間で試運転
」
「
メディアが伝える新幹線ベース和諧号の「光と影」
」 「
北京−天津間快速列車は08年7月開通へ
」
・北京週報 「
中国の第6回鉄道高速化
」
・川崎重工HP 「
中国・在来線高速化向け鉄道車両を受注
」
・
中国鉄道研究
「
CRH2で行く1泊2日杭州・西湖の旅
」 ・
中国鉄道倶楽部
「
第6次ダイヤ改正
」
・
中国東北地方の交通網
「
中国、一大高速鉄道時代へ
」
・日通総合研究所論集「
中国における鉄道輸送サービスに関する一考察
(陳麗梅 著)」
・
国土交通省総合政策局国際企画室
「
主要国運輸事情報告書
中国
」
「参考文献」 ・鉄道車両と技術 NO125(レール アンド テック出版)より 「中国鉄道高速化への道のり :楊 中平 著(北京交通大学電気工程学院助教授)」
※主に下記で掲載している3つの表は上記参考文献掲載の物を引用・参考させていただいております。
* * * * * * * * * * * * * * *
☆”第六次大提速”と近年の中国国鉄のダイヤ改正の歴史
●中国国鉄の”現代化”の歴史
先ずは今回の「第六次大提速」の内容を検討する前に、今までの中国国鉄の発展と”現代化”の歴史について考えて見たいと思います。
元々中国大陸に鉄道が最初に出来たのは1876年の呉淞鉄道(上海〜呉淞間14.5km)でしたが、呉淞鉄道は英国により建設された鉄道であり清朝〜民国時代は鉄道建設は列強の利権として外国資本で建設された鉄道が大部分を占める(その象徴が南満州鉄道(満鉄)である)状況に有り、中国の鉄道は外国の管理下で運営されていると言う「半植民地」状況下に有りました。
その状況が解消され鉄道が中国人民の手の元に戻るのは、(中ソ友好同盟相互援助条約の秘密条項の例外を除く)香港・マカオ以外の外国利権が全て排除された1949年の中華人民共和国建国後になります。
中華人民共和国建国後は鉄道は「重要産業」と言う認識のもとで国有化され積極的に鉄道建設が進められます。1949年の中華人民共和国建国当時には総延長21,810kmの中国の鉄道ですが、積極的な鉄道建設の結果1978年には倍近い約43,000kmにまで鉄道延長が増加します。
新生中国の国家建設期に当る1950〜1970年代前半は路線拡充と言う量の面での拡充が中心で電化・高速化に関しては進展が乏しい状況に有りました。しかし中国経済は毛沢東的思想と其れを利用した文化大革命の弊害により技術革新が滞りディーゼルの採用こそ進む物の電化・高速化は殆ど行われない状況で推移する事になります。
その状況が変化するのは1975年の「周恩来の遺言」とも言える「四つ(農業・工業・国防・科学技術)の現代化」が提唱され、その後1976年の毛沢等死去と1978年から「四つの現代化」を具現化する所謂「鄧小平の改革開放路線」が提唱され実施に移されるようになってからです。
1980年代に入ると新線建設も相変わらず積極的に行われますが、改革開放路線のおかげで海外技術を導入できるようになり中国の鉄道技術は大幅な進化を遂げる様になります。元々1961年宝鶏−鳳州間電化から中国国鉄の電化は始まりますが当初は中ソ蜜月時代に導入したソ連技術とそのコピーで対応し「韶山1型」「韶山3型」等の機関車を登場させますが、世界水準の技術からは懸け離れておりその技術のギャップを80年代の改革開放の時代にフランスから
8K型
・日本から
6K型
等を導入し、その成果を国産にフィードバックさせ94年には高速運転可能で安定した電気機関車「
韶山8型
」を開発し今に至る高速化への道筋を付ける事になります。
実際1949年には複線距離866km・電化距離0kmで有った中国国鉄も、2000年には19,000km超・12,000km超にまで増加しており、改革開放路線の成功による「海外技術導入」と「経済発展による電化・複線化進展」と言う基盤の元に、中国の92年の鄧小平の南巡講話以降経済成長が加速し高度成長路線に入るとその基盤の上に立ち特に旅客輸送の高速化が進展する事になります。
●近年の中国国鉄の「高速化ダイヤ改正」の歴史
その様に新中国建国以来の路線新設と改革開放以降の電化・複線化進展及び海外技術の国産へのフィードバックと言う技術とインフラの蓄積の効果を生かす形で、中国国鉄は高速化の道を歩む事になります。
直接的に中国国鉄を高速化に歩みださせた原動力は、1994年にデビューした運転最高速度170km/hの「
韶山8型(SS8)
」電気機関車と1995年にデビューした運転最高速度160km/hの「
東風11型(DF11)
」ディーゼル機関車が有る程度数が揃うと同時に、経済成長の進展に伴い長距離では航空が中近距離では高速道路&高速バスが競争相手となり鉄道も高速化で対応しなければならなくなり、その結果1997年の第一次大提速以降複数回に渡り積極的に高速化を進めることとなります。
(近年の中国国鉄ダイヤ改正)回 年月日 区間 スピードアップ概要 第1回 1997.4.1 京滬線・京広線・京哈線 等主要幹線 140km/h運転実施 第2回 1998.10.1 京滬線・京広線・京哈線 等主要幹線 200km/h運転実施(広深鉄道)・140km/h運転1454kmで160km/h運転445kmで実施 第3回 2000.10.21 隴海線・蘭新線 等の中西部幹線 沿海部〜中西部間所要時間短縮・140km/h運転4658kmで160km/h運転1104kmで可能に 第4回 2001.10.21 京九線南部・哈大線・滬杭線 等 140km/h運転可能延長が9779kmに増加 第5回 2004.4.18 京滬線・京広線・京哈線 等主要幹線 都市間ノンストップ列車(Z直快)38往復運行・140km/h運転可能延長7700km 第6回 2007.4.18 京滬線・京広線・滬杭線等全国幹線 200km/hCRH型電車運行・120km/h5000t貨物列車運行
1997年の第一次大提速以降現在まで上記の表の様に計6回の「(高速化を主眼とした)大規模ダイヤ改正」が行われますが、この6回のダイヤ改正の中で「大幅に変ったダイヤ改正」は、今までは殆ど速度向上が無かった長期停滞時代を打破した97年の第一次大提速、160km/h運転で高サービスで運転の都市間ノンストップ列車のZ直快登場と言うサービス面で大幅な進化が有った2004年の第五次大提速、200km/hoverの電車が運転開始され「中距離都市間輸送」時代とCRHシリーズの登場で「高速電車輸送時代」が到来した2007年の第六次大提速の3回のダイヤ改正が、「大きなターニングポイント」と言う事が出来ます。
この6回のダイヤ改正で中国国鉄の旅客輸送は大幅に改善・進化しました。建国以来1990年代前半までは中国国鉄では緑色の塗装が特徴の
22型
・
25型
と言う客車での長距離夜行列車が主体で、広大な中国全土各地から北京・上海へ長編成の長距離列車が1日に1本or2日に1本と言う頻度で運行され全国レベルでの輸送が行われていました。
しかし97年以降の複数回のダイヤ改正で、元々は広深鉄道による広東〜深セン〜香港間等の限られた区間にしか無かった短中距離都市間輸送にメスが入り、「
城際特快
」と言う名の(日本で言うL特急に近い)中距離都市間列車が登場すると同時に、長距離列車でも夜行列車の競争力の有る所要時間12時間程度の区間に「
Z直快
」と言う高級直通夜行列車を投入し、鉄道の競争力を最大限発揮できる区間を大幅に強化しています。
中国国鉄のダイヤ改正の中の歴史を日本の国鉄の歴史で近い物を探してみると、丁度戦後復興期から高度成長期の1950年代後半〜1960年代前半の時代と合致します。特に北京オリンピック直前で北京〜上海間高速新線が視野に入りつつる状況で行われた中国国鉄第5回・第6回大提速は、日本国鉄で言えば東京オリンピック・東海道新幹線が視野に入りつつ其れまでの期間を支えるべく行われ、151系電車特急登場・20系寝台列車登場・全国特急列車網完成・東海道新幹線着工と言う事業の集大成である
サン・ロク・トウ
(昭和36年10月1日)のダイヤ改正と似た時代環境・背景に有ると言えます。
要は中国国鉄は今回の第六次大提速で「高速車両投入・在来線の近代的輸送基盤整備・近代的サービス提供」と言う点で、丁度日本国鉄のサン・ロク・トオのダイヤ改正と同じ様に「次の高速鉄道時代へのステップを踏んだ」と言う事が出来、このダイヤ改正の成功が中国国鉄に取り「高速鉄道輸送」と言う日本・欧州では一般的に成っている”現代化”鉄道への切符を手に入れたということが出来ます。
☆「CRH型高速電車」導入で中国国鉄は遂に”現代化”の入り口に立ったか!?
●今回導入の「CRH型高速電車」の概要
さてその様に数次のダイヤ改正で大幅なレベル向上を果たした中国国鉄ですが、今回の第六次大提速ではその中でも技術的に革新的な事が含まれて居ます。それが海外技術導入により作られた動力分散型の高速電車「CRH型」が「城際特快」に投入されたと言う事です。
今まで夜行でも昼行でも長編成の客車列車で輸送を行うと言う形態がメインだった中国国鉄で、「電車が投入される」と言う事は中国国鉄のレベルで見ると極めて革新的な事であると言えます。丁度日本で言えば
1950年代の80系湘南電車〜151系特急電車と言う電車列車の登場
と言う技術革新が行われたのと同じ状況に有ると比較することが出来ると思います。
その様な「電車技術」では未だ入口に立っただけと言える中国国鉄は、今から約50年前に国鉄80系(昭和25年)→国鉄151系(昭和33年)という技術革新を自力で成し遂げた日本と異なり、電車製造特に高速運転可能な電車製造の技術が無い状況に対し海外技術を導入する事で「買う事で時間と技術を得る」方策を取り、ボンバルディア・川崎重工・シーメンス・アルストムと言う世界の大規模車両メーカーから技術を導入して第六次大提速用のCRH型車両を製造しました。
(CRH型を含む中国の高速列車車両の概要)型式 原開発者 原型車両 編成 購入編成数 最高速度 備考 CRH1 ボンバルディア Regina 5M3T 20編成 200km/h 広深鉄道で運行開始 CRH2 川崎重工 E2-1000 4M4T 60編成 200km/h 今後M車増加で300km/h運転可。第六次大提速の主役 CRH3 シーメンス ICE3 不明 60編成 300km/h 2008年7月開業予定の北京〜天津間高速新線に投入? CRH5 アルストム ETR600 5M3T 60編成 200km/h アルストム受注の車両だがTGVではなく買収先のフィアット車両を使用 中華之星 中国国産 新規開発 EL+9T+EL 1編成? 270km/h 瀋陽〜山海関間で暫定営業運転中 長白山 中国国産 新規開発 6M3T 試運転中 210km/h 2004年完成後未だに試運転中?
基本的に今回中国が導入したCRH型高速電車は「在来線高速用」と言う目的の為、最高速度が200km/h〜250km/hと言うレベルであり世界基準で言えば残念ながら一流とは言えないレベルで有ります。実際川崎重工が絡んだCRH2はJR東日本E2型1000番台がモデルですが、スペック的にはダウンスペックをしており「似て異なる物」と成っております。又2008年部分開業予定の北京〜天津間高速鉄道用にシーメンスのICE3をモデルにしたCRH3を導入すると言われていますが、CRH3は未だに登場しておらず今登場しているCRHシリーズは在来線高速化のスペックとして十分なレベルに留まっています。
基本的にCRHシリーズは導入当初の数編成は原開発者メーカーで製作していますが、大部分はノックダウン生産→現地生産と言う形で中国の提携メーカーが生産の主役を担う形になり、この海外モデル車両の中国国内生産を行う事で今中国国内で開発が進みながら停滞している「中華之星」「長白山」等の中国独自開発の高速車両開発にとってもプラスになる事は間違いないでしょう。
今回のダイヤ改正では高速化を海外車両が担う事になりましたが、中国では将来的に在来線でも今回の第六次大提速のコンセプトである高速・高頻度運転に関しては日本のL特急が拡大していったのと同じ様に区間・本数の拡大等が行われていく事は間違いありません。その時その中核を担う車両は経済的側面や拡大のスピードを考えると中国国産と言う事になると思います。その時に備えて今回のCRHシリーズはリバースエンジニアリングやノウハウのコピーのネタとして重要で有ると言えますし、最先端でないダウンスペックされたレベルの技術であれば積極的に転移させる事で将来のより高い技術を売る時の営業的にも有利になり、加えて将来より高い技術導入のための中国の技術的基盤を築く事になります。そういう意味で中国鉄道界・世界の車両メーカーにとっても今回のCRHシリーズは重要なステップになると言えます。
●中国国鉄”現代化”の行き着く先?「客運専線計画」とは?
この様に海外技術を導入したCRH型電車による高速化を果たした第六次大提速ですが、これは中国国鉄に取り「完成形」と言える物では有りません。欧州・日本等の鉄道先進国の趨勢は「国土に高速鉄道網を築く」と言う事です。欧州・日本では一般的である250km/h〜300km/h運転可能な高速鉄道網を築く事こそ中国の鉄道に取っては先進国の欧州・日本に追いつく”現代化”に必要なことになります。
その”現代化”の道程として中国政府鉄道部・中国国鉄が打ち出したのが「中長期鉄道ネットワーク計画」です。この計画は普通の中国の経済計画の根本の5年(これは計画経済下の「5カ年計画」の周期が今でも生きている為)を大幅に超える2020年を期限とした長期計画で、2005年の「第十次五カ年計画」完成時には「鉄道線路総延長75,000km(内複線25,000km、電化20,000km)」と言う中国国鉄の路線を、この計画の完成時に鉄道営業キロ100,000km・内電化距離50,000kmに拡大し全国津々浦々に行き渡る鉄道網が完成する事になっていますが、その長期計画でメインとなる計画が合計12,000kmにわたる「客運専線(旅客輸送専用線)」建設の計画です。
(中国高速鉄道路線(客運専線)計画の概要)路 線 名 区 間 距 離 最高速度 備 考 京滬専線(南北ルート) 北京〜天津〜徐州〜上海 1300km 300km/h(将来は350km/h可能) 07年着工・10年完成予定 京広専線(南北ルート) 北京〜鄭州〜武漢〜広州 2230km 200km/h以上 08年12月完成予定 京哈専線(南北ルート) 北京〜瀋陽〜長春〜ハルピン 1860km 200km/h以上 瀋陽〜大連間370km含む 未着工・完成未定 杭甬深専線(南北ルート) 杭州〜寧波〜深セン 1600km 200km/h以上 計画のみ 未着工・完成未定 青太専線(東西ルート) 青島〜済南〜太原 770km 200km/h以上 計画のみ 未着工・完成未定 徐蘭専線(東西ルート) 徐州〜鄭州〜蘭州 1400km 200km/h以上 計画のみ 未着工・完成未定 寧漢蓉専線(東西ルート) 南京〜武漢〜成都 1900km 200km/h以上 計画のみ 未着工・完成未定
要は中国の「客運専線」計画は日本の「
全国新幹線鉄道整備法
」に基づく整備新幹線計画の中国版と言う事になります。この計画では前々から建設の話が登っていた「北京〜上海間高速新線」を含めた計画であり、この鉄道網が完成すると「2000kmの距離範囲なら夕方発翌朝着(所要時間約12時間)・4000kmの距離なら1日で目的地到着(所要時間約24時間)」と言うレベルで中国各都市を結べる事となります。
この目標からするとこの「客運専線」では表定速度160km/h〜170km/hで運行されると言うことになりますしその距離から考えて夜行列車の運行も考慮に入れる事になり、200km/h以上の運転速度と言う事はレベル的には「高速新幹線」と言うよりは「既存路線の線増」と言う意味合いが強いと言う事になります。
しかしこの高速新線網が完成すれば、北京基準で見れば2000km華東・華中・東三省の全域と湖南省長沙まで西域地域で西安を越え甘粛省蘭州までが所要時間約12時間の夜行列車有効範囲に入り、1日の行程での到着範囲も新疆ウイグル自治区・チベット自治区を除く大部分の地域が入る事になり、中国の大部分が日着圏に入る事になり所要時間が大幅に短縮され中国の国家的にも大きな意味を持つ事になります。
この高速鉄道網が完成すると中国の人口の大部分をカバーする四川省〜甘粛省以東の東三省・華北・華東・華南・華中の大部分に高速鉄道網が行き渡る事になります。中国は国土も広いですが此れだけの高速鉄道網が15年後に完成する事になると、国土の大都市のカバー率を見ると13年後の日本の
整備新幹線の整備状況
と比較してもネットワーク・大都市のカバー率を見ても遜色の無い高速鉄道網が出来上がる事になります。
この様な高速鉄道の大規模ネットワークが完成し、輸送力が逼迫する事が確実な南北ルートの京滬線・京広線や東三省の大動脈京哈線や
チャイナランドブリッジ
をになう隴海線と言うボトルネックに成り得る大動脈のバイパスルートが高速鉄道で完成し、これにより中国国土のかなりの部分に高速旅客鉄道と在来のローカル&貨物輸送鉄道の2ルートが完成し、欧州・日本並みの高速旅客鉄道網とアメリカ並みの貨物鉄道網が出来上がりしかも貨物鉄道も電化が進んでいると言う極めて現代的な鉄道網が出来上がります。
つまり2020年の「客運専線」完成による高速鉄道ネットワークが完成すると、中国に日本や欧州に匹敵する現代的な鉄道が完成し悲願ともいえる中国国鉄の”現代化”が達成される事になります。ですから「客運専線」計画の前座・序章と言える今回の第六次大提速とCRH型高速電車導入は中国国鉄”現代化”への重要な序章と言う事になります。後はソフト面・車両に関して海外より導入した技術を上手く中国独自の物と融合させ中国独自の技術を確立させる事が中国鉄道の”現代化”のキーポイントになります。その点でも一度「海外の高速車両を用い在来線で高速化のステップを踏む」と言う今回の第六次大提速の成功は中国国鉄の”現代化”にとって重要なステップになる事は間違いないといえます。
* * * * * * * * * * * * * * *
この記事を執筆しているGW前半は本来台湾旅行に行く予定でした。台湾旅行はチケットまで取りながら所用で直前にボツになりましたが、やはり「台湾まで新幹線を見に行こう」と言う気にさせるほど、正直言って「新幹線が海外を走る」と言う事は鉄道に興味の有る人間にとって非常に関心の有る事で有ると思います。
まして私は大学時代の91年〜95年と言う時期に大学のゼミの専攻で「中国政治経済論」を勉強し、その後も継続的にウォッチを続けており95年・04年〜06年と中国を訪問している私にしてみると「中国大陸の鉄道に新幹線が走る」と言う事に対して、特別の感情を抱く事は否定できません。私が大学で勉強していた90年代前半は92年の鄧小平の「南巡講話」により中国が高度成長路線に乗り爆発的な経済成長が始まった時期です。その時代からウオッチしている人間から見ると今の中国の成長は簡単に信じられる物では有りませんが、同時に「中国の鉄道に新幹線が走る」程に中国の鉄道が進化すると言う事は「信じられない」と言う心境です。
しかし中国は爆発的な経済成長を梃子にして周恩来の提唱した「四つの現代化」を達成し「中国の国民経済を世界の前列に立たせる」と言う周恩来の悲願を実現しようとしています。その国民経済の発展が運輸インフラで有る鉄道の点でも良い影響を及ぼし中国国鉄も急速に”現代化”を達成しようとしています。
その現代化の成果が鉄道の面でも現れてきているのは大きな点であると言えます。中国でエネルギー消費が比較的効率的でしかも比較的環境に優しい鉄道が”現代化”を達成し中国の運輸・物流の前面に出る事は環境問題にて影響の受ける日本にとってもプラスの事で有ると言えます。まして日本と中国は経済的にも結びつきが非常に強くなり一衣帯水の関係と言えます。その中で日本にとり環境面でもプラスの有る中国国鉄の”現代化”に関しては日本も積極的に協力していくべきであると思います。その日中間の協力の象徴に今回導入された「中国大陸を走る新幹線型車両」が成る事を願って止みません。
○「参考資料」中国鉄道地図
※上記地図は「
中国まるごと百科事典
」様からダウンロード・転載してます。メールで「ダウンロードした地図は、自由に利用頂けます」とのお言葉を頂いておりますが、著作権等諸権利は左記のサイト様が保有している事を明記します。
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