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首都高速道路の距離別料金体系導入について考える

−導入の是非・料金体系の有り方についての私見−


TAKA  2007年10月01日



今やETCと各種割引が一般化している首都高速。今後の料金体系は如何なるか?


※本文は「 交通総合フォーラム 」「 TAKAの交通論の部屋 」のシェアコンテンツです。

 いつも仕事で東京・神奈川を中心とする首都圏を走り回っている私ですが、基本的に仕事での移動の場合60:40の比率で自動車を利用しています。私の場合営業主体で廻る事が多いのに加えてやはり「駅から遠い場所への移動・荷物を持った移動・お客様を乗せて移動する」と言う事が有る場合、必然的に自動車利用が多くなります。
 そうなると大体1日当り東京都心・多摩地域・神奈川県を中心に3〜4箇所を廻り、1日当りの走行距離が100km〜200kmになるので、必然的に高速道路を多用する事になります。その場合動き回る地域から首都高速・中央高速(高井戸〜八王子間)・東名高速(東京〜厚木間)の利用が高速道路利用の利用の太宗を占めています。
 しかしながら高速利用の90%以上が会社での利用で有りその費用の経費処理の問題上、今まで頑なに「何時もニコニコ現金払い」で車にETCを付けて来ませんでした。しかし会社内での処理のコンセンサスが固まり3ヶ月ほど前やっとETCを付けて利用する様になりました。仕事の関係上夜間・長距離の利用が殆ど無い為「ETCを付けても効果がない」と思って居ましたが、首都高速でETCによる「 時間帯割引 」「 距離別割引 」等の割引が有り、ETC採用に伴う高速道路各社の柔軟な料金体系の中で「一番幅広く割引をしている」とも言える首都高速の料金割引の効果を十二分に受けて居ます。感覚的にはETCを付けてからの3ヶ月でETC設置に関して投資した金額の半分近くを回収した感じです。

 この様な「ETCの恩恵」を思わず受けている身なので、つい数ヶ月前までは高速料金に関しては「TimeIsMoney」の一言で惜しみなく高速を使いながら、色々な人から「ETCの薦め」を受けても動かない程鈍感でしたが、今やETCでの各種割引のメリットには敏感になっている私ですので、高速道路の料金に関しては色々関心を持って居ます。
 その中で今回「 交通総合フォーラム 」でエル・アルコン様が「 都市高速「大幅値上げ案」の公表 」と言う一文を書かれた事に刺激され、前にも交通総合フォーラムで首都高速の距離別料金について議論した内容を思いだし、此の頃関心は持っている物の未だ高速道路の料金について詳しくない私ですが、「高速道路の一利用者」として今回首都高速及び阪神高速で採用される「距離別料金体系」について、(阪神高速に関しては詳しくないので)首都高速の新料金体系について私なりの考えを書いて見たいと思います。

 ☆首都高距離別料金体系に関しての私のコメント 「 首都高の「対距離制」新料金体系の提示について考える 」「 首都高「対距離制料金体系」導入とドライバーの動き方について 」( 交通総合フォーラム
 ☆首都高新料金体系に関しての首都高速発表資料 「 首都高距離別料金案内HP 」「 距離別料金に関する懇談会からの提言及び意見募集の開始について (プレスリリース)」「 距離別料金の意見募集案について


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 ★ 今回の首都高導入の距離別料金体系の概要

 先ずは今回の考察の前提となる「首都高速の距離別料金の案」に関しては上記のリンク先の「 距離別料金の意見募集案について 」にその内容は出て居ますが、概要を掻い摘んで要約すると下記の通りとなります。(詳細は意見募集案をご覧下さい)
「首都高速距離別料金体系の概要」
●今の車種区分を元に同一起終点・同一料金の原則、最短距離で料金計算を行い、距離に応じて料金を計算する。
●現行の3料金圏(東京・神奈川・埼玉)は残した上で、上限・下限料金を設け(東京-400〜1200円・神奈川-400〜1100円・埼玉-300〜550円)料金を計算。長距離では料金は合算。
●料金に関しては「距離別料金(円)=210(円)+31(円/km)×利用距離(km)」で算出。その上24捨25入で計算し50円単位とする。単純計算では18km以上利用で値上げになる。
●東京線「10km未満=値下げ・10-19km=同じ・19km以上=値上げ」神奈川線「7km未満=値下げ・7-16km=同じ・16km以上=値上げ」埼玉線「4km未満=値下げ・4-10km=同じ・10km以上=値上げ」となる。
●現在実施しているお得意様割引・環境ロードプライシング割引・障害者割引・特定料金等は継続する方向で進める。
●加えて高速自動車国道との連続利用割引・複数料金圏を連続利用する場合の割引・利用路線による料金差の設定・利用時間帯による料金差の設定を検討する。
●ETC未搭載車については,上限料金の適用を避けるためETCパーソナルカード発行によるETC普及促進・電子マネー及び無線システム使用による補完システムを検討する。
 要は基本料金210円に距離加算31(円/km)×利用距離(km)を掛けて料金を計算し、その原則に対し今までの東京・神奈川・埼玉の料金ゾーンは残しつつ、下限・上限料金を設定して距離別料金を採用する事による激変を緩和する対策をすると言うのが、今回の料金体系改変の概要であると言えます。
 今回の案も原則的には昨年出てきた「 首都高速道路における対距離料金制のイメージ 」とは大筋では変わって居ません。その事及びこの案で意見を募集した事から考えて、首都高速道路会社はこの案を元にして「距離別料金体系」を導入しようとしている事は間違い無いと言えます。

 又首都高速道路会社としては、今年12月に「首都高速会社最大のプロジェクト」である中央環状新宿線の建設工事に関して北半分の高松〜西新宿間が完成して首都高速路線の内4号線・5号線・川口線・6号線・7号線・湾岸線が中央環状線で結ばれ、東京をパスする通過交通のかなりの部分が中央環状線経由に切り替わる目処が立ったが故に、此処で距離別料金体系を導入して中央環状線をパスして行く通過交通に関しては「上限料金に近い金額」を徴収する事で増収を図り、通過交通が中央環状線を経由する事で空く都心部路線には距離別料金体系で値段を下げる事で短区間客を引き込み、これにより2重の意味で増収を図る事を目的としていると言えます。
 又この様な料金体系を取る事で増収を目指すと言う必要性は、「首都高速道路会社が独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構へ支払うリース料」との関係があると言えます。実際現在の供用路線の事業費約4.6兆円+建設中路線約2.4兆円=約7兆円の事業費をリース料として首都高速道路会社は払わなければなりません。その為建設費の高い中央環状新宿線が開業するとそれに比例してリース料負担が大幅に重くなる事になり、平成18年には約2024億円/年のリース料が平成22年には約2417億円/年・平成32年には約1000億円増えて約3090億円/年に増加します。と言う事はそれに比例して増収を図らなければ経営は成り立たない事になります。
 実際問題首都高速道路会社の 償還計画 によると、料金水準の前提として「東京線の料金は800円」と明記されており、現況が700円でしかも平成14年12月25日の中央環状王子線供用時には値上げを見送っている以上、大元の「リース料」と言う存在が有る以上、どのような形であれ「増収を目指した料金体系変更」が必要で有ったと言えます。それが今回「距離別料金体系」として出てきたのではないかと推測する事が出来ます。


 ★ 今回の距離別料金体系で問題と思われる点は?

 今回の「距離別料金体系」に関して、私自身は総論としては「距離別料金体系導入」に関しては賛成です。実際問題私も長距離利用時には均一料金の恩恵を受けて居ますが、同時に今まではETCが付いて居ない事も有り「高井戸→永福・初台・新宿」間でどれだけ短距離利用の損出を蒙ってきたか分かりません。今でこそETCにより「実際に現金が出ていく痛み」を感じない上に「ETC特定料金区間・平日「距離別割引」社会実験」の恩恵を受けているので、昔ほど短距離利用の不合理を感じませんが、根本的な所では矛盾が解消されている訳では有りません。そう考えると技術の進歩で可能になった「距離別料金体系」導入に関しては、基本的に賛成と言えます。
 この距離別料金体系に関して、前述の様にエル・アルコン様が「 都市高速「大幅値上げ案」の公表 」で阪神高速を主体に、距離別料金体系の問題点について述べられていますので、其れを踏まえつつ、私は首都高速しか利用した事無いので(大阪では車に乗った事が無い)、重なる点が有るとは思いますが、私は首都高速道路会社の「距離別料金体系案」を元にその抱えている問題点を考えたいと思います。

 では首都高速道路会社の「距離別料金体系案」にはどの様な問題点が有るのでしょうか?上記の様に纏めて見た概要を読んだ上での私の感じた「距離別料金体系案」の問題点について、以下で考えて見たいと思います。
 尚私は基本的にエル・アルコン様が「 都市高速「大幅値上げ案」の公表 」で述べられている問題点に関しては基本的に同意見です。先にエル・アルコン様が問題点について述べられているので、私は補足的に成ってしまいますが、それ以外の点について触れたいと思います。
「首都高速距離別料金体系の問題点」
①現行の3料金圏(東京・神奈川・埼玉)を残した事で、料金形態が分かり辛くなっていると同時に「料金圏の端同士での利用」等の場合割高になる。
②下限・上限料金設定でバランスを取る為に「今の均一料金と同一料金の区間」を幅広く設定した結果「距離別料金体系に依る値下げ」の恩恵が限定的になった。
③現行の「普通・大型」の車種料金の2区分だけにしてしまった為、道路破損を引き起こしメンテに負担の掛かる超大型車の料金が割安になった。
④都心環状線のバイパスである中央環状新宿線が完全開通する前に近距離優遇料金体系を導入すると、バイパス効果が限定的な3号線・4号線で混雑激化の可能性がある。
 要は「距離別料金体系」その物にはと言うよりかもETCを使った「距離別料金体系案」を純粋に行っていれば避けられた矛盾が悪い方向に出ている事が、問題点として上げる事が出来ると思います。折角新しい料金体系を導入する以上「距離別料金体系」に忠実な料金体系を作った方が、分かりやすくて良かったのでは無いか?と言えます。
 実際に計算した場合、単純に距離別料金体系を導入すると首都高速で(最短経路で)一番距離がある2点間は並木(横浜横須賀道路金沢支線接続)⇔さいたま見沼間85kmで今の料金で1,700円になります。それに対し単純に(料金圏を考えずに)距離別料金体系の計算式を当てはめると「210+31円*85km=2,845円」になります。こうなると現行からは1,000円以上の値上がりになりますが、実を言うと今回の意見募集案でのこの区間の料金も2,850円と殆ど変わりません。此処から考えれば「上限価格の設定は複数料金圏の「多重の基本料金分」を削除しているだけで有り、複数料金圏をまたぐ場合「上限価格のメリット」はそんなに有りません。先ず此処に問題が有ると言えます。
 又「距離別料金体系に依る値下げ」の恩恵が限定的になってしまったと言う問題も有ります。本来なら中央値である18.2km(東京線の場合)以下で有れば値下げされるはずが、実際は下限運賃制に寄り「10km以下でないと値下げされない」状態になってしまって居ます。これも問題です。加えて車種毎の区分けも現行制度を継承してしまった為に、大型トラックと普通車での不平等感が解消されて居ません。これも又問題であると言えます。
 折角今回新料金体系を導入する以上、エル・アルコン様の上げられた様な問題や此処で上げた様な問題などの「問題点」は早急に解消した上で距離別料金体系を導入すべきであると言えます。以下に置いてその問題点を解消した上での「望ましい新料金体系の有り方」について考えて見たいと思います。


 ★ では首都高速は「何時」「どの様な」料金体系を導入すべきなのか?

 では上記の様な問題を解決しての「距離別料金体系」は何時・どのような形で導入すれば良いのでしょうか?最後にその点について考えて見たいと思います。

 先ず時期に関しては、今の「平成20年度導入」に関しては「再検討」の余地有りだと思って居ます。具体的には平成20年度から1年遅らせて平成21年度の「中央環状新宿線4号線〜3号線区間」の完成まで待つべきであると思います。
 確かに「平成20年度」と言う事は平成19年度(平成19年12月の予定)には「中央環状新宿線5号線〜4号線」の区間が開業します。其処から「平成20年度導入」と言う事はその開業後に焦点を合わせていると言う事で間違い無いと言えます。実際当初の日本高速道路保有・債務返済機構への償還計画では「平成14年12月25日の中央環状王子線供用後に料金を700円→800円に値上げ」が前提になって居ましたがその値上げは今の段階では先送りされています。その様な値上げの先送りに加えて、これから巨額の建設費の掛かった中央環状新宿線の建設費がリース料として圧し掛かってきます。そのリース料増加対策と言う事も有り今や首都高速会社は「料金体系変更待ったなし」と言う状況に追いこまれて居ます。
 しかし首都高速道路会社が新料金体系案で「距離別料金への移行により,利用形態が変わります。」「短距離帯は利用者増・中距離帯は短距離へシフト」と言ってますので、近距離に有利な新料金体系導入に依り都心区間等で近距離利用客が増加する可能性が非常に高いと言えます。そうなると今でも混雑の激しい首都高の混雑が一層酷くなる事は明らかなので、その為にはバイパスとなる「中央環状新宿線の開業」が必要になります。しかし平成20年では中央環状新宿線は南半分が完成していないので、中央環状王子線の部分開業で都心へ向けた通過流動が流れ込み負荷の高まった5号線と同じ状況が4号線でも現れる可能性が高まりますし、3号線も近距離流動が入ってくると今でも谷町で5万〜6万台/日の流動がある今の状況に負荷がプラスアルファされる可能性が有ります。(参考資料: 2006年度平日平均の交通流量
 その様な事から考えると、やはり今回の料金改定は「中央環状線をパスして行く通過交通に関しては「上限料金に近い金額」を徴収する事で増収を図り、通過交通が中央環状線を経由する事で空く都心部路線には距離別料金体系で値段を下げる事で短区間客を引き込む」と言う効果が有る以上、通過流動のスムーズな通過と近距離流動の為に通過流動を迂回させる為にも中央環状新宿線の開業が必要である事は言うまでも有りません。その事からも平成20年度に予定されている距離別料金体系導入に関しては、中央環状新宿線が全線完成する平成21年度まで1年間スライドさせる必要が有ると言えます。

 続いて導入すべき「距離別料金体系」に関しても、総論・骨格に関しては現況で良いと思いますが、部分修正を刷る必要が有ると言えます。その上記の問題点の①〜③の修正になると言えます。その為には「料金圏の廃止」「完全同一料率での料率計算」「車種区分の細分化」と言う点で、今の提案制度を修正する必要があると言えます。
 少なくとも問題点の所でも触れましたが、距離別料金体系下での複数料金圏は分かり辛くなるだけであると言えます。しかもターミナルチャージが二重・三重徴収される事で「上限価格制」は「ターミナルチャージのダブりの除去」でしか意味を成して居らず、特に東京〜神奈川・埼玉と言う2料金圏や3料金圏を跨ぐ場合、単純距離別料金体系より割高になっています。確かに「利用率の差と償還の難易度から別の料率を設定していた」と言う歴史は有りますが、今回はどの料金圏でも210(円)+31(円/km)×利用距離(km)で料率設定をする以上、料金圏を分ける意味は「料金を沢山取る」と言う意味以上の物は有りません。実際料金圏を分ける事で2料金圏・3料金圏をまたぐ場合、今よりも値上げになり加えて料金圏撤廃単純計算に比べても割高になる例も多々有ります。首都高の提示案では「複数料金圏を連続利用する場合の割引」として乗り継ぎ割引を設定すると言って居ますが、其れならば料金圏を撤廃してしまった方が分かりやすいと言えます。
 又距離別料金体系のメリットを生かすために「下限料金」は廃止すべきです。少なくとも「距離別料金体系導入」で近距離客を増やすのであれば基本料金210円から倍近い上乗せになり、今の特定料金300円よりかも33%値上げになる下限価格制は、近距離の利用の意思をそぐ事になります。近距離客は「耐えれば下道でも直ぐ着く」と言う環境から、価格・混雑には敏感で有ると言えます。その様な客を増やすには値下げ効果を高める事が必要で有り、その為には下限料金制度を撤廃するのが好ましいと言えます。
 その上で上限価格に関しては、料金圏を跨ぐ客には「料金圏廃止」による実質値下げで対応出来ますし、値上げになる客で特に大きな金額を払う客には「一定比率を割引する」と言う様な割引を掛ければ長距離利用客に対する一定のフォローになると言えます。他の各種割引も作るのですから、「基本料金は一つで後は割引でフォローする」と言う料金体系を作り上げた方が、一般の利用者には分かりやすい料金体系になると言えます。
 其れに加えて、今では免許制度も今までの「小型・大型」の2分類から今年から「小型・中型・大型」の3分類に変更されたのですから、料金制度もこれに合わせた3分類に変更して、今の「大型は小型の2倍」と言う制度から「中型は2倍料金マイナスα・大型は2倍料金プラスα」と言う料金に変更して、道路負荷に応じた料金体系に変えるべきです。料金の中には管理費として道路メンテの費用も入っているのですから、その分は貨物が社会的に担う役割に考慮しつつ「負荷に応じた負担」に変更すべきであると言えます。
 今回の「距離別料金体系」はETCを使用した料金体系で有る事が原則となっていますから、ETCのメリットを最大限に生かすべきでしょう。ETCのメリットは「現金を払わずスムーズに料金所を通過できる」と言う点だけでは有りません。多くのデータのやり取りが出来る事で柔軟な価格設定が出来る点です。実際首都高速は今でも名目的には均一料金設定でも実際は「ETCを用いた各種割引」で均一料金は形骸化しています。これはETCのメリットを生かした「お客様の為になる施策」です。この良い所は距離別料金体系を導入しても生かすべきであると言えます。この様な点は今の提示の案に「修正」を加える事に寄り、「利用者にも距離別料金体系で平等と恩恵をもたらしつつ、利便性向上に依り利用車が増えてそれで首都高速会社も増収を図れる」ような料金体系を作る事が、皆に取り良い制度で有ると言えます。


 ★ 結論に変えての私の雑感

 今回首都高速の距離別料金体系について今回は自分の私見を中心に述べて見ましたが、基本的には「距離別料金体系」の採用には条件付賛成です。やはり今の均一料金体系では現金で支払うと「高井戸→永福2km」と「高井戸→新井宿間40km」が同一料金であると言うのは如何見ても可笑しい料金体系であると言えます。
 実際問題今までの「料金所での現金収受」である場合、スペースに余裕の無い場所に作られた自動車道である首都高速では入り口と出口両方に料金所を作る事が困難で有るため、「入り口で均一料金を払う」「料金区分ゾーンは最低限の都道府県単位」と言う今のやり方は有る意味致し方ないしそれなりの合理性があると言えます。
 しかし今は時代が変わり基本的に何処でも料金を収受できるETCが採用されている為、別に料金所を出口に設けなくてもETCのゲートを設ければ簡単に料金収受が可能です。実際高井戸での首都高→中央高速の乗り替えでは、流れに乗った80km/h〜100km/hの走行でも難なく料金収受が行われて居ます。しかも ETCが約1900万台も普及 している状況では、このインフラを使用しない手は有りません。まして首都高速での ETC利用率は約75% です。此処まで来ると「ETCは当たり前」と言えるでしょう。そうなるとETCを基本にした距離別料金システムの採用は有る意味当然であると言えます。

 その意味では総論として首都高速の「距離別料金体系」の採用自体は基本的に正しいと言う事が出来ます。しかし問題は「実質的な値上げ」であると言う点です。確かに均一料金体系→距離別料金体系と言う変更を行えば、前述の様に「遠距離では値上げになる」と言う事自体は有る意味当然ですし仕方が有りません。
 けれどもエル・アルコン様が「 都市高速「大幅値上げ案」の公表 」で指摘している様に、「値下げになるはずの短距離で値上げになる事例」が有るのも事実ですし、首都高速もゾーン制を残した事によるターミナルチャージの二重取りと言う問題も有るのは事実です。
 これらの問題点に関しては修正する必要が有る事は間違い無いと言えます。しかし首都高速の料金体系変更の時期としては中央環状新宿線全面開業後の平成21年度以降しか無いと言うのは間違い無いと言えます。この首都高の「劇的変身」の時期しか料金体系の大幅変革のタイミングは無いと言えるでしょう。そのタイミングに合わせて、今上がっている問題に関して修正をした上で導入時期をずらして距離別料金体系を採用すべきであると考えます。
 首都高速はETC採用をしている車に対しては金額の大小が有るにしても 必ず何かしらの割引が行われる料金体系 が採用されて居ます。これは「割引ゼロの条件の方が多い」NEXCO各社の高速に比べると、「利用車が費用を払い付けたETCシステムに恩恵を及ぼす」と言う点で比べられないほど「利用者思い」の料金制度であると言えます。この料金形態を見れば実を言うと「値下げの距離別運賃体系」は既に採用されているのです。その上で今度は「値上げを伴う本採用」と言う事になったので抵抗を引き起こす事になったと言う事が出来ます。
 折角首都高速道路会社は今まで努力して運賃割引をして他社より努力しているのに、今回上手く制度を導入しないと「値上げ」の側面だけが大きく先行する事になってしまいます。これでは今までの「(実質的)値下げ努力」が水の泡と化してしまいます。首都高速道路会社は経営方針の第一に「 お客様第一 」を掲げているのですから、もう少し利用者の受け入れやすい料金体系を考えるべきであると言えるでしょう。
 個人的には此処まで来たら、又料金が大きく変わる中央環状新宿線全面開業の平成21年度中まで距離別料金体系導入を待った上で、その間に料金体系の制度を改めて考え直した上で「よりお客様の為になる距離別料金体系」を採用するのが最善の策で有ると思うのですが如何なものでしょうか?巨額のリース料償還と言う問題も有るので、新料金体系導入に関してはそんなに待てないのが現実では有ると思います。しかし其れ位思いきった建て直しをした上で新しい料金体系を導入する事が必要では無いでしょうか?この物の値段が上がらない時代に(実質的な)値上げをする以上、一度料金を値上げしたら「10年は耐えられる料金体系」を作る事が重要であると考えます。



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